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隻眼殲滅兵器の婚約者  作者: 美里野 稲穂
19章 巌の騎士
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218)互いの信じる道①

 安中のオフィスに突如現れたアリエッタ。行き成り現れて安中に皮肉を言う彼女に、安中も少しばかり言い返す。


 「……除き見とは感心しないぞ、アリエッタ?」


 「その様な趣味は御座いませんが……余りに仲睦まじく、姿を現す機会を見計らうのにヤキモキしていた次第です」


 苦笑しながら言い返して来た安中に、アリエッタは意地悪く笑いながら答える。


 「適切な距離を持って付き合いをさせて貰っている次第だが?」


 「……恐れながら……トルア卿……あのマールドムの女性は……亡くなられたネリル様とは違います……。彼女とネリル様を重ねて見るのは……誰に取っても、不幸な事です……」


 又も皮肉を言って来たアリエッタに、安中は真面目に答えた。対してアリエッタは俯いて、言い難そうに自らがトルアと呼んだ安中に小さな声で話す。



 「心配を掛けて済まない、アリエッタ……。だが、ネリルは私より年上で梨沙とは生き方も性格も似ても似つかない女性だった。男勝りで勝気な梨沙とは真逆の……。だから私は梨沙をネリルの代わりに利用している心算は無いよ。真逆な二人だが……弱くて放って置けない所は、同じでは有るが……」


 「……トルア卿…… “元の木阿弥”って言葉ご存知ですか? 仰られている事、振り出しに戻っておられる様に思えて仕方が無いのですが?」 


 自信を持って答えた安中だったが、逆にジト目のアリエッタに反論された。



 「とにかく私には彼女の気持ちを弄ぶ心算は無い。アリエッタ、君こそマールドムである梨沙を甚く気に掛けている様に見えるが?」


 「……彼女は小春の良き友人の一人……そんな彼女が傷付けば、小春も悲しむ事になるでしょう。それは私には見過ごす訳には参りません。……然しながら……トルア卿、貴方様が……あの女性に対しラシュヒ卿と何かを画策されている事は把握しています。今の貴方の御様子からすれば、それは彼女に取って悪い事では無いと予想します。その点を考慮し私の方から詮索する事は今の所、控えます……どうもお騒がせしました」


 「全くだ、と言いたいが……確かに君達には内緒にしている所も有り、同時に君のエニに対する気持ちも分る。心配を掛けて悪かったな……。所で、何か用事が有ったのでは無いか?」


 「……実はウォルス卿とディナ卿の事で、報告に来させて頂いたのですが……フフフ、貴方様があの梨沙と言うマールドムの女性に詰め寄られるのを見て……既視感を憶えてしまいました」


 安中に問われたアリエッタは、彼女にしては珍しく思い出し笑いを浮かべる。


 「……今日は君にからかわれてばかりだな……。一体、何に既視感を感じたのかね?」


 「フフフ……失礼致しました。実は先程、アガルティア城にてウォルス卿とディナ卿との会談が行われていました。そのやり取りが、話し合いと言うよりも……一方的にウォルス様がディナ様に怒られている状況でしたので……その様子が、先程のトルア様のやり取りと重なった次第です」


 「……中々に辛辣だな、君は……。どうしてウォルスがディナに詰め寄られていたかって……まぁ聞くまでも無いか」


 「ウォルス卿もトルア卿も、怒られている内容まで同じだったので、余計に可笑しくなってしまいました。御推察の通り、先日の覚醒の儀に付いて……ウォルス卿がディナ卿に強い抗議を受けておりました。その後……御二人で長く話され、有る取決めをされまして……それをお伝えに参りました」


 安中の言葉にアリエッタは絶えず微笑を浮かべながら答える。心なしか嬉しそうに見える彼女の様子が気になり、安中は問い返す。


 「……二人の間にどんな取り決めが……? それを君が伝えに来た、と言う事は君自身にも関係が有る事なのか?」


 「はい、御推察の通り、私自身にも関係が御座います。順を追って説明しますね……」


 アリエッタはそう言って安中に何が有ったか説明を始めた。


 先日のアガルティア12騎士長が一人のドルジによる襲撃事件の目的は……全ては玲人の中に眠るマニオスの復活を促す、覚醒の儀の為だった。


 その目論み通り部分的にでは有るが、玲人がマニオスの力を発動した事より、今回の覚醒の儀は大成功と言えた。


 しかし、その最中に小春が巻き込まれた事に、ディナ……つまり薫子が激怒し、12騎士長筆頭であるウォルスに大いに噛み付いたと言う訳だ。


 もっとも薫子自身は玲人の中に眠るマニオス復活に、それ程抵抗は無い。本心としては元の主であるマニオスの復活を望んでいた程だ。


 しかし、小春に仕えている薫子に取って最優先されるべきはマセスと同一化した小春の意志だ。


 小春、いや小春組(仁那や早苗と小春)がマニオス復活を拒むのなら、例えかつての主であろうが、マニオス復活を阻止する覚悟だった。


 「……今回の覚醒の儀で……借り物の体とは言え、小春を攻撃した事……そして事前の情報も伝えられ無く、儀に及んだ事に……ディナ卿は憤慨されました。対してウォルス卿はディナ卿の御意見を聞きながらも、マニオス様復活の大義に付いて力強く語られ……御二人は遂に合意する事は有りませんでした」


 「……ウォルスを始めとする我々12騎士長は、封印される際のマニオス様から、アガルティアの民を守る事……そしてマセス様をお守りする、この二つを厳命されている。あの誇り高きマニオス様はご自分の危機に有っても……民とマセス様の事を何より大事とされたのだ。

 そういう意味ではマセス様と同化した小春殿を守らんとするディナは正しい。だが、小春殿によってマセス様が救われた今……我々臣下としては……例え命じられてなくともマニオス様の復活に尽力する事は当然の事だ。

 ディナもその辺りの事情は分かっているだろうが、互いの仕える主の為……意見が割れるのは仕方無かろう。……その結果、君の処遇について変化があったのだな?」


 アリエッタの説明に安中は苦笑を浮かべて答えながら、彼女について問うのであった。


いつも読んで頂き有難う御座います。今回も遅筆故に投稿がギリギリとなりました。


何とか頑張って来ましたが……立場的に彼方此方いく事が増えました事も有り、週二回の投稿は難しくなって参りました。


 そこで以前の様に週一投稿にさせて頂こうと考えております。基本的には毎週月曜日投稿とさせて頂こうか、と考えております。


 連載を辞める気は全くありませんが、困難な状況になって来ましたので現状の所、恐れ入りますが毎週月曜日投稿とさせて頂きます。


 次話は9/7月投稿予定です、宜しくお願いします!

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