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追放生活の始まり

悪名高い女に私、アルス・ルーカスは落ちた。

エリートだった。試験学校を主席で卒業した後も冒険者として有名になるために数々のモンスターや魔物を討伐してきた。それでも私は女だった。どれだけ成果を上げて名を広めても決して認められることはなかった。それどころか表立って名前を言うことさえ良くないことという暗黙のルールができていた。世間が認めても国からは決して認められない。「あぁ……もうなんのために頑張ってきたんだ」そんなことを声に出したらピンと張っていた思考はプツリと切れてしまった。それが行動となって現れたのは翌日の定例会議だった。


「ルビンお前もう私のパーティーにはいらない」

「そんな…アルスさん待ってください。どうしてですか」

「お前が使えないからだよ。お前が強くないから私は認められないんだ」


ルビンはただ私を見つめて開いた口が塞がらなくなっていた。それは絶望よりも失望に似たものだった。僕の力をまるで理解していないとでも言いたげな。いや、あなたならわかってくれていると思っただったかもしれない。私は彼をおいて自室に戻る。


私のパーティーは私と試験学校からの親友リオンとルビンの三人でルビンは唯一の男でバフ能力に優れているものだった。筋力増量、魔力増量、自己修復能力増量、素早さ増進などなど、私が見てきた中でもっとも付与能力が高いやつだった。追放なんて本当はする必要がなかった。パーティーにとって確実にマイナスになる。けれども、彼は男だ。このパーティーにいれば彼の才能はただの冒険者にとどまってしまう。特に今は力か魔力量で判断されてしまう。そんなのはもったいない。私は彼が礎になってくれると思っている。

違うな。私の嫉妬だ。どれだけ正当化したとこで彼が男だっらから私は当たった。


「アルスどうしたルビンを追放するなんて」

「……」

「長い付き合いだからさ見てればわかるよ。最近は何をしてもうまく行かないもんね」

「うぅ……」

「いいよ。気にしなくて私はアルスの味方だから」


罪悪感と気を張っていた心がいりじまった複雑な感情をリオンが胸で受け止めてくれた。彼女だけには自分の弱さを見せられる。否定も肯定もしないで受け止めてくれるから強くいられる。


「今日もギルドに行こうか」


***


「あ、こんにちはアルスさん、リオンさん」

「こんにちはマリンさん」


優しい声で評判のギルド嬢マリンさんが忙しなく働いているなか動きを止めて挨拶してくれる。彼女は売上一位の敏腕の仕事人で丁寧な接客と実力主義の考えから私達のような女性冒険者からの人気が高い。さらに恵まれた容姿と美貌から男性からも人気が高い。私みたいな脳筋とは大違いだ。


「今日はルビンさんはいないのですか」

「色々とあってね」

「そうですか、そうだ!実はですねマルスさんにお話がありましてここではあれなので奥の応接室に来てください」


まだ午前中だというのにギルド内は冒険者達が酒を飲んだり依頼を見たりと盛況のようだ。その事を気にしてなのかそれとも聞かれたくない話なのかわからないがどうやら重要な話らしい。

応接室の中はギルド内とは違って木造建築ではなく分厚いコンクリートで作られていて中にはテーブルと椅子だけが置かれている。聞いたところによると防音対策と盗聴対策のために国が支給した魔具がコンクリート内に埋め込まれているとか。なんだか緊張する。


「どうぞお二人共座ってください」


私達が座ったときにはもう彼女の顔は接客で見せる優しい顔ではなく仕事人としての奥底が読めない顔をしていた。


「お二人は魔王が生まれたことをご存知ですか」

「「魔王⁉」」

「その様子ですと知らないみたいですね」


魔王が生まれるなんてここ何百年なかった。災いをもたらす魔王であるがその実呪われた人間である。

この話の起源は最悪の騎士から始まっている。

ある時その騎士は最強であった。

ある時その騎士は敗北をきたした。

ある時その騎士は力を欲した。

ある時その騎士は禁忌の契約をした。

ある時その騎士は膨大な力を手に入れた。

ある時その騎士は勝利と引き換えに世界から嫌われた。

ある時その騎士は死んだ。

ある時その騎士は世界を呪い生物を魔物に変えとある人間を魔王にした。

その呪いは今も続いている。だからこうして私達冒険者という職業ができた。そして魔王が誕生するようになった。


「ということは魔王の討伐ですか」

「いくらなんでもそんなことは頼めません。ただ、アルスさんの野望に大きく近づく話があります」

「聞かせてください」

「今度、魔王を討伐する勇者のパーティーを結成することが我が国レムスタンで決まりました。そのパーティーの選出を各ギルドで一人推薦することになりまして良ければアルスさんを推薦しようと考えています。」

「一人ですか……」

「本来ならそうですが私にかかれば三人くらいどうにかしますよ。アルスさん達を応援してますから」

「でも、三人推薦させるのは大変ですよね」

「だから、お願いがあります。ミカル海にある真玉のルビーを取ってきてもらえませんか」


ミカル海には凶悪な魔物が多い上に真玉のルビーは海の中にある洞窟でしか取ることのできない鉱石。なるほど確かに条件としては対等かもしれない。でも、あまりにも流通が悪いせいで相当なつてのある商人でもなければ手に余ってしまう代物だ。ギルド嬢であるマリンさんには必要なものとは思えないな。私が考えてることを見かねてマリンさんが口を開く。


「実はですね、私結婚するんですよ。小さい頃に一度だけ実物を見たことがありましてその時に結婚する時につける指輪は宝石を真玉のルビーにするって決めてたんですよ。」


その表情は今まで見てきた接客の顔でも仕事人の顔でもなく、一人の若い女性の顔だった。

この人の旦那さんは幸せものだな。こんなに可愛くてきれいな人はそうそういない。

私が捨てた道を選んでいる彼女を少し羨ましく思う。どうか幸せになってほしいと心からそう願う。


「わかりました。その依頼引き受けます。ただ、私はその推薦を受けることはできないです。なのでルビンを推薦してください」

「どうしてですか」

「私、ルビンを追放したんです。彼が男だったからって理由なのに弱いからって追放してそんなことしたやつが勇者のパーティーなんてふさわしくない。世界が認めない。それにルビンは優秀だが評価されにくいこういった機会がなければ難しい。」

「そんなことが……ではわかりましたルビンさんを推薦しますね」

「それとこの話はルビンには内緒にしてください」

「はい。もちろんです」


これが私の初めて追放した日。ある意味ではこの街をそうそうに出てミカル海に向かったのは正解だった。

想像以上に物事は早く進みルビンの恨みは根深かった。

















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