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追求としわ寄せ

馬車に揺られて一ヶ月がたった。ようやくマリンさんのいるスタン州が見えてきた。

馬車を動かすおじさんが感慨深そうに言う。


「もうそろそろ二ヶ月の旅も終わりですな」

「助かりました。あなたのおかげで早くから出発できてこうやって帰ってこられています。報酬はギルドで支払います」

「いいよお金は。あんまり大きな声では言えないが俺は二人を応援してんだせ。あんたらが認められてくれたら俺の娘の選択肢も増えるしさこの国ももっと良くなると思うからさ」

「任せてください。うちのアルスが成し遂げますから」

「それは頼もしいな」


こうやって応援してくれる人がいることは本当に心の支えになる。最近はこう言いったことを言ってくれる人は雰囲気的にも言えないから行ってくれる人は少ないから余計にそう思う。いつか必ず期待に応えられる日がくることを願っている

この馬車の荷台はベージュ色の布が張られていて中が見えないようになっている。


「なんだか門の前に行列ができていないか?」

「何か事件でもあったのでしょうか」


なんだか胸騒ぎがするな。ここ数年こんな光景見たことない。時間が少しできたから荷台に乗せられた荷物を整理していつでも出られる準備をする。しばらくすると前で何が起きているのか見えてくる。レムスタンの騎士が荷物検査のようなことをしている。


「どうして国の騎士がスタン州の門で荷物検査してるんだろう」

「確かにこの街にも騎士はいるのに」


スタン州を収める公爵家には騎士団がある。そもそも国から作るように命令されている。レムスタンだけでは人手もお金もかかりすぎるからだ。その代わり国直属ではないため国の命令を聞く必要はなくスタン州の公爵が管理をしている。ようやく前の人が検査を受ける順番になって会話が聞こえるようになった。


「おい、荷台の荷物を見せろ……いないな……お前アルス・ルーカスとリオンの所在を知らないか」


突然発せられた自分の名前に目を開いてリオンと顔を合わせる。前で行われている会話に耳を傾けるとおじさんも何かを察したのか静かに馬車を近づける。


「どうしたんお国の騎士サマがこんなところにわざわざとうとう女の英雄であるアルス・ルーカスをスカウトでもしに来たのか」


煽るように馬車の主人が言うと若干二十歳の青年騎士は鼻で笑って答える。


「なんの冗談だ。英雄?あいつは性悪女だろ。我が国の勇者ルビン様を無能と追放した見る目のない英雄気取りの蛮勇だ」

「けっもう通っていいか」

「ああ」


聞こえてきた英雄とルビンそして追放から最悪の結果が連想される。体が急速に冷え込んで嫌な汗が出てくる。あぁこれで私の野望が叶うことはなくなったのか。今やってきた善良も成果も評価せれることはなかったのにたった一度の浅はかな行いで全てが無駄になる。きっとレムスタンは私を捕まえて見せしめに処刑するのだ。我らが勇者様を追放した悪魔としてこれだから女はダメだとそうやって。私と同じ野望を持つものに知らしめるのだこうなりたくなかったら女らしくしろと声高らかにそういうのだ。今までやってきたことは何だったのだろうかどうして一度の過ちで全てを取り上げられてしまうのだ。私は膝から崩れ落ちる。


「アルスさん!アルスさん!リオンさん!リオンさん!」


おじさんの声にようやく気がついて顔を上げる。隣で同じ反応をしていたであろうリオンと目が合う。


「後ろか逃げてください。俺は二人を信じる。だから速く!」

「おい、早くしろ次はお前の番だぞ」

「悪いね荷物の整理をしてたんだ」


幸いいつでも出られる準備をしていたためすぐに後ろから逃げ出せた。私は捕まるわけにはいかない。私が捕まることは私と同じ野望を持つものまで終わらせてしまう。私がたとえ無理だったとしても他の人が成しえてくれれが良いのだから。スタン州の中に入るには門を通る必要があるため駆け抜けた。門には荷物を確認する人の他に二人の若い騎士が立っていた。これはバレたな。


「おい、待て!お前らは……今すぐ騎士団に連絡しろアルス・ルーカスとリオンがいるぞ」


後ろから聞こえた声を背に向けて街の中を走る。二人の棋士は私達を追いかける。リオンにギルドで落ち合うことを耳打ちして路地で二手に分かれる。数分走った頃には巻いたようで後ろには騎士はいない。逃げる途中街の様子を見ていたが雰囲気が二極化していた。私達を応援していた者たちは何か動きをすることはなくいつもどおりに生活していた一方で女性の活躍に反対している者は旗を掲げて冒険者資格の剥奪を掲げて運動している。ハチマキをしたり旗を掲げているおかげで避けて行動することができたが人が多いせいで動きづらい。それにギルドの周りは運動をしている人たちでごった返してギルドが対応に追われている。

とりあえずリオンと落ち合うと作戦を立てる。私が囮になって逃げその間に真玉のルビーを届ける。

3,2,1の合図で走り出すと予想通り運動をしていた人たちが声を荒らげて追いかけてくる。


「アルスさん⁉」


驚いた様子のマリンさんにウインクをして追いかける人たちから逃げる。

人が多くて巻くのが大変だったがなんとかまくことができた。しかしその頃には街にレムスタンの騎士が増えていた。ギルド付近に戻りリオンと合う。


「渡せたよ」

「良かった喜んでた?」

「うん。すごい喜んでたでも謝ってもいたよ。こんなことになるとは思わなかったルビンさんの推薦をもっと考えるべきだったって」

「気にしなくて良いのに」

「私もそう言った。これからどうする」

「とりあえず両親に手紙を書く」

「あぁそっかアルスはアレだもんね」

「冒険者資格は剥奪だろうな」

「ギルドは国の直属機関だもんね。きっとこう言うよ市民がこんなにも望むなら仕方ないって」

「手紙を書いたら遠くの街に行こう。」

「レムスタンじゃない国に」

「ううん。私は野望を成し得られるように考える。リオンは好きにしていいよ」

「ならついていくよ」


私達の元気はあからさまになくなっていた。追われるものになれば家族に迷惑をかけてしまう。

それに野望はもう不可能に近いことを理解した。

これから先どうしていけば良いのか何も思いつかなくなってしまった。

やるせなさが体を重くするのに動かないと捕まってしまうから私達はゆっくりと動き出した





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