これからのこと
これからのこと
こいつ、今確かに俺のことを義兄さんと言わなかったか・・・・・。
俺は今自分の置かれている状況について絶賛混乱中だ。自室で寝ていたはずなのに目が覚めると記憶にない場所にいた。そこには、死んだはずの家族がいて、明かりがなぜかランプだし、突然フロイドとか言う20代前半くらいの外国人?が乱入してきて、いやそれよりもやけに妹と親しそうだ。確認してみるか。
「取り乱してしまって申し訳ない。ひとつ確認させてくれないか。さっき俺のことを義兄さんと言っていたがどういうことなのかな?手間をかけるようで悪いが一から説明してくれないか?」
そういうと微妙な間が空いてから説明し始めた。
フロイドの説明によると、妹と出会ったのは去年の収穫祭でのこと。ひとめぼれだったらしい。地道に口説き続け、きのう結婚の意思を伝えに行き両方の両親から許しが出たということだ。家に来たのは、夕方頃で話が終わったのは夜中だったという。夜道を一人で帰らせるのは、危ないからとここに泊まらせてもらったらしい。昨日の夕食では、俺が祝福していたと言うが俺には当然覚えがない。ていうか、日本の法律上14才では結婚はできるはずがない。完全に違法行為だし、フロイドはロリコン野郎だ。そもそも収穫祭ってなんのことだ。農民でもあるまいし、うちの父さんが何を収穫するっていうんだ?夜道が危ないから泊まっただと?そんなもんてめえ一人でどこにでも行きやがれ。
説明を聴きながらいろいろ考えていると、カ~ン、コ~ンと鐘が鳴りだした。すると父さんが、
「もうこんな時間か。そろそろ畑に行かないと。宗助、今日はお前も手伝ってくれないか。とりあえず着替えが済んだらフロイドとおもてに出てきてくれ。」
着替えを済ませて外に出た。少しの驚きの後、ここが地球ではないことがよくわかった。空は青いし、人もいるが犬の顔をした獣人としか呼びようがない人が行き来している。さらに、アスファルトではなく、土がむきだしの道路、車ではなく馬車であり、青や緑の色鮮やかな毛並みを持つ馬が走っているのだ。それにさっき、鏡を見たら10代後半のころの自分の顔がそこに映し出されていた。朝からの驚きの連続により精神がつかれた。
その後、畑に出向き、にんじんのような物とジャガイモを収穫した。にんじんのような物というのは、父さんは、にんじんと言っているけども色が俺の知っているにんじんとは違うし、大きさが一個大人一人分くらいあるからだ。庭で家庭菜園でもやっているのかと思っていたが予想に反してしっかり農民だった。作業中、フロイドが何か話しかけてきたが話に付き合う余裕はなかった。
その日の夕食を終え、風呂に入った後、ぐったりと横になった。
と、次の瞬間景色が変わる。俺は、淡い白の輝きを放つ不思議な空間にいた。
「やあ、古城さん。家族との再会はどうでしたか?」
目の前に工場で一緒に働いていた同僚がいた。たしか名前は、なんだったかな?思い出せない。
「僕の名前を思い出そうとしても無駄ですよ。地球ではあのとき、工場長のもとへ向かわせたくて姿を現したってだけのことですから。」
そうやって肩をすくめる。
「おまえ、一体誰なんだ。ここはどこなんだ。」
「おや、興味ありますか?僕が誰かってことも含めて、ここはどこなのかについて説明しますね。立ち話もなんですし座って話しましょうか。」
そう言うと目の前に一瞬で椅子が2つ出現した。驚きもそこそこに椅子に座る。
「では、まず私の紹介から。私は、このあなたから見て異世界にあたる星で神の一柱をやっている星野章といいます。この星では、ホシノ神としてまつられています。」
突拍子もない話だが、疑問をはさむ余裕もなく話を続ける。
「今現在、あなたと私はあなたの夢の中にいます。いきなり、家族と再会したり異世界人と触れ合ったりして疲れたでしょう。状況を整理するためにもチュートリアルをしておこうと思いまして。」
チュートリアルという言葉にゲームみたいだなと思った。俺も子供のころはよくゲームをやっていた。RPGやシミュレーション物が好きでFC、PC、SFC、PSなどをやりこんでいた。その経験から考えるとこの流れはRPG的だ。
「まず、気づいたかもしれませんがあなたの身体は、17歳に戻っています。その理由としては、あなたの心と体が1番充実していた時期だからです。この世界には、属性というものがあり、それぞれ光、火、水、土、風が陽の属性と言われています。反対に闇、影、魔、邪、毒が陰の属性となります。この中でも光と闇は特別で、光か闇どちらかの属性の者は各地にある大神殿を巡ることでそれぞれの属性が武器に反映されていきます。加護が付くと考えていただければ良いと思います。33歳の身体では、とてもじゃないですが魔物と戦いながらの旅は大変ですから。」
「あのさあ、なんで俺が旅なんかしなきゃならないんだよ。家族と会えたのはすごくうれしいし、これをあんたがやったってんならすごく感謝もしてるよ。だけどさあ、地球ではどうなってんのよ。俺、無断欠勤ってことになってんじゃないの?」
そこで少しもったいぶったように一言、「そんな心配はいりません。だってあなた・・・」
「もう死んでますからね。」
は?俺が死んでるって?じゃあ今ここにいる俺はなんなんだよ。
「つまんねえ冗談言ってんじゃねえよ。死んだって言うんなら死因はなんなんだよ。」
俺は、若干試すようにそう言った。
「死因は脳出血です。本を読んだ直後に、軽い眩暈がしたはずです。覚えてますよね。あの時、脳の血管から血が出てたんですよ。で、そのまま眠るように息を引き取ったというわけです。」
まじか?普段ならこんな説明されても、突っ返すところだが、常識では考えられないことが立て続けに起こったことで受け入れることにした。
「あなたが死んだときに肉体から魂が離れる瞬間、魂をキャッチしてこの世界への次元移動をしたんです。新しい肉体を創って、魂を定着させた後、すでに転生していたあなたの家族の記憶を操作して違和感をなくしました。まあ、家族は一緒のほうがいいですからねえ。」
「なんかすまなかったな。いろいろ迷惑かけたみたいで。」
俺は、素直に感謝の気持ちを述べた。
「別にいいんですよ。いろいろやった分の対価は払っていただきますから。」
「今、対価と言ったか?まあ、ここまでしてくれたんだし俺にできることならやってやるけどさあ。」
「それでは・・・世界を救ってもらいましょうかね。」