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俺のロボ  作者: 温泉卵
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時をかける俺

 クモ脚メカを発見、いつもの癖で忍び足で距離をつめる。

 おっと、今は気づかれなくては意味がない、撃ってきてもらわないと。奴の射程に入ってからは、わざとノシノシ歩く。

 

 バスターソードを構え、さらに距離をつめる。剣を持つとうずうずするが、うっかり斬り払いしてしまわないようにしないとな。


 今日の目的は、新技というか新スキル? それの確認だな。マトバ君と遊んでた時に、ブラックボックスが割れてゲットした奴だ。


 わざと敵に見つかるように動くというのも、案外難しいものだな。必要以上に一歩ずつ踏みしめるように、昭和の大怪獣や巨大ロボになったつもりで歩いてみる。

 まあ、あの手のでっかい奴らは、大抵が50m以上あるような設定だからなあ。そりゃあ、ズシンズシン地響きもたつだろうさ。

 10mちょいのリンクスじゃ、軽すぎて迫力がイマイチだよなあ。何しろ水に浮くぐらい軽いロボだし。

 

 とりあえず、ガサガサと灌木を踏みつけながら歩いていくと、やっと先方が気づいてくれたようだ。さあ来い! ばっち来い!

 

 だが、ビームを一発も発射しないで逃げ出してしまう。

 

「なぜ逃げる!」


『合理的な判断ではないかと』


 どういう意味だよベティちゃん? 敵ザコが好戦的なのはゲームのお約束じゃないか。命を大事にしてんじゃないよ! とにかく、これじゃ練習にならんな。

 

 無印の“ガーディアントルーパーズ”で練習するか? CPU戦二面のザコ敵は何も考えずに撃ってきてくれるからな。バトるには退屈だが、こんな時には便利な連中だ。

 

 だけど、ガトIIのリアルな操縦感覚に慣れてしまうと、あっちはゲームっぽ過ぎてイマイチ本気になれないんだよなあ。気分転換にたまにプレイするのは悪くないんだが、今はちょっとそんな気分じゃないし。

 

 まあ、大丈夫だ。クモ脚が駄目でもスキュータムIIがいるじゃないか。リザードマンの集落の近辺に、あいつらの巡回コースがあることは把握している。クモ脚やカニメカと違いそう簡単には逃げない上、敢闘精神旺盛でやたらガンガン撃ってくれるから、練習相手にちょうどいい。

 

 そうと決まればフライトユニットでひとっ飛びだ。できれば単独行動してる奴が都合がいいが、団体さんでもそれはそれで面白いか? 多過ぎるようなら減らせばいいだけだし。

 

 一番近いリザードマンのテリトリーに真っ直ぐ飛んでいくと、おあつらえ向きに一機だけで巡回中のがいる。怖がらせないよう、適度に距離をおいて着陸。


 うーん、ちょっと離れた場所に降り過ぎたか? 走ればいいだけなんだが、飛行に慣れると無精になっていけないな。これじゃあ操縦系のゲームでオートクルーズ機能を要求するプレイヤー達を笑えない。

 

 一対一なら逃げないとは思うが、どうだろうな? ここはひとつ、剣も収めて慎重に接近遭遇といきますか。よく考えれば別に武器はいらないんだよ。

 

 射程内まで入ってもなかなか気づいてくれない。スキュータムIIって索敵能力が低いのか? スキュータムも索敵ポッドを装備しないとまるで駄目だったしなあ。せっかくの新型なんだから、その辺少しは改善しろよとは思う。

 

 こっちに気づかせなくては当然攻撃してこないだろうし、仕方ない、またあれをやるか。

 木々をなぎ倒しながら怪獣のように歩く。脳内で怪獣王のBGMがリフレイン、スピーカーを使って咆哮でもするか? いや、やめておこう。俺までアリサちゃんにガキっぽいと言われそうだしな。

 

