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一人の鳥が羽ばたく世界  作者: 夜ノ血月
四神編
11/16

11話 決着は照らされて

「とりあえずこれだけ離れれば大丈夫だと思うわ」


 校庭の中央から上空二十メートルの場所で“煙々羅”の上にいる千影ちかげが屋上にを見ながら安堵したように言った。


「なあ、あいつらって十年前に失踪したっていう二人だよな?」


 翔琉阿とるあも屋上を見ながら千影に聞いた。俵屋たわらや宗達そうたつは屋上から動こうともせずあちらから何かしてくる素振りも無い。


「ええそうよ。背が高い方が風神の操者の俵屋そうたつ風太ふうた、低い方が宗達そうたつ雷斗らいと。俵屋達は昔から玄武げんぶ家にいたから神器のことは良く解るわ」

「背が低──」

「何か言った?」

「言ってないです」


 智樹ともきが千影とその隣にいる背丈が殆ど同じの陽人はるとを見ておもむろに呟いたが、千影に即座に睨みつけられ早口で誤魔化した。


「えと、とにかく私が知ってることをあんた達に伝えておくわ。まず俵屋と宗達がさっき使ってきた“断ちきる風刃”と“穿つ雷撃”。これはどっちも生身で受けたら一溜まりもないけど有効射程は十メートル位でそれより離れたら威力も精も下がるわ」

「なら俺の“火鳥弾かちょうだん”は二十メートルは届くから距離をとって戦うか? でも近づかれたら厳しいな」

『俺様の神器ならあんなザコ神術なんて跳ねのけれるぜ』

「......なら俺の“龍動木りゅうどうもく”と翔琉阿の“火鳥弾”でやるか......あ、つーか青龍の神器がねえんだけど」

「「「は!?」」」


 全員が一言一句変わらず呆れたように同時に言った。


「え、えっと──」


 陽人の真っ青な目がさらに青く光った。


「どうやら青龍の神器は僕らの真下を土の中を潜って移動してきているみたいですね」

「後で下降りたときに回収しろよ」

「おう!」

「話を戻すけど、あいつらの神術は“断ちきる風刃”と“穿つ雷撃”だけじゃなくてそれぞれもう二個あるわ。俵屋が使うのが“風の盾”と“風隠れ”。まず“風の盾”が俵屋を中心に小規模の竜巻を出してあらゆる攻撃を防ぐわ。“風隠れ”は突風と共に自分、もしくは人一人分までを移動させるわ。宗達は“いかずちの矛”と“稲妻落とし”。“雷の矛”は“風の盾”とは対照的に攻撃に特化してて持っている桴に雷をまとわせることで二本の矛を持って攻撃してくるわ。さらにそれを強化するのが“稲妻落とし”よ。これは直線的な軌道で目で追えない程の速さで移動してきて、二つを組み合わせて接近戦を仕掛けてくる。まあ、私が知っているのはこれぐらいね」

