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難しい妹心②

俺には妹(千彩)がいる。

千彩がどんなやつなのか簡単に言うと

俺のことが嫌いなのだ。詳しく言うと嫌いかも?しれない。本当は俺にもよく分からない。

ラノベとかアニメのようなお兄ちゃん大好き妹なんて存在しないのかな?皆の妹はどんな感じ?

俺は千彩のこと好きだよ。妹としてだよ?

前置きはこのくらいにしておいて本編といこうか。



ある放課後のこと、俺は妹の千彩(激おこプンプン中)としかも千彩の部屋で1体1で対面し正座をさせられていた。

なぜこうなっているかと言うと、幼馴染である紗倉を家に招き入れただけで千彩が怒り俺を千彩が部屋に呼び入れたのだ。

紗倉はというと下のリビングでゆっくりしているのかソワソワしているのかは知らないがゆっくりしているだろう。

俺はかと言うと妹の前で正座をさせられているのを理解出来ず頭の上に???が浮かび上がっていた。

「ち、千彩さん。なんで俺は妹の目の前でしかも妹の部屋で正座させられているのでしょうか」

なぜか敬語になってしまっている。

くそっ、怒ってる女ってこんなにも怖いのか。

「なんで正座させられているかって?分からないの?ほんと馬鹿だね」

「分からねえよ!いきなり紗倉に出ていけとか言ったり、何考えてるんだ!」

「思ったことを口に出しただけ。出ていって欲しかっただけ」

さっぱりわからない。小学生の頃よく家に来てたじゃないか。中学になってからは今日が初めてだが。

「なんで出ていって欲しかったんだ?」

「この家に入って欲しくなかった。それだけ」

「は?」

「わからないのならもうイイよ。話は終わり。私が出掛けるから家に居てもらえばいいじゃない」

「ちゃんと言ってくれないと分からないよ。おい、待てって」

話は終わったが千彩の言いたいことが分からなかった。

「なんなんだよ」

リビングに入ると心配そうに紗倉が言った。

「どうしたの?千彩ちゃん出て行っちゃったけどきっと僕のせいだよね。」

「違うよ。あいつが勝手にイライラしてただけだよ。こっちこそゴメンな、いきなりあんなこと言って」

「晴くんは悪くないよ」

「そうだけど」

沈黙がリビングを支配する。沈黙に耐えきれなくなった紗倉が

「僕今日はもう帰るね。用事あったの思い出したよ」

「ほんと悪かったな。」

「ううん、それじゃあまた明日ね」

「ああ、じゃあな」

玄関で見送り一人ポツンと自分の部屋へと戻っていく。

「今日は朝から色々あって疲れたな」

とベッドに横たわった。本当に疲れていたのか気がついたら寝ていた。

時間は18時30分。リビングへ行くと母さんが家に帰っていた。

「お帰り母さん」

「ただいま、晴。千彩は?どこに行ったか知らない?」

「知らないよ。急に怒って出ていった」

「も~、2人ともまた喧嘩したの?よく喧嘩するわね」

と笑いながら言ってくる。

俺だって本当は喧嘩なんてしたくない。もっと兄妹らしく居たいし、沢山お喋りをしたい。

千彩にお兄ちゃんって呼ばれたいし、遊びたい。

妹のこと好きなのに。兄妹としてだけど。妹は応えてくれない。向こうは見向きもしてくれない。どうしたらいい。何をすればいい。ここ数年間こんな事が続いていたから何も分からなくなってきた。それが当たり前のようで、それが日常になっていき、それがいまの関係。家族なのに、兄妹なのに一向に縮まらない距離。遠ざかって行っている気もする。近づけば必ず向こうが離れていってしまう。

