難しい妹心③
俺には妹がいる。名前は千彩。
妹がどんなやつなのかと言うとそうだなぁ。
簡単に言うと俺(お兄ちゃん)のことが嫌いなのである。詳しく言うと嫌いかも?しれないのである。
本当のところ良くわからないやつなのだ。
可愛いけど怒ったら怖いし。ていうか常に怒ってる感じするし。でも可愛いし。
世の妹とはそういうものなのかもしれない。
嫌われても可愛い。
怒っていても可愛い。
クズだの馬鹿だのお兄ちゃんと呼ばれなくても可愛い。
妹というものは結局可愛い生き物なのだ。
俺は千彩が好きだよ。妹としてだからな!勘違いするんじゃないぞ!
激動の1日を終えた次の日の朝。
俺と千彩との兄妹登校という幸せな時間だったのに千彩が怒って去っていった。
何故去っていった?良くわからない。
紗倉の胸当て目隠しを楽しんだ…じゃなくされた直後だ。
こんなことで怒るかな?
悩んでいると隣にいた紗倉が
「僕分かっちゃったかも」
「何を?」
「千彩ちゃんのひ・み・つ」
「ひみつ?」
「そうそう!あはは、僕って察しいいな」
自分で言うなよ。当たってるかもわからないのに。
「教えてくれよその秘密とやらを」
「ん~どうしよっかな」
「おいおい、いいじゃないか。俺たちの仲だろ」
「じゃあ、条件に応えてくれたら教えてあげる」
「その条件にもよるけど、教えてくれよ」
「先に条件を言うと、僕と付き合ってくれたら教えてあげてもいいよ」
何を言っているんだこいつは。
付き合う?俺と紗倉が?ちょっと待て理解に苦しむ。
付き合うってのは彼女彼氏の関係になって一緒に登下校したりってこれはいつも通りか。
彼女彼氏の関係になって手を繋いだり、デートをしたりオシャンティなカフェで飲めもしないブラックのコーヒーを飲んだり、彼女の下着を選んであげたり、いい雰囲気になればき、きき、キスをしたりするあれか!!
カップルを見て羨ましいと思ったことは皆も一度はあるだろう。俺もある。
クリスマスの夜に2人で出かけたりしているのを見ると心が痛み……
リア充爆発!滅べリア充!ボッチ万歳!
なんてことも思ったことはあるよ。皆もあるだろ?
クリスマスなんてキリストの誕生日を祝うのに世のカップル達は誕生日を祝うどころか新たな命を育もうとする。
頭おかしいんじゃねーの?とか思っていたがそうなる時が俺にも来たのかもしれない。
クリスマスはまだ先の話なんだけどね。
脱童……じゃない脱非リア充!
話がずれてしまった。戻そうか。
たった今幼馴染である紗倉に告白的な条件を言われた。
告白なのか?告白だよな?
いきなりとことで頭が混乱している。
「さ、紗倉どういうこと?」
「だから僕と付き合ってくれれば千彩ちゃんの秘密を教えてあげるってことだよ」
「つ、付き合うってあれか。彼女彼氏になるってことだよな?」
すると紗倉の顔がトマトのように真っ赤になりだした。
「そ、そうだよ。あ、改めてそう聞くとは、恥ずかしいなぁ」
照れてるのか耳まで真っ赤になりだした。
「そんなに恥ずかしがるなよ。俺まで恥ずかしいじゃないか」
「恥ずかしいものは恥ずかしいよ。それでどうなの」
「どうって?」
「だから付き合うのか付き合わないのかだよ」
紗倉は可愛い。しかもおっぱいが大きい。
彼女にするには申し分ない存在だか俺は妹が…好き…だけど妹として好きなのだけれど俺も良くわからない。
だが妹以外の人と付き合うってなればそれはそれで嬉しい話ではなかった。千彩と付き合うかって言われると俺はどう答えるだろう。
と考えていると意外な言葉を口にした。
「ええっと。。おれ実は他に好きなやつが。。」
あれ?何を言って。俺の好きな人?居るの?分からない。誰だ。もしかして俺の好きな人って…
「…っぷ」
「さ、紗倉?」
「っぷ…あはははははははははは」
「な、なんだよ」
「いや~真剣に考えてるな~と思って。さっきの冗談なのに」
「……は?」
「だから冗談だよ。恥ずかしがってたのも演技。どう?上手だった?」
「ったくなんなんだよ。それでその条件が無くなったってことは千彩の秘密はどうなるんだ?教えてくれるのか?」
「ん~それはだめ」
「なんで!」
「今の千彩ちゃんのことを真剣に考えてあげるのはお兄ちゃんの役目だと思う。千彩ちゃん自身もきっとそれを願っている。僕が答えをあげるんじゃなく、君が考えて答えを見つけ出してあげて。そうじゃないとこれからも二人の仲は縮まらないと思う」
父さんと同じようなことを。
でも分からない。全くわからない。千彩も紗倉も。
何を言っているのか。俺の察しが悪いのか?