 この辺りの木々は、リンクスの姿を隠せるほど大きくはない。視線は通っているのに、何故気づかないかな? ゲームの仕様だからと言ってしまえばそれまでなんだが。ステルスの概念を無理やり取り入れたらこうなりましたって感じだよな。ステルスというより透明人間じゃないか。まあ、最初のステルス機は見えない戦闘機とか言われてたらしいしな。実態は爆撃機だったようだが……たしか作ったのはアメリカだ。

 

 荒々しく少し大きめの樹木を蹴り倒してみる。ちょっとチンピラっぽいが、仕方ない。

 木というより、巨大な草か? セロリみたいにポッキリ折れた。なんかみずみずしいよ、多肉系? サボテンみたいな? 砂漠でのどが渇いた時とか役に立ちそうなやつだ。

 

 さすがに今ので気づいたようだ。ビームが飛んでくる、が、狙いが甘いな。ロックオンできていないのかもしれない。

 

 さらにズンズン近づいていくと、ピピッと警告音。ようやくロックオンされたみたいだ。今度は正面からビーム。きたきた! これを待ってたんだ。

 

 反射的に斬り払いしてしまいそうになるが、そうじゃない。

 

 タイミングを合わせて新技を発動! 一瞬でビームが背後に抜けている。今のでエネルギーゲージがごっそり減った。


 要するに、一瞬この世からいなくなる技だ。効果は、発動中はビームとかに当たらなくなる。


 おまけバリアー同様にエネルギーゲージを消費するタイプの技だ。組み合わせを考えると、似たような技はあまり嬉しくないな。

 タケバヤシの絶対バリアーみたいに、エネルギー消費なしで一日一度発動できるようなタイプだとよかったんだが。いや、絶対バリアーはいらないけど。

 

 問題はこの新技のネーミングだな。

 

「一瞬この世からいなくなるアタック!!」


『攻撃の要素は皆無では?』


 確かにそんなんだが、そこはノリじゃないか。ベティちゃんがいかに高性能なAIでも、人間のセンスにはまだまだ及ばないようだ。まあ、そういうとこが人類に残された最後の聖域だな。


 ベティちゃんウケを狙うとなると無難にタイムスキップとかタイムワープだろうか?

 

『わかりやすすぎる名称は、ライバルに手の内を晒すことになりますよ』


「なら、オロローンとか、ギャバルとか、適当なのがいいかな?」


 ギャバルとかRPGの魔法っぽくてカッコよくないか? あまり適当な名前をつけても、俺自身が後で何がなんだかわからなくなりそうだけどな。

 

 ネーミングで悩んでいる間も、スキュータムIIは次々にビームを発射してくれる。いい子だ。

 

 新技の発動に必要なエネルギーは、発動時間に比例するようだ。省エネのためには、命中するギリギリのタイミングで技を発動し、当たり判定がなくなった瞬間にすかさず解除すればいい。解除が早すぎると命中してしまう理屈で、タイミングが難しいな。

 

 何しろ技を発動した瞬間にスクリーンがブラックアウトするから、解除時の状況を先読みして使うしかない。外れ臭がプンプンするが、使い方次第ではあるか。結局、この手のタイミングは体で覚えていくしかないよな。

 

 おそらく、エネルギーゲージを丸々一本使えば、二秒ちょいくらい時間を飛び越えることができる。0.1秒ならだいたい5%消費か。

 当たり判定が小さい実弾兵器なら、もっと短時間のタイムスキップでもよさそうだ。そういえばガトIIで実弾兵器ってまだ未実装だよな。マテリアルを消費して再現しようにも、そもそも弾がメニューに表示されない。やっぱりエネルギー系縛りでいくつもりなのか? 一部のマニアが文句を言いそうだぞ。

 実剣はちゃんと使えるから、俺としては別にどうでもいいけどな。

 

 何十回か練習してみて、とりあえず新技のクセはだいたいわかった。役に立たないとは言わないが、斬り払いに比べて燃費が悪すぎる。剣の耐久を減らしたくない時? そんなの回避すればいい話だよなあ。

 完全に無駄とも言えないが、ちょい微妙だよなあ。

 