「喧嘩なんてしたくてしているんじゃないよ」

「覚えてるかな~、昔千彩がね「あたちお兄ちゃんと結婚するんだ~!」って言ってたの覚えてる?昔の話だけどね」

「そんなことあったかなぁ」

「あったよ。晴が小学2年生くらいのときだよ」

「そんな前のこともう覚えてないよ」

「あの時の2人は仲良かったよ、晴の幼馴染の紗倉ちゃんと3人でよく遊んでたわね」

「それは覚えてる。楽しかったし」

「でもね、ある日から千彩が急に人が変わったかのように様子がおかしくなったの」

「晴が小学4年生くらいだったかな、その時から晴と遊ばなくなったり口を聞かなくなったりが始まったの」

「その頃からおかしかったのは俺も気がついてたよ。紗倉に妙な敵対心があった感じがしたし」

「なんでおかしくなったのか理由わかる?」

「分からない。母さん知ってるの?」

「知らないけど察しはつくわよ」

「何だよそれ」

「あははは、母親の勘ってとこかしらね。」

「余計に分からなくなった」

「まぁ、妹のことを思うなら自分でよく考えなさいお兄ちゃん。」

千彩の様子がおかしくなった頃のことはよく覚えている。

あの日を境に口も聞いてくれなくなった。

母さんとの会話が終わり千彩も父さんも帰ってきて皆で夕食を食べようと母さんが千彩を呼んできてと俺に言ってきた。

二階へ上がり千彩の部屋をノックする。

「千彩、晩飯だってよ~」

返事がない。部屋から出る気配もない。

「おい千彩、晩飯だっての」

無反応

「おい千彩!」

その時急に扉が勢い良く開き扉で顔面を強打した。

「痛てぇ。何すんだよ」

「。。。」

「おい千彩」

「名前。」

「は?」

「名前呼ばないで。気持ち悪い」

「なんなんだよ。今日のお前本当におかしいぞ」

「邪魔。どいて」

「おい、千彩!」

千彩の腕を掴んだ。

「俺が何かしたか。お前に避けられるようなこと何かしたかよ。教えてくれよ。必死に考えたけど分からないんだよ」

「。。。」

「なにか答えてくれよ!」

つい怒鳴ってしまった。ずっと黙っている千彩にイライラしてしまい大きな声を出してしまった。

「ち、千彩?!」

大きな声でビックリしたのかそれとも怖がらせてしまったのかは分からないが千彩が目の前で涙を流していた。

「ご、ごめん千彩。大きな声を出したりして。でもな本当に分からないんだ。何もかも。」

「…ら…い」

「え?」

「兄さんなんて大嫌い」

千彩が泣きながら家を出ていってしまった。

リビングに居た母さんが廊下へ出てきて

「は、晴!何したの!早く千彩を追って」

「で、でも俺はな、何も…」

「いいから、早く!」

「で、でも…」

状況が把握出来なかった。突然のことだったのと千彩を怒鳴ってしまった罪悪感でどうしたら。。

その時、頬に痛みが走った。引っぱたかれた。父さんにビンタをされたのだ。

「晴、お前が千彩に何したかは分からん。でもな妹のピンチを助け出すのは兄の仕事だ。親の仕事じゃない。親は兄妹が助け合っているのを見守るだけで助けるのは親の役目じゃない。お前の役目だ晴。嫌われていようが、口を聞かれてなかろうが妹を助けれるのは兄貴としての勤めだ。今すぐ行ってこい。助け方は自分で考えろ。いいな?」

気がつけば妹を追っていた。全力で。大声で名前を叫びながら。どこに行ったのか分からないまま涙目になりながら、頬の痛みを感じながら必死に千彩を探していた。

どれくらい走っただろう。体感では10キロを全力で走ったくらいの疲労が体を痺れさす。

千彩はかなり遠くの公園のブランコで一人ポツン座っていた。

汗だくになりながら、息を切らせながら俺は

「ち、千彩聞いてくれ。俺は千彩のこと全く理解出来ていない。というか1ミリも分からない。分かりたいが話もしてくれないから分からない。だから全て話してくれ。なんで俺を避けるのか、なんで俺を嫌うのか。全て話してくれ。俺はお前の兄貴だ。お兄ちゃんだ。お前が負っている悲しみを俺にも背負わしてくれ。そうすれば少しは和らぐだろ?俺はお前のことが好きだぞ。い、妹としてだからな!変な意味じゃないぞ!だからお前が俺のことをどう思っていようと俺は全て受け止める覚悟はできている。なぁ千彩。全て話してくれ。お願いだ」

ちゃんと聞いてくれていたのだろうか。話し中ずっと下を向き反応も示してくれなかったのだが。「好きだぞ」とか告白的なことも言ったのに無反応とか恥ずかしすぎだろこれ。周りから見れば告白したのに相手にされてない奴みたいになってるってこれ。どうか反応だけでもしてくれぇ。僕泣きそう。

