女盗賊
「ん?なんだあれ?」
俺たちが住んでいる村から出て二日目の昼頃、俺たちの道を塞ぐかのように一人の女の人・・・・というよりも女の子が立っていた
(うわぁ・・・・これ絶対「ここを通りたければ通行代を払え」とか言われるやつだよ)
強行突破になる可能性も考えて横を歩いていた雨を抱き上げる
そして、極力道を塞いでる女と目を合わせないように遠回りして道を通る
「ちょっと待て!」
「....っっ!!」
いきなり声をかけられて反応してしまい内心(しまった!!)と思っていると
「ここを通りたければ貴様の持ち物全てを置いていけ!」
と予想の斜め上のセリフをいただいてしまった
ここはどう返すべきなんだろうか?
1.だが断る!!( ・`д・´)キリッ
2.お前の物は俺の物、俺の物は俺の物
3.我が人生に一片の悔い無し!
(なんでネタばっかなんだよぉおおおお!しかも3って明らかに人世終わってるし!何があったんだよ!!)
内心突っ込みを入れながら打開策を考えるがしばらくして相手が何も言ってこないことに気づく
「・・・・・・・・?」
今まで合わせないようにしていた顔を向けると思いの外整った顔立ちの少女がそこにはいた
赤・・・・・というよりはピンクに近い色の髪の毛のポニーテイルで、晴よりも少し年上に見えてしまうのはほんの少しだが服を持ち上げて存在を主張している存在のせいだろう
おそらくだが実年齢は俺とそう変わらないような気がする
そんな少女の目は一点に釘づけになっていた
俺の手の中で大人しく抱かれている雨にだ
「わふ?」
「はううぅう!」
雨が首を傾げると少女は胸を押さえてのけ反る
どうやら雨にノックダウンされたようだ
今がチャンスだと思い走り出す
「あっ、ちょっと、待ちなさい!!」
後ろから我に帰った少女が追いかけてくる
バタン
「ん・・・・・・?バタン?」
(後ろで少女がこけたのだろうか?それにしては起き上がる気配がないけど・・・・)
嫌な予感を感じて振り返ると少女は倒れたまま起き上がっていなかった
「へ・・・・・・?」
(まさか・・・・・死んだ?)
そんな思いが胸の中をよぎったが
グギュルルルルルルルルル
辺りにすごい音がなり響き
「・・・・・・・おなかすいたぁ」
少女の呟きによってなんで倒れたのかを理解した
「はむはむんぐんぐ」
そのままほっておけばよかったのにほっておけなかったのが俺という人間の甘さだと思う
あの後、流石に放置していくのは可愛そうだと思いーちょうど俺達もご飯を食べてなかったということもありー少女の倒れた場所でご飯を準備することにした
したのはいいのだが・・・・・・
「ムシャムシャ、バクバク」
どれだけの間食べずに過ごしていたのか少女は用意した分のほとんどを食べた
俺たちが自分のご飯を食べるために追加で用意しないといけないくらいに
「助かったよ。ありがとう。あのままいけば餓死すんのは目に見えてたからちょうどいい獲物だと思って脅しにいったのに逆に助けられちゃうなんて」
「それはいいとしてなんあんなに空腹になるまで何も食べてなかったの?」
少女のお礼に俺は手を振って謝礼を受けとる
「実は・・・・・・私は忌み子なの」
『忌み子』
生まれてきた時に持つ適正が戦士でも魔法使いでもテイマーでもない人間のことで、他の職業ではあり得ないような能力などを有し、それらがかなり人間離れしていることからテイマーよりも嫌われている存在だ。忌み子が持つ職業は職業ではなく『業』と呼ばれ、遠い先祖が犯した罪が形になっているそうだ。『業』の種類はいくつもあり、同じ名前の『業』でも持つ人によって能力が違ったりする
ちなみに俺の村には忌み子は一人もいない
というか生まれる確率としては1万分の1以下と言われている
そして、忌み子は場所にもよるがかなり酷い扱いを受ける
俺の村のような田舎の中の田舎ならともかくとして王都に近い村や領主の住んでいるような大きな街では忌み子と忌み子を生んだ人を追放するという慣習まであったはずだ
そして、この情報とこの子の状態を考えるとおそらく追い出されたのだろうことが俺でも予想できる
「今、何歳なの?」
「13歳だね」
それにしても珍しい。普通、忌み子が生まれ、追い出された場合、親の方が発狂して息子、又は娘を殺すという事態がどうしても多くなる
それなのにこの年齢まで生きてられる忌み子というのはかなり珍しいだろう
「大変だったんだな・・・・・・」
「ううん?大変なんかじゃなかったよ」
思わずでた呟きに即座に返された返答と明らかに作り笑いだとわかる微笑みにこれ以上この少女の過去に触れてはいけないと感じる
「そうか・・・・・一つだけ聞いてもいいかい?」
「何?」
「君はこの辺りの地理に詳しいのかな?」
「まぁまぁかな。こう見えて私は盗賊やってるし」
「あっ、盗賊だったんだ」とは言わない方がいいのだろう
なにせ、これから頼み事をしようと思っているんだから
「なら、頼みがあるんだ」
「頼み?」
「うん、俺の旅についてきてくれないか?」
少女は目を瞬かせた