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隻眼殲滅兵器の婚約者  作者: 美里野 稲穂
20章 穿の騎士
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240)前座退場

 突如舞い降りてきた赤毛の少女アルジェ。


 

 彼女に小馬鹿にされた真国同盟の長田は、怒りに身を任せ……アルジェに短銃を発砲した。


 しかし彼女は一歩も動く事無く、右手だけで全ての銃弾を掴みとり……長田の前にパラパラと落して見せた。



 零れ落ちる銃弾を見て長田は後ずさりて……起爆装置を持った手を高く上げ叫ぶ。



 「……ふ、ふざけたガキめ! 何者か知らんが、俺には爆弾が有る! これでお前ごと吹き飛ばしてやる!」


 「ああ、それですか? それならヘレナ様の指示の元……除去しましたよ? ほら、コレでしょう?」



 長田の叫びに、呆れながらもアルジェは空間から白い光の球に包まれた4個のプラスチック爆弾を浮かして見せた。



 「まさか……アレは仕掛けられたC4なのか」



 アルジェが見せた爆弾を見て、玲人は驚き声を漏らす。対してアルジェは彼に対してニッコリと頷き微笑んだ。



 対して、設置した筈の爆弾を見せられた長田はと言うと……。



 「な!? は、え!?」



 浮かぶプラスチック爆弾を見せられた長田は驚き、そして大いに動揺し間抜けな声を漏らす。



 それもそうだろう、アルジェが見せている爆弾は、紛れも無く長田達が仕掛けたモノだ。


 しかも、その内の一つはつい先程長田が柱の裏で設置状況を確認した筈の一つだ。



 白い乳白色のプラスチック爆弾に被膜の半透明のシートを巻いて、携帯端末をテープで固定されている。


 テープの巻き方や古い型の携帯端末は間違いなく、今先程に長田が確認したばかりの爆弾だった。



 「……“何でコレが此処に?”って言いたげですね? 私達には空間を飛び越える能力が有るのです。ほら、丁度、こんな風に」



 アルジェは確保したプラスチック爆弾を魔法の様に消し去り、驚愕して固まっている長田を前に、何でも無いと言った風に答えた後……。



 “シュン!” 


 「う、うわ!」


 

 その身を転移させ、長田が出てきた柱の前に移動した。一瞬で数10mの距離を移動して見せたアルジェに、彼はみっともなく叫ぶ。



 長田の知る常識を超えた力を垣間見せるアルジェに、この男も威勢を保てなくなった様だ。



 「……この美術館の中にはリジェ様やシャリア様達が居られるとは言え……マセス様に不快な思いをさせる訳に参りませんわ……。その為、先程の爆薬とやらを回収させて頂いた次第です。そして……内部に侵入した貴方のお仲間も……とっくにリジェ様が始末なされました。残るは貴方御一人ですわよ?」


 「で、でたらめを言うな!」



 衝撃の状況をアルジェに知らされた長田は受け入れがたく、叫んで否定した。



 「……これ以上の問答は無駄ですわ……。フィル! 覚醒の儀を行うのは貴方でしょう? いつまで、ノンビリしている心算ですか!」



 アルジェがそう叫んだと同時に……フィルと呼ばれた少年が動きを見せる。



 彼は瞬時に長田の真横に転移し、目にも止まらぬ速さで、掌底を長田に叩き込む。



 「おげぇ!!」



 掌底を喰らった長田は踏み潰されたカエルの様な声を上げ、体を折り曲げたまま、吹き飛んだ。


 そして背後に林立する木に激突して、長田は動かなくなった。



 そんな長田の真横にアルジェが瞬間移動して、彼の胸部に巻かれた爆弾に手をかざす。



 コンポジション C-4と呼ばれる、この爆弾は化学的安全性が高く、衝撃による爆発は起こりにくく起爆させるには起爆装置が必要だ。


 その為、フィルに殴り飛ばされたが暴発はしなかった様だ。



 アルジェが手をかざすと、その爆弾は白く光り……するすると固縛されたスリングが、独りでに外れて……爆弾が薄っすらと白く光りながら浮かび、彼女の手の中に納まる。



 「コレは回収しておきましょう……」



 そう呟くアルジェ。プラスチック爆弾は白い光に包まれたまま……空中に突如現れた穴の中に放り込まれた。




 全ての爆薬を除去され、真国同盟のテロリスト達は長田を始め全員が無力化された。




 もっとも、半数近くがリジェ達に惨殺されているが……その事は玲人達特殊技能分隊のは知る由も無かった。



 唐突に終わった国立美術館襲撃テロ事件。 最後まで抗った長田は白い目を向いて気絶し、ピクリとも動かない。



 そこへ、駐車場から回って来た偽装トラックが到着した。その中には前原達が駆るエクソスケルトンが搭載されている。


 偽装トラックは作戦指揮通信車に居る梨沙少尉の指示によりやって来たのだ。


 本来は美術館裏に集結していた長田達が仕掛けた爆破テロに対処する為だったが……突然現れたアルジェとフィルによって何の被害も無く終結した。



 どうみても小学生にしか見えないフィルと、小春と同年代らしいアルジェ。


 

 丁寧な言葉使いと笑顔を玲人に向ける事より……玲人はアルジェ達に害意は無いと判断した。



 彼女達に話し掛けようと近づいた玲人だったが……その前に、アルジェが彼に深く頭を下げた後、玲人に向かって話し始めた。



 「……大変、御見苦しい所を御見せしました……。彼等には前座程度なら、と期待しておりましたが……戦士としての矜持も無く、ただ無様な姿を晒しただけで御座いました。せめて……我等姉弟が、今より挽回させて頂きたく存じます。

 フィル! 今回の覚醒の儀……リジェ様直々に、貴方は託されたのでしょう? あの御方の弟子の一人として……立派に勤めを果しなさい!」


 「はい、アルジェ姉様」



 アルジェに発破を掛けられたフィルは、気だるげな態度を一変させ、力強く返答する。


 そして彼は自らの体を発光させると……小さな体には似合わない真黒い鎧を身に纏ったのだった。



いつも読んでいただき有難う御座います。次話は2/15月 投稿予定です、宜しくお願いします!

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