 ふむ、考えてみれば、射撃を避けるだけじゃなく、近接戦時でも使えるよな。対Xキャリヴァー戦で覚醒した技なんだからな。

 今のところガトIIで俺以外にリンクスを使ってる奴はいないが、βテストとか始まったら多分同キャラ対戦もできるだろう。俺とコメートさんの活躍によって、リンクス使いも少しは増えているみたいだし。


 たとえ残念な性能でも、対人戦で相手が使えない技を使うのはアンフェアだよな。仮にも俺はプロなんだし、むしろハンデをつけるために縛りプレイするくらいでないとな。

 全力を出さないと相手に失礼? だが、制限をつけないと勝負にならないからなあ。こちとら毎日ゲームばかりしてるんだから、上手くなって当然だし。


 だが、CPU相手に遠慮はいらん。せっかく見つけた練習台だ、今度は近接戦につきあってもらおう。

 スキュータムIIは嫌がって距離をとろうとするが、逃がさん! 素早く回り込むと、観念したのか武器腕をビームソードモードにして斬りつけてくる。

 

 そう、それでいい。残念ながらたいした腕ではないが、そこは俺のイマジネーションでカバーしよう。相手がXキャリヴァーを使っているつもりで対応する。

 敵の剣が少しでもかすれば、俺は死ぬルールだ。まあ、心の中だけのつもりルールなんで、実際に何かが変わるわけでもないんだが、緊張感を高めるにはいい方法だろう。


 普段はやられるまえにやる戦い方だから、剣の間合いに入った瞬間に決着がついてしまう。ところが武器を持たず、一方的に切りつけられる状況だと、丁寧な立ち回りが要求される。

 調子づいた相手というのは、腕がへっぽこでも厄介なものだが、この程度で追い込まれるようなら所詮俺はその程度ってことだな。

 

 相手の太刀筋には明らかに迷いがあるが、そのせいでむしろ先読みが困難でもある。下手な相手はこれがあるから怖いよな。まあ、技量に差があり過ぎるからそれでも勝負にならないんだが、油断していればまさかの一撃には対応できない。


 人間の集中力というものは、本来そんなに長時間持続するようなものではないから、戦いの最中も適度に気を抜くことは大事だ。気を抜きつつ油断しない、矛盾しているがやってできないことはないだろう。なせばなる、だ。

 

 出鱈目に振り回されるビームソードをひたすら避け続ける。かすってもダメとなると、時折詰みそうになることがある。それが楽しい。三日月よ我に適度な艱難辛苦を与えよってなもんだ。


 たまに偶然俺を追い詰めつつも、相手はそのチャンスに気づかない。狙ってやってるんじゃないからだろうが、その辺は戦闘センスだよなあ。所詮CPUには無理な話か。

 追い詰められたらタイムスキップで切り抜けようと待ち構えてるんだけどな。

 

 やはり技名は長すぎると駄目だしな、もうタイムスキップでいいや。センスはイマイチだけどな。

 

 残念ながら、新技を防御に使うような局面は訪れそうにない。ならば攻撃に使ってみるか。


 バスターソードを装備し、一瞬先の未来を想定しタイムスキップ。そのまま横一閃にスキュータムIIの腰部ジョイントを切断する。


 なにこれ! 凄く強いぞ!! というか反則レベルじゃないか。対人戦では封印決定だな。

 

 地面に転がった上半身から、ハッチを吹き飛ばしてリザードマンのパイロットが逃げ出して行く。結構勢いよく落下したのに、今のでよく生きてたな。

 アニメなんかだと脱出してから生身で攻撃してきたりするパターンが多いけれど、そんなガッツはないみたいだ。そもそもそれで勝てるくらいなら、最初から歩兵で戦えよって話だよ。

 

 そういえば、リアルの陸軍じゃ携帯ランチャーの性能が高くなりすぎて、戦車や戦闘ヘリの中の人達もいろいろ苦労してたよなあ。

 秘密兵器とか持ち出されても困るし、一応油断せずリザードマンを見送る。うん、手ぶらで走って行った。

 

