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隻眼殲滅兵器の婚約者  作者: 美里野 稲穂
7章 過去編
71/386

71)過去編-17(隻眼の殲滅兵器、始動)

この71話で過去編は終了となります。

この小説を書くのに当たり、一番最初に書き出したのが過去編なので拙い所も多く有ったかと思います。御読み頂き有難うございました。

 この事があった後、奥田は玲人を更に鍛えるよう安中に指示した。より実践的な訓練だ。


 奥田としては、出来るだけ玲人を戦わしたくは無かったが、奥田の思惑とは反して新見との戦いは熾烈さを増し、状況は悪化していった。


 後で分った事だが、新見はクーデター前に集めた大御門家からの徴収金を別ルートで残していた。加えて海外からの勢力による支援もあって活動資金としては潤沢であった。


 新見は自らの活動拠点を関東の元首都付近とした。かつての名立たる首都東京は、核兵器により崩壊した。使用された核兵器としては小規模であったが撒き散らされた汚染物質により、首都を放棄せざるを得なかった。


 汚染物質の影響の無い地域には人は住み続けたが、首都中心部は無人と化し排水システムが放置された事により、都心部は水没した。


 新見達が潜伏したのは、元首都外辺部である。この地域は直接的な放射能汚染は影響なかったが、住人達は飛来するかも分らない汚染物質の影響を恐れて、一斉に退去しゴーストタウン化し、此処に集まるのは無法者や、日の目を見ない敗北者達だった。


 その為、新見達が掲げる暫定政権打倒は、此処に住まう者達にとっては、十分共感出来るものだった。新見達はこの潜伏先で多くの戦力を補充できた。


 元首都外辺部にアジトを構え、潤沢な資金と十分な構成員を擁した新見達はもう一度、“真国同盟”を立ち上げ本格的に活動を開始した。

 

 彼ら真国同盟は、暫定政権打倒の為の、テロ活動を行った。公共車両の爆破、政府関係者の暗殺、政府関連庁舎の爆発物テロ、無差別な銃撃といった具合だ。新見達の真国同盟の活動が目立ち始めると、第二、第三のテロ組織が次々に名乗りを上げだした。


 彼らが結託して共闘してるのか、反目しているのかは分らないが、結果的に多くの無関係な人間の犠牲が生じ、かつてテロなど無関係だったこの国は大いに混乱し、自衛軍と警察の対応は後手に回った。


 そんな時、効果が大きかったのが仁那の、“遠見”能力だった。全てのテロ行為を防ぐ事など出来なかったが、大きな悪意や残留思念を感じ取れるのか、テロが発生しそうな場所やテロ組織が潜伏する場所等を検知出来た。


 そして仁那との連動が本当に意味で出来たのは玲人のみであった。 玲人は仁那の“目”を携帯し、“目”を通じて意思の疎通や力のやり取りなどが行えた。

 

 玲人自身も強力な能力を持ち、自身に能力を付加させて、人外の筋力や敏捷性を見せ、おまけに自らを浮かせて飛ぶ事も出来た。


 玲人は訓練の結果、自らが投げたり動かした物体については、それらに力を付加させ慣性の法則を無視した運動が可能だった。

 

 具体的には、例えば軽い木の枝を普通の人間が思いっきり投げても、木の枝自身の質量が軽い為、絶対にコンクリートに突き刺さる事は無いが、玲人が力を付加すると爪楊枝のような脆いものでも強化される為か、コンクリート壁に突き刺さる事が出来た。


 しかも、自身が認識した的には適当に見ずに投げても弧を描いて確実に命中させる事が出来た。的を動かしても追尾させて命中して見せた。玲人にとって的はただ認識すれば良かった。


 極めつけは、仁那との力の連携である。仁那は自らは動けないが、“目”を通して、玲人と繋がっている。


 仁那は自らが積極的に戦闘活動は行わないが、玲人が望んだ時は“目”を通じて玲人に自らの力を微弱ではあるが付与できる。


 其れにより、例えば手榴弾の様な小さな爆発力を玲人が収束させ、仁那が玲人に増幅する事で、その爆発力を何十倍にも増幅する事が出来た。



 ……それは、実に恐るべき能力であった。



 奥田は仁那と玲人をテロとの抗争に巻き込む心算は当初から無かったが、周囲の状況が、それを許さなかった。


 最初は仁那の遠見の能力により、事前にテロ組織を拘束しようとしたが、逆に返り討ちに会い結果的にテロ行為も防げなかった事が続いた。


 やむなく試験的に後方支援という形で、玲人を作戦に参加させた所、有る時テロ組織から予想外の後方からの攻撃を受けた。玲人が乗る指揮通信車がいきなり対戦車ロケットで攻撃されたのだ。


 しかし玲人は焦りも恐怖も見せず、自らが乗る指揮通信車を障壁を展開し守った。そして攻撃してきたテロリストを木の枝や小石を動かして手足に貫通させ無力化した。テロ行為自体も自ら前線に支援に入り単独で未然に阻止した。


