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色恋沙汰は当事者になると大変な件

時刻は午前五時

例によってサフィアに起こされる。今日もアーリーモーニングティーとかいうなら勘弁してもらいたい。今日からは平日、つまり学校がある。七時くらいまでは寝かせてほしい。

ていうか仮に起きたとしても昨日カモミールは全て飲んだからない。当然だが今日は買いに行くつもりは毛頭ない。


「……平日はこの時間に起こすのやめてくれないか?あとカモミールはもうないからな?」


「カモミールがないのは知っています。今日はアーリーモーニングティーではありません!」


「じゃあ寝るわ。おやすみ」


「起きんか!馬鹿者!!サフィア様はそういうことが言いたいのではない!」


「……朝早いんだから大声出すなよ」


頬をはたかれたのでしぶしぶ目を開き体を起こす。

ああ、なんだそういうことか。

それでユリアの言いたいことが分かった。


「ユリア、うちの学校に制服よく似合ってんな」


「なっ///私ではなく、サフィア様を見て差し上げんか!そのためにサフィア様はわざわざここにきたのだぞ!?」


ユリアが耳まで真っ赤にして叫ぶ。恥ずかしがっているのか自分より先にサフィアを見ろって怒っているのか分からないな。

……多分両方だな。意識がはっきりした時に最初に見えたのがユリアだったからなんだからそんなに盛り上がるなよと思いつつちらりとサフィアを見た。

サフィアも同じくうちの高校の制服を着ている。サフィアって中学校行く予定じゃなかったか?

それでも


「ああ、サフィアも似合ってるんじゃないか?」


「……なんか、適当にあしらわれている感じがします」


うちの高校、梓酒匂台(あずささかわだい)高校の制服はえんじ色のブレザーに男子は藍色のネクタイと薄い灰色を下地として薄く濁った緑のチェック柄のズボン。女子はワインレッドのリボンと柄は男子と変わらないスカートだ。ブレザーの下には白のカッターシャツとブラウスを着る。

ブレザーには左胸にパッチポケットがついており縁が少し濃いめのえんじ色で縁取りがされている。


ラブコメなんかに出てくるような学校の制服みたいな感じで基本的に美人や美少女が着るとよく似合う。要するにサフィアもユリアも似合っている。


「一がこれを見たら喜ぶだろうな」


「あの人と同じ学校なのですか!?」


それを聞いたサフィアはショックを受けたようだ。若干顔が引きつっている。


「……あの人?」


「俺の幼馴染だよ。舞鶴一ってんだ。サフィアは一度会っててなその時に一に苦手意識を持ったんだよ」


「春楽の幼馴染とはいえその男大丈夫なのか?サフィア様に苦手意識を持たせるなど一体何をしたんだ?……場合によってはその者を警戒しなければ」


本気で考え込むユリア。サフィアが絡むと昨日のゴブリン達のように容赦なさそうだから一応一に万が一が起こらないように言っておく。


「そんなんに心配しなくても大丈夫だ。あいつは初対面のサフィアが気を使わないように少し取っつきやすいように接しただけだ。……まぁそれが裏目に出てサフィアが少し苦手意識を持っているんだけどな。それでも(あいつ)は頼りになるしクラスのみんなからも好かれてるし女子連中もたまになにか言うことがあってもその言葉に棘がない。だからそんなに考えなくても大丈夫だ」


「そこまで言うなら大丈夫、なのか?このあと会ってみてから判断するとしよう」


「サフィアもがんばって克服して見せます!」


少し身を乗り出すようにして意気込むサフィア。


「そういえばうちの制服なんてどうやって用意したんだ?」


「私が昨日の夜のうちに全て用意したのだ!もちろん制服以外にも必要なものは全てそろえてある!」


「すげぇな」


「ユリアはなんでもできてしまうようなタイプなのです!サフィアの自慢の従者です」


「……私などそんな!いえ、お褒めに与り光栄です!」


なんか、うちの親のやり取りを見てる感じだな。あれよりかはマシだけど。


「っと、サフィア様そろそろ私たちは出発する準備をした方がいいですね。私、お弁当を作ってきます」


「早くないか?まだ六時前だぞ」


はっと気が付いて急いで準備をしようとするユリアに告げた。


「私たちは転校してきたことになる。だからそれを自然なものと認識させるために早くから学校に行かねばならないのだ」


それだけを言うとユリアは下に降りて行った。


あれか、変な時期に転校してくるけどそれを若干不思議に思いつつもなぜか納得してしてしまうというマンガでよくあるやつか。都合のいい能力も使用には条件があるようだ。この場合は対象の近くにいること的な感じか。


