表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺のロボ  作者: 温泉卵
89/113

敵の補給艦を奪え

 波間に揺られて漂うリンクスから、満天の星空を見上げる。

 空は星屑の海、そして周囲には本物の海。海はいいなあ、広くて大きいのが実にいい。

 人間の肉眼より感度が高いセンサーのおかげで、コクピットがまるでプラネタリウムになったようだ。

 

「宇宙要塞ってのはこれかあ」

 

 スクリーンに拡大されたそれは、キノコのような形をした大きな岩の塊だ。昔見たアニメに登場する悪の要塞『ア・クー』にちょっと似ている。それよりもっと、『キノコタケノコ戦争』というチョコレート菓子にそっくりだ。

 

 ベティちゃんが画像処理してくれているから、岩石表面の凸凹までくっきりと見えるけれど、実際は随分距離があるみたいだな。光の速度でも数十秒かかるのか。行くのは大変そうだ。

 

 ミリオンにもらった星図みたいなのは、見方がよくわからん。おそらくここの太陽系を表した地図みたいなものなんだろうけれど、太陽が一つしか描かれていない。

 ここでは空に太陽がいくつも見えることがあるんだ。この星図は間違っていないか?

 

 いや、待てよ。ミリオンを信じてこの星図は全て正しいとしてみよう。

 太陽は一つしかなく、この星は巨大惑星の周囲を回っている衛星ということになる。

 夜空に浮かんでいるでかい月、あれって本当は惑星だったのか。

 

 そして、衛星であるこの星の周囲を、さらにいくつかの人工天体が回っている。衛星の衛星だから孫衛星とでも言えばいいのか?

 スペースコロニーのような、ミラー衛星のような……ああ、人工太陽ってわけか。地球の月にビリー氏が建設しているのと同じで、要するにでっかい鏡だな。


 謎は全て解けたぜ。ここは作られた世界だった。

 

 巨大惑星の周囲を回る地球サイズの凍った衛星の周囲に、人工太陽を建設してテラフォーミングしたんだな。

 似たようなプロジェクトをビリー氏がガニメデでやっている。完成は百年後になるらしいけどな。

『神が七日でやったことを、私は百年かけてやるのだ』とか言って、いろいろ問題になっていた。

 結局、あれも宇宙人の技術だったわけだな。

 

 この星が作られたものだろうが、俺には関係ないけどな。

 そんなことより、あのキノコ型の宇宙要塞にどうやって行くかだ。

 あの宇宙要塞はこの星同様に巨大惑星を回っている。より外側の軌道だからゆっくりなんだな。

 軌道面が結構ズレてるから、最接近する時期を計算するのは面倒臭そうだ。その辺はベティちゃんに頑張ってもらうか。

 

 ちょっと気になるのが、星図では宇宙要塞のすぐ近くに生け簀みたいなマークが書かれていることだ。実際にはその辺には何も見あたらないんだが。航路標識か何かかな?

 

『ああ、それは宇宙ゲートですね』

 

「宇宙ゲート?」

 

『戦列艦クラスが通過可能な恒久的なワープゲートです。地球の月の裏にもありますよ』 

 さらっととんでもないことを言う。宇宙海賊達は、そこからやって来たみたいだな。

 奴ら地球を滅茶苦茶にしやがって。でも、何かが引っかかる。なんで量産型スキュータムを売りつけてくるんだ? 侵略先に旧式の武器を売りつけて争わせるのはよくある方法だが、圧倒的な戦力差があるならそんなまどろっこしいことをする必要もない筈だ。

 

「銀河連邦は地球を消去するつもりみたいだが、宇宙海賊達は何を狙っているんだろう?」

 

『ビリー氏は彼らのことをトリックスターと呼んでいました』

 

 トリックスター星人か。いや、トリックスター人と呼ぶべきなのか? それともトリック星人? 地球星人とは言わないし、トリック人でいいのか?

