栗田は、いつも考えてしまう癖がある
私の名前は、栗田 勝。男性。四十歳。独身。会社員。
マンションに一人暮らし。そして、よく物事を考える癖がある。
ジリリリリと、目覚まし時計が鳴りだした。
私は考える。
このまま、時計を止めて二度寝するか、起きるのか。
私は、体を少し起こして、時計を見た。八時である。
今日は休みだし、もう少し寝ていようか。
私は寝返りをうつと、ベッドから落ちた。
これは、起きろということか。
「仕方ない、起きるか……」
私は目覚ましを止め、服を着替えて、洗面所へ行った。
ここで、私は考える。
歯磨き粉を少し出すか、多めに出そうか、どちらにしたものか。
「おや、これは昨日買い替えたばかりだったのか」
ならば、また少しずつ使えば、長持ちするだろう。
私は、歯磨き粉を握った。
しかし、強く握ったためか、歯ブラシいっぱいに出た。
「……少し、出すぎじゃないかい?」
そして、顔まで洗ってリビングへ向かった。
さて、朝ごはんはなににしようか。
私は考える。
ご飯なら、今の季節は栗ご飯とかいいな。
パンなら、さつまいもの蒸しパンとかどうだろう。
私は、いろいろ考えながら、炊飯器のところに行った。
ふたを開けると、そこにはなにもなかった。
「そういえば、お米を炊いてなかった……」
これでは、ご飯が食べられない。
「仕方ない、パンにするか」
私はそう言いながら、買ってあったさつまいもの蒸しパンを食べた。
おいしいが、なにか物足りない。
食事を終えた私は、洗濯を始めた。
そして、私は考える。
このまま、家でゴロゴロするか、買い物に出かけるか。
そういえば、お昼を用意しないといけないな。
「よし、スーパーにでも出かけるか」
そして、私は外に出かけることにした。
しばらく歩いていると、スーパーが見えてきた。
私は中に入って、店内を一回りした。
すると、お惣菜のコーナーに、栗ご飯があった。
「おぉ、まさかこんなところで出会えるとは……」
うれしくなった私は、栗ご飯のパックをカゴに入れた。
私がレジに並んでいると、レジ横に大福が山積みになっていた。
大福は、私の大好物である。
そこで、私は考える。
大福を買うべきか、買う予定のない物を買っていいものか。
私が悩んでいると、大福の上に『本日限り』の文字が!
「こっ、これは買うしかなかろう!」
気づいたら、大福はカゴの中へ。
しまった、余計な出費が……
私はうなだれて、家に帰った。
洗濯機を見てみると、スイッチを入れるのを忘れていた。
「なんてこったい。まぁ、食事をしていたら終わるか」
私は、改めてスイッチを入れ、買ってきた栗ご飯を食べた。
「さて、お昼はこれでいいかな」
おかずもあればよかったが、買うのを忘れてしまった。
私は片づけをして、もう一度家を出た。
腹ごなしに、散歩でもするか。
私は、近くの土手を歩くことにした。
「いい風も吹いて、気持ちがいいな」
おや、ジョギングしている人も、ちらほらいるな。
そして、私は考える。何故、人は走るのか。
ただの趣味であったり、体のためであったり。
しかし、疲れるだろうに……
「まぁ私も、人のことは言えないんだけどな」
私は自分の腹をさすりながら、ふと思った。
「よし、私も少し走ろうか」
私は走った。
しかし、体力がないせいか、数十分も走れず息切れをした。
「はぁ……はぁ……やっぱり、慣れないことをするもんじゃないな」
あきらめた私は、すぐ家に帰ることにした。
帰って時計を見れば、午後三時だった。
おやつの時間である。
すぐ私は、机の上にある大福に手を伸ばした。
自分のご褒美である。
えっ、なにもしていないじゃないかって?
ちゃんとしたさ。走ったもの。
私は大福を食べ終わって、忘れていた洗濯物を干していった。
すべてが終わったところで、時計を見れば、もう午後五時だった。
一日が過ぎるのは、早いな。
私は、夕食をとるため、また外出することにした。
そして、私は考える。
定食にするか、軽めにうどんにするか。
「よし、昼少し軽めだったし、今夜は定食にするか」
私は定食屋に入り、メニューを開いた。
「さて、なにを食べようか」
私は考える。
しょうが焼き定食にするか、サンマ定食にするか。
「今日のおすすめはサンマ定食ですよ」
「あっ、じゃぁそれで」
食事を終えた私は、帰って風呂に入ることにした。
湯船に入って、私は考える。
「今日は、いろんなことが裏目に出たな。もう少し、うまくやれたような気がする」
そして、私は考えるのをやめた。
いや、やめざるを得なかった。
なぜなら、のぼせたからである。
風呂の中で、考え事をするものではないな。
私はふらふらしながら、ベッドに横になった。
そして今日の最後に、私はもう一度考える。
何故、人は考えるのか。
考えても考えても、答えなど出ない。
これはさすがに、疑問が大きすぎた。
では、私のことについて考えよう。
私、栗田 勝は、物事を考える癖がある。
そして、考えていると、いつも裏目に出てしまう。
それが私だ。
少し後悔はあっても、やめられない。
きっと、私は考えるのが好きなのだ。
だから、私はまた考える。
「明日は、きっといい日になりますように……」
そして、私はハッとする。
目覚まし時計の時間を、セットしていなかったのだ。
そして、私は考える。
これからは、少しでも忘れることをなくすように、気をつけよう。
そして、私は考えるのをやめて、目を閉じた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!