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この感情の名前は

がちゃ、がちゃ

統率の取れた鎧の音が街中で聞こえる。逃げ遅れた。マークされていないと思っていたこの街にこの量の騎士私達を潰しに来ているのだろう。路地を抜けても抜けても必ず騎士がいる。逃げるのはもう無理だろうな

これは私の追うべき責任なのかもしれない。私がせめて誇り高き冒険者であるために


「リオン私はルビンに合う」

「ついていくよ」

「死なない程度に殺されてこようか」


そんな時だった。街中にアナウンスが流れる。


「アルス・ルーカスにつぐ僕はギルドで待つあなたならきっと来るでしょう。それまではレムスタンの騎士は街を出る入り口に待機してください」


これは都合がいい。ギルドに向かうとマリンさんとルビンそして勇者パーティーだと思われる女性二人と男性一人が後ろで待機している。


「やはり来てくれましたか。僕と決闘をしてください」

「承諾しよう」

「アレが女性冒険者最強のアルス・ルーカスか……可愛くね」

「何を言ってんのあんたはうちのリーダーを追放したやつやろ」

「それはそれこれはこれでしょ」


後ろで待機しているルビンのパーティーの会話が聞こえてくる。勇者のイメージとは少し違う。彼らは実力で選ばれたメンバーなのだろう。ふざけている男もすご腕だということが経験からひしひしと伝わってくる

ルビン一行に連れられてきたのは広い広場だった。周りをレムスタンの騎士で囲われた簡易的な闘技場が用意されていた。スタン州の決闘は主に二種類ある。一つは一対一で戦う代表戦。もう一つは複数人で戦う形式あとはそれぞれが作ったルールに任せられる。私とルビンの決闘は前者でどちらかが負けを認めるまでもしくは戦闘不能になるまでそれ以外は何をしても良い。はたしてこの決闘をレムスタンは認めているのか……今回のでは私を終わらせることはできない。


「では始めましょうか」

「ああ」


ルビンはバフの天才だ。どうやって戦うのか私にはわからない。しかし、彼の自信はそこではないと思う。

この二ヶ月で何か変わったのだろうか。いやそんなことで変わらないやることは一つだ。


「ここにレムスタンの騎士ザガルトが決闘の成立の承認する。では開始!!!!」


一つの部隊の隊長として有名なザガルトがこの決闘を見届けるその意味は大きい。覆すことのできないほど正式なものだ。私としてはザガルトとも手合わせをしてみたいと思う。

ルビンが杖を取り出す。胸の前に持ってきて魔法を口にする。


「超バフー全能」


ルビンの体が光る。赤、青、緑、黄、黒、様々な色が包む。全能……初めて聞いたバフだ。それに気づかなかったがルビンの腰に短剣を携えられている。光が収まるとルビンが一歩前に足を出す。刹那ルビンが私の間合いに入る。肩から腹部にかけて短剣が斜めにはいる。ルビンは体を捻って腹に回し蹴りをくらわせる。

何だこの速さとパワー私の知るルビンとは格が違う。防具のおかげで血は出なかったもののこれを後何回受けるのだろうか。私は剣を地面に刺して仁王立ちする。


「なんのつもりですか」

「私の覚悟だ」

「殺しますよ」


ルビンは容赦なく全力で剣を振り、足で蹴り、デバフを私にかけて何度も叫んで攻撃する。防具が傷つき役割を果たせなくなってそれでも攻撃は続く。剣が肌を切り、血が流れ出る。それでも私はその場で立つ。

声を決して出したりしない。歯を食いしばっている口の中が鉄の味でいっぱいになる。


「戦ってください!!!!なんのためにあなたは決闘を受けたんですか。あなたの冒険者としての誇りはどこへいったんですか。あなたは私を追放したんだから強くあってくださいよ」

「……」


すまない。ルビンが私に抱いていた尊敬の念を知っていた。憧れられていたことを知っていた。私に失望してもそれでもどこかで信じていたことを知った。しかし、今の私にはその尊敬に応えることはできない。私は負けることも勝つこともできない。そうでなければ私の野望は叶えられない。


「そんな……」


彼の目が確実に変わった。私は彼の最後の願いを断った。

今まで以上に彼は攻撃を叩き込んだ。失望をぶつけた。剣が腹を深く突き刺した。体が熱い。視界がぼやけ始める。ルビンの吐く罵詈雑言が右から左へ流れていく。この光景は他の人から見たら一方的な虐殺に写っているのだろうな。


「おいおいこれはまずくないか」

「ルビンどうしたんやのいつもは冷静やのに」

「あれは勇者じゃないです」

「知らなかったのかお前らルビンにとってアルス・ルーカスがどんな存在か」

「恨むべき相手やないんか」

「浅いな……そんな単純なものじゃない」


周りがざわざわとしてきた。想定していた形とはまるで違った状況に。


「ルビンもうやめろ!」


パーティーメンバーの言葉に動きが止まる。


「お前はもうただのルビンではない勇者ルビンだ。戦い方を考えろ」

「降参します……」

「ルビンの降参によりアルス・ルーカスの勝利」


ザガルドが終了を告げる。リオンがそれと同時に回復魔法を唱える。傷口が塞がる。

ルビンは私を蔑む目で睨んだ。今まで私に抱いていプラスの分が一気にマイナスの気持ちで向けられる。

体震える。恐怖ではなく他の何かによって

ザガルドが近づいてくる。静かに重々しく。


「うまくやったな。この勝負負けても勝ってもお前に希望はなかったがこの方法なら誰も今日のことを話せない。だが、お前は一人の重要な存在の信頼を失った。のちのち後悔をすることになったな」


そんなことはとっくにわかっている。


「お前おかしな顔をしているな。まあいいこれはレムスタンの騎士ではなくただのザガルドとして言うお前をレムスタンは諦めないだろう。今回のことはなかったことにしてお前は結局悪名高い女冒険者にすぎない忘れるな。この国でお前の野望が叶うことはない」


その瞬間に引き戻された。私はアルス・ルーカスだということを


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