ユリアが弁当の準備をしに行っている間サフィアが部屋に留まり再び寝ることが出来なかったのでしばらく梓酒匂台高校について話してやった。



彼女が下に降りると春楽の母である秋楓が起きてきていた。


「おはようございます、秋楓様。お早いのですね」


「あら、おはようユリアちゃん。様だなんていいのに」


「いえ、そういうわけにもいきません。私は従者ですので第二の主人である冬馬様と秋楓様と呼ばせていただきます」


「そお?それなら少し気になるけど仕方ないわね」


「それでは私はお弁当の準備がありますので」


「私もそれのために起きてきたのよ」


「では、手伝わせていただきます」


「頼むわね」



時刻は午前六時四十五分

今日はサフィア達について行くためいつもより早く朝食を済ませ出発の準備を終えようとしていた。

そして五分後すべての準備を終えて家を出る。家を出るとサフィアとユリアが待っていた。


「遅いですよ春楽!」


「サフィア様を待たせるとはどういう神経をしているのだお前は!」


「あーすまんすまん。じゃあ行くか」


「少しは反省の色を見せろ」



家から学校までの約十五分間。サフィアとユリアは楽しそうに学校に入ってからのこととか話しているが俺は若干不安が残っている。

その一つがゴブリンがまた懲りずに出てくる可能性がある。いや、最初のサフィアの言いようだとちょっかいをかけてくるのはゴブリンだけじゃなさそうだし、それらが学校にいる間に出てこない保証はない。


そんなことご顔に出ていたのかそれに気づいたユリアが話しかけてきた、


「何を不安そうな顔をしているのだ?」


「昨日みたいにゴブリンとかが出てきたらどうしようとかそんなことだ。学校にいる間にこない保証はないだろ?」


「なんだ、そんなことか。なんのために私がいると思っているのだ?サフィア様には一切手出しをさせん!」


「そうじゃなくてな、後始末とかだよ。誤魔化しきれねぇだろ?」


「私が気絶さえさせればサフィア様が魔界に送還される。周りの者には私が自然に思わせておく。それにサフィア様1人ならともかく今は私がいるのだ手を出してくる輩など早々おらん」



杞憂のしすぎか?ユリアがそういうなら大丈夫なんだろう。少なくとも俺よりはそういった経験も積んでいるだろうし。



「あっ、春楽ここじゃありませんか?入り口に『梓酒匂台高校』って書かれてありますよ」



考えていたらすぐだったな。もともと大した距離ではないが。


「ああ、そうだな」


「では、行きましょう!楽しみですね、ユリア!」


「サフィア様!そんなに走られて、先に行かれては困ります!!」



2人は去ってしまった。


俺もこの時間に合わせてくる必要なかったんじゃないか?まぁ、たまにはこんなことがあってもいいか。

この時間ってみんないるのか?


サフィア達が教室にくるのは朝のホームルームの時だから先に教室に行くことにする。

そんな時に後ろから声がかかった。


「あれぇ?春君じゃん!珍しいねぇ、こんな時間に学校来るなんて」


春と呼んでいるが一ではない。一が俺のことを春と呼んでいるから俺のことを春と呼ぶ人は多い。


「島崎か。ちょっとした用があって早めにきたんだよ。島崎はいつもこの時間なのか?」


「あたしは朝練で、ってそろそろ行かなきゃ!またね!」


慌てて走り去って行った彼女は島崎岬(しまざきみさき)うちのクラスの学級委員長だ。ポンコツ学級委員とか言われているがクラスからの信頼は厚い。実際どこか抜けているのは確かだ。ポンコツ学級委員というのも親しみを込めて呼ばれているため言われれば本人も一応むっとするがそのことを知っているため特に気にしてる様子はない。

