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三題噺もどき3

砂丘

作者: 狐彪

三題噺もどき―ごひゃくさんじゅうきゅう。

 


 テレビをつけると、声が響いた。


 何事かと思えば、アナウンサーが何かのアクティビティらしきものに挑戦しているらしい。悲鳴に近い声を上げながら……。何かよく分からないし、どこにいるのかも分からない。

 お昼の番組ではあるので、きっとどこかにできた新しい観光スポットの見どころ紹介みたいなのをしているんだろう。それか、芸能人のおすすめとかを回っているとか。

「……」

 最近テレビをとんと見なくなったので、つけてみたのだけど……そうか。この時間はニュースはあまりしていないのか。あまりにも世間のことについて知らなさすぎると少し思ったので、見ようかと思ったのだけど、残念だ。

「……」

 チャンネルを変えてしまえば、やっているかもしれないが、リモコンを癖で遠くに置いてしまったので面倒だ。

 これも思えば変な癖だよな。自分でリモコンの権限を持っていないのが普通で、普段置く場所が父の場所なので、そこに置いてしまっている。机を挟んだ反対側なだけなので、取ろうと思えば全然取れるんだけど、椅子に腰かけてしまったのでもう動く気になれない。

「……」

 チカチカと移り変わるテレビの画面に、少し疲れながらぼうっと見続けている。

 有名らしい芸人が映ったり、見覚えのある芸能人が映ったり。

 最近の流行りなんて何も知らないから、あの芸人は何が世間に受けたんだろうな。

 見ている限り、私自身にはあまり魅力が分からない。

 理解できないものに理解を示すフリくらいはできるが……分からん。

「……」

 眺めているだけでも、画面は次々と映り変わる。

 ロケの司会進行役を務めているらしい芸人が「さて、」と言いながら案内を進めていったのは次のスポットのようだ。

「……」

 これからこの場所で楽しんでいこうと言うことらしい。

 その間に、簡単な紹介がアナウンスで流れ、写真や映像が流れる。

 青い空の下に続く、砂の作り上げた丘。

 小さく映る人。ラクダもいるらしい。

「……」

 そういえば、砂丘というものに行ったことがなかった。

 以前、比較的近くの県に住んでいたのだけど、結局行かずじまいになってしまっていた。そのままさらに離れた地元に帰ることになったからなぁ。他の観光スポットは割と言っていたんだけど、砂丘だけはいかなかった。

「……」

 今でもきっと、行こうと思えば行けるんだろうけど。

 何せ、県外に出ることに対する抵抗が若干あったりするものだから……そう簡単に行こうとは思えない。自分の住んでいる地域から出るのも、ホントは苦手だったりするんだから、県外なんてもってのほかだろう。

 あぁ、でも、楽しそうではあるよなぁ……写真を撮ったりするのが好きな身としては一度行ってみたいものだ。

「……」

 続いて場面がうつり変わり、芸人御一行が色々と楽しんでいるシーンへと入っていく。

 あれこれと色々説明をし始めたの、だけど……。

 その御一行の奥の方に、一般人が立っていて。

「……」

 なんというか……砂丘にはあまり似つかわしくないような恰好をしていたものだから、ものすごく目をひかれた。

 影に立ってはいるが、暑くないのだろうかあの格好……。

「……」

 白いカッターシャツのようなものを、しっかりと身に着け、下はピッタリ目の黒いパンツ。靴まで黒で揃えているのか、足がものすごく長く見える。さらにスマホこそいじっているように見えるモノの、姿勢がしゃんとしていて、足長効果抜群って感じがする。

 その上に、真黒なロングコートのようなものを羽織っていて、腕もまくらずにすべて黒いので下手したら上半身だけ浮いて見えるような気がしなくもない。いや、そんなことはないんだけど。傍から見れば吸血鬼か何かのコスプレだと言われた方が、まだ納得がいきそうな装いだった。

「……」

 今が冬なら、別段目を引くような恰好ではないと思うが……まだ暑い日が続いている。その上砂丘なんて更に暑そうなところに、そんな恰好で……。日焼け対策かもしれないけど、あまりにも似つかわしくない。

「……」

 画面はすでにうつり変わり、アクティビティらしいものを楽しんでいる芸能人たちが映る。

 ……案外コスプレの撮影とかで行っていたのかもしれないな……それならまぁ。暑かろうが……いやぁ。凄いな。普通に。


「……」

 一瞬にして、興は覚めて、ぼうっと眺めるだけの作業に移行する。

 砂丘ねぇ……行ってみたいけどなぁ。







 お題:吸血鬼・砂丘・カッターシャツ

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