天才が忘れた頃にやって来た
「なあおい、本当にやるのか?」
「暴力を振るうことは、神様の教えに背く重い罪だぞ」
「ドロイドは奴隷だ。モノだ。だから暴力じゃない。いいからやってみろよ、気持ちいいぞお」
……なんだこいつら?
俺達を遮るように道を塞いだ三人組。なんか超ヌルそうな奴らなんだが。
飢えたオオカミのような悪党を期待してたのに、ハングリーさの欠片もないじゃないか。
これならゲームセンターでチョロチョロしている不良中学生の方が、まだ凶悪だぞ。
話している内容から察するに、どうやら唆している一人以外はこの襲撃が不良デビューのようだ。
ベティちゃんの同時通訳は結構怪しいところがあるからなあ。まあ、曖昧なところは想像力で補完しようか。
どうやら教会に禁じられている暴力を、ドロイド相手に試してみようということらしい。
馬鹿な若者は、禁止された行為をやりたがるものだ。度胸試しに禁忌を犯して、他人がしない行為をする自分を偉いと勘違いしてしまう。
だって馬鹿だから仕方ない。
それにしても、こいつらの信仰している宗教って、明らかに銀河連邦がでっち上げたものだよな。
生まれてから死ぬまでありとあらゆる暴力を否定されているようだ。まあ、暴力を禁じるのは悪いことじゃない。少々やり過ぎな気もするが、支配するにはいい方法だと思う。
無抵抗なドロイドを殴ることが、彼らにできる精一杯の反抗なのだろう。
こいつらがちょっと哀れに思えて来たぞ。
ここは無抵抗に殴られてやるか? 本物のドロイドならそうするだろうしな。
おずおず前に出て来た男が、へっぴり腰で俺の腕をペチンと叩く。痛くも痒くもない。というか、この程度なら普通に挨拶だろう? 異性にやればセクハラだがな。
「お、おお! おおっ!! これが……暴力? なんだろう、胸の奥がざわめくような、この感覚は?」
これしきの事で物凄く感動してる。なんか、見てて面白いな。
この程度の暴力とも言えないような暴力でも、こいつにとっては生まれて初めての経験だったんだろう。よし、いいぞ。これをきっかけにどんどん覚醒してしまえ。
こいつが銀河連邦にイレギュラーとして処分される未来しか見えないんだが、本人が望んだ結果なんだから別にいいんじゃないか?
飼い殺しにされて平穏な人生を送るか、支配に抵抗して殺処分されるか。どちらが幸せかは自分が決めればいい。
ブラック企業で長い間社畜をやっていた俺が偉そうに言えた義理じゃないがな。他人事だからこそシンプルに理解できる。
どうせなら一致団結して銀河連邦に叛旗を翻し、この星から追い出すくらいしてくれたら面白いんだが……この調子じゃとても無理そうだな。
「そんなへっぴり腰じゃあダメだダメだ。見てろよ、オレが暴力というものを教えてやる!」
お、今度は主犯格の男だ。こいつはなかなか目つきが悪いし、ちょっとは骨がありそうだ。見せてもらおうか、お前の言う暴力とやらを。
男は両腕をぐるぐる振り回しながら飛び掛かって来る。これは……駄々っ子パンチ?
立派なガタイの若者がやると、ふざけているようにしか見えない。
おまけに両目をぎゅっと固く閉じてしまっている。幼稚園の喧嘩レベルだな。
咄嗟に半歩下がって攻撃を受け流す。今度もわざとくらってやるつもりだったんだが、一応殺気っぽいものを感じたんでな。ついうっかり体が動いてしまった。
予想していた場所に俺がいなかったせいで、そいつはつんのめって顔から地面に突っ込む。
おいおい? 受け身くらいとれよ? 子供でもこけた時に手をつくくらいするだろう?
鼻血で顔面を血だらけにした男は、驚いたことにワンワン泣き出す。
他の二人も血を見たショックでへたり込んでしまう。こいつら、深窓のお嬢様かよ?
