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甘え上手な彼女  作者: Joker
付き合う事になりました
6/44

♯6

「え? 何! 宮岡さんってあいつの事好きだったの?!」


「えぇ、何か問題?」


「い、いや…問題って事はないけど……」


 紗弥に尋ねて来た、一人の男子生徒に、紗弥は落ち着いた様子で答える。

 言われた男子生徒は、返答に詰まってしまった。


「なんでこの時期に?! まさか二人とも前から知り合い?」


「昨日まで、ろくに話しもしたこと無かったけど?」


「ほ、本当に宮岡さんの方から告白したの!?」


「えぇ、私から昨日彼に言ったのよ」


 次々と来る質問に、紗弥は淡々と答えて行く。

 教室の他の生徒は、紗弥の話しを聞き、高志と紗弥の話題で持ちきりになった。


「ちょっと! 良いの? そんなあっさりバラして!」


「別に良いじゃない? その方が悪い虫も寄って来ないし」


「相変わらず、紗弥は八重君に夢中なのね……」


 心配そうに言う由美華に、紗弥は何食わぬ顔でそう言い放つ。

 教室の中では、一部の男子生徒が夢も希望も無くしてしまったように、真っ白になり。

 女子は、今まで恋バナの一つも無かった紗弥が彼氏を作った事に、興味津々の様子だった。 そんな中、紗弥はスマホを弄りながら、ホームルームが始まるのを待った。





 教室が軽いお祭り状態になっているころ、高志は優一と共に学校の屋上にやって来ていた。

 屋上のフェンスに背中を預けながら、高志は昨日の出来事を優一に説明していた。


「なるほど……それで、付き合う事になったと……」


「あぁ、俺も昨日は色々ありすぎて……」


「そうか……お前も疲れただろう、今楽にしてやるからな」


「その荒縄はどこから出した?」


 心配そうな表情を浮かべながらも、優一はどこからか取り出した荒縄を高志の足に結び始める。


「大丈夫! この縄頑丈だから!」


「おい、バンジーか、バンジーをやらせようとしているよな?」


 高志は、優一の持っていた荒縄を没収し話しを再開する。


「俺も正直驚いたよ……お前のアイコンの隣にあのマークが出てたの見つけて、すぐさまお前と俺の共通の友人に、一斉にメッセージを送って……その後返信の対応して……」


「やっぱり見てたのか……しかも既に広めてるのかよ」


 どこか遠くを見つめながら、やりきったような感じの表情を見せる優一に高志はため息を吐く。


「嫌な予感はしたけどさ……」


「そうは言っても、お前も迂闊(うかつ)だぞ? あのマークが付くって事は「彼女ができました」って自分から公表するようなものだ。俺が何もしなくても、誰かがしてたと思うぞ?」


「違うんだよ……あれは……」


 高志は、昨日の紗弥との連絡先交換時の一連の出来事を説明する。

 自分が望んだのでは無く、紗弥が望んだ事だと告げると、優一は驚き高志に尋ねる。


「え? あの宮岡が? あの男を全く相手しない宮岡がか?」


「あぁ、半ば無理矢理に……」


「……お前……金銭を要求されてるとかじゃないよな?」


「まぁ……普通はそう考えるよな……あの宮岡だし……」


 宮岡紗弥と言う女子生徒は、この学校では一切男になびかない、クールビューティーな美少女として有名だった。

 そんなイメージしか無い宮岡が、そんな事をするとは、誰も考えられなかった。

 しかし、高志は昨日あれだけの事をされたうえに、今日は手を繋いで登校までしてきた。

 流石にもう夢では無いと気がついていたが、なにか裏があるのでは無いかと、思わずにはいられなかった。


「ま、なんにせよ気をつけろよ、お前はあの宮岡と手を繋いで登校したんだ、どれだけの男子生徒を敵に回したかわかってるのか?」


「まぁ……大体……」


 朝、昇降口から教室に向かうまでで、既に多くの殺気を感じている高志は、自分の身の危険を感じていた。


「かく言う俺も……リア充を憎む男子生徒の一部なので、一発くらい殴りたいと考えている」


「先生! ここに今まさに非行に走ろうとしている生徒がぁぁ!!」


 高志は、友人の迷いの無い目を見て恐怖を覚えて叫ぶ。


「馬鹿野郎! 百発のところをまけにまけて、一発で済ましてやろうってんだ!」


「一発も殴らない方向にはならないのかよ!」


 高志は、拳をワナワナと振るわせて近づいて来る優一から距離を取る。

 優一は拳を握りしめ、ゆっくりゆっくりと高志に近づく。


「お前……あれだけの美人に迫られたうえに……部屋で二人っきりだとぉ……羨ましいんじゃボケェェェェ!!」


「落ち着け馬鹿! それはただの嫉妬だ!」


「やかましい! 紐有りバンジーか、俺の拳百発か……選ばせてやろう」


「だからなんで紐有りなんだよ! しかも結局百発殴るのか!」


「安心しろ、紐の長さは校舎の高さより長い」


「安心出来るか! バンジーになんねーだろ! 即死だ!」


 そんな会話をしながら、高志と優一が屋上で鬼ごっこをしていると、ホームルーム開始のチャイムが鳴った。

 

「ちっ! 運の良い奴め……」


「それが友人に対して言う台詞か! どっかのラスボスみたいな台詞だったぞ!」


 などと話しをしながらも、高志と優一は教室へと戻って行く。

 




「あの……今なんと?」


「だから、一緒にお昼食べようって」


 時間は過ぎて現在はお昼。高志も昼飯を食べようと優一と学食に向かおうとしていた。

 あの後、授業と授業の間の休み時間の度に、高志はクラスメイトからの質問攻めにあった。 昨日の出来事についてや、どうやって紗弥を落としたかなど、逆に高志が聞きたいような質問ばかりだった。

 そんなこんなで、ようやく昼休みとなり、高志は一刻も早く教室を出て、学食でゆっくり食事をしたかったのだが、その行く手を紗弥が塞ぐ。


「えっと……俺は飯は学食か購買派なんですよ……宮岡みたいに弁当じゃないし、今日は別々でも……」


「そうだと思って、八重の分も作って来たから一緒に食べよ」


「な……」


「「「「なんだってぇぇぇ!!」」」」


 高志が答える前に、教室の男子生徒が声を上げて叫ぶ。

 男子生徒の叫び声に、高志は思わず教室を見渡す。そこには、膝を抱えてうずくまる者や、地面に両手をついて絶望の表情を浮かべる男子生徒の姿があった。


(個性的なクラスだなぁ……)


 咄嗟にそんな事を考えてしまう高志は、このクラスで上手くやっていけるか、心配になってきていた。

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