「......千影さん。“風の盾”ってそいつを中心に竜巻が出るだけなんだよな?」

「え、ええ。そうよ」


 千影は智樹からの質問を不思議に思いながら答えた。


「俺らがこんな空中で呑気に話してるのにあいつら本当に何もしねえな」


 翔琉阿は屋上でただ突っ立てるだけの二人を怪訝そうに見ながら言った。


「神気を温存して戦いに備えてるのかしら? とにかく私達はあの二人を倒す方法を考えないとずっと空中だわ」

「......なら俵屋の相手を俺と千影、宗達の相手を智樹と陽人がするって感じで良いんじゃないか? 智樹は何か思いついてるみたいだしな」


 翔琉阿は下げていた頭を上げ言い、智樹の方をチラッと見た。


「まあな」


 何か考えがあるのだろう。智樹は笑顔で答えた。


「私もそれが最善だと思うわ」

「僕の千影さんと同じです」


 千影、陽人は賛同した。その後しばらく話し合い、五分程立った後に全員が真剣な表情になり“煙々羅”はゆっくりと下降し始めた。


「あいつらは地上に降りてから仕掛けてくるだろうからお前ら覚悟しろよ」


 翔琉阿がそう言うと全員覚悟を決めたように静かに頷いた。“煙々羅”が下降していき、地上とあと十メートル位のところで不意に突風が吹いた。


「さあ、始まりだ──」


 翔琉阿は突風に臆することなく呟いた。


「“断ちきる風刃”......!」

「きゃっはあ! “穿つ雷撃”!」


 突如として俵屋と宗達が“煙々羅”の真下から少し離れた場所に現れ各々の神術を四対ずつ飛ばした。


「“龍動木”!」


 智樹が急襲にすかさず反応し、声を荒げた。すると“煙々羅”の真下から“龍動木”が現れ、俵屋達を喰らわんとする。


「“風隠れ”......」


 突風が吹き俵屋達の姿は消え、元居た場所から五メートル程離れた場所に突如として現れた。そして“穿つ雷撃”と“断ちきる風刃”が四対ずつ翔琉阿達を襲おうとするがそれよりも先に“龍動木”が“煙々羅”とその上にいる四人ごと呑み込んだ。“穿つ雷撃”と“断ちきる風刃”は“龍動木”に当たり消えた。


「......!」

「何だあ!? あいつら食われたぞ?」


 その光景を見ていた俵屋は絶句し、宗達は声を上げ、動揺を隠せずにいた。二人は怪訝そうに“龍動木”を見ているとすぐにほどかれていき中からは無傷の四人が現れた。


「“火鳥弾”!」

「“創鉄像”!」


 翔琉阿は間髪入れずに宗達目掛けて“火鳥弾”を放ち、千影は右手が光り、その手には四本の鉄のナイフが各指の間に挟まっていた。そのまま右手を振り下ろし俵屋目掛けて投げた。


「クソ!......“稲妻落とし”」


 迎撃する暇は無く、すぐさま体を金色に光らせ凄まじい速度で横に十メートル以上ずれ“火鳥弾”を避けた。


「“風の盾”......」


 落ち着いた声音で俵屋がそう言うと大袋から小さな風の渦が現れ、さらにそれは校庭の砂を巻き込みながら大きくなっていき、俵屋を中心に周囲二メートル程の竜巻へとなり、千影が投げたナイフは砂嵐に阻まれ、弾き飛ばされた。


 俺達の作戦はまずあいつらの攻撃を“龍動木”で防いだ後、俺と千影が神術で分断させる。その後は二対一の構図で一気に叩く!......ここからはどちらが先に倒れるかの勝負だ!


 翔琉阿と千影は退避した宗達を追うように走り出し、陽人と智樹は“風の盾”を睨み砂嵐で姿の見えない俵屋の出方を窺っている。


「お前ら! 俵屋は任せた!」


 翔琉阿が走りながら背後の二人に声を掛けた。


「そっちも宗達は任せたぞ!」


 智樹は振り返らず自信たっぷりに答えた。


「ほう......私達を分断し二人で一人を倒す、か。考えとしては悪くないが果たして私を倒す力がお前らにあるのか? たかが式神使いとさっきなったばかりの操者二人だけで......」


