第1話 毒親に育てられた動画配信者。
ある動画配信者の話をしたい。
カウンセリングの真似事ではないが、話を聞いて前向きに肯定をしたら感謝をされた。
その成功体験から沢山の話を聞いた。
初めは良かったが、段々と身勝手な話が増えてきた事が原因で、話を聞く事が重荷になってきて、自分の心を病んでしまいかけた。
無償で行っているのに、諸般の事情により辞めると言ったら批判が殺到した。
話を聞いていて思ったし、批判が殺到して再確認したが、人の心とは怖いなと思った。
最後に1人だけ選んだ相手が、この動画配信者だった。
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動画配信者は夢のある仕事で、かつては小学生のなりたい仕事ランキングに入ったこともある。
その動画配信者は男性で、自分が動画配信を始めるきっかけになった配信者に倣って、キチンとルール設定をした。
ルールには個人の特定に繋がることは言わない事。
食べ物の好物くらいならいいが、住まいで言えば東京都なら東京都までで、市区町村の名前は明かさない。
ペットが居ても名前を明かさない。
出身校の話も持ち出さない。
食べに行った飲食店の話なんかも持ち出さない。
とにかく徹底して個人を特定させない事を守った。
話を聞いていて、どうしてそこまでして動画配信をするのか気になり聞いてみると、動画配信者は所謂毒親の子供だった。
自己肯定感が低く、創作物を出すことによって承認欲求を満たしたかった。
間違いではなかったし、かつてアップロードをした動画を見させてもらうと、配信者の作った動画はとても丁寧に作り込んでいて、本人に向いていると思った。
だがその動画配信が原因の一部となって動画配信者を苦しめていた。
・・・
動画配信者は幼い頃の話をする。
子供の頃、共に暮らした毒親は「金銭的補助をしてはいけないタイプの人間」だった。
動画配信者が、行政に保護されかけたのは何回もあったが親が、「キチンとやります」と言えばそれで終わってしまうので、動画配信者が助かる道はなかった。
子ども手当のようなお金は、全て親の交遊費に消えた。
見かねた同級生の親たちが、食事に呼び、風呂に入れ寝かしつける。
酒に酔った親はヘラヘラと、「ありがとうございます」、「甘ったれて困る」等と言って、同級生の親たちの言葉には耳を貸さずにいる。
親は苦言を聞き流すだけで、子供を育てないで済む。
食費すら浮いたと喜び、交遊費に使ってしまう。
通報は一度や二度ではなかった。
それもあって、遠足や移動教室に修学旅行なんかには最低限行けたが、あくまで最低限だった。
その不足分を埋めたのは同級生の親たちだった。
動画配信者が1番印象的だと言ったのは、授業参観には来ないのは当たり前だが、まさか卒業式にも来なかった事だった。
卒業式に来た同級生の親たちが、親の代わりに祝ってくれた。
小学校では皆が着飾る中、普段着で出て浮いて、中学は学生服に感謝をした。
進路が他の同級生達と違っても、同じ街に住んでいれば同級生の親たちは気にしてくれて、声をかけてくれた。
1人で支度が出来るようになっても、食事に呼ばれることもあるし、保護者と話すべき部分を、同級生の親たちがヒアリングをしてくれたりする。
これが無ければ、動画配信者は若くして外の世界に放り出されて、早晩のたれ死んでいたと自認していた。
だがそれが原因で心を病んだ。
同級生の親たちは好意的で優しく、親とはこういうものだと教えてくれた。
だが同級生からしたら、消せない烙印を持った者として、動画配信者を取り扱った。
対等の関係ではなかった。
口では友人だが、態度は明らかに格下。
ペットや弱い者として取り扱って、精神的な勝利を得る存在だった。
動画配信者は説明しながら泣いていた。
動画配信者は社会に出て独立をすると、初めて創作活動を始めた。
ゲーム実況はゲームの拙さと丁寧な編集と、飽きさせない話術が運良くウケた事で、トップではないが、固定客がついて収益化も始まり、定期収入が入るようになる。
動画配信者からしたら、人生の絶頂だった。
作ったものが認められて結果がついてきた。
ここで過去の出来事が影を落とした。




