2話
「時間使用」
またこの感覚か。クロノア様が泣き止んだ後俺は早速時間使用のスキルで転移魔法を創り出そうとしていた。
『時空間魔法・異』LV1
異世界人が創り出した時空間魔法。既存の時空間魔法とは根本的な構造から異なり少ない魔力でより強力な魔法を行使できる。
「今回は5年でしたね、そろそろモンスターでも狩りたいですけど、怖いなぁ……」
《寿命の確保は玲にとっては最重要案件だろうしな》
大宮 玲
種族 異世界人
時間 473269時間
レベル 1
経験値 0/10
職業
称号
加護 時の女神クロノア
体力2.56
筋力1.96
速さ2.71
魔力2.12
スキル
料理 LV6
全言語理解 LV10
固有スキル
時間使用 LV1
時間強奪 LV1
時間譲渡 LV1
水魔法・異 LV1
時空間魔法・異 LV1
「ともあれまずはヒィトゥルクに向かいますかねってあれ?クロノア様、魔法ってどうやって使うんですか?」
《安心しろ!今から教えてやる》
良かったぁ。もしかしなくてもクロノア様がいなかったら俺詰んでたよな。
《照れるではないか……そんな事より魔法とは……》
クロノア様の話では魔法とは体内の魔力を循環させイメージを世界に伝える事で発動するらしい。時間使用を使う時と同じような感覚らしく違うのは寿命の代わりに魔力を使うと言う事。
「クロノア様……転移魔法ってこの世界では貴重だったりします?」
《当たり前だ一国に10人の使い手がいれば良い方だぞ》
「ですよね……ちなみに俺の世界の漫画や小説だと転移魔法って莫大な魔力を必要とするものなんですが……」
《あ………………》
やっぱりか。いくらチートなスキルを持っているとはいえ俺はレベル1の雑魚だ。ステータスだって他の人のを見たことがないから何とも言えないけど低い方だろうし。
「さぁ!歩きますか!」
《う、うむ。そうだな……》
結局歩く事になった俺は水魔法で水を創り出し水分補給をしながら二時間ほど歩いた。ちなみに水を創るだけなら俺の貧弱な魔力でも安易にできたがクロノア様曰く普通の水魔法は大気中の水分を集めて使用するらしく少ない魔力で水を創り出すのはほぼ不可能らしく改めて水魔法・異の特異性に気付かされた。のは良いのだが……
「クロノア様……あれ……なんですかね?」
《何ってドラゴンだろう!早く逃げろ!》
「何でドラゴンが草原のど真ん中で寝てるんですかね?」
《いいから!早く逃げないか!今のお前では歯も立たないぞ!》
そんな事は分かってる。でもどうしよう……恐怖で足が動かない。
「ヒヒィン!!!」
なんか馬が来た。騎士らしき人も乗ってる。数は30人ほどあのドラゴンを倒しに来たのだろう。
「そこの少年!早く逃げたまえ!」
「おいバカ!新人!大声をあげるな!」
あーあ。二人揃って大声あげてるよ。
「グロォォォッ……」
起きちゃったよ、俺動けないのに。なんか俺の方睨んでるしこれは死んだか……
「グルガァァァァッ!!」
《玲!逃げろ!玲!》
心を支配するのは恐怖。ただただ深い恐怖。このまま身を委ねた方が楽になれるとさえ思う。けど……俺はこんな所で死んで良いはずが無いんだ。同じ学校の生徒が転移している可能性があるならアイツもこの世界に来ているかもしれない。来てないかもしれないし俺の杞憂で済めば良いだけどもしこの世界で一人、孤独に苦しんでいるとしたら……俺にはクロノア様がいた。だけどアイツのそばにはきっと誰もいない。だから、俺は……
「時間使用・刹那」
時間使用のスキルを深く理解しようと歩いている間にスキルについてクロノア様に聞くとスキルには無限の可能性があると言う事を聞いた。その中でも時間使用の能力には明確な制限が無い。ステータスの上昇を取っても永続的か瞬間的かなどの記載は無かった。なら、瞬間的なステータスの上昇にはなにか永続的な上昇には無い長所があると気付き歩きながら実践した。その成果を今披露しようと思う。
大宮 玲
種族 異世界人
時間 10000時間
レベル 1
経験値 0/10
職業
称号
加護 時の女神クロノア
体力30.00 (5分)
筋力30.00 (5分)
速さ30.00 (5分)
魔力30.00 (5分)
スキル
料理 LV6
全言語理解 LV10
固有スキル
時間使用 LV1
時間強奪 LV1
時間譲渡 LV1
水魔法・異 LV1
時空間魔法・異 LV1
「時空間切断」
俺が手をかざしたその瞬間赤いドラゴンの周りの空間に切れ目が入るとそのままドラゴンの胴体を真っ二つに切り裂き何事も無かったかのように元に戻る。先ほどと違うのはドラゴンの命が絶えていると言う事だけ。
「うっ……」
魔力と時間を使い過ぎたせいで意識が朦朧とする。騎士の人たちがこちらに向かってくるが何を言っているのかわからない。
《玲!玲!》
「二亜…………」
最後に浮かんだのはこの世界に来ているかも知れない義理の妹の顔だった。