 

 とりあえず当面の敵は奴らだな。海賊程度に手こずるようなら、銀河連邦に勝てるわけがない。

 

「それで、宇宙ゲートはどこに繋がってるんだ?」

 

『オリジナルリンクスの記録を覗いたじゃありませんか?』

 

 ああ、あそこか。銀河連邦の戦列艦しか見当たらなかったが、あいつを倒して先に進めば奴らの本拠地があったのかもしれない。

 

『あの宇宙要塞は地球の月と同程度の質量がありますからね。宇宙ゲートを維持するのに適当なのでしょう』

 

 地球の月と同じか、そりゃあでかいな。

 

「昔のアポロ計画じゃ、オモチャみたいなコンピューターで月までロケットを飛ばしたんだ。優秀なベティちゃんなら軌道計算くらい簡単な理屈だろう?」

 

『反重力推進だといろいろ勝手が違うんですよ。弾道飛行ですか……原始的な手段ですが、確かに軌道計算は可能でしょう。実弾用の火器管制システムが流用できるかもしれません』

 

 なんだよ、やっぱりできるんじゃないか。

 難しいことはベティちゃんに丸投げだ。俺は飯でも食って待つとするか。

 

「ああ、カレーが食いたいなあ」

 

『カレーなら何種類もあるでしょう?』

 

 確かに、レーションにはビーフ、チキン、シーフード、ベジタリアン等々いろんなカレーがある。

 カレーだからどれもそれなりに美味いことは美味い。というか、カレーを不味く作る方が難しいだろう。

 

「俺が本当に食べたいのは、最後の晩餐で食べたあのカレーなのさ」

 

 そう、爺さんのカレーをもう一度食べたくて、地球に帰るためにこんなに努力してるんじゃないか。

 

『可能ですよ。マテリアルを使えば完全に同じものが再現できます。コスト度外視もいいところですが』

 

 なんだよそれ? マテリアルって万能だな!

 

 

 

 ベティちゃんにお願いした結果……今俺の目の前には、あの日と同じカレーが存在する。

 素晴らしい! 匂いに至るまで完璧に再現されている。これは期待できそうだ。

 

 一匙口に運ぶ。確かにあの味だ。

 

 もう二度と口にできないかもしれないと思っていたぞ。涙腺が緩みかける。

 男は涙を見せぬものだが、これは男泣きだから別にいいよな?

 

 このカレーを再び口にすることを夢見て、モチベーションにして、今日まで過酷な戦いを乗り越えてきたんだよ。

 あ、でもマテリアルさえあれば、無理に帰還しなくても別によくないか?

 

「他の料理も再現できる?」

 

『一度コクピット内に持ち込まれたものなら可能です。全て記録してあります』

 

 よっしゃあ!! 結構いろいろ持ち込んで食ってたからな。これで俺はあと十年は戦える。

 

 コスト云々は気にする必要ないだろう。マテリアルが貴重なのは理解できるが、クモ脚メカを一体狩るだけで、何千食分のマテリアルを回収できる。プラントでも増やせるしな。

 

 今更ビリー氏にマテリアルを売って金に換えることもない。

 というか、地球はえらいことになってるのに、金銭ってまだ価値はあるんだろうか?

 無政府状態になってしまえば、電子マネーなんてトイレットペーパーにもなりゃしないぞ。

 俺が稼いだ大金も、ただの数値データに成り果ててるかもしれん。こんなことなら、預金で米とか缶詰を買い込んでおくべきだったな。

 いや、何兆円かはナンシーに預けて運用してもらってるし、爺さんにも食材を好きなだけ買っていいとは言ってある。

 あいつらのことだし、適当に上手くやってるんじゃないかな?

 

 地下シェルターへの避難となると、日本国籍がないと難しいかもしれないが、オリガ達だって優秀なエージェントなんだし、なんとでもなるだろう。

 

 そもそも、核戦争など起きる筈がないから税金の無駄遣いだと言われていたシェルター建設計画を、ビリー氏が鶴の一声で前倒しさせたんだ。

 こうなることを予想していた?

 宇宙海賊、トリックスター星人とのマッチポンプなのかもしれないが、結果的には日本国民を救うことになった?

 

 アメリカも冷戦時代に作った核シェルターを再整備していた筈だ。

 ただなあ、核戦争なんかしてしまったら、銀河連邦をさらに刺激してしまうんじゃないのか?

