謁見
「それじゃあ、俺は街に入ることにするよ。とりあえず今日中には一回出てきてどうなるかは報告するけど多分、領主様に謁見するには2~5日くらいかかると思う」
普通の村の村長ぐらいなら希望したその日中、遅くても次の日には会うことができるのだが流石にこの規模の街の領主となるとそれは難しいだろう
それをわかっているのか雪は素直に頷いてくれた
「じゃあ、とりあえず外で待っていてくれるかな?」
そうして雪と離れようとしたとき
「君たち、どうしたんだい?」
街の見張りの兵士がこちらへと声をかけてきた
(しまったぁあ!)
この遠さなら声をかけてこないと思ったのだが俺達は自分の年齢を忘れていた
俺は年にしては頭は回ると自負しているが年齢は14歳だ、雪に至っては盗賊なんてやってるからなまじ度胸などがあるが13歳の少女である
兵士が俺たちを見て気にするのは当然の反応だった
「ん?お前・・・・・・」
兵士が雪の方を見る
「まさか・・・・咎人か?」
その言葉に俺と雪の表情が崩れる
(やばい!これは逃げるべきか!?)
咎人とがびととは生まれつき業を持っているもののことで村や街に入ろうとしても止められる
当然その咎人と一緒に行動してるような人だって街にいれてもらえないだろう
(こうなったら一旦逃げてから、別れた後で何食わぬ顔してもう一回入りに来るか?)
どちらにせよ逃げることが優先だと考えた俺は雪を連れて逃げ出した
しかし、回り込まれてしまった
「ちょっと待て!逃げなくてもいい!!」
「へ?」
兵士が言った言葉の意味がわからなかった
「俺たち街の兵たちには1週間ほど前から一つの命令が下されていてな。その内容が『咎人を伴ったテイマーの少年が来たら私の所へと案内してくれ』というものなんだよ。だから別に咎人だからと言って石を投げたりはしない」
「どういうこと?」
普通の兵士なら咎人だと気づいた瞬間に殺しに来てもおかしくはないだろう
というかこの世界では『咎人は悪』みたいな考え方をしている奴が多いはずなんだけど・・・・・
「あー、何を警戒してるかは何となくわかった。こんな命令が出たからにはまぁ、従うのが嫌な奴もいるわけだ・・・そんで・・・まぁ、そんなやつらが街の入り口に立ってた日にはもう確実に命令は遂行されないわけで・・・・・今この街の入り口にいる兵たちは基本的に咎人だからと言って邪険にしたりしないやつらばっかなんだよ」
それを聞いて少し安心した
「えーっと・・・・じゃあ街には入っても良いってこと?」
兵士に確認する
「あぁ、構わない。ただ、俺らがどう思おうと咎人を悪く思う奴もいる、それに領主様には『連れてきてくれ』と言われている関係上見張り兼護衛として俺もついていくけど大丈夫か?」
雪と顔を見合わせる
雪が頷いたのを確認して俺は
「よろしくお願いします」
と頭を下げた
それを見た雪もあわてて頭を下げた
「ははは、気にすんなよ。俺としても悪いと思ってるんだ。とりあえず、俺はここの街の警備隊長をしてる勇ゆうという。よろしくな」
「空です。よろしくお願いします」
「雪って言います・・・・よろしくお願いします」
雪は少し戸惑っているのか俺の後ろに隠れている
その戸惑いにも気づいたのか苦笑を浮かべて勇さんがついてこいと身ぶりで示す
(いい人だな・・・・)
俺は勇さんにそんな感想を抱いてついていった
しばらく歩いて(その間ずっと雪はキョロキョロしていた)領主の館につく
その中へと入り、勇さんが大きめの部屋の扉をノックする
「失礼します。領主様、命令されていた少年たちをつれてきました。今はお時間大丈夫でしたか?」
「構わんよ・・・・入っておいで」
中から聞こえてきた優しげな声とともに扉が開かれる
勇さんが開けてくれたようだ
そのまま俺たちが中に入ると
「それでは自分は職務に戻ります」
勇さんはそう言うと部屋から出ていった
「初めましてだね。私はローズ・ライト・・・・ライト家の者でここの領主をしているよ」
目の前の人物である領主様が自己紹介をされた