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隻眼殲滅兵器の婚約者  作者: 美里野 稲穂
3章 運命の選択
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20)運命の、選択

 “場所を変えましょう”そう言われて小春は薫子の自動車に乗った。


 「……ふふ、そんなに緊張しないで?」


 薫子に教えて貰う代わりに条件を求められた小春は、何を言われるか分らない怖さに緊張し、それを見た薫子が思わず微笑み小春を安心させる様話しかけた。


 「石川さん、これでも私は先生よ? 生徒に悪い事なんてしないわ。私が石川さんに玲人君と仁那ちゃんの事を話す代わりに、石川さんにやって貰いたい事は……」

 「な、なんでしょうか」

 「玲人君と仁那ちゃんとずっとずっと仲良くしてほしい事。出来るかしら?」


 小春は拍子抜けしてしまった。“何だそんな事か、こっちこそお願いしたい位だ”と思った。


 「薫子先生、そんな事当たり前です。わたしこそずっと二人と一緒に居たいと思っています」


 小春の答えを聞いた薫子は車を停車させ、小春の目を見て語りかけた。


 「石川さん。私が言っているのはもっと深い意味よ。玲人君と仁那ちゃんの“秘密”を貴方が知っても、例え何があっても、それでも二人と生涯一緒に居て欲しいという事よ?」


 小春は薫子の問い掛けを聞いて、本当に自分でも不思議だが(あふ)れるばかりの自信を持って言い切った。


 「薫子先生。わたしの二人に対する気持ちを舐めないで下さい。例えどんな事を知ったとしても、何があったとしてもわたしが二人を遠ざける理由になりはしません」


 「……いいわ。見事な回答よ。本当に貴方こそ私の“望んだ子”の様ね。分りました、石川さん。いいえ私もこれからは小春ちゃんと呼ばせてね。小春ちゃんには私達の事を教えてあげる。だけどね、私達の事を知る事は危険を伴うの。其れでも本当に構わない?」

 「はい。薫子先生、是非お願いします」

 

 今思えば、ここが小春の人生の分岐点だったのだろう。



 ――小春は決断した。



 全てを受け入れるという決断を。ただ“こうなる事”は、小春が玲人と仁那と出会った際に既に決まっていたのだろう。こうして、小春と玲人、そして仁那の運命は重なり廻り始めた。


 「しっかり付いて来てね」


 薫子にそう言われた小春は、大御門総合病院のロビーを歩いていた。二人は病院内を進みエレベータホールの前に着いた。エレベータホール右横の作業員用ドアに、暗号を入れてドアを開けると、其処には作業用エレベーターが設置されていた。


 「……先生、何処に行くんですか」

 「心配しないで、私達の家に向かっているのよ」


 そう言いながら二人は作業用エレベーターに乗り込んだ。薫子は玲人と同じ手順で地下6階を選択し、エレベーターを最下層まで動かした。


 エレベーターを降りて小春が目にしたのは、ゲートとゲートの背後の兵隊が銃を構えて立っている姿だった。


 「薫子先生、ここは一体……」


 小春が心配そうに聞く。“家に行く”と言われて来たのに兵隊が居る事は小春の理解を超えていたからだ。


 確かに先ほど薫子は、“私達の事を知るには危険が伴う”とは言っていたが、この状況は予想が付かなかった。


 「小春ちゃん、此処はね、私達の家の玄関よ。兵隊さんが守ってくれてるの」

 「……」


 小春が返事できず黙ってしまうと、目の前に居た兵隊の一人が声を掛ける。


 「ご苦労様です、大御門主任。そちらの少女は誰ですか?」

 「この子は玲人特技准尉と仁那技官の友人よ。今日は、仁那技官との同調性の調査の為連れてきました。身元は私が保証します」

 「分りました。認証確認の上、中にお入りください」


 薫子は複数の認証を受けゲートを通る。ゲートには新型の爆発物検知器とX線検査装置でゲートを通過する対象者の安全性確認を行っている。


 ゲートを潜ると長い通路が見えた。そこを歩きながら小春が薫子に質問する。


 「ここって何ですか?」

 「私達の家よ」

 「……兵隊さんとか、頑丈そうな扉とか、色々おかしいです……」

 「……ごめんね。小春ちゃんには、正直に話すわ。この先にあるのはね、核シェルターなの。その核シェルターには自衛軍の兵隊さん達も沢山居て、皆“タテアナ基地”って呼んでるわ」


 「どうしてこんな所に住んでるんですか」

 「……まぁ、普通まず其処を不思議に思うよね。小春ちゃん、玲君から聞いたけど貴方は仁那ちゃんの事を“エスパーなの”って言ったそうね」


 「……いえ、先生、あれは冗談のつもりで……」

 「冗談ではないわ。本物よ」

 「え」

 「仁那ちゃん、そして玲君も、本当にエスパー、いわゆる超能力者よ」

 「うそ……」


 「本物よ、それもスプーン曲げるとか、そんな小さなモノでは無いわ」

 「……それってどういう……」

 「この先にある地下シェルターはね、軍に頼まれて玲君と仁那ちゃんの為に作ったの」


 「どう、してですか……」

 「簡単よ。彼らの能力から、他の人達を守る為よ」

 「意味が、よく……分りません……」

 「そうよね、でも本当の事なのよ。仁那ちゃんと玲君が力を合わした時、凄い力が出るの。とっても大きな爆弾みたいにね」


 「そんな……嘘みたいな話、とても……信じられません」

 「懐かしいわ……」

 「え、それってどういう意味ですか?」

 「……14年前にね、大御門の屋敷が吹き飛んで大勢死んだ日に、自衛軍の人から同じ話を聞かされてね。私と兄の弘樹は貴方と同じような顔をして同じ返事したからよ」

 「…………」



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