薔薇(ローズ)と雪と空と
※ローズ視点
隊長の一人が遠征に向かうと聞き、念のための保険にとこっそりと同行させていた部下たちから
「隊長たちは空殿の故郷を襲いに行くと漏らしておりました!」
という報告を受け、急ぎ空くんに連絡した
最初彼は私の言葉の意味が理解できていなかったようだが、私が説明するとようやく理解したのか呆然とした
「!?」
その後恐ろしいほどの怒りと恐れを感じた
どうやらこの念話、相手の強い感情まで伝えてしまうらしい
「このままでは空くんは無理して故郷に向かうのではないか?」
そう考えてしまった私はゾッとした
あの隊長は魔王を排除するという思想を持っていた
そんな彼の元に魔王の宿主である空君が向かったら・・・・・
普通なら間に合うわけはないのだが空君の今いる場所は竜属の多い場所である竜属の里である
もしかしたら間に合ってしまうかもしれない
嫌な想像が頭をよぎり、私は思わず念話の相手に向かって叫んでいた
「君は大人しくしているんだ!彼らはかならずこの私が止めるから!!」
その言葉を最後に念話を切り部下の一人に命令する
「今すぐに馬を200頭と精兵を100人を用意するんだ!」
馬を変えて走り続けたとしてもここから空君の故郷までは二日はかかる
情報を持って帰ってきてくれたものが離脱したのは行軍を始めて3日後のことで帰ってくるのに3日かかっている
これではどうしても間に合わない
「くっ、無事でいてくれよ!」
私はただ彼らの無事を祈ることしかできなかった
※雪視点
「お願い!ドラウスさん。私を乗せて空を追って欲しいの!」
空が雨ちゃんと合体したかのように見えたこと、その前に空のお師匠様であるリーフさんが「俺の故郷」という言葉を聞いていたことから私は空の故郷に何かあったのだと察していた
そして、話を聞いてすぐにドラウスさんに空の故郷に向かうために一緒に行ってほしいと告げていたのだ
「しかし・・・・・・」
ドラウスさんの視線の先にいるのは竜属の里の長老で、ドラウスさんのおじいさんである
この時の私は知らなかったのだが竜属には
「外の世界で私欲や私心のために使ってはならない」
という掟があり、それを破ることになると理解しているドラウスさんは渋っているのだ
帰ってきたときは帰ってくることに必要だったので遠慮なく使っていたようだが
そのおじいさんもドラウスさんを見ていた
「何を迷っているんじゃ?たった数日の交流であろうと空も雪も我らが家族も当然じゃ!家族を救うことを禁じた掟などないわ!」
周りの皆を見ると皆も頷いていた
それを見たドラウスさんは頷くと竜の姿に変わる
「ありがとう!ドラウスさん!」
私はドラウスさんの背中に乗ると皆から言葉を貰ってドラウスさんと共に飛び立った
「絶対に空の坊主を連れ帰ってきてくれよ?」
「雨ちゃんにまた遊ぼうって言っておいて!」
「雪もだ!絶対に帰ってきてよ!」
リーフさんを始めとしたたくさんの人たちに愛されていることを感じた雪はこんなときなのに思わず嬉しさで微笑んでしまっていた
※空視点
体が軽い・・・・
羽なんて使ったのは初めてのはずなのに使い方が自然にわかる
風の乗り方、避けるべき気流、どうやったら早く飛べるか・・・・
それらを俺の変わり果てた体は知っており、故郷へと向かっていた
いつもならかなりの時間がかかるところ村までの道のりの4分の3を1日で飛んでしまった
辺りはもう真っ暗でこのまま飛び続けたら危ないかな?と思っていた時だった
遠くから・・・・ちょうど俺の故郷のある辺りから赤い光が見えているのに気づいた
まるで炎のような赤い光が・・・・・・
俺は暗い中で飛ぶのは危険という考えをねじ伏せまっすぐに飛んだ
そして、ようやく故郷までたどり着いたときその声を・・・・悲鳴を聞いた
「やめて!来ないでよぉ!」
その声は半年たった今でも俺の記憶の中の声とほとんど変わっていなかった
無意識にそちらへと向かうと服を今正に剥ぎ取られようとしていた幼馴染みとそれを囲む兵士達がいた
「うるせぇ!大人しくしてろ!」
「大人しくしてたらちゃんと気持ちよくしてやるからよぉ!」
兵士たちは下品な笑みを浮かべるが晴はそれに抵抗していた
「やめて!やめて!誰か・・・・空ぁ・・・・助けてよぉ!」
その声を聞いた瞬間俺は走り出していた
晴の回りに群がっていた男どもをいつの間にか手の甲に装備されていた爪で引き裂き蹂躙する
「空・・・・・・?」
「わかるのか?」
こんな時なのに思わず聞いてしまった
何故かはわからないが、この姿になっている時はいつも怒りに満ち溢れている感じがするのに晴と話すときはその怒りを感じない
「うん、わかるよ・・・・空はいつでも私を助けてくれるから・・・・」
それだけ言った後晴は張っていた気が緩んだのか意識を手放していた
「直ぐに片付ける・・・・少しだけ待っていてくれ」
俺は残りの兵士たちを蹂躙するために大地を蹴った
人を殺しておいて全く動揺していない自分に決して気づくこと無く




