第三話 コトネの変貌
苦痛に顔を歪めながらスズリは声をかけた。
「コトネ・・・、あなた今までどこにいたの?」
コトネは無表情のまままるで反応しない。
まるで聞こえていないかのように。
呼吸を整えながらスズリは話し続ける。
「いきなり後ろから蹴ってきて、何を考えているの?」
スズリがそういい終わると、コトネはニヤリと口元をゆがめた。
そして何も言わずにいきなり右手でスズリの喉元目掛けて突きを繰り出す。
スズリはギョッとした顔をしながらも反応しようとした。
(は、速い!)
なんとかぎりぎりで左腕で突きの軌道をそらして防御した。
だが間髪射れずにコトネは体当たりを繰り出した。
体勢が崩れていたスズリは回避することができない。
がちっと鈍い音が響く。
「ぐはっっ」
体当たりは強烈でスズリに激突しただけではおさまらず、
そのまま壁までふっ飛ばし、スズリはコトネの身体と壁に
激烈に挟み込まれた。
「がはぁぁぁっ・・・」
コトネがすっと元の位置に引くと、スズリは壁にもたれかかるようにして
ずるずると地面へ崩れていった。
頭をぶつけたのかこめかみの辺りから血が流れ出していた。
朦朧とした意識でスズリはコトネを見上げた。
明らかに見下したような表情のコトネが見えた。
「姉さん、ずいぶんと落ちぶれましたね。それとも私が強くなりすぎたのかしら?
まあいいわ。今日はほんの挨拶代わりよ。
もっとあなたには苦しんでもらうわ」
そう言いながら冷酷な笑みを浮かべ、コトネは去っていった。
残されたスズリは頭が混乱していた。
ただ一つはっきりとしていること。
(コトネは強くなってる・・・格段に。昔はこんなことは一度も無かったのに・・・)
ダメージでがくがくと震える足でなんとか立ち上がり、
よろよろと歩き出した。
これからどうなるのだろう?
そんな不安に胸を埋め尽くされながら自分の家へと歩き出したのだった。