 低い声音で静かに俵屋は言った。焦りなどはその言葉からは感じず、むしろ余裕が感じ取れる。


「やってみなきゃ解んねーだろうが! “風の盾”の中にいるからって余裕こいてっとすぐに足元すくわれるぜ!」


 智樹は一歩踏み込んで負けじと反論した。


「なら見せてみろ、“断ちきる風刃”......」


 砂嵐の中から四対の“断ちきる風刃”が飛び出してきた。その全てが智樹へ一直線に向かっている。


「それはもう効かないのは解ってるぜ! “龍動木”!」


 智樹の足元から“龍動木”が現れ、向かってくる“断ちきる風刃”を押しのけ砂嵐へと向かって行く。


「無論。私も解っている......“風隠れ”──」


 俵屋が静かにそう言うと突風が吹いた。その風は智樹の横を過ぎ、智樹に悪寒が走った。


「お前は“龍動木”の発動中、完全に無防備であるとな。“断ちきる風刃”......」


 智樹のすぐ背後に、砂嵐が突如として出現した。さらに追い打ちをかけるためにどう足掻いても避けることは出来ないこの距離で一対放った。


「──“煙々羅”!」


 横にいる陽人が叫ぶと智樹は白い煙に押され、間一髪のところで“断ちきる風刃”を避け、地面に倒れた。


「小癪な......!」

「......ところでさっき言ったよな。余裕こいてると足元すくわれるってな!」


 地面に突っ伏したまま智樹は砂嵐の中にいる俵屋へ挑発的に言った。


「一回避けただけで何を言って──」

「“龍動木”!」


 砂嵐のすぐ近く、手を伸ばせば届く距離、さらに言えば“龍動木”が地面から生やせる範囲内で智樹は勝利を確信したように声を荒げた。すると竜巻の中から俵屋を咥えているる“龍動木”が現れ、砂嵐は消滅した。


「これで私を捕らえたつもりか! “風──」

「“煙々羅”お願いします!」


 俵屋が声を荒げて逃げようとするよりも先に陽人が声を荒げた。それと同時に“龍動木”が消えた。だが、それの代わりに人の顔位のサイズをした握りこぶしの形をした白い煙が空中で無防備な俵屋の腹にアッパーをかまし、俵屋は高く打ち上げられた。その衝撃で神器である大袋を手放した。


「っかは......!」


 俵屋はあまりの痛さに苦渋の表情を浮かべながら打ち上げられ、そのまま地面に落下した。


「......どうだ。俺達はつええだろ」


 智樹は立ち上がり倒れている俵屋に勝ち誇ったように言った。





「“火鳥弾”!」

「当たんねえぜえ! “穿つ雷撃”!」

「“創鉄像”!」


 翔琉阿が“火鳥弾”を放ち、それを宗達は“穿つ雷撃”で迎撃し、さらに余分に出した分で攻撃をし、翔琉阿の横にいる千影が“創鉄像”で鉄の壁を出してそれを防御する。先程からこれの繰り返しで翔琉阿達は近づけず宗達の消耗を持つしか無い状況にある。


「どうしたあ? そんなんじゃ俺は倒せないぜえ!」

「さあ、どうだろうな! “火鳥弾”!」

「さっきから何も変わってねえぞお! “穿つ雷撃”!」

「“創鉄像”!」


 決して宗達からは動かず翔琉阿が動いてから宗達も動く。これは余裕の表れだろうことは嫌でも解る。実際翔琉阿達の攻め手は“火鳥弾”しかないのに対し、宗達は翔琉阿達が少しでも隙を見せたら“稲妻落とし”で接近して“雷の矛”で蹴散らせば良く、防御と攻撃を同時に出来る“穿つ雷撃”があるため翔琉阿達は迂闊に動けないのである。さらに距離を放そうとしてもまさしくそれが隙となるため大きくは移動出来ず、常に“穿つ雷撃”の射程内にいる。


 どうすれば勝てる? “火鳥弾”は“穿つ雷撃”に当たって相殺されるし......いや、逆に当たらなければいいんじゃないか?......


「......千影、俺は今からあいつに“炎翼”で近づいて“火鳥弾”をあいつに確実に当てる。だからフォロー頼んだ」

「え? あんた何言って──」

「“炎翼”!」


 “炎翼”をはためかせ、宗達へ突っ込んだ。目標まであと十メートル、“炎翼”のスピードならものの数秒で行けるだろう。


「何だあ? 遂におかしくなったかあ? “穿つ雷撃”! これでおしまいだあ!」


 和太鼓を四回叩き、和太鼓から四対の“穿つ雷撃”が翔琉阿めがけて放たれた。


「誰が真正面から突撃するか、よ......!」


 翔琉阿は馬鹿にするように言い放ち“炎翼”を大きくはためかせ軌道を変え真上に飛んだ。それによりただ真っすぐ進んでいただけの“穿つ雷撃”を躱した。おおよそ残り四メートル。


