短編 Hunter×Hunter ゴン×ミト 官能小説 「朝露のご飯」
夜が語ることのすべてが、言葉になるとは限らない。 眠りのあいだに通り過ぎる感情、布団に残るぬくもり、月が静かに見守った寄り添う時間──それらは朝になれば、湯気の向こうにそっと姿を変える。
「朝露のご飯」は、“夜の余白”で交わされた言葉にならない想いが、朝の食卓で小さく息をする物語。 恥じらいと気遣いの狭間で、視線が交わり、言葉にならない記憶が皿の上で静かに揺れる。
この朝に語られるのは、ふたりの関係の“はじまり”かもしれないし、“変化の兆し”かもしれない。 そしてそのすべてが、ご飯の香りに包まれている──。
翌朝。陽の光が障子越しに差し込む。 目を覚ましたゴンは、ミトの姿が横にないことに気づく。枕には淡い香りだけが残っていた。
台所へ向かうと、ミトは卵焼きを焼いていた。火加減を確かめながら、彼女は何も言わない。 けれど目が合った瞬間、その視線に昨日の余韻が残っていることに、ふたりとも気づいた。
ちゃぶ台に座ると、ご飯と味噌汁と卵焼きが並ぶ。 ゴンは黙って箸を取り、卵焼きに目を落とす。 「…甘い」 「ちょっと砂糖多かったかしら」
ミトはそう言って微笑む。 でもゴンは、頬の熱さが冷めるまで、ご飯に手をつけられなかった。
──その朝の静けさは、ふたりだけの秘密のように、島の波音と一緒に流れていた。