髪は短く活発な印象を与えられる。目鼻立ちは整っていてボーイッシュな感じで女子にもファンがいるとかいないとか。陸上部に所属しているが成績はあまりよろしくないらしい。だが、彼女の運動する姿は美しいと言われていて俺も体育の時に見たことがあるがそれがよくわかった。

形容し難いが何故か魅入ってしまう。


彼女以外の朝練組と会うかと思ったが会うことはなく教室へ着いた。彼女は時間ギリギリだったようだし他の朝練組はすでに朝練に行っていると考えるのが普通だ。


教室のドアを開けると一人机に向い何か書いている女子がいた。

向こうも俺が入ってきたのに気づいたらしく振り向いて


「あ、おはよう相模君。早いんだね、今日は」


「おう扇藤、おはよう」


彼女は扇藤孤々実(せんどうここみ)。クラスメイトだ。正統派黒髪ロングの美人で才色兼備。男子からの人気NO.1だ。誰に対しても優しく振る舞うことから一部では大天使と呼ばれている。顔のパーツからスタイルまですべてが黄金比のパーフェクト美人である。

ここまで完璧だと女子にも嫌われていないようでクラス中から人気を得ている。

ただ一だけは何か裏があるというか闇が深そうとか言っていたが彼女に話しかけられたりするとテンションが上がってたりしているからその言葉が本当なのか嘘なのかは分からない。


「扇藤はいつもこの時間なのか?」


「ううん、今日はたまたまやることがあったから」


「その今書いてるやつか?」


「うん、先週の週番の人が最後の日にすっぽかしちゃったみたいで…。それで私が代わりに。朝早くに仕上げて持っていったらそんなに怒られなくて済むかと思って」


これだけではないがこれが大天使と呼ばれている所以である。


「すごいな、扇藤は。そこまで人のために献身的になれるなんてさ」


「私なんてそんな、こんな分かりやすい感じでしかできないいから。……さg」


「おーっすぅ!なんか春の家の方が騒がしいなと思ってたらやっぱり早く来てたか。昨日の件はどうにかなったんだな」


彼女が言葉を続けようとした瞬間ドアが勢いよく開かれ一が入ってきた。


「なんだ一か」


「あれ?そこにいるのはクラス……いや、学校NO.1の美人扇藤孤々実さんじゃないですか!!こんな朝早くから……あ、そういうことか悪いな春邪魔したわ。だがな春よ、お前は全学年の男子を敵に回したと思えよ?そしてそれは俺も例外ではない!せいぜい夜道は気を付けるんだな」


「全然邪魔になってないしそんな勘違いすんな!!あと俺だけじゃなくて扇藤にも迷惑かかるからせめて二人の時にしろ!そういう冗談は。扇藤も気にするなよ」


「う、うん。私は大丈夫///」


なんでそこで照れるんだ?


半分くらいは慣れたとはいえ大概にしてほしいな。


そのまま一と雑談にもつれ込み、そのうちクラスのみんなが次々と登校してきた。

そう言えば扇藤なんか言いたそうだったな。一が来て聞くことができなかったけどなんなんだ?まぁ、いいか。今度聞こう。


そして迎えた朝のホームルーム。

なんかこっちが緊張して来たぞ。あの後二人とも見ていないが大丈夫だっんだろうか?

もし、ユリアの力が上手く働かなかったりしたら普通に怪しい二人としてつまみ出されるだろうな。まだ、それならいいか。警察沙汰とかにでもなったら不法入国者扱いされるだろうな。人間じゃないからビザとけ持ってないし俺の名前とか出されたときには……。考えるのやめよう。多分大丈夫だ。