「そういうことかあ! おもしれえ、落としてやるよお! “穿つ雷撃”」


 和太鼓を桴でリズミカルに叩き計十発の複雑な軌道で進む“穿つ雷撃”を放った。


「遅い」


 翔琉阿は体を上下左右、自由に翻し“穿つ雷撃”をものともせず空を駆けていく。


「ここだ!」


 宣言通り翔琉阿は宗達の目の前に近づき蹴りを繰り出そうと足を一旦畳んだ。


「ヒャッハー! 隙だらけだぜえ! “雷の矛”!」


 宗達が両手に持っている桴が雷を纏い、長い二本の矛へと姿を変えた。宗達は右手で握る眩く光るそれを蹴りのタイミングに合うように振り下ろした。


「──隙だらけなのはお前の方だ......! “火鳥弾”!」


 なんと翔琉阿は足を畳んだまま“炎翼”を前方にはためかせそれがブレーキとなり、“雷の矛”は空を切った。さらに一度地面に一度足をつけ踏み込んで右手を伸ばし、“火鳥弾”を放った。


「まだまだだぜえ! “稲妻落とし”!」


 宗達は金色に光って翔琉阿の上方十メートル程に移動し避けた。さらに左手に持っている“雷の矛”を突き刺そうと投げた。


「──“創鉄像”」


 “雷の矛”の矛先に鉄のナイフが当たり、その衝撃で狙いがずれ地面に突き刺さった。ナイフが投げられた方向を見ると千影が立っていた。


「フォロー、てこういうことでしょ」

「チッ! “稲妻落と──」

「このまま何もしねえ訳がねえだろ!」


 翔琉阿はすかさず“炎翼”をはためかせ真上にいる左手で宗達の襟元を掴み、引きずり落とした。急に掴まれたため神術を言い切れず、火球を手のひらに出した右手が近づいていく。


「まだだあ!」


 だが、そう簡単にはやられるはずもなく翔琉阿のタイミングに合わせるように“雷の矛”を振り下ろした。


「──“創鉄像”!」


 千影が宗達の左手に寸分も狂いもなくナイフを当てた。


「く......! うらああ!」


 苦渋の表情を浮かべながら左手に持った“雷の矛”を落としてしまう。しかしそれでも諦めず宗達は新しく右手に“雷の矛”を作り応戦しようとする。


「“火鳥弾!”」


 だが、“雷の矛”よりも先に翔琉阿の手のひらが宗達の腹に当たり、叫んだ。火花が激しく散り、宗達の腹部を神気の炎が焼いていく。だが服に焼けた痕などはついてらず、熱と衝撃が宗達を襲った。



「!......ぐはっ」


 “火鳥弾”の衝撃で飛ばされた宗達はそのまま地面に叩きつけられた。


「ありがとう千影。お前がいなかったら負けてた」

「......あんたこういう時はすぐ突っ込むの止めた方がいいわよ。空羽さんも言ってたでしょ」

「今回はお前が絶対に助けてくれると思ったから俺も安心して突っ込んだんだ」

「......そう」


 千影は急に声を小さくして俯きながら言った。


「まだ終わらないぜえ......」


 地面に突っ伏したまま今までとは打って変わって宗達が小さく言った。


「!......まだ動けるのか?」

「翔琉阿、気をつけて」


 二人は宗達を注視した。


「調子のんなよなあ!......“稲妻落とし”!」


 宗達が声を荒げると体が金色に光り、凄まじい速度で桴を回収した後、翔琉阿達を通り過ぎていった。


「あいつ、どこに!?」

「後ろよ!」


 二人は同時に振り向いた。そこには智樹と陽人とその二人の前で片膝をついている俵屋と俵屋に風神の神器である大袋を渡している宗達がいた。


「急げ千影!」

「解ってるわ!」


 二人は智樹達の方へ駆けていった。


「何だ? もう一回やるか? ......お! 翔琉阿に千影さん!」

「お二人とも良くご無事で」

「二人とも警戒しろ。こいつらはまだ諦めてないぞ」

「ええ。油断は禁物よ」


 四人はそれぞれ臨戦態勢となり同じく神器を構え臨戦態勢の俵屋と宗達に睨みを利かした。


「......お前ら、疑問には思わなかったのか? この学校を覆っている竜巻が神気暴走もせず一体どうやってできたのかを......」


 俵屋が大袋を翔琉阿達に向けて言った。


「てめえらに喰らわせてやるよお! 竜巻をなあ!」


 宗達は桴を握りしめた両手を上げ、高らかに言った。


「“火鳥弾”!」

「“龍動木”!」


 嫌な予感がし、翔琉阿と智樹は叫びながら決して俵屋と宗達からは目を離さずに“火鳥弾”と“龍動木”を一斉に放った。千影と陽人も同じことを感じ、じりじりと距離を取っていく。