教えてくれよ。俺の何が悪い。
「わからない。紗倉の言っていることが。父さんにも似たようなこと言われた。その時は身体が勝手に千彩を追っていたけどさっきの千彩は本当にわからない。」
「晴くんはさ自分の好きな人と他の男と仲良くしてたらどう思う?」
「そりゃ羨ましいとかヤキモチとかかな」
「その気持ち大切にした方がいい。その気持ちがあれば千彩ちゃんと仲良くなれるよ」
そういうことか。俺が全て悪かった。ここまで察しの悪い奴いるか?俺くらいだろ。ラノベ主人公かよ。
「紗倉悪い、ちょっと行ってくる」
全速力で千彩を追う。
「晴くん……行ってらっしゃい…」
そういえば昨日も走ってたな。走るの好きだな俺。
そう遠くへは行っていなかった。
近くの通学路をトボトボ歩いていた。
「千彩!」
「な、なに」
「すまなかった。お前のこと何もわかってやれてなかった。」
「もういい。どうせ分からないよ私の気持ち」
「聞いてくれ千彩。実はなさっき紗倉に告られた」
「えっ。」
「だかなその告白断った」
「な、なんで?紗倉ちゃんおっぱい大きいし可愛いのになんで」
「俺には他に好きな人がいる。そいつはなわけも分からないことで怒ったり、すぐ泣いたり、そいつは俺のことをどう思っているか分からなかったが今の俺には分かる。前まで口を聞いてくれなかったり、遊んだりできていない。でもそれは全て俺が悪かった。悪かったな千彩」
「お、お兄ちゃん。。。」
目から1粒流れた涙を見るとドキッとしてしまった。
あぁ、可愛い。
「千彩、俺はお前のこと好きだぞ。妹として、1人の女の子として。お前のことが好きだ」
自分の気持ちがやっとわかった。妹が本当に好きで、千彩のことが本当に好きなんだな俺。
「お兄ちゃん…私…昔からお兄ちゃんのこと好きだった。お兄ちゃんとして好きだった。でもね、兄妹での恋愛は成立しないって知ってすごく辛かった。だから一生懸命諦めようとした。でもそうしようとすればするほどお兄ちゃんをお兄ちゃんとして見れなくなってきた。紗倉ちゃんと仲良くしたりしていつか取られるんじゃないかって。そう思えば…思うほど…」
「もういいよ、千彩。十分分かったから。」
身体が勝手に千彩を抱き抱えていた。
小さい身体。細くて力を入れればすぐに折れそうな感じ。
それでも必死に堪えていたんだとそう分かるくらいに震えている背中。
すごく我慢していたんだな。気づいてやれなくてすまない千彩。
「千彩」
「なに、お兄ちゃん」
「兄妹の恋愛は成立しないって言ってたよな?」
「うん」
「俺はそうは思わない。結婚は認められていないが恋愛をしてはいけないなんてのはないんだぜ?」
「そうだけど、友達がそういうのは気持ち悪いって」
「友達がなんだ。俺が居れば十分だろ?」
「でもパパやママは認めてくれない」
「俺がなんとかする!」
「できるの?」
「お兄ちゃんに任せろ」
兄妹以上恋人未満とかいう微妙な関係になった俺たちだが世間はなかなかこれを認めてくれないのか、それとも認めようとしていないのか分からないがはじめに当たった壁はかなりの高さだった。
その日の夜。
夕食は家族揃ってというのが家のルールだ。
今言うしかないと思った俺は千彩にアイコンタクトを取り親に言う。
「父さん、母さん。話がある」
「なんだ、改まって。何かしでかしたのか?」
「ちげーよ!」
ちょっとは空気読めよクソ親父!
