プロローグ
アルファーナ王国
世界で一番大きい大陸の中央に位置するこの国はこの世界の中心の国といえるだろう。
今日はその建国記念日。
私、シャルロッテ・ドラキュリアは一人でワインを口にしながら佇んでいた。周りに特に人はいない。まぁ…遠くから私の様子を伺ってる人達は見かけるけど。
実際、私に声をかけようとする人には大抵他の人間が止める。
「おい、辞めとけ。彼女はあの吸血令嬢だ」
「え、あ、あの?」
貴族であるなら・・・いや、王国民であるなら、彼らの反応は正常だ。
ドラキュリア侯爵家。
うちの家は建国から続く家系であり、その祖は吸血鬼。この国の建国に力を貸した3人の英傑の一人であった彼女の力は代々受け継がれており、とくに女性はその力が強く出やすい。
『ドラキュリア侯爵家には近寄るな』
『近寄れば呪いを受けるぞ、血を吸われるぞ』
この噂は貴族のみならず、平民の間でも有名。その影響で、今日のようなパーティーでは私の周りには常に人がいない。
「本来なら、お茶会やパーティーへの出席は辞退するのだけれどね」
今日は別。建国記念ということもあって、王国中の貴族が参加している。何より王家直々の招待状を断るわけにはいかない。
そんな私に一人の男が近づき声をかける。
「やあ!シャルロッテ。今日も美しいね」
「あら、カトレス様。貴方様こそ、いつものように勇ましいオーラを放っていますわ」
「そんな硬い口調は止めてくれ。君と僕の仲じゃないか。僕らの会話に聞き耳を立てるような輩は周りにいないようだし」
彼はこの国の第二王子、カトレス・アルファーナ。
私の婚約者である。