親と子と自分と周り
「マリンさんこの手紙を私のお父様に渡してもらえませんか」
決闘から二時間が経過した。レムスタンの騎士はこの場からは撤退し次へ向かう準備をしていた。
「それは良いのですが直接会いに行かないのですか」
「もちろん行く予定ですがつくのには時間がかかるので要件を先に伝えておきたくて」
「なるほど任せてください。私の力にかかれば三日でガルム州に届けましょう」
「ありがとうございます」
「いえ私のせいでこんな事になってしまったので何かあれば何でも言ってください」
「気にしなくていいですよ」
私のせいですからと喉まで出かけてやめた。こんな事を言ったてマリンさんは何も納得しないだろうから。
だから私は彼女に甘えることにした。頼れる人もそう多くないのだし
「マリンさん幸せになってくださいね」
「はい」
それから一ヶ月経った頃ナンバーワンギルド嬢であるマリンが引退したことはあちらこちらでプチニュースとなった。一方私とリオンは依然として指名手配犯としてそこら中に魔法で描かれた本物そっくりの似顔絵が張られていた。そのため馬車に乗ることができず、自分たちで買うしかなくなった。私達の評判はルビンたちが成果を上げれば上げるほど下がりその度に学生時代の友人を語る顔も知らない誰かが私達をこんな風に言う。彼女たちは自分より弱い人達を馬鹿にしていた。だからいつも二人でミッションをこなしていたと。時にはいじめられていたとか学園にお金を不正に払っていただの見に覚えのないことを言われる日々だった。そこから二ヶ月経つ間にリオンは変身の魔法を習得して無事にガルム州に行けるようになった。
馬車を走らせること十分私の家が見えてきた。そこにはお父様が私の出した手紙を握りしめて立ってガルム州の騎士がお父様をなだめていた
「アルスどういうことだ」
お父様の声は完全に怒っていた。それはそうだ。ただでさえ家を出て冒険者になったのにその上勇者となったルビンを追放して私は追われるものとなった。確実に家族に迷惑をかけている。それに私はルーカス家公爵の貴族だ。政治的側面から見ても信頼から見てもマイナスでしかない。
「ごめんなさい。だから私と縁をきってそのためのてが、、、」
パチンとなって頬が痛む。驚いて顔を見上げるとお父様が更に怒りをあらわにして胸ぐらをつかむ。
「お前は私をなんだと思っているんだ。親だぞ怒っているのはこんな手紙をよこしたことだ」
お父様の顔を見ると瞳から涙が溢れ落ちていた。初めて見た。私はこんなに優しい人を泣かせてしまったんだ。罪悪感が胸をチクリと傷ませる。
「私はどんな事があってもお前と家族の縁を切るつもりはない」
「ご、めんなさい……お父様」
「家に上がってくれ話を聞きたい。すまないねリオンさんもお見苦しい姿を見せて」
「気にしないでください」
ルーカス家は商業で成り上がった家系で現在は私の父であるレオン・ルーカスが地主それを次ぐことになっているのが私の兄カムイ・ルーカス。本来なら私はどこかの貴族に嫁いで力を強めるのが一般的だがお父様は好きな道を選ばせてくれた。それは普通ではないと周りの貴族からは批判されたがお父様はいっさい気にしなかった。家にはいるとすぐに防音された部屋にいって何があったのかを話した。お父様はそれを聞いてただ一言そうかと言って目の前で手紙を破り捨てた。
「アルスお前のやったことは間違いだ」
「はい……」
「でもなお父さんはそれだけのことで縁を切るような薄情な父だと思われてたことのほうが悲しい」
「それはお父様のことを考えて」
「ならもう二度とこんな事は言うな。それとなお前はこれから考えないといけない。自分の野望を叶える方法とどうやって名誉を挽回するか」
「はい!」
「しばらくはここにいるだろ。それまでに自分の進む道を決めなさい。私は少し休む部屋は昔のままになっているからそこを使いなさい。リオンさんの部屋はメイドのルシアに聞いてくれ」
お父様は部屋を先に出ていってそれと入れ替わりでルシアが入ってくる。
「お久しぶりです。アルスお嬢様」
「久しぶりルシア。お父様は大丈夫ですか体調が少し悪そうでしたが」
「気づいてましたか。旦那様はお嬢様が来るまでずっと話題を沈めたり貴族たちからの追求にずっと対応なされておりましたから。特にここ数ヶ月はお嬢様が来るまで毎日外で手紙を握りしめていました。手紙をもらった瞬間は本当に喜んでいたのに読んだ瞬間怒りをあらわにしていてびっくりしましたよ」
「そうだったのか」
「アルスのお父さんは本当にいい人だね」
知らなかった。私が物心ついた時にはお父様はいつも忙しそうにしていたから。特にお母様が亡くなってからはよりいっそう仕事に力を入れた。それでも何かのイベントには必ず一緒にいてくれた。でもそれはご機嫌を取っているだけだと思ってた。学校に行きたいといったのは迷惑をかけないことが理由の一つだったから。お父様が私のことをそんなに考えたなんて。部屋に戻って考えた。私にできることは何か。野望を成し得るために何が必要か。そして結論を出した。
「リオン決めたよ」
「いいよ。ついてく」
「まだ何も言ってない」
「最初からずっと言ってるじゃんついてくって」
そうだったな。私は自分のことで手一杯だから周りを見られていなかった。
だから今度は私じゃない誰かに夢を託す。暗い夜が明けた頃にはもうこの街を出た。こっからは長い旅になる。お父様に今度は感謝の手紙を置いて馬車を走らせた。次に行くのはレムスタンだ。