5話
「君の魔力を超えるだと?!推定でも25を超える君の魔力をか?!」
先ほどの刺客の話をしたのだが、そうか……辺境伯様の騎士団が見たのは時間使用で底上げした俺の魔力だ。今の魔力は13程度だし、話しておくか。
「今の俺の魔力は13と少しですよ。あの時はスキルで底上げをしていました」
「ステータスの底上げか……異世界人の中でも使い手は限られると言うが君のスキルは一体どのような……して、今回もその方法で刺客を?」
「いえ、今回は他の方法です」
「ステータスやスキルについては深くは聞かないが……君はどうやら他の異世界人よりも特異なスキルを持っているらしい」
そうなのだ。俺が持つ時間の名を冠するスキルの数々は明らかにおかしい。辺境伯様に聞いた話によるとこの国の現国王であるシュウト・サカズキの持つスキルも魔剣や聖剣、聖鎧や魔法の力の込められた道具などを創り出す程度のものらしい。それなら時間使用の能力の一端でしかないのだ。まぁあちらにどんなデメリットがあるかは分からないが……もしかしたらデメリット無しで創れるのかもしれないし。
「辺境伯様……クオリア様の時間が20を切りました」
「ああ、パーティの準備を頼むよ」
メイドの女性が悲壮な表情で辺境伯様にそう伝える。
「どういう事ですか?」
「君もステータスに時間の表記があるのは分かるだろう?あれはそのままその人物の寿命を表す。クオリアはね……生まれつき時間が少ないんだよ。時々そういう子供が生まれてくるのは知っていたがまさか自分の娘がそうなるとはね。今日はクオリアの最後を少しでも悲しく無いものにするためこれからパーティをするのだよ」
そう言って無理に笑顔を作るグリンセル様からは長年の苦労が伝わってくる。
「後20時間でクオリア様が亡くなる……だから多少の無理を推してでも街を見せたんですか?」
「君には感謝しているよ。同年代の者と街を歩く……私のせいであの子ができなかった事を最後の最後にさせてあげられた……」
「クオリア様はもちろん自分の寿命を知っていますよね?」
「ステータスを理解したクオリアが5歳の時に自分の時間が少ないと話してきた時は夢であってほしいと思ったよ」
なんだよそれ。許せるか。あんな街を散策しただけで大はしゃぎする無邪気な女の子が後20時間で死ぬ?そんな事は許さない。許してたまるものか。
「グリンセル様、俺にはクオリア様を救う手段があります。ただその力を知ったらあなたには俺への絶対的な協力を約束して貰わなければならない。それ程に俺の力はこの世界にとって異質なものなんです」
「クオリアが助かる?なんの冗談だ……いくら君でも……斬るぞ?」
凄い殺気だ、正直今にも気絶しそうな程の。だけど、今の俺はこんな殺気じゃ怯まない。
「グリンセル様!約束していただけますか!一生俺に協力を続けると!!そうすればクオリア様は助かります……」
俺は強く言い放った。
「まさか、本当に助けられると?」
「ステータスの時間をよく見ていてください」
『時間譲渡』LV4
他者に時間を譲渡できる。但し譲渡した時間の六倍の時間を使用する。
時間譲渡のスキルを発動すると身体中を激しい痛みが襲う。
「アァァァッ……」
「レイ君?!一体何をしているんだ?!」
「はぁ……はぁ……時間を……見てください…………」
「これは?!時間が5時間……増えている……?」
「俺の残りの時間は約800年あります。時間譲渡のスキルは譲渡する時間の六倍の時間を使用しますが俺なら時間強奪というスキルで魔物を狩れば時間を奪えます」
「まさか……これでは人では無く、神の……」
神……ね、まぁ確かにチートではあるよな、俺のスキル達は。なんでこんなスキルを持っているのかはいまだにわからないけどレベルさえ上げればクロノア様が話してくれるだろう。
「辺境伯。俺に一生の協力を約束していただけますね?」
「クオリアが……娘が助かると言うのならこの家すら惜しく無い。我が家は君に永遠の協力を誓おう。ふっ……貴族失格だな私は」
一生で良いと言ったのにグリンセル様は永遠と言う。個人ではなく家として永遠に協力をすると。クオリア様は愛されているな。
「では、救いに行きましょうか。クオリア様を……」