生まれた時から暴力を知らずに育ったなら、ここまで軟弱になるのだろうか?
「痛い! 痛いよおっ!! ドロイドが暴力を振るったあっ!! あり得ないだろ! こいつ、イレギュラーだよおっ!」
「お前……自分でこけただけだぞ。俺は、注意深く見ていたからわかるもん」
「いや、これはきっと神罰なんだ。神様はいつも俺達のことを見ているんだからな。僕だけは暴力を振るおうとしなかった。今日からは僕が道徳的に優位だからな」
三人はもう俺達には見向きもせず、ひざまずいて一心不乱に祈り始める。なんだろう、この茶番劇は? インチキ宗教って怖いな。
せっかく目覚めかけたこいつらの本能の発露を、俺は潰してしまったかもしれない だけどまあ、この程度で諦めるようならどうせ駄目だろう。
こいつらには実践の前に、まず基礎理論から叩き込む必要がありそうだ。
暴力の教科書か、うーむ。バトル系マンガとかかな? バイオレンスな映画なんかもいいかもしれないな。そんなのを見た日には、カルチャーショックで倒れるかもしれないが。
まあ、今はつまらん道草をくっている暇はない。
馬鹿どもは放っておいて、予定通りピラミッドを目指すとしよう。
その後はこれといって面白いイベントもなく、ピラミッドの麓にたどり着くことができた。
ピラミッド周辺には、先住民の姿がまったく見えない。立ち入り禁止地区なのかもしれない。
周囲の建物のデザインも全然違うな。ファンタジーRPGからスペースオペラの世界へ迷い込んだようだ。どこかのテーマパークみたいだな。
近くで見上げると、とにかくでかい。大きいことはいいことだ。何といっても迫力があるしな。これだけで十分観光資源になる。
多分、エジプトにあるギザのピラミッドよりでかいぞ。上半分はないから、ピラミッドとは言えない? いや、別にピラミッドは四角錐とは限らない。南米マヤのピラミッドもこんな形だった筈だ。
切り取られたような屋上はヘリポートみたいな使われ方をしている。エイ型母艦一機で埋まってしまうけどな。
建築費も馬鹿にならないだろうに、なんで地面に直接飛行場を作らないのかは謎だ。おかげで簡単に忍び込めないじゃないか。
ピラミッドの表面はツルツルで、どこにも入り口などありはしない。
地下街を通って出入りできるようなんだが、周囲の建築物にも窓とか出入口がほとんど見当たらない。殺風景を通り越して、異様な印象を受ける。
開口部を極力減らしているのは、おそらくビーム攻撃に耐えるためだろうな。
どうせ防犯カメラ的な何かで監視されているだろうから、コソコソせず堂々と歩く。
ドロイドの姿はちらほら見かける。俺達は何も怪しくはない筈だ。
ごく自然な感じで、他のドロイドの行列の後についていく。なんか働きアリになった気分だ。
小型のピラミッドの陰に、地下鉄の駅のような開口部があった。そこから降りていくと、地下はもう迷路だ。
日本の地下街に比べれば、計画的に造られている感じだが、同じような区画が続くので迷子になったら手がかりがなくて困りそうだ。
基本、全ての通路は直角に接続しているのが救いだな。方眼紙があればマッピングしたいところだ。ベティちゃんがオートマッピングしてくれているだろうし、帰り道は大丈夫か? この前みたいに死なれたら困るけどな。
そもそもエイ型母艦への潜入が成功すれば、帰り道の心配はいらない。地獄への片道切符にならないことを祈ろう。
有尾人の番兵が要所要所に立っているのが邪魔くさい。奴らは一体何に備えているんだろう? 連中の脅威となる存在がいるとも思えないんだが……これも様式美か?
攻めて来るとしたら、タケバヤシ達ぐらいだろうな。
ん、突然閃いたぞ! フッと頭に浮かんだんだよ、それもとびっきり天才的なアイディアが!
