第10話 土佐のユニークな田舎言葉
土佐の東端に東洋町という町がある。その中に野根という部落がある。この部落には隣の甲浦や生見とは違った個性豊かな野根弁がある。私はここで3~4歳と10~11歳を過ごした。流石に3~4歳の頃の記憶は無いが、10~11歳時の記憶は明白に残っている。他の町や部落では聞けないような独特の言葉が3つ思い浮かぶ。少し考察してみようと思う。
この3つである。
『おらあ、いや』
『おんで、いや』
『ほちけーこらえ、ねえさんえ』
『おらあ、いや』
これは比較的、解り易いと思う。普通に冷静に使った場合は、そのまま『俺は嫌だ』である。そうではなく、思い切り気持ちを込めて口にした場合はかなりニュアンスが違ってくる。
これは何かをしていて失敗した時によく使い、『うわあ、失敗した!』、『ぎゃあ、やってしまった!』という意味になり、自分のした事に対する自分の気持ちを表したものである。
英語で言えば、
"Oh, no, I missed."
"Oh my God! I made a big Mistake."
と言ったところか。
『おんで、いや』
これも『俺は嫌だ』であるが、自分の事に対してでなく、相手のした事や言った事に対して不納得ながら、しぶしぶ受け入れざるを得ない時に、『ええっ、それはないだろ!』、『おいおい、冗談はよせよ!』、『いやあ、参ったなあ』という感じで使われる。
英語表現では、
"Oh, You are kidding."
"Oh, no, You have got to be kidding."
てな感じかな。
『ほちけーこらえ、ねえさんえ』
これもまた…。
『ほちけー』とは、『そっちに行け』、『こらえ』は下品な強調で、この野郎みたいな。『ねえさん』は女々しい男を指しますが、殆ど無条件に使われます。
相手の言った事が気に入らん時に使われ、『とっとと消え失せろ、この野郎』と言った感じ。
英語では、スラングの
"Fuck off."
かな⁉
ただ実際には、本気で顔も見たくないと言う意味で使われる事は少なく、関西人が親しい仲間に『アホか、お前は!』と言うのと同じようなニュアンスです。