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やるべきこと

 

             やるべきこと


 世界を救えったってなあ・・・。ホシノ神が言った言葉に疑問符がいっぱい浮かんでくる。そもそも、何から救えと言っているのだろうか。ゲームとかだと魔王みたいなやつがいて、そいつを倒すことで世界が平和になるっていうのがお決まりのパターンだが、これはゲームじゃない。現実だ。まあ、神様とか異世界とかゲームやアニメっぽいけども。


 「具体的に何をすればいいんだ?世界を救えだけじゃ正直わからないよ。」

 俺は、率直に意見を述べた。

 

 「じつを言うと私にもはっきりとしたことはわかりません。ですが1つだけわかることがあります。それは、このままでは、10年後には人類が一人も生き残ってはいないということです。」

 衝撃の事実だ。これを言ったのがその辺の胡散臭い占い師や、学者ならば一笑に付していたが、目の前にいるのは神様なのだ。


 「ちょうど今から3年前、闇の神殿の神官たちがそろって同じ夢をみました。その夢は、魔王が倒されてから100年目に行われるお祭りでのこと。人々が楽しんでいるときに、突然何の前触れもなく、人々が苦しみだし、灰になってしまうというものでした。あらゆる物には、寿命があります。それは、人類やこの星にも当てはまります。人類が死に絶えるのも星が死ぬのもあと数万年も先の話です。それがわずか13年後にほろぶと言われても到底信じられません。ところで、私には寿命を見ることができます。動物の寿命や植物の寿命は変わってはいないのに人類の寿命だけが見えなくなっていたのです。」

 それから、神は、原因を探るべく奔走した。が、原因はわからなかったそうだ。他の神に意見を聞きたかったらしいが自分は200年前に代替わりした神らしく、他の神と連絡がつけられなかったらしい。

 そこで、考え付いた方法が自分が司る属性持ちの者に調べてもらうことだったが、この50年余りの間に生まれたものは一人もいなかった。だからこそ、俺を強引に転生させたということらしい。

 その後も、神様の説明は続いた。この世界のことや他の国のことの一般的な知識から、この国の常識についての知識を理解するまであきることなく覚えさせられた。


 

 朝になり俺は、やたらときしむベッドから起き上がり身支度を整えた。夢の中で説明をうけていたからか、寝た気がしない。だがまあ妙に頭はさえている。リビングに出ると、昨日は気が付かなかった絵に目が留まる。そこには10人の人間が描かれており、1番前にいる人物が王冠を被っている。100年前、魔王が倒されたころの王様だ。周りにいる9人は、王に忠誠を誓っていた騎士だ。彼らは、国難の折に最後まで王を守ったことで王より爵位をいただき、それぞれ領地を持つことになった。九家と呼ばれている。どうやらうちは、九家の一つらしい。その割に家がぼろいのは、一つはここが田舎だということと、もう一つは九家の中で末席だということらしい。らしいというのは、この知識は夢の中で説明されたことだからだ。

 

 とりあえず外が明るくなってきたので外に出る。玄関を出て少し歩くと獣人の青年にあいさつをされる。現在、この領地にいる獣人は、すべてうちの管理下にある農奴だ。彼らは、領主やその家族に対してふざけた態度はとれない。すれ違う時にも、きちんとした礼が求められる。もし破れば一家全員皆殺しもあるのだ。でもまあ、実際にそんな目に合った者はこの領地ではいないらしい。なにしろ領主である父さんが農奴といっしょになって野良仕事をするのだから。

 

 大通りに出たので昨日知ったことを思い返してみる。まずこの国の名は、カルナス神聖国という。現在の王様は、即位時に改名されてヒューネル六世という名前だ。兄弟は男ばかり14人。次男は、騎士団の団長を務めているらしい。それ以外は、城の中で王様の補佐をしている。王位継承権をかけて骨肉の争いを繰り広げるのがほとんどらしいが、現在の王様は非の打ちどころがないほどの人物で争う前から結果はみえていた。しかも次男は早々に騎士団の団長に着任することで王位継承権を放棄してしまっている。他の兄弟に目立った才覚のある者はおらず、結果として王の下で働いた方が利口という結論に達したようだ。


 これから俺が向かうのは、町の中心に位置するギルドだ。そこでとりあえず自分のステータスを確認して、装備する武器と防具を決めるつもりだ。この世界では、レベルという概念がない。強くなるには、武器と防具にくっついているスキルを覚えたり、修行や鍛錬などをして肉体を強化していく方法がある。スキルや肉体の強化具合によって属性ごとに技や魔法を覚えたりするものらしい。また、武器や防具には装備基準というのがあって装備ごとにある基準を満たさないと装備できないらしい。装備基準には、属性が関わってくることがあるらしいのでギルドで自分の属性を知ることも重要なのだ。でも、神様あいつの話で自分の属性がうすうすわかってしまっているのだが。まあ、確認だけでもするだけしてみようと思う。

 

 

 そんなことを考えながら歩いていると、目の前に機嫌の悪そうな男がこっちを見ているのに気づいた。

 

 通り過ぎようと視線を合わせないようにすると男は声をかけてきた。

 「見てんじゃねえよてめえ。」

 「いや、見てないよ。」

 「見てんじゃねえかこのやろう。なめてんのかこのやろう。」

 「見てないっていってるじゃないですか。これから用事があるのでしつれいします。」と言って背を向けると、「まてやこらあ」と怒鳴り、背中を蹴ってきた。いらっときたので、相手の鼻に一発右ストレートをぶちこんでやった。鼻血がボタボタと流れ落ちる。相手がうずくまったので、すかさず連続でけりを入れ意識を失わせた。

 こんなことをやっていると昔のことを思い出す。地元では、不良が多かったので喧嘩ぐらい強くないとやっていけなかった。中学の頃から話の話題は、どこ中のあいつがやべえだの俺らのシマで誰それが調子コイてるから、いっぺんシメテやるだのという話題であふれていた。男だけじゃなく女も、ヤマンバファッションと呼ばれる格好をしていたりレディースに入っていたりと荒れまくっていた。高校に入るまで、それが普通だと俺は思い込んでいた。

 しかし、なんだったんだ今のは。はっきり言って普通じゃなかった。この世界にもおかしなやつがいるんだなあ。まあ、そんな頻繁にさっきみたいなのにからまれたりはしないとは思うが。


 

 だが次の瞬間俺は、白昼夢を見ているような感覚を味わった。


 「そこのてめえ、見てんじゃねえよこのやろう。」

 

  

 

 

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