 トリックスター星人達の最終目的は、銀河連邦を怒らせて太陽系を消去させることなのか?

 ああ、もうわけがわからん。案外、連中は行き当たりばったりに行動してるだけだったりしてな。知的生命体だからといって、知的に行動するとは限らないじゃないか。

 

 

「やっぱり地球に戻らなくちゃな」

 

 爺さんの弁当を完全再現できれば、確かに食生活は充実する。だが、それらはすでに一度口にしたことのある味だ。

 まだ味わったことのない未知の料理を、爺さんの新作を味わえなければ、生きている甲斐がないというものだ。

 

 地球の食糧事情はそれどころじゃないかもしれないが、日本政府は全ての国民が三十年食っていけるだけの食料備蓄をうたっていた。

 政府の言うことをそのまま信じちゃいないが、まあ、少なくとも十年分くらいは地下シェルターに運び込まれていると思う。

 

 爺さんなら保存食料でも美味しく料理してくれるだろう。レトルトカレーやインスタントラーメンですら、プロが作れば別次元の味になるくらいだ。

 さすがに乾パンとかペレットじゃ無理だとは思うが、あの爺さんならなんとかしてくれるかもしれない。

 

『やはり故郷を護って戦うのですね』

 

 わかってないなあ。ベティちゃんは何もわかっていない。

 

 

 

 

 

『弾道飛行のコースをなんとか計算してみます。この星の軌道に乗ることができれば、トライアンドエラーで誤差を修正していくことも可能でしょう』

 

 軌道計算とかよくわからんが、なんか公式みたいのでパパっと全部計算できるんじゃないのか? 高校の物理で習ったような気がしないでもないが、綺麗さっぱり忘れたな。

 

 一つ言えるのは、アポロ計画とかに関わった科学者とか、マジ凄いってことだな。生きた人間をぶっつけ本番で他の天体に送り込もうなんて、よく考えたもんだ。

 

 あるいは、アポロ計画もトリックスター星人に入れ知恵されていたとか? なんでもかんでも宇宙人のせいにするのもアレだが、ちょっと出来過ぎた話だもんな。飛行機を発明して僅か一世代かそこらで月に行けるものだろうか? 科学の進歩がちょっと速すぎやしないか?

 一体いつから、奴らは地球に来てたんだろう?

 

 ベティちゃんが手探りでやろうとしていることは、アポロ計画より多分難しい。

 ちゃんと軌道を計算しないと、あの巨大惑星に落ちてしまうかもしれない。木星みたいなもんだとしたら、成分はヘリウムとかだよな? ヘリウムって危険なのか? どうなんだ?

 海面に叩きつけられただけで死にそうになったんだ。ガスの雲だってヤバイんじゃないか?

 

 戦闘より墜落で死ぬことが多いのは空物のシミュレーターじゃお約束だが、まさかリアルロボでこんなことになるとはな。

 

 まあ、ぶっちゃけリアルロボは転倒するだけで下手すれば大破だ。タケバヤシ達がやたら機体を壊しまくっていたのも、一つはそれが理由だろう。

 転倒するくらい不安定な方が運動性は上がるんだが、だからといって本当に転倒してしまっては話にならない。

 歩くだけで命懸け、それがリアルロボだ。

 

 そういえば、タケバヤシ達は今何してるんだ? 素人が乗る量産型スキュータム相手なら、あいつらでも無双できるだろう。ビリー氏の手駒として動くなら、むしろ何もしないのが最善手か?

 そもそも、あいつらはまだこれがゲームだと思ってるかもしれないしな。

 

 各国の偉いさん達のシェルターとして使われているなら、量産型スキュータムは戦力としては使われていないのかもしれない。

 

 

「ん? 今何か動かなかったか?」

 

 一瞬、目にゴミでも入ったんじゃないかと思ったが、そういう動きじゃない。

 ほら、やっぱり。スクリーンに拡大表示されたキノコ要塞のすぐ横を、小さな影が飛んでいる。なんというか、UFOっぽくスウッっとした動きだ。

 

『銀河連邦の輸送船ですね。ゲートから出て来たのでしょう』

 

 さらに拡大表示してくれる。うーん、枝豆型UFOか? 豆のような膨らみは四つあるけどな。

 

 ちなみに、畑で育てると四つ粒の枝豆もたまに混じることがある。機械で選別するとイレギュラーとして弾かれるから、普通は目にすることがないのだ。

 豆の知識だけにマメ知識、なんてな……どうしよう? ベティちゃんにウケるだろうか?

