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短編 Hunter×Hunter ゴン×ミト 官能小説 「さざ波の夜」

くじら島に夕焼けが落ちてくると、海の匂いが台所にもそっと忍び込んだ。 ゴンは畑仕事を終え、汗と潮風をまとうまま帰ってくる。扉の向こうから、味噌と鰹だしの懐かしい香りが鼻をくすぐる。


「ゴン、今日は煮物よ」 ミトは振り返り、微笑んだ。エプロン姿の彼女は、昔と変わらない穏やかな眼差しをしていた。


囲炉裏端でふたりきりの夕食。煮物の人参はミトの好きな形に切られていて、ご飯には麦が混ぜられていた。ゴンはよく食べた。頬張るたびに、ミトはまるで昔のゴンを見ているかのように目を細める。


「食べ方、変わってないわね」 「ミトさんの煮物が変わってないからだよ」 その言葉に、ミトはほんの少し顔を赤らめる。


夕食を終えると、夜風が縁側から吹き込んできた。ふたりは並んで月を見上げた。風が、距離を縮めてくれる。


「お風呂、入っておいで。浴衣、押入れに入ってるよ」 ミトの声は静かで、でもその静けさに、何かを隠しているような色が混じる。


──夜。布団が二枚、畳の上に並べて敷かれている。けれどふたりとも、眠る気配はない。沈黙のまま、蛍光灯の明かりが落とされる。


「…ゴン」 ミトが言う。ゴンが返事をする。 その会話の温度が、布団の間にある距離を少しずつ、ほんの少しずつ溶かしていく。


彼女の髪が夜の香りをまとう。 ゴンの指が布団越しに少し動いた。 そしてそのまま、言葉のないぬくもりが部屋を満たしていった。

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