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甘え上手な彼女  作者: Joker
友人達と悩み
26/44

♯26



 優一が告白を受けた次の日、珍しく高志と紗弥は屋上で二人きりでは無かった。

 屋上には、いつもは居ないはずの優一と由美華が居た。


「っと言うわけで……デートすることになった訳だが」


「どういう訳だよ……」


 優一は購買で買ってきたパンを口に入れながら、三人に言う。

 高志はそんな優一に視線を向けながら、肩を落とす。


「だから、なんか試しにデートすることになっちまったんだよ! それで、こうやってバカップルのお二人に、デートコースのアドバイスとかを貰おうとだな……」


「バカップルって、俺と紗弥の事か? 生憎だが、お前に出来るアドバイスなんてねーよ」


「おい! お前の相談には乗ってやっただろ! 俺の相談にも乗れ!」


「そう言われてもなぁ……」


 そう言いながら、高志は紗弥の方を見る。

 紗弥は食べ物を飲み込み、高志の方を向いて話す。


「私は高志が一緒なら何処でも良いかな?」


「こんな感じで、俺も紗弥と一緒なら神社でも楽しいんで……」


「悪い、バカップルのお前らに相談した俺が馬鹿だったわ…」


「その通りだと思うが、なんかむかつくな」


 優一は溜息を吐きながら、パンにかじりつく。

 いつもは食堂派の優一だが、今日は高志達に合わせて購買のパンにした。


「んじゃあ、女子代表で連れてきた御門の意見も聞こうか」


「なんでそんな上から目線なのかしら?」


「まぁ、いいじゃねーか……おかげで宮岡と飯が食えるんだから」


「う……そ、そうね……」


 由美華を誘ったのは、優一だった。

 カップル二人に優一だけでは混ざりづらく、最近良く話す由美華を誘ったのだった。

 誘われた由美華も、久しぶりの紗弥との食事とあって、上機嫌だった。


「デート……映画とかは?」


「あぁ、なるほどな、それなら無理に会話をする必要もないしな…」


 由美華の提案は優一に好感触だった。


「俺と紗弥の初デートも映画だったな」


「そうね、なかなか高志が手を握ってくれないんだもん、私から握ったのを覚えてるわ」


「いや、結構男からしたら勇気いるんだよ?」


 初デートの話しに、華を咲かせる高志と紗弥。

 優一も映画なら、話しの話題作りも出来て、なかなか良いのではないかと思っていた。


「有りだな、でその後は?」


「ウインドウショッピングとかはどうかしら?」


 この提案を出したのは紗弥だった。

 映画館の近くには、大きなショッピングモールもあるため、暇つぶしやデートのコースには丁度良かった。


「なるほどな…飽きたら、どっか店に入ってお茶でもすれば良いしな」


「そうなったら、完全に俺と紗弥のデートコースだな」


「マジか……なんかそれは嫌だな」


「おい、どういう意味だ」


 急にテンションを下げる優一に、高志は少し強めにそう言う。

 しかし、それ以外の案も中々浮かばず、結局は誠実と紗弥のデートコースを参考にする事になった。


「で、なんでデートなんて事になったんだよ?」


「いや、今日の朝、お互いを知る為に、まずは出かけようって言われて、半ば強引に約束を……」


「意外だな、あの子そんなに積極的なのか…」


「ちなみに私とどっちが可愛い?」


 紗弥は高志の顔を見ながら、突然質問してくる。

 高志は紗弥の顔を見て、小さな声で答える。


「……紗弥」


「ありがと」


「けっ! リア充が! 滅びろ!」


「那須君、それは貴方も滅びる事になるわよ…」


 いちゃつく高志と紗弥。

 そんな高志と紗弥に恨みの視線と滅びを願う優一。

 そして、そんな優一に呆れた様子で突っ込む由美華。


「はぁ……紗弥、本当に八重君にべったりね…」


「そうかしら?」


「そうよ……おかげで私とは全く遊んでくれないし……」


「そうかしら?」


「そうよ! 全く誘ってくれないし! お昼も別だし! 帰るのも別! 私がどれだけ寂しかったか……」


 紗弥に向かって泣く真似をする由美華。

 そんな由美華を見て、高志は優一に尋ねる。


「ちなみにお前は?」


「高志なんて死ねば良いと思ってた」


「あぁ、なんか知ってたわ…」


 高志は優一との会話を早急に終了し、紗弥に向かって言う。


「なぁ、紗弥。友達も大切にな?」


「そうね……ごめんね由美華、高志と付き合ったばっかりで、由美華と遊べなくて……今度、二人で買い物行こ?」


「う~、紗弥ぁ~、なんで彼氏なんて作るのぉ~? 紗弥は私のなのに~」


「私は高志の物なんだけど?」


「紗弥は物じゃなないと思うんだが?」


 由美華は紗弥に抱きつき離れない。

 よほど寂しかったのだろう、しっかり掴んで離そうとしない。

 

「なぁ、昼くらい二人じゃなくて、御門さんも呼んであげたら良いんじゃないか?」


「高志が良いなら、私は何も言わないわよ。由美華、そうする?」


「する! ありがとう紗弥~、大好きだよぉ~」


(それは、友達としてだよな?)


 仲良しムードの三人のなかで、優一だけは由美華にそんな疑問を持っていた。

 そうこうしている間に、あっという間にお昼休みは過ぎていった。







 休日の昼前、高志は着替えを済ませ、出かける用意をしていた。

 紗弥とデートという訳でもなく、今日は高志個人の用事で駅前に向かう予定が

あったのだ。


「にゃ~」


「ん? 行ってくるなぁ~チャコの爪研ぎ用の木、買ってくるから」


「にゃ……」


「流石にあの柱は無残だからな…」


 チャコは爪研ぎ用の段ボールを早々に壊してしまった。

 消耗品でしょうがないと思っていた高志だったが、代わりをすぐに買わなかったのが悪かった。

 チャコはリビングの部屋の柱で代わりに爪研ぎをしてしまい、柱は無残な姿に変わってしまった。

 今日は、二度とそんな事にならないようにと、爪研ぎ用の木を買いに、高志は駅前のペットショップに向かった。


「意外に種類あるんだなぁ……」


 ペットショップで無事目的の物を買い、高志は店を後にした。

 後は帰るだけだと思いながら、駅に向かおうとした瞬間、高志は見慣れた人物を駅前で見かけた。


「ん? 優一?」


 優一が芹那と一緒に歩いているところを見つけた。

 あちらは高志に気がついて居ない様子で、二人でショッピングモールの方向に向かって歩いていた。


「あぁ、確か今日か……デート」


 そう言えば今日が、優一と芹那のデートの日だったなと高志は思い出し、納得する。

 そんな二人を見て、高志はなぜか二人の様子が気になってしまい、気がつくと二人の跡をつけはじめていた。

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