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追放されたら辺境でお菓子屋さんはじめました…なのに元同僚の勇者が店先で土下座して謝ってくるのはなぜ?  作者: 丰川祥子
追放された圣女

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1-4

アベルは手の中の剣を見つめた。


聖剣。


王都の首席鍛冶師の傑作。


伝説では魔神の体を断ち切ることができる神兵。


今、刃に米粒ほどの欠けがある。


ついさっき。スライムを斬ったときだ。


普通の、低レベルの、新人冒険者でも踏み潰せるスライム。


彼は手を上げ、指の腹でその欠けを軽く撫でた。縁は粗く、何かに腐食されたようだった。


違う。


欠けだけじゃない。


剣全体に細かい錆斑がある。


昨日まではピカピカだった。


彼はよく覚えている。


昨夜、装備をチェックしたばかりだ。剣は人影が映るほど滑らかで、一点の欠陥もなかった。


彼はもう一度よく見た。錆斑は表面ではなく、剣の内部から滲み出ているようだった。爪で軽くこすると、錆の一片が剥がれ、その下にはさらに深い錆色が現れた。


彼の指が止まった。この剣は彼と三年を共にしてきた。三年でどれほどの魔物を斬ってきたか?飛竜の鱗、石巨人の岩殻、ダンジョンに潜む棘だらけの魔獣——一度も傷を残さなかった。今、スライムに欠けさせられた。


「アベル!」


リリナの叫び声が彼を現実に引き戻した。


彼女は口を押さえ、目を見開いて彼を見ていた。


「あなたの手……」


アベルは下を向いた。


左手の甲に、赤く腫れた部分があった。


スライムの酸液が飛び散った場所。


皮膚は焼かれたように、水ぶくれができ、中央からは血が滲んでいた。


「大丈夫だ。」彼は眉をひそめ、手を背中に回した。「ちょっとした傷だ。」


リリナはよろめきながら走ってきた。


「わ、私がすぐに治療するから!」


彼女の手は震えながら、彼の手の甲に当てられた。


金色の光が輝いた。


聖光治癒。


彼女が最も得意とする魔法。


伝説では瀕死の者を蘇らせる神術。


光は強かった。


まぶしいほどに。


そして——


痛い。


骨までしみるような痛み。


アベルは手を引っ込め、押し殺した痛みの声を漏らした。


傷は癒えなかった。


むしろ、より赤くなった。


より高く腫れ上がった。


血と膿が混ざり、手首から流れ落ちた。


彼はその手を見つめ、頭が真っ白になった。


聖光治癒の温度は熱かった。彼は以前気づかなかった。あるいは、気づいていたが、正常だと思っていた。神術だから、多少の熱さは当然だと。


しかし今の熱さ……手の甲の皮膚が溶けていくように感じた。火の上で焼かれているようだった。水ぶくれは光の照射でさらに膨らみ、中の液体が沸騰していた。皮膚が裂ける音さえ聞こえた、かすかに、シーッと、フライパンで何かを焼いているような。


「どういうことだ?」彼は自分の手を見つめ、声を詰まらせた。


リリナの顔が一瞬で青ざめた。


「わ、私にはわからない……」彼女の目が赤くなった、「こ、このスライムがおかしいんだ!その酸液にはきっと呪いがかかってる!絶対に私の問題じゃない!」


アベルは何も言わなかった。


彼はただその傷を見つめていた。


頭の中に突然一つの光景がよぎった。


以前。


魔獣に咬まれた時。


アリスは清潔な布を、冷たい水に浸し、そっと傷口に当ててくれた。


そしてひんやりとした感触。


気持ちいいほどのひんやりさ。


薄荷飴を口に含んだ時のような感じ。


痛みは少しずつ消えていった。


傷は次の日にはかさぶたになった。


きれいに。


腫れることもない。


化膿することもない。


一度もなかった。


彼は一度、ダンジョンで毒サソリに足を刺されたことがあった。毒が回って、足全体が腫れ上がった。アリスは彼を地面に押さえつけ、小刀で傷口を切り開き、黒い膿を絞り出した。それから砕いた薬草を塗った。それらの薬草は彼女が道中で摘んだもので、きれいに洗われ、細かく砕かれ、傷口に塗るとひんやりとした。


翌朝目覚めると、腫れは引いていた。傷跡さえ残らなかった。彼は当時、彼女の大げさな反応を笑った。「ただのサソリに刺されただけだろ」そう言った。


アリスは彼を無視し、残りの薬草を包んで、彼のリュックに押し込んだ。「次にあったら、自分で塗れ」彼女は言った。彼はその薬草の包みを長い間持っていた。その後、いつなくしたのかわからなくなった。


「行こう。」彼は手を振り、それらの考えを頭から振り払った。「先に進むぞ。」


リリナは唇を噛み、涙がぽろぽろと落ちた。


「ごめんなさい……ごめんなさい……」


「大丈夫だ。」アベルは振り返り、彼女に背を向けた。「君のせいじゃない。」


隊列は先へと進んでいった。


道はぬかるんでいた。


昨晩雨が降った。


水たまりが泥と混ざり、踏むたびにぐちゃぐちゃと音を立てた。


アベルはゆっくりと歩いた。


鎧が重い。


今までこんなに重かったことはない。


一歩進むごとに、肩がさらに沈み込んでいく。


彼は立ち止まり、肩を動かしてみた。


左肩の装甲と体の間に、何かが挟まっていた。


ごろごろする。


彼は手を伸ばして触ってみた。


装甲の裏地が裂けていた。


金属の縁が直接肌に当たっている。


一歩進むごとに、こすれる。


もう皮膚が擦り切れていた。


湿っている。


出血しているようだ。


彼は指を差し込み、その金属を少し広げようとした。指先が裏地に触れたとき、彼は固まった。裏地の布が硬くなっていた。


触ると干からびた獣皮のようで、粗く、硬く、少し脆かった。彼が軽く引っ張ると、布全体が幾つかに砕けた。下の金属層が露出した。


金属も錆びた。錆だらけで、端が捲れ上がり、まるで開いた刃のようだ。皮が磨り減るのも当然だ。彼はそれらの布切れをじっと見つめ、突然思い出した。この鎧は王都の鍛冶職人が自ら打造したものだった。


