0015.冬休み前の帰り道
ガラス張りの扉を抜けると 校舎の前から真っ直ぐ延びる静かな小径
冷たい真冬の空気が張り詰めていて 青く高く突き抜ける澄んだ空
低い角度で差し込む日の光が眩しいけれど それより凍てついた風が肌をさす
目に入る空の青さは それ自体に冷たさを感じるみたい
二学期の終わりの終業式 学校の帰り道でたまたまきみと一緒になった
二人で登下校するほどの仲でもないけれど 教室ではよく話をする方かもしれない
寒いですね そうですね
なんで敬語なのよ そっちこそ
冬休みはどこかにいくの? と聞いてくるきみはなぜか楽しそうにしているけれど
別にどこにも行かないよ 元日におばあちゃん家に行くぐらい
日帰りだし電車でそんなにかからないし
わたしもそんな感じだよ と言ってあははときみは笑っている
なんだか楽しそうだから どこか旅行でも行くのかと思ったけれど
年末年始はいつも 家でのんびりしているよ うちの家族はみんな出不精だから
きみもそんな感じなんだったらさ 一緒に初詣に行こう?
みんなで行く予定があるの?
違うよ きみと二人で行こうって言ってるの
冗談ぽく言っているけれど 二人で出かけたことなんて いままで一度もなかったのに
大通りに出ると 街路樹に飾られたクリスマスのイルミネーション
クリスマスとは言いながら ハロウィンが終わったらすぐに取り付けられていた
まだ明るいこの時間は 張り巡らされた電気のコードが蜘蛛の巣みたい
イルミネーションが灯っているのを見たい まだ昼前ですね
今日はなにか用事があるの? 特になにもないけれど
だったらあれが点灯するまで待とう だからまだ昼前ですね
じゃあそれまでなにして遊ぼうか?
帰り道で たまたま一緒になっただけなのに
いつの間にか 二人で遊ぶ流れになっているのはなぜだろう
その前に お腹が空いてきたのですが
いいことに気づきましたね あそこにたこ焼き屋さんがありますね
たこ焼きはご飯なんですか? お父さんの地元ではそうらしいです
だからなんで敬語なの? そっちこそ
冬の日が地平に沈み 棚引くオレンジの空に群青が混じっていく
夜の明かりが灯り始め 昼間とは違う風景に街が染まっていく
まだ僅かに日の残像が漂う西の空と 見上げるビルの窓の明かりと
氷のような純白と深い青のイルミネーション
満足ですか? 満足ですありがとう
今日はなぜぼくと? 帰りにたまたま一緒になったから
初詣はなぜぼくと? きみと一緒に行きたいから
それはどうして? 来年になったら教えてあげる
日常を忘却したような 年明けののどかな空気
道を行くクルマの音も いつもより澄んで聞こえる
駅の改札で待ち合わせるきみも なぜか去年までとは違って見えた