 この近くの山中に、リザードマン達の神殿っぽいのがあったから、多分そっちへ向かうんだろう。なんか黒煙が立ち上っているが……タケバヤシ達か。また性懲りもなく襲撃してるみたいだな。

 連中の戦いぶりはあまり見ていて気持ちのいいもんじゃないが、なんとなく気にはなる。怖いもの見たさ? ちょっと違うか。

 

 フライトユニットならひとっ飛びの距離だし、たまには見物に行くか。

 

 少し高度を上げると、ビームの輝きが見えてくる。昼間だからそんなに目立たないけれどな。ビームが綺麗に見えるのは、やはり夜戦ステージだ。

 明るい太陽の下、煙の中にぼうっと浮かび上がるビームの軌跡は、なんか未来のリアルな戦場って感じでちょっと怖い。

 ビーム兵器なんてリアルで使うとかなり非人道的なんだが、最近のアメリカ映画を見る限り、悪を倒すクールなウエポンとして描写されている。米軍はまるで自重する気はないようだな。

 

 うにょうにょ曲がるホーミングビームはタケバヤシだろう。たまに光る明るいのがぷるりんちゃんのゴンぶとビームで、ちまちま三連射してるのが坊主か。武装がバラバラで遠目にもわかりやすい。

 対する敵の反撃は散発的で、なんかやる気が感じられない。リザードマン達ときたら、やたらファイトだけはある奴らなのに……妙だな? わざと負けて死地に誘い込む作戦とか? そういえば、遮蔽物の少ない地形に誘導されつつあるな。馬鹿なのか?

 

 周囲に伏兵が隠れるような場所はなさそうだが、あいつらさんざん地中に潜ったカニメカに奇襲されたのにまるで学習しとらんな。カニメカにできるんだからスキュータムIIにだってできるだろう。地中はスキャナーの反応が悪いんだよ。

 

 案の定、もこもこと土の中からロボの大軍が湧き出して来た。あーあ、前方を包囲されちゃってるな。先頭の坊主めがけて突然の十字砲火が降り注ぎ始める。いや、十字砲火なんて生易しいもんじゃないな。飽和攻撃? 敵のビームは軽く三桁を超えている、二百以上三百未満ってとこか? 相変わらずここのゲームデザイナーはさじ加減というものを知らんな。一度直接会って文句を言ってやりたい。

 

 高い防御力を誇るスキュータムの専用盾もまるで役に立たず、坊主は絶対バリアーを発動させたようだが、圧倒的なエネルギーの奔流にぷちっと消滅してしまった。

 

「絶対じゃないバリアーだったな。名前負けもいいところだ」


 わりとカッコイイことを言ったつもりなのに、ベティちゃんに無視された。ちょっとショックだな。

 

 坊主に続いて、二斉射目でタケバヤシのサジタリウスが消滅。続いてぷるりんちゃんのジェミニも消し飛ぶ。それでも、やられる前に敵を十機以上は倒したようだ。腐ってもランカーだけのことはある。

 まあ、反撃とかしてないで、坊主がやられている間に素早く後退すれば逃げきれたかもしれないんだけどな。好意的に解釈すれば、仲間を見捨てず最後までよく戦ったともいえるか。

 

『ロックオンされました。次、こちらに来ます』


 おりょ? スキュータムIIにしちゃ索敵性能が良すぎないか? まいったなあ、飛行中は地上にいる時みたいに自在に回避できるわけじゃない。飽和攻撃なんかされれば、おまけバリアーじゃ屁のつっぱりにもならんですよ。

 だがしかし、こんな時こそタイムスキップじゃないだろうか? 一瞬この世からいなくなるんだから、どんなに攻撃力が高い攻撃でも効かない理屈だ。

 問題は発動のタイミングが結構シビアなことだな、ギリギリまで引き付けて発動させる必要がある。

 

 何故か知らんが、奴らの射撃はやたらと統制がとれていて、同じタイミングで斉射してくる。こちらとしては願ったりかなったりだな?

