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1 それを言っちゃあおしまいよ

貧乏貴族の三男坊。王子の取り巻きになれて「これで将来も安心だね♪」と思っていたら、バカ王子が婚約破棄したいとか言い出しました。婚約破棄なんかしたら、オートで不幸へ一直線。本人だけならいいけれど、取り巻きの俺ももれなく不幸になること確定。未来のためにも即刻王子から逃げなければ!


という感じのお話です。題名のまんまです。R15なのは用心のため。


全四話で完結です。


誤字脱字を指摘してくださった多くの方々に感謝です。



 俺は貴族! といっても男爵家の3男坊だけどな!


 そんで今は、学園に通ってて、王子の13人いる取り巻きの一番ペーペーを務めさせていただいてます!


 うちらの王子は世界一! この王子が王になれば俺の未来も御安泰!

 バカだけど王子は王子。戦乱の世なら間違いなく亡国の王子とか周りに言われてるけど問題なし!

 周りにそんなこと言われてることさえ気づかないバカだし!



 青い空に白い雲が流れていく。世界は光に満ちている。

 学園付きのメイドさん達がいれてくれる紅茶は極上だし、王家御用達のクッキーはうんまい。


 それもこれもみんな王子の取り巻きの端っこに入れたからこそ!


 学園の中庭で一番日当たりがいい場所を独占して、優雅でハイソなティータイムなんてしゃれこめるわけだ。


 顔がいいだけのバカだけど、肝心なのは王子だってこと!


 王子万歳!



「側室の件を話したら……あの子が泣いてしまったんだ」


 遠くでバカがなんか言ってるが、同意以外求めてないのは判ってるんでうなずいておく。

 阿諛追従は近くにいるバカがやってくれるんで、こっちは何も言わんでいいからさらに楽。

 褒めるところがないのを褒めるのって一種の才能だと思うし。


 がんばってくれよ、お気に入りのおとり巻きのみなさん!


「その涙に目が覚めたよ……ボクは間違っていた。真実の愛をこちらの都合にあわせようなんて!」


 ん? しんじつのあい とか今、聞こえませんでしたか?


 いや気のせい気のせい。きっと気のせいだろう。


 こんなうららかな午後のひとときに、そんな不穏な言葉があっていいわけない。


「だからボクは、あの高慢ちきで身分をわきまえないあいつと婚約破棄して、野にひっそり咲くうつくしい花のようなあの子を妃にするんだ」


 俺は思わず、紅茶を噴いてしまった。


「ごほごほ」


「殿下! それは素晴らしいお考えでブヒ! 感服いたしましたブヒ! 私も婚約者殿の態度には眉をひそめておりましたブヒ」


 豚、いやデブ、いや大臣の息子がなんかほざいてくれたんで、俺の無作法はごまかされたが、まずいだろこれは!


 『真実の愛』あーんど『婚約破棄』と続いたら最悪でしょ!


 とりあえず何でも褒めるのは取り巻きとして必須だけど、国一番の大貴族の娘との婚約を破棄するってのがどういうことか判っていないのか!?


 だが、バカ王子にふさわしバカ取り巻きどもは、その決断を口々にほめそやす。


 もちろん俺もあわてて続いたけどな。ナントスバラシイオカンガエってな!


「皆もそう思うだろう! あの女、ことあるごとにボクの欠点をあげつらい、なにかとぐちぐちと言う。嫌みで心の狭い女だ」


「私も常々、あの女、殿下に対して不敬だと思っておりましたブヒ」


 デブいや大臣の息子がモミ手もみもみ言うと、またもみんなが続く。


 いやいや、バカをバカと言ってくれる人って貴重ですよ? あれはあげつらってるんじゃなくて、忠告でしょ?

 あの歳で威風堂々としてて、万事そつがなくすきがない。既に婚約者の段階で責任をがっしり背負ってる。あの人のどこに文句が?


 まぁ俺も大臣のバカ息子に続いたけど。ソウデゴザイマスネって。


 だってさ。デブと騎士団長の息子以外ふけばとぶよな次男坊三男坊だらけの取り巻きの中でも、さらに家格が一番低い俺にほかにどうしろと?


 本当は「お前らバカか」と言いたかったよ。巻き込まないでくれよ!


「それに比べて彼女は、ボクのことをよくわかってくれている。彼女こそが未来の王妃にふさわしい」


 いやいや。いやいやいや! ふさわしいわけがないだろう!


 あの小娘は、たしかにかわいい。


 くりくりとカールした金髪も、大きい青い目も、実は礼儀知らずなだけなんだろう疑惑のある天真爛漫さも、見てる分にはな。

 だが、頭の中身はいただけない。王子と結婚すれば妃になれると思い込める程度のバカだ。


 王子に媚び媚びに向ける目にはお金お金お金の文字が見えます見えます。


 俺だって金になるんなら、そりゃほめまくりますし靴だってなめますよ! 今だって取り巻きのひとりとして褒めてますしね!


 だけど、側室で満足しておけよ側室で!


 町で毎週上演してる類いの、身分違いの恋からのハッピーエンドとかないんだから!

 周りじゅうが面倒なことになるんだから!

 特に婚約破棄を言い出したほうの側は、てっぺんから末端までまるっとアンハッピーエンドだから!


 大王の幼なじみに婚約破棄を突きつけた王子がどうなったかくらい知ってるだろう……まぁ都合よく忘れてるんだろうけどな。


「ですが殿下。婚約者殿は国一番の名家にして筆頭貴族の娘ですぞ。理由もなく婚約破棄をする訳にはいきますまい」


 出た! 良識に満ちた尊みある発言でたよ!

