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甘え上手な彼女  作者: Joker
文化祭と気持ち
41/44

♯41



 文化祭が終わり、高志達は教室の片付けをしていた。

 クラス賞は逃したものの、かなりの収益があった為、打ち上げ場所は焼き肉屋になり、皆早く焼き肉を食べたい一心で、片付けを終わらせようとしていた。


「はぁ……しかし、今年の一年は凄かったなぁ~」


「絶対私たちがクラス賞だと思ったのにぃ~悔しい!」


 片付けをしながら、二年三組のクラスの生徒は悔しがる。

 あれだけ頑張って取り組んで、二位は悔しいと誰もが呟きながら作業をしている中、高志と紗弥はと言うと……。


「紗弥、それ取ってくれ」


「はい、これでいい?」


「あぁ、ありがとう」


 教室の装飾を外して箱にしまっていた。


「紗弥、落ちるなよ?」


 紗弥が椅子に乗り、高志が紗弥が外した装飾品を受け取り箱に入れていた。

 

「大丈夫だよ、そんなに心配しなキャッ!!」


「紗弥!」


 言ってる側から椅子から足を踏み外す紗弥。

 高志はそんな紗弥を間一髪で抱きかかえ、紗弥が転ぶのを防ぐ。


「はぁ~、危ないって言ったろ? 大丈夫か?」


「うん、ありがと……でも、もう少しこのままが良いなぁ…」


「え、いや、あの……教室だし……」


「じゃあ、また後で良いから……ちゃんとぎゅってしてね」


「そ、それなら……」


 人目も気にせずイチャつく高志と紗弥に、教室中から恨みと嫉みのこもった視線が向けられる。


「けっ! 終わってもこれかよ!」


「クソ! 俺だって夏休みに入れば!!」


「おいコラ! そこの二人! イチャイチャしてないで働け!!」


 最早このやりとりも定番になりつつあった。

 高志は紗弥から離れ、再び作業に戻る。

 片付けは一時間程度で終了し、クラス全員が集まりこの後の打ち上げについての打ち合わせを始める。

 中心になって話しを進めているのは、今回最もやる気を出して取り組んだ、優一だった。


「よし! 全員いるか!」


「いるぞ~」


「早く終わらせようぜ、一回帰って着替えて来たい」


「それもそうだな、まぁ打ち上げの時に詳しい事は話すが、まずはお疲れ様!」


「「「お疲れ~」」」


「まぁ、残念ながら一位は逃したが……収益はかなりの物だった! なので、打ち上げは駅前の焼き肉屋を予約した!!」


「「「うぉぉぉ!!」」」


「結構良い店だ、みんなよくやってくれた! トラブルも無く終わる事が出来たのも皆のおかげだと俺は思っている! それでは、夕方19時に駅前の焼き肉店に集まってくれ! 以上、解散!!」


 優一のかけ声と共に、クラスの生徒は一斉に帰宅する。

 時刻は現在夕方17時、皆急いで家に帰宅し、着替えをしてこようとダッシュで帰って行く。

「俺達も一旦帰るか」


「うん、私たちも急がないと間に合わないもんね」


 高志と紗弥も急いで帰宅しようと、教室を後にする。

 電車通学の二人は、帰宅する時間を電車の時間で大きく左右される為、急いで駅に向かう。 なんとか、電車に乗ることが出来た二人は電車に揺られながら、駅に到着するのを待つ。

 二人は電車でも手を離さず、互いの手を握ったまま、電車の座席に座る。

 

(そう言えば……付き合ったばっかりの頃は、恥ずかしかったな……)


 自分と紗弥の繋がった手を見ながら、高志はそんな事を思う。

 今では、手を握られようが、腕を組まれようが、別に恥ずかしいと思わなくなっていた。

 慣れたという事もあったが、一番は高志の気持ちの変化が大きかった。


(……今はなんか、こうしてるのが自然になっちまったからな…)


 自分に寄りかかる紗弥を見ながら、高志はそんな事を考えて笑みを浮かべる。


「ん? どうかした?」


「いや……なんでもない」


 彼女が隣に居てくれる事が、何よりも幸せなんだと言うことに気がつく高志。

 自分を見上げる紗弥を見ながら、笑みを浮かべてそう言い、視線を前に戻す。


「? 変な高志」






 着替えを終え、高志と紗弥は焼き肉屋にやって来ていた。

 時刻は19時3分前で、かなりギリギリの到着だった。


「悪い、遅くなった」


「遅いぞ! 全く、お前らバカップルは……どうせイチャイチャしてて遅くなったんだろ!?」


「そういう言い方はやめろ」


「まぁ良い、さっさとこっちに来て座れ」


 そう言って優一は、自分の隣の席と向かいの席を指さす。

 あらかじめ、高志と紗弥の席を決めて居たようで、その席だけ丁度空いていた。


「優一の隣かよ……」


「なんだその顔、まさか打ち上げまで宮岡とイチャイチャ出来ると思ったか? フハハ! そうは行かんぞ! お前には俺の話しに付き合って貰うからな!!」


「はいはい、まぁ何でも良いけど、さっさと始めようぜ、皆待ってるぞ?」


「お、それもそうだな」


 優一は席から立ち上がり、全員の方を見る。

 

「よし、お前ら三日間ご苦労! 学校でも言ったが、残念ながらクラス賞は取れなかったが、みんな本当によくやってくれた! 今日はじゃんじゃん食おう! じゃあ乾杯!!」


「「「カンパーイ!!」」」


 優一がそう言うと、皆グラスを持って声を上げる。

 みんな一斉に肉を焼き始め、高志達も肉を焼き始める。

 高志のテーブルには、いつものメンバーの優一と由美華、そして紗弥が座っていた。


「焼け焼け! どんどん焼け! 時間制限の食い放題なんだから、元を取るぞ!!」


「急かすなよ優一、もう網の上はいっぱいだ」


 高志はせっせと肉を焼き、優一が焼けた肉を食いまくる。


「ほら、紗弥も焼けたぞ」


「ありがと、でも私は少しで良いから」


「紗弥はサラダの方が良いんだもんねぇ~」


 正面に並んで座る、由美華と紗弥にも肉を取り分ける高志。

 完全に鍋奉行ならぬ、網奉行と化した高志だったが、別に悪い気はしなかった。

 優一に焼かれるより、自分で焼いた方が信頼出来るからか、高志はせっせと肉を焼いた。


「そう言えば、優一。秋村さんとはどうなったんだ?」


「高志……頼むからその事を聞かないでくれ……頭が痛くなってくる…」


「それほどかよ……」


 先ほどまでテンションの高かった優一が、芹那の話しをされ、一気にテンションが下がる。

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