 

 花火のように降り注ぐビームをバレルロールと重心移動でギリギリかわす。くそっ! タイムスキップするタイミングを見極めていたら、なんか反射的に回避してしまった。

 まあ、これはこれでいいか。さすがは俺、よくやった。確実に狙ってできるんなら百点満点なんだが。

 付け焼刃の技を実戦で使いこなすのは、なかなかに難しいということか。

 

 そのまま包囲陣の端っこに舞い降り、スキュータムIIに蹴りを入れて倒す。これだけの数、相手にとって不足はない。久々の大規模戦闘だな、過去最大級かもしれない。

 ビームガンなんて使ってられるかあ、バスターソードの二刀流でひたすら斬りまくる。俺にちょっかいを出した不幸を呪うがいい!

 

 乱戦で二刀流は便利だが、斬り方が雑になるせいで剣の耐久値がもりもり減っていく。まだまだ修行が足らんか……そういえは宮本武蔵は敵の刀を奪って交換しながら戦ったんだったっけ。スキュータムIIの武器腕は奪っても使えんからなあ。

 

 インベントリがあるから武器の交換はできるが、これだけの敵に囲まれているとほんの一瞬の隙でも命取りだよなあ。のんびり出し入れなんてしていられない、これは困ったぞ。

 

 ついにバスターソードの一本が砕け散ってしまい、マテリアルが周囲に噴き出す。あちゃあ、ガトIIで武器が壊れるとこうなるのか。マテリアルの価値を考えるとこれは大損だ。今日のプレイは大赤字確定だな。


 武器を破壊されるより、素直に撃破されてゲームオーバーになる方がお得なことに気づいた。いや、それならやられる前にログアウトが一番だぞ。やらないけどな。

 ネトゲの世界では負けそうになって回線切るのは卑怯な行為とみなされる。通信の不安定な環境でプレイしていてひどいことになったことがある、遠い昔の話だ。

 

 とりあえずは、一本になった剣で丁寧に斬っていくことにする。やはり刃を滑らせるように斬ることで耐久の減りはかなり軽減できる。

 スッと入れてスッと抜く、別段難しいことをするわけじゃないが、上手くいった時は装甲ごと両断可能だ。これが結構気持ちいい。

 二刀流でもできればいいんだが、両手で同時に箸を使うみたいなもんだしなあ。いや、慣れれば普通にできるか?


 二刀流と言っても、別に左右で同じことをする必要はない。俺の場合、敵が多い時は猫の手でも借りたいって発想だからな。両手だけじゃなく両足も使いたいくらいだ。


 思いつきで拳や足におまけバリアーを纏わせて、殴る蹴るしてみる。なんかふんわりしてしまって、それほどのダメージを与えていない気がするな。ボクシングのグローブみたいな感じ?

 リンクスのマニピュレーターにも優しいので、これはこれで使いようだろうな。相手のバランスは崩せるから、足払いには使える。柔道技で投げ倒してからの追撃だと、剣よりピッケルとかが向いてそうだな。

 

 なんか小型の多脚砲台みたいのがいたので、内部に侵入して武器を交換する。スキュータムIIの母艦的な運用もされているみたいだが、格納できるのはせいぜい二機くらいだろうな。

 リザードマン達にも一応仲間意識はあるみたいで、味方ごと攻撃するのは躊躇するようだ。一休みして弁当でも食べたいところだが、敵も馬鹿じゃないし時間を与えると混乱から回復してしまうな。


 ボロボロになったバスターソードをインベントリに収納する。今度は耐久力の高い武器がいいな、やはりクラッシャーソードか?