チャイムが鳴ってから約1分後小汚いという印象を与える担任が入ってくる。うちの担任がチャイムのあと数分遅れて教室に入ってくるのはいつものことだ。


「うーす。とりあえずおはよう。んで、連絡事項が……まぁ一つでいいか。喜べお前ら、こんな変な時期だが転校生だ!それも二人もな。んじゃ、入ってくれ」


ガララッとドアが開きサフィアとユリアが入ってくる。

その瞬間一を筆頭として男子たちの間でどよめきが起きる。

そういえば一はユリアのこと知らなかったな。……相性悪そうだ。


「よかったなー、男子諸君。こんな可愛い子が二人も来て。じゃあ軽く自己紹介してくれ」


少し緊張しているのか表情がいつもより硬いサフィア。隣でユリアが「先ほどまで楽しみにしていたではありませんか、頑張って下さい」と小声で告げている。

そして


「えっと、サフィア・エイル・クロスロードといいまふ……ます!あの、皆さんよろしくです!」


言い終わったあとペコリと頭を下げた。


……噛んだ。顔を真っ赤にしながらも最後まで言い切ったな。最後に頑張って笑顔まで。

だが、それが功を奏したのかみんなの反応はいいぞ、主に男子の。


「……なんだよ、謎の外国人美少女転校生って!反則だろ!!」


「やべぇ、途中で噛んだのなんかやられたわ」


「俺、このクラスでよかった」


などなど歓喜している。

女子の方にもうけたみたいで好印象だ。


「なにあの子可愛いー!」


「よろしくねーサフィアちゃん!」


ああいうのってあざといとか言われて女子の間では嫌われそうだけどよかったなサフィア。

そもそもうちのクラスにはそんな空気が流れることになるような奴はいないんだけどな。


「はい、静かに騒ぐな。もう一人いるんだから」


「私はユリア・フィリアーネと申します。サフィア様の従者です。クロスロード家の使用人も兼ねています。あと、先程の男性陣の反応に一言言わせていただきます。私の目の黒いうちはサフィア様には指一本触れさせるつもりはありませんのでそのことをよく覚えていて下さい。これからよろしくお願いします」


最初から中々キツイ事言うな。

だが、ユリアもユリアで男子達の反応はいいみたいだぞ。


「……ドストライクだわ」


「あれはあれでありだな」


「可愛いからいいや」


男子だけでなく女子にも好印象のようで


「従者ってことはやっぱりサフィアちゃんてお嬢様なんだ!?」


「すっごい美人さん!」


ユリアの奴湯気出るんじゃないかってくらい真っ赤になってる。

なんにせよ馴染めそうで何よりだ。


「自己紹介終わったら適当に空いてる席に座ってくれ」


「はい!」


「サフィア様、ちょうど二つ並んで空いていますよ、そこにいたしましょう」


そういえば知らないうちに席が二つ増えてる。

みんなも今そのことに気がついたようでざわついている。もう一つはサフィア達の席の周辺のの奴らが席が増えてることとは別の理由でざわついている。美少女、美人の転校生が近くの席にくるからな。てか、そいつらは席が増えていることに気づけや。


「よろしくお願いしますね」


先に着くと隣近所の奴にベターな挨拶をする。

俺の席とは一列挟んで隣だ。割と近いな。それなら気づけよ俺。


ちなみに席の並びは俺が前から4番目で前に一がいる。そして一列挟んで隣にサフィア、その隣がユリアだ。扇藤はサフィアがいる列の前から2番目でその隣が島崎だ。


「席ついたかー?ならこのまま一限始めるぞ。俺はこのクラスの担任の谷仁(たにひとし)史学担当だ。んじゃ、始めるぞ。あぁ、礼はいいや」



チャイムが鳴り一限が終わった。

そして転校生が来た日の休み時間はしばらく質問責めとなる。


「やっと終わったか、よし春あの二人のところへ行くぞ!」


「俺行く意味あんまりないんだけど」



「すごーいこの白い髪綺麗!シャンプーなに使ってるの?」


「赤毛も綺麗!それ地毛?」


「サフィアちゃんてお嬢様なの?」


「うっ、近寄れない!」


「諦めようぜお前の場合休日にでもうちに来ればいいだろ?」


「……なぁ春。一つ聞きたいんだがあのユリアちゃんて娘はサフィアちゃんの従者なんだろ?ならやっぱりあの娘も春の家に住んでるのか?」


一がワナワナとして聞いてくる。


「ああ、そうだけど」


「お前さぁいくら幼馴染とはいえ一回切れていいか?なんでお前のところにはあんなに美少女と美人が転がり込んで来るのに俺のところにはこないんだ!?困ってるならどっちか一人受け入れるよ!?」


「……一が良くても親がダメだろ?うちの親が特殊すぎるから成り立ってるだけだからな?」


「……」


急に黙ったな。しかも少し俯いて。そんなにキツく言ってしまったのか?