「タケバヤシ達の機体のコクピットに乗り込めば、普通に地球に戻れるじゃないか」
奴らに借りを作るのはシャクだがな。現金でもマテリアルでも、欲しがるだけくれてやれば嫌とは言うまい。
「そのプランには反対です。この星でコクピットを開くことは、リスクが高過ぎます」
「あー、酸素とかがアレだったりする?」
「大気組成の差については、短時間であれば許容できるレベルです。問題はバイオハザードです」
バイオハザード……この星の大気中のバイキンがヤバイってわけだな。
「銀河連邦の制式着陸船であれば、除染施設が標準装備されている筈ですが」
あの枝豆みたいな輸送船を分捕って、除染施設にタケバヤシ達を連れ込めば……いや、普通に宇宙要塞まで行く方が早そうだな。
どのみち敵の輸送船は分捕らないと、イベントを先に進めることはできないってことか。相変わらずゲームみたいな展開だよなあ。それもクソゲー展開だ。
ベティちゃんの脳内マッピングのおかげで、どうやらピラミッド内部までは侵入できたようだ。階段を使って上へ上へと上がっていく。
宇宙人のピラミッドなのに、普通に階段があるんだな。エレベーターもあるが、そっちは警備が厳重なので仕方ない。
おそらく、停電とかの非常時のための非常階段なのだろう。他のドロイド達の姿も一切ない。監視カメラで見られていれば怪しまれるかもな。
言い訳を考えてみる。ダイエットのために階段を使ってました? そもそもドロイドって言い訳とかするんだろうか?
延々と登り続け、やっとピラミッドの屋上に出た。
達成感があるな。風が気持ちいい。それにしてもなんて風だ。吹き飛ばされてしまいそうだ。
屋上外周には手すりなどはなく、足を踏み外せば地上まで地獄の滑り台だ。死ぬかな?
頭上には超巨大なエイ型母艦が翼を広げている。でかいとは思っていたが、間近で見ると圧巻だ。
そりゃあスキュータムIIをうじゃうじゃ搭載してるんだからなあ。アメちゃんの原子力空母も大概でかかったが、あれの十倍はありそうだ。
そんな巨人機にもかかわらず、接地点が三点しかない。左右の翼から伸びたガガンボの足のようなのが二点。胴体中央部から下に伸びたトゲのようなので一点。
全重量があのトゲにかかっているとしたら……とにかく超重いだろうな。土台への負担が半端ないぞ。宇宙人の設計思想はよくわからん。
中央のトゲのすぐ後ろに、乗降口と思われるハッチがあり、スキュータムIIが何機かうろちょろしている。
出入りするドロイドは、有尾人の番兵にしっかりチェックされている。あれは誤魔化せそうにない。連中を少し甘く見過ぎていたようだ。
せっかくここまで来たのに、諦めて出直すか?
斬りこめばこのエイ型母艦は分捕れるかもしれないが、こいつじゃ宇宙は飛べないしな。欲しいのは宇宙船だ。
幸いなことに、ピラミッドの屋上には手持ちぶたさに突っ立っているドロイドが結構いる。しばらくここにいても、不審な目で見られることはなさそうだ。
もう少し考えれば、何かいい手が思い浮かぶかもしれないし、エイ型母艦に乗り込むように命令されるかもしれない。
待てば海路の日和りありとも言うしな。
潜入できなかったとしても、別に焦ることはない。
今回はあくまで下見に来たってことにすればいい。
考えてみれば、ピラミッドにも登れたし、宇宙人の巨大兵器を間近で見ることもできたんだ。観光旅行だと考えても大成功じゃないか? こんな経験をした地球人はそういない筈だ。
そう思ってエイ型母艦をしげしげと眺めると、なんとなく有難味が出て来るようだ。
地球の一般的なメカデザインとは大きく異なるが、それでもメカであることははっきりわかるし、ある程度機能も理解できる。映画に出て来るエイリアンのメカとかには、もっと訳の分からんデザインのも多いからな。空想はリアルよりも奇なり……か。
おそらく反重力装置で飛ぶのだろうが、全翼機のような形状は空力にも配慮しているっぽい。飛行中、多少は揚力とかも発生してそうだ。
ビーム砲はハッチが閉じていて確認できないが、使わない時は収納しようと考えるなんて、発想が随分人間くさいじゃないか。
こいつ一機で日本円ならおいくらだろうな? きっとお高いんだろうな。宇宙人の通貨単位って何だ? そもそも金銭の概念があるのだろうか?