すると涙を流しながら顔を上げ千彩が

「本当に全て話して受け止めてくれるの?」

「ああ」

「どんなことを話しても?」

「それが兄貴ってもんだろ?」

「なにそれウザい」

「う、うるせーな少しは格好つけさせてくれよ」

「変なお兄ちゃん」

涙混じりに笑っていた…じゃなくて今なんて言った?お、お兄ちゃん?!ち、千彩の口からお、お兄ちゃん?!おい、聞いたかみんな!お兄ちゃんだってよ!お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんバンザーイ!!!!!じゃなかったいいムードが台無しになるところだった。

「お兄ちゃんになんでも話してみろ」

「うん、分かった。全て話すけど夕飯終わってからでいい?お腹空いちゃった」

「ああ、俺もお腹すいたし早く帰ろうか」

「うん」

「夕飯何かな」

「今日はハンバーグだってよ」

「じゃあ早く帰らないと」

帰り道ほとんど会話はしていないが兄妹っぽかったのではないだろうか。

夕食が終われば千彩の秘密がやっと分かる。そう思っていたのだが。。。。。

「こ、こいつ…」

泣き疲れたのか夕飯を食べ終えると部屋に戻りすぐ眠ってしまっていたのだ。

子供かよ。

「まぁいいか。また別の日に聞けば。おやすみ千彩」

こうして激動の1日が終われば良かったのだが。。

次の朝いつも通りにアラームを止めいつも通りにリビングに行くと薄いピンク色のパジャマを着た千彩がすでに席に座っていた。

「おはよう千彩」

「お、おは…よ」

「なになに2人とも~仲直りしたの~?」

ニヤニヤしながら母さんが問うてくる。

「ち、違うよママ!!!」

「照れちゃって~早く朝ごはん食べなさいよ」

「も~ママったら…」

いつも通りじゃない朝食を終え制服に着替え鞄を持ち玄関へ向かうとそこには千彩がいた。

「お、おにい…ちゃん、い、一緒にがっ…こういってあげても…い、いいよ。」

途切れ途切れで何言ったのか分からなかったので聞き返した。

「え?なんて?」

「だ、だから!一緒に学校行ってあげるって言ってるの!」

「えぇ?!」

突然の言葉に驚きを隠せなかった。昨日まで口も聞いてくれなかったのに突然の兄妹登校だぞ?驚くに決まってるだろ!

ビックリしすぎて逆立ちしそうになったよ。

「ど、どうなの!行くの、行かないのどっち!」

「い、行くから落ち着いて」

こうして夢のような兄妹登校が始まったのだ。会話はしないが千彩は何だか嬉しそうだった。こんな幸せの様な時間が長続きしたらなぁ。

その時後ろから昨日と同じことをされた。胸当て目隠しだ。

説明しよう。胸当て目隠しとは紗倉の豊満な胸を俺の背中に押し付けて目を隠されだ~れだってやつを名付けて胸当て目隠しというのだ。

「だ~れだ」

「さ、紗倉だろ。は、離せよ」

「いひひ、あったり~」

「いつも通りだからわかるよそりゃ」

「おはよ、晴くん」

「ああ、おはよ」

「千彩ちゃんもおは…よ…」

「ち、千彩?」

そんなやり取りを見ていた千彩は激怒していた。

「…ね」

「え?」

「死ねって言ってんだ」

「ち、千彩なんてことを」

「兄さんはなにも分かってない。全てを受け止める?嘘だったの?ねぇ、何がしたいの?何を見せつけたいの?兄さんは私のこと分からないって言うけど私は兄さんのこと分からないよ。何もわからない。分かりたくもない。ねぇ、なんなの?私に何がしたいわけ?怒る私を見て楽しんでるの?何が全て話してだよ。兄さんなんて大っ嫌い」

「ち、千彩!」

走り去ってしまった。何がいけなかったんだ。見せつける?何をだ。全くわからない。何を怒っていたんだ。

「ねぇねぇ晴くん」

「なに?」

「僕分かっちゃったかも」

「何をだ?」

「千彩ちゃんのひ・み・つ」

今日も朝から忙しい1日の始まりである。



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