667人目の魔王と村長の判断
魔王
それはある時を境に生まれた存在
世界中で同時に666人生まれ、その力は人の持つ職業を究めたものですら一人では太刀打ちできないほどだった
世界最強レベルの人間が5人か6人合わせてようやく一人か二人倒せるかどうかという存在
この存在が世界に知れ渡った時人類は破滅を覚悟した
しばらくの間人類は破滅と死の恐怖に震え、怯えて暮らしたが何故か魔王たちは攻めてくることはなかった
魔物を従え、軍団を作り、魔王として暮らすための国は興すがそれ以上のことはしないのだ
勿論、誰かがその国と定めた場所に乗り込んで来れば撃退するために戦うし、その果てに襲いに来た者たちを殺すこともある
しかし、魔王たちは決して自分達から攻め込むことはしなかったのだ
それによりしばらく人類はいつ襲い来るかわからない破滅を恐れながらも生き続けることが出来た
しかし、それからしばらくして一部の魔王が人間の住む町を襲い始めた
遂に人類の破滅の時が来たのかと思われたが、それを予期し、力を蓄えていた者たちによってその危機は回避された
しかし、それ以降人間界の土地を侵犯し始める魔王が増え始め、剛の者と同じ頂へと至った者たちによって打ち取られていった
ーーー勿論魔王との戦いで逆に敗れたものも少なくはなかったがーーー
しかし、唯一の救いとなっていたのは魔王が今までは新たに生まれなかったことである
つまり、これから先、新たな魔王が増えて一方的に人類が蹂躙されるということがないということが救いとなっていた
しかし、今その常識が覆されたのだ
俺の目の前には667人目の魔王だという雨がいる
俺は村長に今までのこと一通りを話した
その村長の判断は
「ふむぅ・・・・・ワシでは判断しようが無いのぉ・・・・空よ・・・・雨と共にこの辺りの領土を納める領主殿の所まで説明に行ってはくれぬか?幸いここから領主様の屋敷までは魔物は少なく、遭遇するにしてもスライムやゴブリンがせいぜいじゃ・・・・降りきろうと思えば降りきれる」
その言葉に俺は頷く
ここから領主様の屋敷までは大体5日~1週間程度でつく
俺は町長の部屋を辞して旅の用意を始めたのだった
本当であればここで俺を処刑するのが世界の選択としては正しいのかもしれない
俺が死ねば世界的には平和なのだろうから
それを理解しながらなぜ俺が雨のことを村長に隠しもせずに告げたのかというとここの村長と領主様が人格者であるということをよく知っていたからだ
まぁ、今回ばかりはその領主様でも処刑する可能性があるのは否定できないのだけど
そこは腹をくくっていくしかない
「ねぇ、空・・・・ほんとなの?雨ちゃんが魔王って・・・・・」
「冗談でこんなこと言わないよ」
それに村長が俺の話を信じたのも証拠があったからだ
「本当は晴にも雨のステータスを可視化して見せることができたらいいんだけど・・・・・」
人のステータスを可視化する
町や村などの長にのみ使用することが許される特殊な魔道具『診断の目』によってのみ行うことができる行為だ
この診断の目は本来子どもが生まれたときにどの適性かを診断するために使われるものだが副次的な効果として他人のステータスを調べることができるのでこういう不慮の事態や見知らぬ旅人などの素性を調べるためなどにも使用されている
なので、その『診断の目』を持っていない俺や晴じゃあ他の人のステータスは見えないのだ
「じゃあ、さっさと行ってさっさと帰ってくんのよ。私たち待ってるからね」
それだけ言うと晴は家へと帰っていった
旅の間の資金は村長が用意してくれたし俺も見習いとはいえ生産業で稼いでいたのでそれなりに蓄えはあるそれらを使って旅の準備を整えていく
その途中で気づいたのだが明らかに渡されている量がおかしい
具体的には旅の間の宿全てをある程度なら高級な宿に泊まれるくらいに渡されていたのだ
「これは・・・・村長も帰ってこれない確率があるって思ってるってことだよな?」
旅の準備中に嫌な想像をしてしまった
そんな中俺は旅の準備を進めていくのだった
説明文多すぎてすいません
一応説明文は序盤は多いですが後半は少なくなっていく予定ですのでお付き合いお願いします