こっちは緊張で胃がキリキリいってご飯食べるのもキツいんだよ。
「俺、千彩が好きだ」
「私、お兄ちゃんが好き」
「な、何を言っているんだ2人とも」
「ちょ、ちょっとママには何言っているのか分からないんだけど」
「変なことを言っているのは理解しているよ。でも本気なんだ」
「晴、兄妹が仲がいいのはいい。だがな超えてはいけない一線があるのはお前は分かるだろう。もう中二なんだから」
「わかる、だからそんないかがわしい関係になるつもりはない。ただ純粋に好きなだけだ」
「世間はそんな関係認めてはくれないぞ」
「認めなくていい。世間なんて関係ない。恋愛に他人の目なんてどうでもいい。親が認めてくれさへすれば」
「千彩はどうなんだ」
「わ、私は…お兄ちゃんと…結婚…したい」
突然の発言に俺もがビックリする。
結婚?!そんなの聞いてねーよ!しかも兄妹で結婚出来ないってさっき話したじゃん!!!
結婚なんて言うから父さんの顔がこ〇すばの作画並に崩壊しかけてるぞ!
「私、昔からお兄ちゃんのこと好きだったの。本気で結婚したいって思ってたの。なんでダメなの?なんで認めてくれないの。本当の気持ちを言っているだけなのに。」
「千彩…」
「ママはね、千彩の気持ちいいと思うよ。昔に言ってたもんね~晴と結婚したいって。でも世間は認めてくれないのよ。同性カップルとか認められているところはあるけど、兄妹の恋愛は認められていないの。千彩ももう大人なんだから分かるよね」
大人。親は皆都合の良いように済ます時に使う言葉。
大人と言うけど大人って何。子供じゃダメなの。親は子に対し大人になれだの大人なんだから分かるだの言うけれど、大人は子供の気持ちを理解していない。
大人のくせに。
子の気持ちも分からないのかよ。大人なのに。
そう思ってしまった。
「俺は、認められなくてもいい。千彩がいればそれでいい。結婚出来なくても、馬鹿にされても、気持ち悪がられても、妹の気持ちを俺が理解してあげれば俺は満足だ」
「お兄ちゃん。。。」
「千彩はどうしたい。俺とどうなりたい。」
「私は…お兄ちゃんと…結婚したい」
「世間が認めてくれなくてもか?」
「うん」
「友達に気持ち悪がられてもか?」
「うん」
「分かった。お前の気持ち俺が受け止める、そう約束したからな。俺たちが大人になったら結婚しよう。そして幸せに暮らそう」
「お兄ちゃん…大好き…」
この言葉を待っていた。あぁ俺は幸せだ。
世の妹とはこんな感じなのか?
いや、こんなにも可愛い妹なんて他にいないだろう。
お兄ちゃん大好き。
この言葉を録音して寝る前にリピートしたいくらいだ。
「ねぇお父さん、二人の気持ち分かってあげたら?」
「2人とも外で言いふらしたりするんじゃないぞ。ご近所付き合いってのもあるんだからな」
「分かってるよ」
「あと、ちゃんとゴムをつけてからするようにしろよ」
「そんなことやらねーよ!!!!!!!」
今日も1日色々あって疲れたよ。
何はともあれ二人の距離は縮まったがこの先どうなるかは分からない。このまま順調に毎日が過ぎればいいと思っていたのに。。。。。