「じゃあこうしよう、しばらく春の家にお世話になっていい?」


「絶対ダメ」


少し心配して損した。そういえばこいつはそんな奴だった。


そうこうしているうちに二限を告げるチャイムが鳴った。

……二限は英語か。苦手だな。



やっと終わった。苦手な教科の授業は辛いな。

三限は確か移動だったな。移動なら途中で少しは話せるんじゃないか一も。


「おい、一……」


「舞鶴、もうお前しかいない。あの女子たちに占領されてしまっている二人と話す機会を俺たちに与えてくれ!」


「ふははは、任せろ!というわけだ、行くぞ春!!」


「おおお!行ってこい、春にも一応期待しとくわ!」


「……一応って。てか、次移動だぞ?」



一に強引に連れて行かれて移動中のサフィア達は10歩ほど前にいる。


「なぁ、俺って必要か?正直俺はあの女子達の雰囲気の中に割って入れる気がしないぞ」


「そりゃ俺も同じだ。だから春を連れてきた!」


「意外だな。サクサクッと入りそうなイメージだったけど。」


「俺が行けるのは4,5人までだ。なんなに何十人もいたら無理だ。しかもいつの間にか他クラスの女子も加わってる」


「……でも、後ろであいつらが期待の眼差しで見てんぞ。それよりもう時間が、さっさといかねぇと」


「……失敗か」



その後三限と四限の間の休み時間も接触に失敗。四限が終わり昼休みに入っていた。


「あれ、まさか忘れてきたのか?」


「どうしたよ春」


「いや、弁当忘れてきたみたいで」


「ありゃりゃ、そりゃ災難だな。俺の分少し分けてやるよ。これ食ったら仕掛けないといけないしな」



その頃のサフィア達は男子達の葛藤も知らず、すでに弁当を食べ始めていた。


「えーこのお弁当ユリアちゃんが全部作ったの!?すごい!」


「よろしければ少しどうですか?」


「いいの?じゃあお言葉に甘えて一口……あっ、これすごい美味しい!!」


「流石はユリアですね」


「なんかサフィアちゃんとユリアちゃんて全然主従の関係って感じがしないよね」


「あー確かに」


「ユリアはサフィアが生まれた頃から一緒にいますので従者というよりは大切な友人です」


「サ、サフィア様。私のことをそのように思っていただいでいたとは」


「ユリアちゃんて最初は堅そうだねーって思ってたけどそんなことなかったね」


「むしろそこが可愛いというか」


「やっやめてください//」


「照れてる可愛いー」


「あっ少しいいですか?失礼します」


そんな女子達の会話を横目に男子達は次なる作戦を考えていた。


「ああ、いいなぁ、俺たちも話したい」


「安心しろ、これ食ったら仕掛けるから」


「本当か?さっきは全然ダメだったじゃねぇか」


「任せろ、とっておきの作戦がある。春にはちょっと犠牲になってもらうが弁当少し分けてやるんだからそれくらいは協力して欲しいなぁ」


「すまない、少しいいか?」


「おお!?ユリアさん!?」


「俺たちに何かご用がおありでしょうか?」


……散々話したいとか言ってたくせにいざ話すきっかけができれば急によそよそしくなりやがって。


「いや、私が用があるのは相模春楽だ」


「おう、どうした?」


男子達からの視線が痛い。


「その、お前の分の弁当を渡し忘れていてな。私も今思い出したのだ、すまない」


それだけ言って弁当を置いて行くとユリアは戻っていった。ていうか、この状況でそれはやばいぞユリア。


「お前の最期の晩餐はそれでいいな春よ?」


「言え!一体どんな手を使った!?」


「ていうか、どういう関係なんだ?」


「馬鹿野郎!わざわざ手作り弁当渡しに来るってことはそういうことだろうが!」


「つまりこいつは裏切り者というわけか」


「てか、お嬢様の従者といつ知り合ったよ」


……事情を理解していないとは言えよくもまぁこんなに盛り上がれるな。まぁ、事情を理解したらしたで殺されそうだけど。

誤解を解かないといけない。


「えー!今のってどういうこと!?」


「お弁当渡しに行くってことは……」


「ユリアちゃんと相模は付き合ってるってこと!?」


「そっ、そうなのですかユリア!?いつの間に!?」


「えっ!?ち、違いますから!!!