とりとめもないことを考えていると、周囲がなんとなく慌ただしくなってきた。遠くでサイレンのようなのが鳴っているのが聞こえる。
俺達が侵入したのがバレたか? ギョッとしたが、どうもそうじゃなさそうだ。
どうもエイ型母艦がスクランブル発進するようで、ピラミッドから出て来たスキュータムIIが次々に飛び乗っていく。
周囲のドロイド達も駆け寄って、大わらわでコンテナを積み込み始めた。チャーンス!
ベティちゃんと二人がかりで適当なコンテナを持ち上げると、タラップを駆け上る。そのまま奥の通路に滑り込んでも、見咎める者はいない。
やったぜ?
まあ、大変なのはここからだろうな。軍艦の中とか、警備は尋常じゃない筈だ。
きっとそこら中に対人センサーだらけだぞ。これはあれだな、こそこそ隠れたりしたら、かえって怪しまれるな。
俺がリンクスのセンサー表示を見ている時、膨大なデータを全て気にしているわけではない。他とは違う動きをする奴からまずチェックする。それで大抵は正解だ。
その辺は敵だって同じだろう。逆に考えれば、敵にされたら嫌なことをするのが正解ってことだ。
つまり、木を隠すなら森の中。ドロイドが隠れるならドロイドの中ってね。
艦内にもドロイドはいっぱいいる。着ているコスチュームがちょっと違うのが気になるが、まあ大丈夫だろう。
通路の隅に設けられているドロイド用の固定具に座り、シートベルトみたいのを着用する。
あとは総督府まで奴らが届けてくれるだろう。
懐に飛び込んでしまえば、あとはなんとでもなる。枝豆輸送船に逃げられる前に分捕らないとミッションフェイルドだから、そこだけ注意だな。
行き当たりばったりで来たにしては、今の所わりと完璧? 何か見落としているような、スッキリしない気分だが……
「変ですね。総督府とは違う方向へ飛んでいます」
ベティちゃんの言葉で、ハッと気づく。
そうだよ、スクランブル発進したんだから、向かう先は戦場じゃないか?
そうなると、戦う相手はタケバヤシ達だろうな。コクピットを開けずに、なんとか奴らにくっついて地球に帰れないものかな?
「お、ビーム砲を発射し始めたな」
壁を通して特有の振動が伝わって来る。ミュイーンって感じ? 大型ビーム砲だけでも十門以上積んでるからな。斉射するとミュミュミューンってバイブレーションがちょっと気持ちいいぞ。
それにしても景気よく撃ちまくるもんだ。よっぽど高性能なジェネレーターを積んでいるんだろうな。
「スキュータムIIが出撃していく……あ、やられたか?」
機体の揺れだけからでも、いろんな状況がわかるもんだ。
下からビシバシ突き上げられるような衝撃は、地上からの攻撃に被弾しているのだろう。
せっかく苦労して潜り込んだのに、落とさないで欲しいぞ。
大丈夫だよな? この巨人機が数発のビームで落ちるようなら、俺も苦労はしてないし。
それにしてもやられ過ぎじゃないか? まるで土砂降りの雨にうたれているようだ。数発どころか、数十発、いや数百発のレベルで攻撃されてないか?
おかしいぞ? タケバヤシ達三人に、これだけの火力があるわけがない。
バリアの許容限界を超えたか? 何か壊れるような、爆発しているような、嫌な振動が伝わってくる。
一体何と戦ってるんだ? 火力が容赦無さすぎだろ?
