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隻眼殲滅兵器の婚約者  作者: 美里野 稲穂
14章 模擬戦(対能力戦)
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162)模擬戦(全ては彼の為に)-29

 玲人を包む土の玉、それは小春が生み出した”コメダマちゃん”によるものだ。“コメダマちゃん”は小春の意志により、色々な物体に憑依し、その形を変える事が自在に出来る。

 また、大量の目玉ちゃんの集合体である為、個別に能力付加が可能だった。小春が意志を送れば、大量の目玉ちゃんが連動し例えば高熱を発生する等々の作用を起こす事が可能だ。


 今、小春の意志顕現力は、“コメダマちゃん”に対し玲人を閉じ込める様に意志を送っている。その意志を受けた“コメダマちゃん”はただ、形を成すだけでは無くその目的を遂行すべく自律行動がする事が出来た

 




 その“コメダマちゃん”が作った球体の中に居る玲人は、どうやってこの球体から脱出しようか考えていた。球体の内部は玲人が体を動かせるような広さになっており、玲人の体が締め付けられる様な事は無かった。


 まず、玲人は内部からこの球体を破壊しようと黒針を作り出して放った。


 “ドキュ!”


 そんな音と共に放たれた黒針は壁に突き刺さる筈だった。しかし、黒針は刺さる事無く壁の直前で止まっている。本来ならば、障壁が有ったとしても黒針により壁に大穴が空く筈だったが、黒針は壁に刺さる事も無く押し返されて、コトンと落ちた。


 「……此れは……力で受け流し、落としたのか……」


 この土壁の中に居るであろう無数の目玉を通じ、小春が能力を発動して玲人の放った黒針を浮かして受け止めて落としたのだ。


 「いつまでも、ここに居る訳にいかないな……押し崩すか……」


 玲人はそう呟いて、自身の両手を意志力を働かせて白く輝かせた。そして両手を前に突き出すと、眼前の土壁が歪み出した。玲人は強力に意志顕現力を働かせて力場を発生させた。

 そして、土壁に面圧を掛けて一気に崩してしまおうと考えたのだった。この技は元々修一が夏祭りの際に使った技だ。玲人は修一の記憶を元に、再現し応用したのであった。





 一方、小春は“コメダマちゃん”による土の球が内部からの強力な力で歪みが生じている事に気が付いていた。


 「……こ、このままじゃ、壊されちゃう!」


 その状況に小春は、思わず叫んだ。叫んだ小春は随分辛そうに見える。今日が初めてまともに能力を発動した小春は、生まれて初めてにも関わらず強力な能力を連続使用している。流石に小春の精神疲労は限界だった。


 その様子を感じた早苗が脳内で小春に問い掛ける。


 “……もう限界じゃないの、小春ちゃん?”


 対して小春は、余裕が無い為か口に出して早苗に答えた。


 「……も、問題、有りません……わたしが……玲人君を守るには……うぐ、この模擬戦に勝てないと……意味がないんです! だから、止めません!」


 小春は早苗に対し、力強く答えた。早苗は脳内で一言呟いた。


 “…………本当に、バカな子ね……”


 「……れ、玲人君の為なら……うぅ……ば、馬鹿でも、何でも良いよ! お、おいで!“カタメちゃん”!」


.そう叫んで、小春は錫杖を光らせ新たな目を生み出した。“カタメちゃん”と呼ばれたその目は、真四角な形の目だ。小春はその四角い目を呼び出して命ずる。


 「カタメちゃん! あの球を固めて!」

 


 小春の命令に、カタメちゃんと呼ばれた四角い目は、玲人の頭上に飛んで行き、次いで体を発光させた。すると、土の球は一瞬輝き金属の様な光沢を持った材質に変わり、見るからに頑丈そうになった。

 小春が呼び出したカタメちゃんは小春が付けた名前の通り、物質を固めたり、強固にする作用を起こす。小春はカタメちゃんにより、破壊されそうになっている土の球を強固にして、これ以上の破壊を食い止めようとしたのだ。


 小春は、カタメちゃんを使役して土の球を強化する事が出来たが、小春の精神はもはや限界となった。


 そして……


 “ドサッ”


 遂に小春は倒れてしまった……





 対して、コメダマちゃんの土の球により閉じ込められている玲人は、力場を発生させ内部から土の球を破壊しようとしていたが、突如、土の球が金属の様な光沢を放って強固になり徒労に終わった。その事に感嘆し玲人は1人呟いた。


 「……小春の新しい目の能力……意志力で強度を上げているのか……能力の種類が多彩過ぎるな、小春は…………うん?……小春の意識が感じられない……まさか!?」


 小春の意識が急に感じられなくなった玲人は焦りを感じ、持てる全力を使って一刻もこの土の球を破壊する事を決めた……




 

 一方の小春は、精神疲労が限界に達し完全に気を失っていた。小春の体で唯一意識を保っている早苗が小春に脳内で呼び掛ける。


 “小春ちゃん! 早く起きなさい!”


 早苗の叫びにも小春は目を覚まさない……


 ちなみに土の球を形成するコメダマちゃんや、守りを強固にしているカタメちゃんは、産み出された後は自律行動が可能な為、小春が気を失っていても消滅する事は無かった。


 “流石の私も……こんな終わり方は納得出来ないわね……小春ちゃん!……玲君を守る為、この模擬戦は負けられないんでしょう!? 最後まで頑張りなさい!!”




 早苗が脳内で小春を起こそうと叫び続けている最中、玲人を閉じ込めている土の球に変化が有った。


 “ガキキキキイン!!”


 そんな音がして、土の球に無数の黒針が突き出た。玲人が内側から無数の黒針を全方位に発射したのだ。次いで土の球周囲に障壁が展開され、、突き出た無数の黒針が真っ白に眩く光った後……


 “ゴガガガガアァン!!”


 土の球は大爆発し、その衝撃で上空に居たカタメちゃんは消滅した。土の球を形成していたコメダマちゃんは言うまでも無く黒針で全滅していた。




 早苗は気を失った小春の体を通じ、土の球が破壊された事を認識していた。


 “……流石、玲君。小春ちゃんの召喚魔法でもダメか……このままじゃ、負けちゃうわ……母親としては玲君を応援すべきだけど……女としては、小春ちゃん押しね。あんなやり取り見ちゃったら、放って置けないか……”


 早苗は小春の脳内で、一人呟いた。


 早苗はマセスと小春とのやり取りを見ていた。その為、惚れた男の為に戦う事を決めた小春の想いを一人の女として無下に出来なかった。ましてや、その男は自分の息子だ。


 早苗は脳内で溜息を付いて小春を勝利に導く、ある作戦の実行を決めた……





 玲人が放った無数の黒針で生じた大爆発により発生した豪炎は、玲人が爆発の衝撃が小春に届かない様に展開した障壁により広がりはしなかったが、塔の様に高い炎を形成した。その立ち上がる豪炎に対し例によって、玲人が纏う黒いモヤが覆い尽くして、水を掛けた様な音と共に消し去った。


  “バシュン!”


 爆発の跡に佇む玲人だったが、倒れている小春を発見すると慌てて彼女の元に駆け寄るのだった




いつも読んで頂き有難う御座います。大変長くなりましたが次の話で模擬戦は終了します。その後3話か4話位、後始末(早苗と安中大佐との)が続く予定です。今後とも宜しくお願い致します。


追伸:同じ言葉が二回続いたので見直しました。

追伸:最後の方見直しました。

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