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第二話 え、何か問題でも?

「――お前、もし付き合うなら……。男と女、どっちと付き合うの?」



 古河朋の親友、長月圭は、そう口にした。

 朋は数秒の間、先ほどの圭のごとく呆然とした顔をしていたが、


「……はぁ?いきなりなんだよその質問」


 朋は呆れたようにそう言った。


「いや、だから……。心は立派な少年の心を持ってるんだろうけどさ、じゃあお前は女子と付き合うつもりなのかって話だよ」


「そりゃそうだろ」


 朋はさも当然のように答えた。何か問題でも?とでも言いたげな顔をしながら。

 

「ほぉ……。でもお前、結局は女じゃん。世の中でお前は同性愛者っていうことになるんだぞ。同性愛を否定するつもりは毛頭ないけど、そういった人たちは結構大変な思いしてるってテレビとか聞くしさ」


 素っ気なく、圭はそう言った。おそらく、圭なりの親切心なんだろう。

 しかし、朋は圭のその親切心をいざ知らず、怪訝な顔をしながら、


「……僕が同性愛者と呼ばれることに関しては少し疑問を覚えるけど、もしそうだとしても関係ない!僕の心は紛うことなき男子の心だ!純真な少年の心だ!何の障害があるかなんて知らないけど、そんなもの乗り越えて見せるわ――!!」


 興奮気味にそう叫んだ。そんな朋の両掌は、なぜかやけに青く澄んだ空に向けられている。

 いや、そんなことはどうでもいい。とにかく、


 ――周りの視線が痛い……。


 朝の通学通勤時間帯にそんなことをしていたら、周りの注目を集めて当然だ。圭はため息を吐いて、

 

「……朋。わかったから少し落ち着いてくれ、頼む」


 朋の肩に手をのせながら、そう口にした。


「朝から二人とも、元気だね~」


 ふと背後から声がした。振り返るとそこには、笑顔でこちらに近づいてくる、クラスメイトの椎名菜月がいた。

 三人とも高校の二年生であり、三組になって二人は菜月と知り合った。

 菜月も、朋や圭と……。訂正、圭と同じ男なのだが、


「なぁ、あそこ見てみ。かわいい子二人発見!学年とクラス教えてもらおっかな~」


「お前、相変わらず言動チャラいよな……。あと、茶髪の方の制服見てみろ、あいつ男だぞ」


「……はぁっ!?男なの!?あいつ男なの!?あんなにかわいいのに……!?」


 という近くの男子二人のだだ漏れな会話によってわかるように、毛先が少しくるんとした茶髪のショートカットに、腕や脚、腰などが細く、肌も抜けるように白い。

 そしてなにより、男子とは思えないような可愛らしい顔をしており、菜月は正直、見た目は儚げな美少女なのだ。


「とりあえず、あいつらちょっと殴ってきていいか?」


「まぁまぁ、朋くん落ち着いて」


 自分が男にかわいいと言われ腹が立ったのか、いまにも先ほどの男子二人に襲いかかろうとする朋を、菜月がなんとかなだめている。

 ちなみに、菜月が朋を「くん」づけで呼んでいるのは、初めて会ったときに「ちゃん」づけで呼んだら朋に怒られたからだ。

 その件もあって、クラスメイトの大体は朋のことを呼び捨てか「くん」づけで呼んでいる。

 

「菜月はあんなこと言われて腹立たないのかよ!お前だって男だろ……!?」


 ――お前は違うけどな。

 ――朋くんは違うけどね。


 二人は心の中で同じようなことを思ったが、あえて口にはしなかった。

 そして、


「えっと、なんだろうね……。慣れちゃった……かな?」


 菜月はそう言って、小さく微笑んだ。


「慣れちゃった、かな?じゃないだろ!お前には男のプライドっていうものがないのか!?男なのにかわいいなんて言われたら普通腹立つだろ!?そして殴りに行くだろう!?普通は!!!!」


「ひぃぃ!ごめんなさい……!!」


 朋の普通の基準にいささか疑問を覚えるが、今はそんなことを気にしている場合じゃない。

 朋がまた興奮気味に大声出してるから、また周りの目がこちらに集まってしまっていた。


「いたっ!」


 このままではさらに周りの注目が集まってしまうし、最悪学校に遅刻してしまう。

 それと、怒られている菜月も少し不憫に感じたため、とりあえず朋の頭にチョップした。


「何すんだよ!」


「いいから、さっさと学校行くぞ。もしこれで遅刻したらお前のせいにするからな。菜月も行くぞ」


「う、うん……」


 そう応えた菜月の瞳には、少し涙が浮かんでいるように感じた。

 高頻度でなぜか、何も悪くない菜月が朋の怒りのターゲットになるんだよな。かわいそうに。


 

 はなせ~と言う朋の腕を掴みながら、圭は二人を連れて学校へと向かった。


日常が崩れ始めるといっても、唐突にではないようですね。

できる限り平和な話を書いていきたいです。


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