「墜落します。脱出しましょう」
くらっときたと思ったら、いきなりリンクスのコクピットに戻った。
やっぱり自分の肉体が最高だな。空気が美味い。
目の前を落ちていくエイ型母艦。その巨体に地上から無数のビームが殺到している。
ジョイスティックを握って破片やビームをひょいひょい避けていく。なんか昔、こういうゲームもあったよな。
「なんだよ……クモ脚メカがウジャウジャいるぞ」
多分こんなことだろうと思ったよ。
見渡す限りの大地を、クモ脚メカが埋め尽くしている。
スクランブル発進の原因はこいつらだな。こんな大群が町まで押し寄せて来たらひとたまりもないだろう。
被害が出る前に駆除しようと緊急出撃して返り討ちかよ。
一発だけならたいしたことのないビームでも、何万と集まればそれだけ威力も上がる。これはもう、数の暴力なんてものじゃない。
そりゃあ、エイ型母艦だって落とされるか。
町を守ろうと焦ったのだろうな。群れの上空に飛び込んでしまったのが、致命的なミスだ。
自慢の大口径ビームで、周辺部から徐々に焼き払えばよかったのに。
『急いで離れてください。爆発に巻き込まれます』
言われなくってもそうしている。幸い奴らのタゲはまだ、墜落中のエイ型母艦に向いている。
周囲の地形をざっと見渡して、直感でよさげな山影を避難場所に決める。
リンクスを緩降下させながら、巨人機の行方を見守る。機体が超でかいせいで、ゆっくり落ちているように見えるのか? 反重力装置が最後の仕事をしているのかもしれない。もう少しの間、頑張ってくれればうれしいな。
空中で爆散するかと思ったが、地面に激突するまで耐えたのはさすがだった。
なんとかギリギリ山を盾にすることができた。次の瞬間、閃光が周囲を包む。
光を直接浴びたクモ脚メカは、即座に消滅。地表の岩石は高温で溶け、急激に膨張した大気が音速を超えるスピードであらゆるものを吹き飛ばしていく。
円形に広がった爆風が地上を進んで来るのを眺めながら、一応逆方向に飛んで逃げる。
山が爆風を止めてくれるかと期待したのだが、あっさり乗り越えて突き進んで来る。
直後、リンクスも風につかまり翻弄される。
衝撃波の第一波は、タイムスキップで凌いでみた。その後はもう流れに逆らわずに一緒に吹き飛ばされることにした。こんなの、抵抗は無意味だろう。
爆心地付近から空に向かってぐんぐん伸びていく黒い雲。ああ、あれは成層圏まで達してキノコ雲になるだろうな。
「核爆発?」
『対消滅爆発ですね。ずいぶん旧式のリアクターを使用しています』
旧型であの大爆発かよ? エイ型母艦おそるべしだな。
地上のクモ脚メカの群れは爆風で一掃されたかに見えたが、意外に被害は少なかった? 周辺からぞろぞろ集まって来て、空いたスペースを埋めていく。
最近は乱獲し過ぎてレアキャラになっていたのに、一体どこから湧いて出たのか。スキャナーの探知範囲は全て奴らの反応で埋め尽くされている。
何百万? いや、そんなもんじゃないだろう。とにかく数字が意味がないくらい一杯いる。
のんびり飛んでいてタゲられたらヤバイので、急いで着地する。
幸い、同士討ちを避けようとする性質は、大発生中でも変わらないようだ。これならまあなんとかなるか?
上手く白兵戦に持ち込んでしまえば、相手が十機だろうが百万機だろうがやることは同じだしな。
ただなあ。問題は、とんでもない長丁場になるってことだ。
一分は六十秒だから、一時間は三千六百秒だろ? 一日だと……十万秒いかないくらいか?
一秒に一匹倒し続けたとしても、何日かかるんだ? その間の食事や睡眠をどうする?
これは、勝てない。絶対勝てないぞ。
そういや昔の偉い人が言ってたな。結局、戦いは数だってな。