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隻眼殲滅兵器の婚約者  作者: 美里野 稲穂
5章 それぞれの想い
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40)薫子の秘密

急ではありますが、この投稿の前にタイトルを変えさせて頂きました。まだまだ序盤なのですが、旧タイトルでは今後の物語にズレが出た為です。今の内かと思い 変更させて頂きました。何卒 よろしくお願いします。

 「そんな訳で腐って死に掛けてた大御門家の立て直しを何とかしようとしたけど、それまで逃げ続けた事が仇になって、分らない事だらけだったんだ。そんな時、助けてくれたのが真紀や真紀のお父さんだった……真紀のお父さんは会計士をされていてね。僕は事業には全く未経験だったから、色んな事を教えて頂いたんだ。 それだけでなく、今まで父や兄達が相手にもしていなかった遠縁の親戚達も力を貸して頂いて、時間は掛かってしまったけど皆さんのお蔭で何とか大御門家は、立ち直る事が出来た……」


 ここまで話して弘樹は真紀を見つめて改めて語った。


 「……真紀にもずいぶん我慢してもらった。それどころか今でも大御門家の事業経理にも巻き込んで大いに助けて貰っている。申し訳なかった……」

 「弘君、謝る必要なんて何も無いわよ。一番傍で弘君を助ける事が出来たし、こんな立派な家に住ませて貰って、大樹まで授かってこっちからお礼を言わなきゃダメな位よ」


 そう言って真紀は横に居る大樹に“ねー大樹ーうれしーねー”とあやしている。


 小春は今までの弘樹の話を聞いて、弘樹の人柄と決意に敬意の念を抱いたが、何より真紀の想いの強さに感激した。


 真紀が中学生の頃からという事は、およそ20年近い長い期間、多くの逆境が有る中で諦めず弘樹ただ一人を想い続けて支えている。小春は自分が目指すべき人はこの人だ、と強く思い心の中で真紀の事を“お師匠”と呼ぶことに決めた。


 「真紀が今言ったこの家の事だが、本来は薫子や玲人と仁那達と一緒に住むつもりで頑張って大きく建てたけど、石川さんも知っている通り仁那の調子の問題で私達家族だけが住んでいる。早く一緒に住みたいと僕は思っているんだ」


 弘樹の話を聞いて、小春はある事を思い出したので聞いてみる事にした。


 「……あの、薫子先生の、薬指に、その、指輪が……見えたんですけど恋人とか……」

 「ああ、薫子は医学を目指す様になってから海外研修にも良く足を運ぶ様になってね、向こうで婚約者が出来たみたいだ。ただ薫子は、仁那の事があるから今は結婚を考えていない様で、先方の男性も理解してくれている様だ」

 「……そうなんですか」


 小春は、薫子にも尊敬の念を抱いた。好きな人が居るにも拘らず、仁那の為に人生を掛けているからだ。


 そう言えば玲人もそうだった、と思いだして横に居る玲人を見ると、相変わらずボーっとした様子で食事を続けていた。小春は苦笑しながらも、そんな玲人に愛おしさを感じざるを得なかった。


 「……実は薫子の婚約者を見せて貰った事が実はあるんだ」

 「え、そうなんですか」

 「この話は薫子には内緒だよ。まだ僕と真紀が結婚する前、二人でお酒を飲んだ時にポロッと白状したんだ。普段の薫子は、自分のそう言った事情は出したがらないんでね、飲ませば本音を言うかと思ってやってみたら、その場で薫子の携帯端末の写真を見せて貰ったんだ。二人とも仲睦まじい様子だった」

 「どどどんな人だったんですか!」


 小春は薫子の意外な一面が聞けて興奮気味だった。


 「見せて貰った写真は薫子と相手の男性が並んで立ってて、どこかの大きな公園だろうか、美しい緑が広がる場所で撮影されていた。薫子は相手に寄り添い相手の肩を抱いて如何にも、その男性の事が好きだって感じがした」

 「弘君から以前教えて貰ったけど、とっても素敵な話よね……確か薫子さんのお相手は外国の方って言ってたけど、どんな方なんでしょうね?」


 弘樹に真紀が質問する。小春はその話が気になって思わず息を飲む。


 「相手の男性は、とても男前の白人男性だったよ。薫子より少し年下に見えたな。僕は酔っぱらっていた薫子にチャンスとばかり色々聞いたがガードが固くて。薫子は仁那が調子いい時や、海外に用事がある時はその人に度々会いに行っている様だ」

 「へー、そうなんですか! へー!」

 「……小春ちゃん、ちょっと興奮しすぎよ」


 興奮度MAXの小春の様子に、真紀が苦笑して窘める。


 「でも、弘君。薫子さんにそんな素敵な方が居るなら、仁那ちゃんが良くなった後は向こうに嫁ぐんじゃない?」

 「そうか……婚約者さんのご実家が向こうだもんな……普通そうなるか……本音では此処に一緒に住んで欲しいと思っているが」

 「薫子さん達が気を使うでしょ……あんまり先走って張り切り過ぎたら薫子さんに嫌がられるわよ」

 「そういうモノか……薫子たちが住まないとなると部屋が余るな……」


 そう言った弘樹に真紀は悪戯っぽく笑って小晴の方を見ながら弘樹に返事をする。


 「大丈夫よ! 小春ちゃんと玲人君が将来、一緒に住めばいいじゃない!」

 「ええええ! ち、ちょっと真紀さん!」


 真紀のとんでもない挑発に小晴は真っ赤になりながら制止した。その話を聞いた弘樹は……

 「うん! それがいい! すぐにでも二人の婚約準備を始めよう!」


 真剣に同意して進めようとした。さっき真紀に(たしな)められたはずなのにもう先走ってる弘樹を見て、“この人違う意味で危ない”そう認識した小春は全力で止めようとした。


 「ちょっと、ちょっと待って下さい! そういうのは二人の意志っていうか、その……」


 そう言ってゴニョゴニョ言う小春を見て、真紀がまた悪戯っぽく微笑んで問いかけた。


 「あれ? もしかして小春ちゃんは、玲人君と一緒に住むの、嫌なのかなー?」

 「ちちち違うんだけど……その、あの、まだ早いっていうか……」


 シドロモドロで答えながら、チラリと玲人に助け舟を求めるとモキュモキュと食事を無心に続け、全く当てにならなかった。


 同時についさっき“お師匠”認定した真紀の事を別な意味で要注意すべきだと認識を改めた。


 「……玲人君は小春ちゃんと一緒に住むかもって話、どう思っているのかなー?」


 真紀が恐ろしい質問を玲人にする。返答しだいによっては小春の生命(精神的な)は此処で断ち切れる。内心小春は“お師匠何て事を! お願いだからそっとしてー!”と吠えていたが、真紀には届かない。真紀の問いに対し玲人は、ちょっと考えて答えた。


 「俺は、仁那さえ良ければ小春と一緒に住む事は構わない」

 「「「…………」」」



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