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3カウント

          

           3


「もっと頭下げろ」


 頭を地面に押し付けられる。


「うぇ」


 言葉にならない声が少し漏れた。

 少しすると押さえつけていた手がどけられて、にぃが顔を上げた。

 私にはわからなかったけどたぶんどっかに行ったのだと思う。顔に付いた土を払っていると


「魔石残り何個?」


 抑えた声でにぃが質問してくる。

 魔石 魔法使いにとって最も大切で、魔石の数が残りの魔法の回数となる。すぐにポケットに手を入れて確認する。


「二つしかない」

「ほらもう一つもっとけ」


 え?


「にぃは?」

「これで3個。それとここからは別行動な。お前は先に村に向かってろ」

「そんなの無理だよ。にぃはどうするの?」

「時間稼ぎしないと。二人だとすぐ追い付かれる。そんな顔するなよ、俺の足ならすぐに追い付けるから」



 はぁはぁはぁ。

 夜の森を音を立てるのも気にせず駆ける。

 息が苦しい。できるなら立ち止まって休みたい。

 だが何かが集団で後ろを追いかけてくる。結構近い気がする。たぶんウルフ。暗くてよく見えない。          

 足は確実にあっちの方が速い。

 足音がだんだん近づいてくる。

 はぁはぁはぁ 苦しい。早く魔法を撃ってしまいたい。でもギリギリまで引き付けないと。何度も撃ってる余裕はないし、外すわけにはいかない。

 なんとか自分を言い聞かせて走り続ける。

 頑張ったところで魔物は許してはくれない。真後ろで獣のような息づかいが聞こえたきがした。

 もう無理。

 体を反転させ後ろに滑りながら、呪文を唱えた。


「ファイヤボール」


 一瞬辺りに明るさが戻り、人をつつめるくらいの火球が杖から放たれた。


           2


 すぐさま体を戻し再び走り出す。当たっているかどうか確認する余裕はない。

 当たっていくれ。諦めてくれ。

 祈りながら、ポケットに手をいれ魔石を取り出し新しい物と入れ換える。魔法を放つうえで最初に学ぶのが魔石の管理だ。どんな状況でも怠ってはいけない。

 巻いたかもしれない。そんな思考が頭を包む。

 それも虚しく後ろの足音が聞こえ始める。

 そんなの分かっていた。ウルフは一度定めた獲物を諦めたりはしない。


 顔から液体が後ろに流れ始める。涙なのか鼻水なのかもよくわからない。ぐちゃぐちゃになりながらもそれでも走り続ける。


 なんで

 なんでにぃ一緒にいてくれないの?


 本当は分かっていた。にぃの魔石が残ってるわけがないって、私より戦ってたんだから。囮になったんだって。もうにぃはいないんだ。


「ファイヤボール」    


            1

   

 振り返って魔法を放つ。

 近いのかどうかも分からないがもう走っている体力がない。

 杖を地面について、呼吸を整える。これでダメならもう終わりだ。魔法が撃てても、囲まれてしまっては意味がない。

 辺り煙が立ち込めているうえに暗くて分からない。

 3秒経ち、5秒経ち、10秒経った頃、月明かりが差し込んだ。

 

 そこには何もいなかった。

 はは、やれるじゃん私。

 緊張の糸が切れて立っていられず、しゃがみこんだ。

 恐怖で抑えこまれていた感情が溢れだし涙が止まらない。

 助かったという安堵とにぃを失ってしまった悲しみどちらが強いのかもよく分からない。


 私が殺したんだ。

 にぃ1人ならもっとうまくできた。

 私がいたからにぃが死んだ。

 徐々に自責の念が強くなっていく。


 そうだ、離れなくちゃ。

魔法使って場所がばれやすくなっている。ここにいちゃいけない。

 立ち上がったとき、バキッと音が後ろ聞こえた。

 木を踏んで折れる音だ。

 魔物か? 

 一気に血の気が遠のく。

 一歩ずつこちらに近づいてくる。足音は1つ。四足歩行ぽくない。


 もしかしにぃ?

 救いを求めるように振り返る。

 暗くても嫌でも分かってしまった。

 明らかに人より高い身長。毛皮に覆われた全身。

 グリズリーだ。


 なんで?

 頭が真っ白になる。何かしないと。魔法だ。杖を強く握りなおす。


 「ファイヤボール」


 しかし何も起こらなかった。嘘でしょなんで?


          0


 あぁ、こんなことならにぃと一緒にいればよかった

文章書くのって難しい

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