「“断ちきる風刃”」

「“穿つ雷撃”」


 俵屋と宗達も一斉に“断ちきる風刃”と“穿つ雷撃”を放った。だがそれらは目の前の敵にでは無くお互いが引き合わされるように衝突した。


「「“荒れる暴風雷渦”!」」


 二人が同時に言うと衝突した“断ちきる風刃”と“穿つ雷撃”が渦を巻いていき、すぐさま巨大な竜巻へとなった。それは学校を全て覆っている竜巻よりも小さいが校舎と高さは同じであり風と雷はより早く、より強力なものとなっていた。“荒れる暴風雷渦”に“火鳥弾”と“龍動木”が激突したが全く歯が立たず一方的にはじき返された。


「お前らにこれが止められるのか、試してみろ......」

「もうおしまいだぜえ! てめえらはなあ!」


 勝ち誇ったように言う二人、それもそうだろう翔琉阿達の神術が一切効かなかったのを見ていたためどう抗っても“荒れる暴風雷渦”を止める術が無いのは一目瞭然だ。だが、これほどの神術。相当の神気を消費している筈であり、俵屋達も先の戦闘で満身創痍になっており、もう後が無い。


「なあ、あれどうやったら止めれるんだ?」

「そうね......」

「え、えと......」


 智樹がひきつった顔で言った。それを聞いて千影と陽人は答えが出せず頭を巡らせる。しかしいくら考えたところで答えは見つからず、ただ時間だけが過ぎていく。刻一刻と竜巻がゆっくりと逃げ場の無い獲物を仕留めようとにじり寄ってきていた。


「──お前ら、結局これはパワーくらべになるんだから悩んだって意味ないだろ」


 翔琉阿達も俵屋達と同じで激しく消耗しており精々あと一回、神術が撃てる位の神気しか残っておらず正真正銘、翔琉阿達の次の一手で確実に決着がつく状況に追い込まれていた。


「そうは言ってもあんなの私達の神器で勝てないわよ?」

「一つだけ考えがある......俺達もあいつらみたいに神術と神術を合わせてあれを突破するんだ」

「あんなすげえの俺達に出来るのかよ?」

「いや、流石にあれと同等の攻撃力を出すのは無理だ。だが、あの竜巻の中を突き抜ける程の防御力ならどうにか出せる筈だ」


 翔琉阿は上手くいけばこの状況を打破できる策をみんなに伝えた。全員、それを聞いて覚悟を決め、“荒れる暴風雷渦”に体を向けた。全員真剣な表情だ。


「お喋りはすんだかあ? じゃあ死ねえ!」


 宗達が声を荒げると急に“荒れる暴風雷渦”のスピードが上がり翔琉阿達を呑み込もうとする。


「“龍動木”! 翔琉阿!」

「“炎翼”!」


 智樹が同時に声を荒げた。すると地面から口を開けた“龍動木”が竜巻めがけて生えていった。そして口の中に翔琉阿が飛び乗った。


「“創鉄像”! 翔琉阿頼んだわよ」

「おう!」


 次に千影が“龍動木”に手を当て声を荒げた。すると“龍動木”の口の中に翔琉阿を囲むように鉄の球体が現れ、“龍動木”がそれに噛みつきがっしり固定した。


「“煙々羅”!」


 さらに“龍動木”の周りを白い煙が覆い、衝撃から守ってくれている。

 全ての力を合わせた“龍動木”が翔琉阿と共に“荒れる暴風雷渦”と真正面から向かって行く。


「持ち堪えてくれ!」

「いけえええ! “煙々羅”!」


 真っ暗な鉄球の中で翔琉阿は願った。その後ろでその光景を眺めている陽人も思いの限り声を荒げた。すると“龍動木”を覆っていた“煙々羅”はより色濃くなりただの白いもやが純白の鎧へと変化した。それと同時に“龍動木”は凄まじい衝撃と共に“荒れる暴風雷渦”に衝突し......中に入って行った。翔琉阿は体を揺らすが鉄球が固定されているためそこまで衝撃は中まで来ない。