 さすがは騎士団長の長男! 王子の幼なじみ! 取り巻き唯一にして無二の良心! たまーには苦いこともズバッと言ってくれる男!


 そこにシビレルあこがれるっ!


「むっ……そ、それはだな……」


 バカがくちごもってやんの。

 良心様! 言ってやれ言ってやれ、この頭にお花畑しかないバカやその取り巻きに言ってやれ!

 とりあえず3ヶ月、俺がこの学園を卒業するまで波風たたないようにしてくれ!


「婚約破棄をするに値するとなると、実家の不始末か、未来の王妃にふさわしくない言動くらいしかありませんよ」


 だよねー。あのTHE完璧淑女な婚約者殿にそんなスキないよねー。

 あきらめも肝心だよ王子。


 っていうかあきらめてくれ王子! 俺の将来のために!


「殿下! 方法はありますブヒ! 父がよく、ないなら作ればいいと言っておりましたブヒ!」


 だまれブタ。

 だからお前の父親は、宮廷中できらわれてんだよ!

 歩く脂肪とか、ウソからでたウソとかさんざんだぞ!


「おお、その手があったか! なるほど作ればいいのか!」


 バカがブタに同意してしまった! やめてー。


「どうせあの高慢ちきな女。陰でいろいろやってるに決まっておりますブヒ! ないのではなく隠された真実を作るのでブヒ!」


 証拠捏造キター。


 おい、誰が作るんだよそれ! お前じゃないだろ!

 取り巻きの中の下っ端の俺らだろ!

 こんなのに巻き込まれたら、放校、勘当、廃嫡、破滅への一直線。


 だけど、こいつらに逆らえない俺は無力!


 良心様! なんか言ってやってください!


「なるほど。真実であれば問題ないだろうね。真実ならば」


 って、なんですかその微妙な発言は! こいつら都合のいい耳してるんで、都合のいいようにとっちまいますよ!?


「……私の心が彼女に向いていることは、あの女も知っている。この前、王には側室が複数いても許されます、などと嫌みを言ってきたからな」


 それって嫌みじゃないです! 妥協点です! それで満足しなさいってことですから!

 ちょっと頭が回るなら、みんなそうして来たんすから!

 というか婚約者殿にバレバレじゃないですか!


「殿下。あの高慢でプライドだけは高い女のことです。知っているからには、殿下のうつくしき愛しの君にも嫌がらせをしているにちがいありませんぞブヒ」


 論理の飛躍だぁっ!


 ブタのくせに飛ぶな! 落ちろ!


「もしそうだとしても、自分で手を下してはいないでしょうね」


 涼しい顔でなに言うか良心! そこはいつもみたく、論理が飛躍しすぎてるね、とたしなめてよ! 悪いものでも食ったのか!


「あの子に嫌がらせとは許せん! しかも自分の手を汚さずとは卑怯だ! どこまでも腐った奴! くそっ証拠さえあれば!」


 わぁぁ! なに怒りで目をとんがらせてるんですかこのバカ!


 ウソから出たウソが、いつのまにか事実になってる!


「事実があるのに証拠だけがないなら作ればいいのですよブヒ!」


 ブタのいいぐさに、バカは目をキラキラさせて、


「さすがは筆頭大臣の息子! よくぞ言った! これであの女もおしまいだな!」


 いやいやいやいや。おしまいなのはこっちだから!


 と俺がおろおろしている間に事態はずんずんすすんで、婚約者殿が頭お花畑を、噴水に突き落しただの、階段から落としただの、勉強道具を隠しただの具体的な話になってる!


 そういうことをしたはずだ。ってのは、事実とは言わないんですよ!


 そもそも幼稚すぎる! なんですかそのいやがらせは! バカやブタならともかく、あの高貴な婚約者殿がそんなことするわけないじゃん!


 しかも証拠と目撃者のでっちあげとかにまで!


 ばれるだろう絶対。


 向こうは大貴族のお嬢さんだぞ、いつも取り巻きがうじゃうじゃいる。名家の子女の証人だってわんさかいる。


 そんなうそっこ絶対ばれる! 誰か止めて止めて!


「私が信頼する股肱である諸君。正義のため愛のために力を貸して欲しい! お願いだ!」


 バカが俺たちに頭を下げた。ああ、もう顔だけはきれいだよなこのバカ。

 地位の高い人が自分の悪かった点を認めて、目下の俺らに頭さげてるイイ光景みたいじゃん! 


 絵にすればお題は『謙虚』。だまされないけどな!


 だって目が酔ってやがる。『ボクって家臣のために謙虚に頭さげるいい奴』オーラでまくり!


「殿下! 顔をおあげくださいブヒ! ここにつどう者はみな忠臣! 殿下のためならたとえ火の中水の中でございますブヒ!」


「ありがとう! 私はいい仲間をもった!」


 殿下! 殿下! となんか盛り上がってる。バカの周りには酔っ払ったバカしかいないのか!


 俺も仕方ないから一緒に言ってるけど。傍目にはバカの仲間だけど。




 ああ、紅茶がすっかりさめちまってる。味もわかんない。


 畜生。青空がまぶしくてうらめしいぜ! 





誤字脱字、稚拙な文章ではございますがお読み頂ければ幸いでございます。


宜しくお願い致します

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