故郷での語らい
「ったく・・・・酷いもんだ・・・・・」
雪に念話を送った後、俺は自分の腹の上で丸くなって寝ている雨を撫でながら一人呟く
体は酷い筋肉痛に襲われており正直に言うと動きたくないレベルだ
どうやら昨日の行動は自分で思っているよりも体に厳しかったらしい
「とりあえず・・・・・雪が戻ってくるまでは休んでおきますかねっと・・・・・っっ!?」
寝返りをうとうとしてふと顔を横に向けるとそこには女の子の・・・・しかも自分のよく知った顔があった
目は空いてないが上下する胸を見た感じただ眠っているだけのようだ
ほんの僅か・・・・・同年代女子の平均に比べれば本当に僅かにだが絶壁は回避しているようで少しだけ安心した
(どうして俺はこんな下らないことに安心しているんだ?それよりも今はどうしてここに晴がいるのかということを考えないといけないのでは?)
まず、考えなくてはいけないのはどうやってこの状況を脱するか・・・・・だ
今雪に連れてきてもらってるローズ様が来るまでに何とかしないと色々と誤解されてしまうだろう
それにもしこの状態で晴が目を覚ましたら・・・・・・・うん、今の抵抗できない俺では死んでしまうかもしれない
それだけはなんとか回避したかった
しかし、どうすればよいというのだろう?
俺の体はほとんど動かないし出来たとして起き上がるまでだろう
・・・・・・うん、無理だな。どうやってこの状況を変えろって言うんだよ!ほぼ詰みゲーじゃねぇか!
ここは大人しく運を天に任せるしか無いだろう
『コンコンコン』
そこまで考えたところでノックがなり、ローズ様とローズ様の背中にナイフを突きつけた雪が・・・・・って!?
「どうして雪はそんなことを!?」
「そんなことって何が?」
どうやら雪の中では疑問に思うことは無いらしい
「どうしてローズ様にナイフを突きつけてるのかってことだよ」
半分呆れ口調で聞くと
「だって、この人は空の故郷を襲った人たちをまとめている人・・・・だから何かあったら何時でも動きを封じれるようにしないと」
どうしてかは知らないけど雪は昨日俺の故郷を襲ってきた奴等がローズ様の部下の一部だということを
「それに関しても話すからとりあえずローズ様を離さないか?」
その問いに対しての答えは左右に振られた首だった
俺はため息をついて話を進めることにした
実は以前も雪が口で答えずに首を振るだけだった時があったのだが、その時はなにがあっても譲らないほどの頑固さを見せたのだ
そして、それが俺のためだということも理解していたため、俺は無理に止めることができなかった
もしかしたら俺が筋肉痛でろくに動けないということもわかっていたのかもしれない
「まずは、ローズ様・・・・・あなたは何をしにここに来たのですか?」
正直、領主であるローズ様自らがここに来る必要は無かったはずなのだ
「私は・・・・・ただ・・・・・守りたかった・・・・・空くんを・・・・雪さんを・・・・・・だが・・・・結局私は・・・・・」
見るとローズ様は涙を流していた
俺は目の前で涙を流している人が嘘をついているだなんて思えなかった
しかし、雪はそれでもナイフを突きつけたままだった
「では私との念話が切れた後、何をしていたのか教えてくれませんか?」
ローズ様は涙を拭って答えた
「君との念話が切れた後・・・私は君に行った「私が止める」という言葉を果たすためにすぐに用意してこの村へと向かった・・・・・馬を変えて休憩を最小限にすることでなんとか今日にも村にたどり着けたのだ・・・・・」
「私が止める」?そんなこと言っていただろうか?
そういえば念話が切れる寸前に何か言っていたような気がする
・・・・よく聞き取れなかったけれど
「それなら昨日の時点で止めることはできないとわかっていたはずですが・・・・・」
その言葉にローズ様はこちらを見ることは無くしかし、真っ直ぐに答えた
「その事は理解していた・・・・・しかし、それでも私は向かわなければならなかったんだ!」
半狂乱になったようにローズ様が叫ぶ
「私が君に連絡をしてしまったせいで・・・・もしかしたら君が故郷に向かってしまったかもしれない・・・・そうしたら奴等は君を殺そうとするだろう・・・・それが・・・君たちを失うのが本当に怖かったんだ・・・・・」
それは自身の罪の告白のようだった
「いや、これは言い訳だな・・・・・私は結局彼らを止めることができなかった・・・・・これが全てだ・・・・・それに空くんの故郷を襲い、蹂躙したのは私の部下・・・・これは覆しようのない事実なんだ・・・・・だから君が死ねと言うのなら私は死ぬことも躊躇いはしない・・・・だが、一つだけ頼む・・・・私についてきてくれた部下たちは・・・・許してやってくれないか?」
どうやらローズ様は一つ勘違いをしているようだ
俺は確かに襲った奴等のことは憎いがローズ様のことは憎いとは思っていない
むしろ感謝さえしているくらいだ
厄介者である俺を受け入れ、家族のいなかった俺に家族のように接してくれ、俺のことを見守り、故郷に危険が迫ったときにはすぐに連絡をしてくれた
だが・・・・・それを真っ直ぐに伝えた所でおそらくローズ様は納得することは無いだろう
だから俺は
「それなら一つお願いがあります・・・・」
その言葉にローズ様が顔を上げる
俺はずっと考えてきたことがあった
俺は667人目の魔王の宿主で、遅かれ早かれこうやって俺を呼び出して始末しようとするものが現れるだろう・・・
そして、そんな事態に遭遇してしまった時点で・・・もしうまく切り抜けたとしても俺は・・・いや、俺たちはもう右翼の街にいることは・・・正確には人間の街にいることはできなくなるだろう・・・・・と
だから俺は
「俺を殺してください・・・・・ローズ様」
ローズ様にむけてそう言ったのだった