 だが、ちょっと魔がさした。ノリでトマホーク(笑)を使うことにする。しかもダブルで。

 

 トマホーク(笑)は、見た目はごついのに攻撃力が低いネタ装備だが、耐久値だけは何故か馬鹿みたいにある。手荒く扱っても壊れる心配はまずないのがいい。


 多脚砲台のリアクターをぶっ壊してから飛び降り、立ち塞がるスキュータムIIの頭部をぶん殴る。首が変な角度に曲がるだけで何故か破壊はできない。まあ、そういう仕様だからな。

 すかさず反対にいい感じの角度で殴りつけると、頭が外れて転がっていく。頭部パーツだってただの飾りってわけじゃないし、これで火器管制の精度とかはガタ落ちだ。


 よたついた敵は、流れてきたビームに当たって動かなくなった。味方にやられるとはついてない奴だな。乱戦ではよくあることだ。

 

 関節外しで何機かのスキュータムIIを行動不能にしたところで、ネタ装備に後悔し始める。さすがにこれでは殲滅速度が遅すぎる。


 大軍を相手に戦う場合は、いかに瞬殺できるかがキモだ。手こずっていると、どんどん囲まれて数の暴力に押し潰されてしまう。

 

 武装の交換をしたいが、さっきの多脚砲台は壊してしまったからなあ。他にも歩行戦車みたいのはいっぱいいるが、リンクスが入れるくらいのサイズなのは見当たらない。


 仕方ない、これも修行だと思って頑張ってみるか。ゲームはヘルモードが面白いっていうのは常識だしな。

 

 地獄の戦場で戦い抜くうちに、トマホーク(笑)の二刀流のコツもつかめてきた。ガンガンと連撃で素早くスキュータムIIの腰部ジョイントを脱臼させてしまえば、そう時間もかからない。

 こちらの動きを読まれ易くなってしまうのが欠点だが、今のところそこまで対応してくる敵はいないな。


 その他の歩行戦車に関しては、バリアーに守られていないせいか、普通に斧の一撃で車体ごと吹き飛ぶ。数を揃えるための間に合わせ兵器みたいだな。火力はあるみたいだから、運用次第じゃ悪くないかも。

 

 歩行戦車など、今回新たに登場した戦闘メカが何種類かいるが、命名権は最初に交戦したタケバヤシ達になるのかなあ? あいつら、美味しいとこだけ持っていきやがって。


 こんな時に限って、ダンゴム、ザザ、ゲジゲン、フナームとかいい名前が次々に思い浮かぶ。世の中、上手くいかないものだ。

 

 気がつけばあれだけいた敵もめっきり数を減らし、戦意を喪失して撤退を開始している。どうやら地下に通路が張り巡らされているようだ。


 スキュータムIIを撃破しても僅かなマテリアルしか回収できないし、戦車っぽいのに至ってはさらに微量だった。あれこれひっくるめて百機以上は撃破したと思うが、失ったバスターソード一本分にもならない。


 勢いで無益な戦いをしてしまったな。それでも数の暴力が脅威であることは十分思い知らされた。奴らが仲間ごと殺る気で攻撃してくるようなら、ちょっとヤバかったぞ。

 

 

 筐体から這い出ると、疲れがどっと押し寄せてくる。頭から湯気が出そうだし、沖田総司っぽく咳き込んでしまう。長時間の集中は、疲労が半端ないな。


「根を詰め過ぎると、体に毒ですよ」


 コンパニオンさんの一人が冷たい緑茶を持って来てくれる。


 そうだな。こんな時に殺し屋に襲われたらひとたまりもないし、ちょっと休んでいこう。結局、弁当も食べる暇がなかったし、遅めの昼休みだ。


 みずみずしい夏野菜のサンドイッチが、疲れた体に普通に美味しい。トマトが甘い、きゅうりがフレッシュ過ぎて笑いが止まらない。マヨの中に隠し味のバジルが刻まれているが、こりゃあぜんぜん隠れてないな。それにチーズが超美味い。トマトとバジルとチーズは最強コンボの一つだからなあ。

 

 ガラス越しに隣のブースで、なんかタケバヤシ達が揉めているのが見えた。何を言ってるかは聞こえないが、坊主一人が糾弾されているようだ。

 今日の敗因を坊主のせいにしてるのかな? さすがにあの火力が相手じゃ壁役は何もできないよなあ。

 

 

 数日後、坊主がクビになったことを知った。あんな奴でもいなくなるとちょっと寂しいものだ。

 というか、この仕事ってやっぱり簡単にクビになるんだな。

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