84)コトナルセカイ
ちょうど玲人がタテアナ基地へ向かっていた頃、小春は目を覚ました。
但しまだ夢を見ている様でぼんやりとした状態で体が動かない。それに同じ体を共有している筈の早苗や仁那も目覚めていないのか二人の意識が感じられない。
小春は定まらない感覚の中、周囲の状況を見てみる。
其処は……先程まで居た心の世界ともタテアナ基地の地下でも無かった。
小春が居る所は巨大な円形の部屋であったその部屋は壁が無く真っ白な美しい柱が均等に配置され大きな天蓋を支えていた。
部屋の外には巨大な白亜の塔が遠くに見えた。上空には夕焼けの様な美しい空が広がっており、雲が真横に見えた。どうやらその部屋は高い塔の中の様だった。
その部屋に真白くて巨大な台座が置かれており、その台座の上で小春は寝かされていた。タテアナ基地の地下室に居た時と同じく、小春は裸でシーツを掛けられて状態で横になっていた。但し仁那の体は此処には無かった。
この台座は心の世界でマセスが寝かされていた物だと小春は思い出した。そしてタテアナ基地の地下と同じ六角形の真黒な太い柱が6本台座を取囲む様に円状に配置されていた。地下に有った時と同じく6本の柱は不思議な光が表面に浮き出ており明滅している。
(……何処までが、夢なんだろう……でも不思議な部屋……なんか……懐かしい気がする……)
小春が夢心地でそんな事を考えてると急に誰かの気配がした。小春はギョッとして体を動かそうとしたが、動く事は出来ない。
小春は体を動かす事は出来なかったが、小春が寝かされている台座の周りに多くの人間が立っている事は感じられた。
……1人、2人……全部で12人の人間が台座の外側で小春を取囲む様に立っている。
始めは他者の存在に気が付かず驚いたが、不思議な事に小春は怖くなかった。それどころか、12人全員を知っている気がして、どこか懐かしさを感じていた。
12人の人間? は全員深くローブを着こみ尚且つ、変わった模様の仮面をかぶっている。それは単眼を象った様な不気味さを感じられる模様の仮面だった。
12人は背が高い者や低い者それに男性と女性など様々だった。何故だろうか、小春は、全員が年寄りでも若くも無く、そして各々が恐ろしく強力な何かを持っている事を理解出来た。
その12人が各々、突然語り合う。その声は頭の中に直接響く様な声だったが、声が小さすぎて小春には何を言ってるのか殆ど聞き取れなかった。偶に理解できる単語が頭に聞こえて来た。
「……此処……」
「……“器”……」
「……周り諄い……」
「……減じられ……」
「……我らも……」
「……最初から……」
「……幾らでも……」
「……“雛”……」
「……存在……」
「……復興……」
「……身命を賭……」
「……騎士……」
一頻り周囲に居た12人は話し合った後、静かになり、突然大きな声で叫んだ。その声だけは小春も良く聞こえた。
「「「「全てはお館様の為に!!」」」」
その魂を鷲掴みにする様な大きな声は頭の中に強く響き、圧倒された小春はその為か急に気が遠くなり、そのまま意識を手放した。
この話も仕様上短くなりました。ですので、出来るだけ早く次の話を更新します