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隻眼殲滅兵器の婚約者  作者: 美里野 稲穂
5章 それぞれの想い
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42)初デート

 そして迎えた土曜日、駅前の広場に小晴達4人は集まった。


 散々揉めた玲人の服装は、小春と真紀の着せ替え人形状態にされた中から厳選した、スムースレザーの黒のジャケットとスキニーパンツの服装だった。


 背が高いから似合うと二人から言われて、同時にキャーキャー言われたが玲人は良く分からなかった。そして両腕には黒いリストバンドを巻いていた。


 リストバンドについては購入してなかったので着けている事に気付いた小春は玲人なりの拘りなのだろうと理解した。実際は武装の一つだったが。


 小春は白色の可愛らしいワンピースを選んで貰った。雑誌等で有名なブランドの品だった為最後まで恐縮したが、この前のお礼という事でプレゼントされた。


 そして真紀は小春の妹の陽菜にも同じブランドの可愛らしいショルダーバックをプレゼントして、大層喜んで貰ったのだった。


 対して晴菜はカッコいい柄のパーカーとダメージジーンズの格好で晴菜にピッタリの服装だった。そしてカナメは黒色チェック柄のシャツにデニムパンツの自然な姿だった。


 「何よ、大御門君。紋付き袴じゃなかったのね、ねぇカナメ?」


 小春から事情を聞いている晴菜は意味ありげにカナメに言う。


 「俺は、義理の叔母と小春の言われるがままに着てきただけだ。紋付き袴とやらに興味があったが、その叔母に普通一生の内一回しか着ない、と言われて残念ながら断念した」


 晴菜に問われたカナメはジト目で小春に絡む。


 「恨むよ、石川さん……ちょっとカドちゃんに冗談言っただけなのにカドちゃんの叔母さんの真紀さんが僕の家に来てこう言うんだ。“カナメ君は土曜日、紋付き袴で行くのよね、玲人君に勧めた位だから当然よね……”すっごい笑顔だけど目が笑ってない……真面目に怖かったよ……」


 「東条君、ご、御免なさい。師匠の圧力に負けて……」

 「師匠!? 小春あんた、玲人君の叔母さんに弟子入りしたの?」

 「すっごい優しい人なんだけど影の実力者って感じで色々凄くて……」


 「いやー分るよ石川さん。真紀さんは大御門家最強の存在だから。僕のおじいちゃんも大概怖いけど真紀さんにニコニコされながら圧力掛けられたら無言になって逃げだすからね」

 「カナメ……あんたはちょっとふざけ過ぎなのよ! だからその叔母さんに怒られて丁度いい薬だわ」

 「……僕とカドちゃんの相方同盟は怒られた位で揺るがないよ?」

 「カナメ! お前って奴は!」

 「……また始めんのか……お前ら……」


 晴菜に睨まれて、玲人とカナメはおとなしくなったのであった。

 

 集まった4人はまずは昼食を摂る事にした。玲人が寿司に行こうと提案していたが、結果的に駅前のファミレスになった。


 玲人が言う寿司屋は駅から相当遠かった事と玲人に寿司をご馳走して貰うのは気が引ける、という事で事前に小春と晴菜の中で駅前のファミレスで割り勘に決めてあったのだ。


 結果的にファミレスの昼食代は玲人とカナメ達男性陣が支払う事になったが。


 昼食とデザートを楽しんだ後、4人はボーリング場に行った。ボーリングは晴菜の提案で以前からこの面子で行きたかった、という希望からだった。


 カナメと晴菜は友人とで何度も行っているとの事で経験豊富の様だった。それに対し玲人と小春は初挑戦であった為、玲人と小春はカナメと晴菜に基本的なルールとマナーを教えて貰ったのだった。


 未経験者が二人いる、という事で先に経験が有るカナメと晴菜が投球を行い、玲人と小春の順にプレイする事となった。


 最初の1フレーム目ではカナメが2回投げてスペアを取り、次に晴菜がスペアを取れず一本ピンを残して終了となり、玲人の番となった。


 「……この玉を転がしてあの立っているビールビンみたいなのを全部倒せばいいんだな」

 「カドちゃん、レーンのファールラインを越えたらダメだよ。ゼロ点になるからね。それとボールを放り投げない事。必ず転がしてね。あと、自分の右側の人が投げ終わってからカドちゃんが投げてね」


 「ああ分った、投げ方はさっきカナメと松江さんがしたみたいに振り子の様に投げればいいのか」

 「僕もそんなに上手くないけど、ボールを投げる前は手の平を上に向けた状態で持って、投げた時は手の平は横を向いている方がいいみたいだね。後は腕が真っ直ぐ振り切る様に投げるのも大事みたいだよ。でも肝心なのはピンを狙って全部倒すって意識が大事だと思う」


 「意識か……それなら俺にも出来そうだ」

 「まぁ、大御門君は初心者だからガターだらけでも笑わないよ。それにしてもカナメ、いつもみたいに大御門君相手にふざけないのね?」


 「松江さん、流石に僕も学習するよ。本当はカドちゃんには新しい道を先陣切って開いて貰いたいから“自分自身をボールと思って飛び込むんだ! ”位な事を言いたいけど、その、大御門家最強の存在がやっかいでね。対策を考えて対応するよ」


 「……余計な事せんでいいわ……それと、カナメ……その」

 「何かな? 松江さん」

 「私の事は“晴菜”って呼んで。その、私がアンタの事をカナメ、って呼んでるのに、なんかバランスが、その、悪いわ……」

 「分ったよ、晴菜ちゃん。これでいい?」

 「う、うん! それでいいわ、カナメ!」


 漸く下の名前で呼んで貰える様になった晴菜は顔が真っ赤だった。その様子をぼーっと眺めていた玲人と、嬉しそうに頷きながら見ている小春に気が付いた晴菜は“お、大御門君! 私の事はいいから投げて、投げて!“と大慌てで誤魔化した。


 「……それじゃやるぞ」


 そう言って玲人は右足から助走を始め、4歩目でボールを投げた。投げ終わった後も腕を真っ直ぐ振りぬいて非常に綺麗なフォームだった。


 実は玲人はカナメや晴菜の投げ方だけでなく、このボーリング場のフロアにいる他の客を把握し動作を観察していた。そして合理的な投げ方を学習していたのだった。


 玲人が投球したボールはレーンの2番目のスパットの上を通り、ピンの2m位手前で緩やかに曲がって一番目のピンに激突して他のピンを巻き込んで倒れ、完璧なストライクを決めた。


 「えー! いきなりストライク!? 大御門君ホントに初心者?」

 「さっすがだよ、カドちゃん!」

 「れ、玲人くん凄いです!」


 皆から称賛された玲人は内心考えていた。


 (一体これの何が凄いんだろうか? 分らない。静止した的に鈍重な動きをする球をぶつけるだけ……コントロールを競うスポーツなのだろうが……力を使うまでもない)


 玲人は人外の運動神経と適用能力及び頭脳を持っていた為、周囲の状況からボーリングの投球の仕方を見て学習し瞬時に自分に適用できた。


 だから生れて初めて行ったボーリングでストライクを出す事等、造作もない事だった。玲人はこんな事で騒がれる状況が理解出来なかったが、いつもの通り冷静に周囲に合わした。


 「……いや、大した事は無い……」


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