材料はミスリルと精金の合金で、裏地は氷霜竜の鱗の下の柔らかい皮。100年は壊れないと言われていた。彼は3年着た。今では布が崩れ、金属は錆びた。たった3年で。


アベルは深く息を吸った。


進み続けろ。


背後から短気な魔法使いの罵声が聞こえた。


「ちくしょう!」


魔法使いはびっこを引きながら歩き、一歩ごとに歯を食いしばった。


「このクソ靴はどうなってるんだ?! 」


彼は立ち止まり、木の幹に寄りかかって靴を脱いだ。


靴底はまだ無事だった。


だが中底は鉄板のように硬くなっていた。


かかとはもう血まみれに擦り切れていた。


「ドラゴン革の靴だぞ!」魔法使いは靴を地面に叩きつけようと怒り狂った、「当時は賞金の3ヶ月分もしたんだ!3年間履いても何ともなかったのに、どうして今日は半日歩いただけでこうなった?! 」


アベルは振り返った。


隊列の全員が立ち止まっていた。


一人一人の顔には疲労と焦燥が満ちていた。


隊列の弓使いは地面に座り込み、荒い息をしていた。


「私も……」彼女は籠手を外し、手首にできた赤く腫れた締め跡を見せた、「防具が急にきつくなった。手が痺れるほど締め付けられてる。」


盾戦士は盾を木の幹に立てかけ、肩を動かした。


「盾のベルトがなぜか切れた。今は手で持つしかない」彼はアベルを見て、「隊長、俺たち、何かの呪いにかかってるんじゃないか?」


呪い。


アベルは自分の剣を見つめた。


剣身に広がる錆斑を見つめた。


米粒ほどの欠け目を見つめた。


彼は口を開き、何か言おうとした。だが喉が渇いて、声が出ない。周りを見回した。


みんなが彼を見ていた。答えを待っている。彼は勇者だ。勇者は何が起きているか知っているはずだ。勇者は解決策を持っているはずだ。


だが彼には何もわからなかった。剣が錆びたこと、鎧が壊れたこと、リリナの治癒術で傷が余計に痛んだことだけがわかっていた。こんなことは今まで一度もなかった。いや……ふと思い出した、以前にも似たようなことがあった。


でもあの時は、アリスがいつもうまくやってくれた。装備が壊れれば、彼女が直した。傷が痛めば、彼女が処置した。彼はそんなことを気にする必要はなかった。ただ剣を振ればよかった。


「……わからない」彼は自分がそう言うのを聞いた。


声はかすれていた。


錆びた鉄の扉のようだった。


魔法使いはぶつぶつ文句を言いながらブーツを履き直し、履きながらヒースと息を吸った。


「今日は本当に最悪だ!」


リリナは小声で言った。「じゃあ……一度街に戻って休まない?」


「戻る?」魔法使いは彼女を睨みつけた、「往復でどれだけ時間を無駄にするかわかってるのか?」


「でも……」


「でもなんてことはない!」魔法使いは彼女を遮り、「こんな小さなトラブルにも耐えられないで、どうして冒険者になれるんだ?」


リリナは唇を噛んで、黙り込んだ。


涙がまた落ちた。


アベルは目を逸らした。


「進め。」彼は言った。「日が暮れる前に次のキャンプに着かなければ。」


隊列は再び動き出した。


しかし、雰囲気は重かった。


誰も話さなかった。


足音だけが響いた。


そして時折、抑えつけられた痛みの声が聞こえた。


アベルが先頭を歩いた。


彼は体がとても重くなったと感じた。


鎧だけではない。


何か他のものも。


彼は突然、振り返って見たいと思った。


来た道を。


あの町の方向を。


しかし、彼はそうしなかった。


なぜなら、彼は勇者だからだ。


勇者は後悔しない。


勇者には後悔が必要ない。


手の甲の傷がまた痛んだ。


何かが齧っているようだった。


彼は錆びた剣の柄を握りしめた。


先へ進み続ける。


少し歩くと、彼は背後から鈍い音がするのを聞いた。振り返ると、盾戦士が転んでいた。盾が地面に落ち、泥水が跳ね上がった。盾戦士は泥の中に座り込み、足首を押さえて、顔が真っ青になっていた。


「捻挫した」彼は歯を食いしばって言った。アベルは近寄り、彼を引き起こそうとした。


手が盾戦士の腕に触れた瞬間、鎧の金属の縁が彼の手のひらを切った。


また一つの傷。深くはないが、血はすぐに流れ出した。彼は手を離し、掌の切り傷を見つめた。


血の粒が一つずつ湧き出し、すぐに一本の線になった。彼は昔、パーティーで誰かが怪我をすると、アリスがいつも最初に駆けつけたことを思い出した。


彼女は傷を調べ、重症度を判断し、包帯を巻くか薬を使うかを決めた。


彼女の動作は速く、てきぱきとしており、決して慌てることはなかった。


彼は当時、これらは些細なことだと思っていた。今になって、誰もこれらの些細なことをしてくれないことに気づいた。

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