 “煙々羅”の形を自由に変えれる特性のおかげで竜巻の中に入ることは出来た......! 後は“龍動木”がどこまで持つかだ!


 竜巻の中、“龍動木”は雷と風に打たれ、“煙々羅”は徐々に剥がれていき、大量の切り傷や焼け痕をつけながらも決して止まらず進み続けた。この結果は先程までの“龍動木”ではありえなかっただろう。それもきっと仲間の協力が、絶体絶命のこの状況が“龍動木”を、智樹をさらに強くしたのだろう。


「......いったぞ!」

「馬鹿な......」

「ありえねえだろお!?」


 なんとぼろぼろになりながらも遂に“龍動木”が竜巻を通り抜けた。そのことを振動が収まったことで翔琉阿は感じ取り、予想外の出来事に俵屋と宗達は声を漏らした。そして竜巻の中を抜け出した“龍動木”だがもう耐えきれず、解かれていき咥えていた鉄球だけが空中で取り残された。


『嬢ちゃん、今だぜ』

「わかったわ」


 青龍が陽気な声で言い、それに反応して千影はつけている白虎の神器である指輪を外した。


「完璧だ。“炎翼”」


 ここからは俺が決める!


 千影が神器を外したタイミングで鉄球が消滅し、中から“炎翼”を生やした翔琉阿が全速力で俵屋達の下へ飛び出した。“創鉄像”で作り出した物は神器の解除と共に消える性質を生かした、完璧な不意打ちだ。


「“風の──」

「“火鳥弾”!」

「ぐあ......!」


 俵屋が言い切るよりも先に翔琉阿が懐まで急接近し、“火鳥弾”を腹に当てた。俵屋は吹き飛ばされた。


「“雷の矛”!」


 すぐ横にいた宗達が右手を振り下ろし、翔琉阿をやろうとする。だが、それは翔琉阿に当たらず白い煙に阻まれた。


「“煙々羅”は切り離しも自由自在だ!」

「うらああ!」


 防がれた右手を下げ、叫びながら次に左手を振り下ろした。


「──“火鳥弾”!」

「クッソがあ!」


 最後の神気を振り絞りまたもや右手を宗達の腹へ“火鳥弾”を放った。宗達は俵屋の横へ吹き飛ばされた。


「お前らはもう終わりだ」


 翔琉阿は満身創痍の体に鞭を打ち、一歩踏み出して俵屋と宗達を睨んだ。


「今回は私達の負けだ。だが次は勝つ......“風隠れ”」

「待て!」


 俵屋と宗達は突風と共にどこかへ消えていった。それと同時に竜巻は晴れ、暗かった校庭に日が差す。


「翔琉阿! 俺達勝ったな!」

「いや、逃げられた......」


 翔琉阿は下を向いて悔しそうに言った。


「生き残れたんだから今回は私達の勝ちよ」

「次会った時はまた僕達で倒しましょう!」


 今回の結果を称えあうように全員笑顔で本当に嬉しそうに言った。


「ああ。そうだな」


 翔琉阿は顔を上げ笑顔で言った。命がけの勝負を制した翔琉阿達はきっと前よりも遥かに強くなっただろう。

11話「決着は照らされて」を読んでくださり本当にありがとうございます!

今回はとても長い戦闘で、書くのもとても疲れました!でもその分書くのはめっちゃ楽しかったので満足です!

あと最後が何か終わり感出てますけど全然物語は続くので今後も読んでくださると嬉しいです!


ついで感覚で「いいね」、「感想」くださるとモチベーション向上に繋がるので出来れば是非~

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