 

 悩んでいるうちに、輸送船は急加速してどんどんこの星に近づいて来る。最後にスッと急降下して、地平線の向こうに消えた。

 光より速いことはあり得ない筈だが、光速に近いくらい出てたんじゃないか?

 輸送船の癖に、恐ろしい機動力だ。こりゃあ、リンクスじゃ勝負にもならないな。とてもじゃないが追いつけないし、勝負以前の問題だ。

 

 輸送船ってことは、この星からマテリアルを収奪して、銀河連邦の本拠地? に持ち帰ってるんだろうな。

 

 別に輸送船じゃなくても、インベントリを使えばいくらでも運べると思うんだが、銀河連邦では一般的な技術じゃないのか?

 ひょっとして宇宙海賊たちの方が技術的に進んでいるのか?

 

 まあとにかく、あの輸送船はどこかに着陸してマテリアルを積み込むわけだよな?

 着陸している間なら動かないわけだ。あいつがどんなに高速だろうが関係ない。

 拿捕してしまえば、簡単に宇宙要塞に行けるじゃないか。おまけにマテリアルまでゲットだぜ。

 

 夢のような作戦だな。俺は天才かもしれない。

 

『あの船が降りたのは、おそらく都と呼ばれている場所でしょうね』

 

「都? 首都ってこと?」

 

『銀河連邦の総督府の置かれている都市ですね』

 

 総督ときたか。この星におけるラスボス的存在だな。

 なんとなくそいつに手を出したらバッドエンドな気もするが、その辺は臨機応変に考えようか。

 

 リンクスで直接乗り込めば蜂の巣にされそうなので、ベティちゃんの提案を採用して警備の甘い他の小都市から潜入することにする。

 

 ターゲットにした都市は、前にマテリアルの複製装置を奪った町より、少し大きい。

 

 実際に見ると海辺の港町って風情だが、港はないようだな。護岸工事はしてあるが、あくまで高波を防ぐためのものみたいだ。船がどこにもない。

 

 さて、ここからが大変だ。ドロイドに憑依して上陸する。俺のはこの前も使った奴だが、ベティちゃんのは新たに確保した胸の薄い中性的なタイプだ。

 使い捨てのドローンの胸のサイズなんて、別にどうでもいい話なんだが、ついつい気にしてしまうのは男の性って奴だろうな。

 

 憑依にもだいぶ慣れた。リンクスを操縦するのだって、一種の憑依みたいなものだしな。

 慣れれば自分の肉体を操るのとそう変わらない。むしろ自由自在過ぎて、本当の自分を忘れてしまいそうで怖いくらいだ。

 今の本当の俺って、リンクスのコクピットでひたすら食っちゃ寝してるだけだしなあ。仕方ない成り行きだとはいえ、かなりの駄目人間っぷりじゃないか? 何故か太らないからいいけれど。

 

 

 城のような工場の周囲には、スキュータムIIが何十機も配置されていて警戒厳重だ。今回あそこに用はないから関係ないけどな。

 

 俺達が向かうのは飛行場だ。ピラミッドの上半分を削り取ったような建造物の上に、エイ型母艦が鎮座している。

 遠くから見ても結構でかいよなあ。まるで怪鳥が巣の上で羽を広げているみたいだ。なんかマンガじみた光景で、現実感が湧かない。

 

 直線距離なら十キロも離れていないよな? ピラミッドもどきを目指して、でこぼこ道をぽくぽくと歩いて行く。

 そういえば、車を見ないな。自動車どころかリヤカーすら見当たらない。まさか、車輪が発明されていないのだろうか?

 荷物の運搬は怪力のドロイド達がいるから、別にいいのか?