 この玲人の活躍は伝説となり、玲人を戦力として確保する様、自衛軍上層部も動き出した。自衛軍にとって玲人のこうした活躍は、奥田の思惑と異なり玲人の“参戦”の強い理由になったのだ。


 奥田はテロ組織殲滅作戦に、玲人が参加する度、心を痛めたが奥田の心情とは別に、玲人は確実に成果を出し、奥田の力ではもはや止める事など出来なくなっていた。


 一方薫子は玲人の作戦参加を嫌がっていたが、弘樹の説得と玲人の意志に押され否応なしに認めざるを得なかった。

 

 奥田は活躍する玲人の為にせめて、無事でいて欲しいという思いより、安中に指示して玲人の装備を一新した。


 それは耐防弾性、耐熱・耐寒性、耐衝撃性を兼ね備えた新素材の全身スーツに流線形の形をした真っ黒いフルフェイスのヘルメットの装備だった。


 ヘルメットには丁度眉間の部分にピンポン玉位の窪みがあった。その窪みは仁那の“目”を填め込む為にあった。


 玲人がそのスーツを着用すると、全身漆黒の出立であり、ヘルメットの眉間部分に生々しい隻眼の目が輝いている、という異様な姿だった。スーツとヘルメットにはステルス迷彩機能が装備され、周囲の風景に同化できる仕様だった。


 また、装備された兵装も極めて特殊なものだった。まず、銃器類の飛び道具類は一切ない。


 装備されているのは、長さ5cm程のタングステン製のニードルが両手首のリストバンドに各々数百本内蔵されていた。


 そして、腰には小さな円筒状の部品が数十個取り付けられたブラケットが左右に付けられていた。


 円筒状の部品は小さな爆薬で、便宜上カプセルと呼ばれていた。カプセルは玲人が発する力により自由に起爆させる事が出来た。その爆発力を、玲人と仁那が収束・増幅させれば、各々が戦車を大破出来る程のエネルギーまで増幅できた。


 こうして玲人は個人でありながら対戦車ヘリに匹敵する戦力を持つ事となった。


 更に、数十個のカプセルを同時に爆発力させエネルギーを増幅すれば、空母とて殲滅出来る火力になる。


 もっとも玲人の粉砕能力をエンジン部などに効果的に使えば、超音速で飛行するジェット戦闘機や潜水艦も認識された時点で無力化する事は可能だった。


 仁那がテロ行為を行おうとするテロ組織を遠見で検知すると、玲人がその情報により現場に急行する。


 概ね航空機か車両にて移動し、其処からはテロ組織に音もなく肉薄し、投擲したニードルで対象をあっという間に無力化する。攻撃対象が視認出来れば投擲されたニードルは玲人の意志により追尾し確実に対象の腕や足に突き刺さった。


 玲人にとって相手を殺し言葉通り物理的に殲滅する事も簡単だったが、“目”により見ている仁那が嫌悪する為、殺す事は一切封印した。殺しはしないが玲人が接敵した対象は確実に無力化され、目標とされた反政府組織は駆除された。


 玲人にとって投擲するのはニードルに関わらず、小石でもスチール缶でも小銭でも何でも良かった為、“弾切れ”は問題なかった。ニードルを投擲武器としているのは、殺傷力が単に小さい為だった。


 また、新見の腕を粉砕した様に知覚した存在を意志力で粉砕する事も出来たが、対象が人間だった場合、殺してしまう可能性が高い為、車両や銃器に対してのみ、状況によって使い分けた。


 実際の所、ニードルの投擲だけで大半の事件は解決し、粉砕能力やカプセルを使う事など殆ど無かった。

 

 この様にして玲人と仁那はテロ組織を続々と殲滅してみせた。彼らほど効果的尚且つ圧倒的にテロ組織に対抗出来る戦力は、自衛軍には無かった為、奥田少将の思いとは裏腹に玲人と仁那の二人はテロ組織との戦いで大きな存在となっていった。



 そして常に前線に出る玲人の全身漆黒のスーツと頭部の隻眼の目、という異様な姿により敵味方共通して畏怖される事になった。


 “隻眼”のコードネームと共に……




 そして時は過ぎ、現在に戻る……




 舞台は、薫子より仁那を救う方法を聞いた小春が、小春と仁那が互いが一つになるという道を選んだ時に戻る。


 大切な者の為に自らを犠牲にして、仁那との同化を選択した小春だったが、小春も、仁那自身も、この時彼女達は知らなかったのだ……



 仁那の中には“住んでいた”のは仁那だけじゃ無かった事に。



 ……そして其れは玲人も同じであった。



 ――此処より彼女達の、そして玲人と、世界全ての運命が大きく変わり始めた……


言葉がおかしい所を修正しました。

一部名称直しました

矛盾が生じましたので名称を戻しました。

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