襲撃され中
襲撃され中
魔物の襲撃だって・・・・・ここ町の中だぞ。ゲームだとイベント戦で、町の中での戦闘があったりするがこれはイベントでもなんでもない。きっと、ガチだ。こういうことって頻繁にあるんだろうか?
「こういうことってよくあるものなんですか?」
「こんなことがよくあってたまりますか!!!この地域ではここ数年、魔物の数が減少傾向だったはずです。だから、冒険者たちもこの地域での活動をやめて他所のもっと仕事にありつけそうな聖都近辺に移っていったんです。」
「とにかく、守備騎士団が来るまで外出しないように建物の中で隠れましょう。」
守備騎士団。この国には5つの騎士団が存在する。1つは、聖都カルナックを守護する聖連騎士団。精鋭ぞろいで、国民の憧れである。2つ目は、国境騎士団。国境付近で他国ににらみを利かせる者たちだ。3つ目は、地方騎士団。各地方で爵位が子爵以上の領主が所有しており、普段は、警備や巡回をしている。領民の安全のため日夜働いている。4つ目は、護衛騎士団。カルナス神聖国の要人警護をしている。護ることに関して言えば並ぶものはないとされている。そして5つ目が守備騎士団。正式名称は、神聖国内の国民または行商人を災害から守るための騎士団という。長いので守備騎士団と呼ばれている。国内中に支部があり、人数も多いのだが国民からの要請がなければ動こうとはしない頭のカタい連中である。しかも、準備に時間がかかるため素早く動けない。現在、税金どろぼうと揶揄されており騎士団存続が危ぶまれている。当然、国民からの信頼は低い。
守備騎士団がこの町に到着するには、誰かが通報していなければならない。おそらく、まだ誰も通報できていないだろう。そんな中、ただ待つというのは愚策ではないだろうか?食料の備蓄、入ってきた魔物の正確な数と種別などわからないことがありすぎる。なにより一番の気がかりは、家族の安否だ。今日この町に入るときに、町と領主館へと延びている街道で10メートルぐらいの高い壁によって領内が囲われている光景が見てとれた。その壁は、獣人たちの脱走防止と、町の人間が直接獣人たちの姿を見られないようにするために国によって設置が義務づけられているという話だ。なんとなく刑務所を思い出してしまい嫌な気分になる。まあ、あの門なら閉じてしまえば魔物といえど簡単には入っては来れないだろう。だが、あくまでも一時しのぎだ。何日も籠城するなんてことになれば、状況は悪いことになる。
俺は、思い切って受付の女性に話してみた。
「魔物を退治することにします。来るかわからない救助をただ待つよりも生き残るための行動を俺はとります。」
言い終えた後、さっきのエラそうな人の姿を探した。だがここには見当たらない。行方を尋ねると、事務員らしき人が、「ギルドマスターならさっき、血相を変えて隣の商業ギルドに入っていったよ。」と教えてくれた。窓からチラッと外をのぞくと、2足歩行でトロトロ歩く魔物の姿が見えた。商業ギルドの方を見ると、こちらと同じように扉はガッチリと閉じられている。あの人に会って、俺のステータス確認をしないと魔物退治どころではない。何ができて何ができないのか、今装備できる武器防具は何なのかなど知っておかなければならない。自分のスキルや技などを認識できているかいないかで、行動に幅ができる。昨日のホシノ神(話の長いやつ)に言われたことだ。
入口からは、外に出られそうもないのでいい方法がないかさっきの事務員に聞いてみることにする。
「入口以外で、隣の商業ギルドに行くいい方法って何かありませんか?」
「屋根伝いに行くか・・・あるいは、裏口からそっと行くかしかないね。」
2択か。少し考えて屋根伝いに行くことにした。裏口に魔物がいないとは限らないし、外を見てても飛行型の魔物は見かけないので、音を極力立てなければ見つかる心配も無さそうだからだ。
準備を始めていると、さっきの事務員さんと受付の女性がやってきて、
「なんで君はそんなに落ち着いてられるんだ!というか、本当に行くつもりなのか?君は武器も防具もつけていないんだぞ。自分の命が大切じゃないのか?君が死んだら悲しむ人だっているだろう。」
「別に落ち着いてるわけじゃない!!焦って事態が良くなるならそうする。だけど、実際は焦ったところで何も変わらないだろう。だったら、こんな時こそ冷静になって自分にできることを考えなきゃいけないんだ!」
一気にまくしたてると、何か思うことでもあったのか事務員の人は口を閉じた。
2階に上がり、左の窓から外を見る。やはり、思ったとおり魔物は地面にしかいない。念のため、見回してみるが飛行型の魔物はいないようだ。俺は、隣にある商業ギルドの建物へ渡るために窓の外へと出た。目算で、距離は5メートル、地面までの距離は10メートルといったところか。とにかく物音を立てないように慎重に進まなければならない。魔物の中には、弓矢を持った奴がいるからだ。見つかったら、絶対に狙い撃ちされる。中腰姿勢になり、そろりそろりとゆっくり進む。
何とか気づかれることなく、反対側へとたどり着いた。半開きになっている窓から侵入する。どうやら、資料室のようだ。所狭しと書類が棚に収められている。じっとしてる訳にもいかないので、扉を開いて外に出てみる。
冒険者ギルドと違い、商業ギルド内は真ん中が吹き抜けになっていて、見渡しただけでも部屋数は多い。とりあえず、この階には人の気配がしない。階段は、すぐ目の前に見つかったので下に降りてみる。
1階に降りると、20人ぐらいの人が確認できた。そのうちの数名が俺に気付いた。
「なんだ君は!いったいどこから入った!!」
「隣りの冒険者ギルドの屋根からこちらに渡ってきました。冒険者ギルドのギルドマスターはこちらにいらっしゃいませんか?」
尋ねるとすぐにこちらに気付いた。ステータス結果を教えてほしいということを伝えると、思い出したかのように、ステータスの紙を持って近づいてきた。
俺のステータスを読んでいくと、属性と基本ステータス、所持スキル以外の項目は真っ白だった。所持スキルの中に妙なものがあったので聞いてみる。
「スキルのことなんですが、筋力増強と格闘の心得はわかるんですが、奇運というのは何なんですか?」
「実は、私にもわからないのだ。そんなスキルは聞いたことがない。もしや、新スキルかもしれないと思っていてね。」
新スキルか・・・・・。まあ、知らないんじゃしょうがない。ひとまず置いておこう。筋力増強のスキルを生かして武器選びをどうしようか悩んでいると、
「そんなスキルよりももっと重要なことがある。」と、突然話し始めた。
「君は闇属性なわけだが、この国をはじめこの大陸中ではこの100年余りの間、闇属性の者は一人も現れてはいない。それがどういうことか分かるかね。」
「このことを王宮が知れば大騒ぎになるだろう。このカルナスでは、光と闇の属性者は特別だからね。」
まだ、何かをしゃべっていたが俺は、「この大陸中」という言葉にひっかっかった。もしかしたらという疑問が頭の中に渦巻いていた。
「お話し中すいませんが、一つ聞きたいことができました。この大陸以外にも国はありますよね。世界中に闇属性の人って確認されているだけで何人ぐらいいるんですか?」
「冒険者ギルドの調べでは・・・4人は確実にいる。」