「えーでも何の関係もないのにお弁当渡しに行かないでしょ?」


女子の方も盛り上がってんな。なんか扇藤がこっち見てるし。

説明するにしてもしたら男子も女子も変に盛り上がるだけだしあんまり意味なさそうなんだよな。


「ほら、照れてないで認めちゃえばラクだよぉ〜?」


「私は春楽(あいつ)の家にお世話になっているだけでそう行った関係ではあるません!」


ユリアが言っちゃったか。周りの反応は当然一瞬固まったな。


「え!?」


「それって、一緒に生活しているってことなの?ということはサフィアちゃんも?」


「相模、今後は背後に気をつけろよ?」


「サフィアはうちの遠い親戚なんだよ、訳あって今はうちにいるだけだ」


「でも、サフィアちゃんは親戚でもユリアちゃんは違うから……やっぱり」


クラス全員の視線が俺とユリアに集まる。なんでサフィアも見てんだよ。そんなことないって知ってるだろ。


「サフィアちゃんの家の使用人も兼ねてるってことはサフィアちゃんのお弁当を用意するついでに用意したんじゃないかな?居候ってことだしそれくらいは不自然じゃないでしよ?」


おお、なんか扇藤が助け舟出してくれた。


「そうです、サフィア様の分を作るついでに作っただけですから」


「まぁ、扇藤さんが言うならそうなのかもな」


おかげで主に男子を中心にほとぼりが冷めた。

この機会を逃さず一が切り込んで男子達も話をすることができ一応ハッピーエンドか。


「あー、扇藤。ありがとうな」


「ううん、ユリアちゃんと相模君の反応が違ってて違うのかなって思って確かめたかっただけだから。……でも、違っててよかった」


「え?最後、何て言った?」


「な、何でもないよ!」


「そうか、おかげで助かったわ」





「あー、なんか今日すげー疲れた」


家に帰るなり部屋のベッドにダイブして大きくため息を吐いた。

続いて部屋に荷物を置いてきたサフィアとユリアが入って来る。


「全くだ。悪い人たちではなかったが男女の仲が絡むとああなってしまうのか?」


「そりゃどこも同じだろ?当事者になったのは初めてだが」


「でも、賑やかで皆仲良くて楽しかったのです!」


「サフィア様が良かったのなら私は何も言いませんがああいったことは今後ないようにしたいものだな」


「……こっち見られてもな。それはあいつらに言ってくれ」


「そろそろ私は家事の手伝いに行って来る。サフィア様を頼んだぞ」


「頑張って下さいね」



不意に会話をとぎって急いで下へと降りていった。ほんとにしっかりしてんな。


「で、楽しみにしてた学校初日はどうだった?」


「文句の付けようがないほどいいところでした!皆さんすごく親切でお菓子なんかもいっぱい貰っちゃいました!授業の方も全く問題ありませんし楽しかったですよ」


「そりゃよかったな、一には慣れたか?」


「いえ、まだ少し……。それより色恋沙汰とはそんなにも魅力的なのでしょうか?みんなの雰囲気が少し変わっていましたし全員あんなに盛り上がるなんて」


「俺も他人に浮いた話があれば興味は湧くな。今まで当事者になるなんて経験なかったから今回勘違いとへいえ当事者になってみて大変だなとは思った」


「確かにあの時は驚き以外にも別の感情が湧きましたがサフィアにはよくわかりません」


「そりゃサフィアがまだガキだからだろ。そのうち分かる」


「もうっ、サフィアは子供じゃありません!!」





時を同じくする頃、扇藤狐々実は自室で悩んでいた。


相模君、朝に少し話せたけど。ユリアちゃんの方がポイント高いよね。お弁当を作るなんて難易度高すぎるよ。しかも一緒に生活してるし。

……いいなぁ。


頑張らないといけないよね、私。






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