 

 各地に点在する都市を結ぶ長距離の道路がないのが不思議だったんだが、どうやら都市間の輸送は全て空路に頼っているようだ。

 保護観察中の先住民を隔離するためだろうか? 何かあっても都市ごと浄化してしまえばいいってことだろう。

 マテリアルを生み出すこの星は奴らにとって消せないものだけれど、都市の一つや二つなくなっても困らないだろうからな。

 

 意図的に分割して管理し、中世の文明レベルを維持しているとしたら? 人権とかその辺がいろいろ問題だと思うんだが、そもそも宇宙人って人権はあるんだろうか?

 

 学校では基本的人権は宇宙普遍の法だと教わったから、なんとなくそんなものかと思っていたが、よくよく考えてみればそんな訳ないって。

 

 

 村、というか集落? 道に沿うように人家が数軒立ち並んでいる場所にさしかかる。建物は中世ヨーロッパ風……いや、ファンタジーRPG風の農家っぽいデザインなんだが、周囲には畑も田んぼも見当たらない。奴らが何を食っているのか謎だ。

 

 お、第一村人発見。生成りのシャツに茶色いズボン。いかにも村人って服装をしている。尻尾がないから有尾人じゃないな。

 合成人間であるらしい有尾人は、皆完璧に理想的な体格をしているからな。尻尾を確認するまでもなく、遠くからでも一目でわかる。

 

 そういう意味では俺達が憑依しているドロイド達だって、理想的な肉体を持つ合成人間なんだけれど、なんというか……デザインコンセプトが違う? 有尾人は兵アリで、ドロイドは働きアリって感じで、役割分担させているんだろうな。

 

 一方で先住民達の肉体は貧弱というか千差万別だ。中にはいい体をした奴もいるんだろうが、そういうのは滅多に見ない。

 日本人だって皆がアスリートな訳じゃないしな。天然ものなんだから不揃いなのは仕方ない。よく言えば、多様性があるってことだな。

 

 先住民の肌は赤っぽい褐色だが、顔つきはむしろ白人に近い。顎が若干長く突き出していて、ちょっと猿顔に見える。

 人類の進化のイラストによくある原人っぽい感じ? 別に背中を曲げて歩いている訳じゃないけどな。普通に人間の範疇に見える。

 

 家の中からあと二人現れた。第二、第三村人発見だな。

 

 若い男がこうして三人でつるんでいると、不良グループっぽく見えるよな。いや、本当にそんな感じの連中なんだろう。こいつらからは、なんかゲスっぽいオーラが出てるしな。第二村人は特に目つきが悪い。

 

 ほとんど条件反射みたいなもので、奴らと俺の戦闘力を分析してみる。

 数の力というのは大きなアドバンテージで、単体では貧弱なボウヤでも三人つるめばそれなりに強敵の筈なんだが、こいつらは単体戦力が弱すぎるな。

 

 ワンパンで戦闘不能にできる程度の相手であれば、数を揃えて来てもたいして脅威にはならない。

 多対一の戦闘は、俺の得意とするところだしな。

 

 おまけに俺が憑依しているこのドロイドは人間離れした怪力の持ち主だ。ダメージを受けたことはないから耐久力は不明だが、大岩を軽々持ち運べるんだから相当頑丈な筈だ。 

 敏捷性に関しちゃ普通の人間レベルでしかないが、その辺は駆け引き次第でわりとどうにでもなる。

 

 格闘マンガなんかでヨボヨボの爺さんがやたら強かったりするアレだよ。経験とカンで先読みして立ち回れば問題ない。

 

 

 どうも三人組は、俺達に目をつけたみたいだ。この世界の住人達にとってはドロイドは黒子みたいなもので、今までほぼ無視されてたからな。こういう展開は新鮮だ。

 

 いいぜ。肉体言語で語ろうというなら、とことん相手をしてやろう。どうせ急ぐ旅じゃないんだし?

 ああ、アメリカが大変なんだっけ? 俺が役に立てるんならなんとかしてやりたいとは思うが、彼らだって子供じゃないんだしな。超大国の威信にかけて自分達でどうにかするだろう。

 

 さあ、楽しいストリートファイトの時間だ。

 

 機械に頼らず直接拳を交えるのもたまには面白い。なんか年甲斐もなくワクワクしてきやがったぜ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