短編 Hunter×Hunter ゴン×ミト 官能小説 「月影の食卓」
月の静かな輝きがくじら島の夜を包むなか、並べられたふたつの布団の間には、言葉にしない想いが漂っていた。ゴンとミト、それぞれの胸の奥に眠る記憶と感情が、波音に揺られながらゆっくりと重なっていく。
幼い頃の温もりを思い出すふたりの会話。そして、ふと伸びた手が触れた指先に、過去と現在が交差する。 優しく、静かに――互いの距離が少しずつ溶けてゆくその瞬間、夜はふたりにだけその余白を許していた。
その夜は何も起きない、けれど確かに何かが始まった。 月が雲に隠れるまで、ふたりはただ寄り添い、 言葉にならない気持ちを胸に、そっと瞼を閉じていった──。
月明かりが障子を薄く染めるころ、布団を並べた畳の上でゴンとミトは言葉なく横になっていた。 遠く海鳴りが聞こえる。波音のリズムに、ふたりの呼吸が静かに重なる。
「…眠れそう?」とミトが囁く。 「ううん、なんか…静かすぎて」 ふたりの声は、互いの胸にゆっくり沈んでいく。
ゴンがわずかに身を起こし、隣のミトに目を向ける。 彼女もこちらを見ていた。優しい眼差し。 懐かしさと、今ここにしかない一瞬が交差する。
「子どもの頃、泣きながら私の布団に潜り込んだの覚えてる?」 ミトの言葉に、ゴンは小さく笑う。 「寒い夜だった。ミトさんの腕、あったかかった」
沈黙。そして、ゴンがそっと手を伸ばす。 その指先が、ミトの指に触れる。 触れた瞬間、風が止まったようだった。
彼女の手は、もう何度も畑を耕し、ゴンの服を縫い、傷に薬を塗った手。 その指が今、ゴンの頬にそっと触れる。
ふたりの間に距離はなかった。 動きは慎ましく、言葉は少なかった。 けれど、その夜の時間は確かに流れていた。
彼女の髪がゴンの肩に触れ、彼の腕が彼女の背に回る。 夜は何も語らず、ただその空間を許していた。
そして、月が雲の中に隠れる頃、ふたりは静かに寄り添ったまま瞼を閉じる。 布団の中には、言葉にしない気持ちが残っていた。