空、14歳の出会いと衝撃
テイマーは不遇職業である
これは辺境にある名もないような町であっても当たり前となっていることである
そんな不遇職業が適性であると言われた俺こと空は一つの悩みを持っていた
「『心獣』が・・・・・産まれねぇ」
そう、『心獣』が産まれないのである
そもそもテイマーは戦闘能力を自らの『心獣』に依存し、テイマー、又は『心獣』が死ねば残された方も死に、『心獣』の強さも潜在能力に比例するためテイマーが戦うのは非常にリスキーなのだ
下手するとそこら辺の最弱魔物の代名詞であるスライムにすら負ける『心獣』だっている
その『心獣』だが、産まれるのは宿主が平均で10歳で遅くても12歳までには産まれるはずなのだ
しかし、今俺は14歳。なのに未だに『心獣』が産まれない
周りのテイマーのやつらは普通に産まれてきてモフモフとかフワフワに囲まれているのに俺だけまだなのだ
「ちくしょぉおおおおおおおおお!!早くモフモフとかフワフワとかしてぇよぉおおおおおおおおお!!」
勿論心の中で叫んでいるし、念のために人気の無いところにいたから多分大丈夫だろう
というのも俺はかなり動物は好きだし触れあいたい
不遇職業だというテイマーが適性だと知ったときもむしろ死にたくは無かったからラッキーぐらいに思っていたのだ
むしろ、テイマーになったということで思う存分にモフモフとかフワフワとかできると考えればそれはそれで得した気分だったのだ
結果が
「なんで4年も待ってるのに『心獣』が産まれねぇんだよぉおおおお!!いつまで待たすんだよ!もうやること殆どねぇよ!!」
そう、これも才能なのかなんなのか覚え始めた生産業の料理を教えてくれた人の技は4ヶ月で全て身につけて免許皆伝を貰い、次に行った鍛冶は少し時間がかかったが1年と2ヶ月で免許皆伝を貰った。次の農業も1年で終わり、薬学も6ヶ月で納め、錬金術もなぜか1年で・・・というよりついさっき終わりもうこの村での生産業は全て制覇してしまったのだ
「さっきから叫んだり百面相したりどうしたの?」
「へ?」
こえのした方を見るとそこにはこの村で3本の指に入るほどにモテる美少女である晴がいた
金髪ツインテールの童顔ロリ体型のせいで幼く見られがちだがこれでも俺と同じく14歳である
ちなみに適性は魔法使いで将来は『付与術師』と『魔術師』を進化させることでなれる『大魔道師』を目指しているそうだ
ちなみに職業はその職業に見あった行動をすればレベルが上がり、そのレベルが一定に達すると職業を進化させることができるようになる
また、そのタイミングで、一つ前の職業に退化することもできる
先程のように『大魔道師』になろうと思えば魔法使い→進化 魔術師→退化 魔法使い→進化 付与術師→進化 大魔道師
となる。勿論なろうと思えばの付与術師の進化職業であるエンチャンターにもなれる
また、進化するとステータスというか身体能力がかなり上がる、逆に退化すると下がるがこのときの下がり幅は上がるときよりかなり低い
なので極端な話魔法使いと魔術師をいったり来たりしてるだけでもかなりの強さになる
しかし、これがテイマーになると話は変わってくる
テイマーには進化どころかレベルもない
当然退化もないわけだから身体能力ではかなりのお荷物になるのだ
これもテイマーが不遇職業と言われる原因の一つでもあるのだが
「それで?さっきからどうしたの?百面相したり叫んだり」
再びの質問に対して少し口ごもる
正直に話してもいいものなのか・・・・・
正直に話したら絶対に馬鹿にされる
俺は今までテイマーだというだけで(目の前の例外を除く)剣士や魔法使いたちに不遇職業と馬鹿にされてきた上に未だに『心獣』が産まれないために同じ不遇職業であるテイマーからも馬鹿にされてきたのだ
まぁ、それとは違うベクトルだろうが絶対に馬鹿にされるだろう
結果俺は
「ちょっと・・・・・色々あってな・・・・・」
お茶を濁すことにした
「ふーん」
なんとなく見透かされている気がしたが気のせいだろう
うん、気のせいだと思いたい
「ってあれ?」
「ん?どうしたんだ?」
何かに気づいたような晴の様子に首を傾げる
「なんかさ・・・・・・空の胸元・・・・・光ってない?」
その言葉に俺はばっと自分の胸を見る
確かに俺の胸は少しだけだが発光していた
というよりも俺はその光かたに見覚えがある
「『産光』?」
『産光』とはテイマーがその身に宿す『心獣』の産まれる合図である
つまり、この発光が起こっているということは空の待ちに待った『心獣』が遂に産まれるということだ
「産光ってことはもうすぐ産まれるってことなの?」
その晴の問いに頷きで肯定し終わったときに空は自分の胸から光の塊が地面に向かって落ちたのを見た
それはみるみる形を変えていき
「犬・・・・・なのか?」
尻尾が九つあり背中に小さな羽があり、額に小さいが黄色い角までついている犬のような生物がいた
「わぅ?」
その生き物が首を傾げる
「ッッッッッッ!!」
その仕草が可愛すぎて思わず抱き締めてしまうが『心獣』もそれが気持ちいいのか気持ち良さそうな感情が伝わってくる
テイマーと『心獣』は本当の意味で繋がっており、感情や『心獣』が思っていることなどもテイマーに伝わる
逆にテイマーの考えていることや感情が『心獣』に伝わっているのかは謎だが
「あのさ・・・・可愛がってるところ悪いんだけどそろそろ名前をつけたげれば?っていうか私にもモフモフさせて!」
『心獣』には名前をつけることでそのステータスを確認することができ、なんの種族なのかとか持っている能力等を確認できる
ちなみに晴も動物が好きで、よく他のテイマーの所にで『心獣』と遊んでいるところを目撃している
ん?俺?馬鹿にしてるやつらに頭下げるのがなんかしゃくでモフモフさせてもらえませんでしたよ
さっきさわっていた(というか抱いていた)『心獣』の毛並みは本当にモフモフやフワフワと表現するべきもので抱き心地は最高だった
もう少し抱いていたいのを我慢して晴に渡すと(晴はすぐにモフモフしだした)俺は『心獣』へと命名することにした
「よし、今日からお前は雨だ!よろしくな!雨!」
「あぉん!」
俺の言葉に力強く鳴き返す雨
雨に名前をつけたため雨のステータスが見れるようになったので確認する
雨
Lv.1
種族 合成獣キメラ
能力 吸収テイクオーバー
対象を吸収し、その能力を得る
???
備考 667人目の魔王
「はぁ!?」
最後の備考のところで思わず突っ込みを入れる