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俺のロボ  作者: 温泉卵
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武士道大原則

「知らなかったのよ、あれが毒ガス弾だったなんて。ドッカーンってしたらスコアポイントがズババーンってウナギ登りでカ・イ・カ・ン! 癖になりそうナノよ!」


 ぷるりんちゃんが興奮気味にずっと喋りまくっている。毒ガスとかそんな物騒な代物まで使ってたのかよ。リザードマン達がボロボロ死んでいたのは俺も確認していたが、てっきり拡散したビームの粒子か何かが悪さをしてるんだと思った。ガスで殺すとか、戦闘じゃなくて駆除だな。そんなゲーム面白いか?


「毒ガスなんて聞いてなかったぞ。なんで俺には渡さなかったんだ?」


 不服そうなのは坊主だ。どうも毒ガス入りのロケットランチャーはジェミニとサジタリウスだけに装備されていたらしい。ウエポンラックの規格が合わなかったんだろうと思うが、ダブルスコアどころか数桁違うスコアポイントに納得がいかないようだ。

 

「そういう仕様です」


 アリサ大佐は心底面倒くさそうにしているが、酒の入った坊主は執拗にからみ続ける。

 まあ、祝勝会を兼ねてるからって会議にアルコールを持ち込むのも悪い。つまり責任の一端はアリサちゃんにもあるわけだ。

 

 俺はウーロン茶で我慢しているが、寿司の出前をとっておいて緑茶がないってどういうことだよ! これはこれで意外に悪くないけれど。

 最近お茶にハマっているが、舌が肥えてくると茶葉に際限なく金がかかるんだよな。育てるのに手間とかかかってそうだし、お高いのはかまわないけれど、安茶を飲まされると精神的なダメージをくらうようになってしまった。

 なにかと物不足の昨今、お茶などの嗜好品は非常に貴重なものになってきている。本物はまず一般の市場に出回らないくらいだ。サバイバルな時代に贅沢を覚えてしまって、果たして俺はこの先生きのこることができるのだろうか?

 

 すでにタケバヤシは生ビール、坊主は日本酒をグイグイ飲んで、完全にできあがってしまっている。ガトII始まって以来の大儲けが相当嬉しいみたいだ。こいつらが前借りしているマテリアルの分と相殺すれば焼け石に水だろうけどな。


 ぷるりんちゃんは大人しくオレンジジュースかと思ったら、何かのカクテルだったようで、いつになくハイテンションだ。いや、この女は常時テンションが高かったか。

 

 ゲーム中にもおにぎりを食ってたし、俺はそんなに腹は減っていない。それでも握り寿司をつまんでみると普通に美味い。カジノを訪れる外国人観光客をあてこんで、ホテル内のレストラン街だけでも美味い寿司屋は両手で数えきれない程あるが、どこの寿司屋の出前なんだろうな?


 使われているネタだけ見ても、合成や培養じゃない正真正銘の養殖ものだ。今まで俺が本物の魚だと思ってありがたがっていたものの大半は、実は培養ものだったんだよ。料理人の爺さんに教えられた時はショックだった。

 養殖ものの魚は頭も内臓もついていて、ちゃんと生け簀で餌を食って大きくなる。羊羹のような切り身の状態で育てられる培養ものとは別物だ。

 無論、一番美味いのは広い海で泳いでいた天然ものだとされているが、元々貴重な上に汚染した魚をふるいにかけるとほんの僅かしか残らない。口にできるのは特権階級か、釣り人だけだ。

 

 ここのホテルには一般の料理店以外に、ビリー氏をはじめとするVIPのためだけの調理スタッフが常駐しているから、出所は寿司屋じゃなくてそっち方面かもしれない。

 いずれにせよ、この握り一貫で普通のサラリーマンの月給が軽く消えてしまうんだろうなあ。そう思って食べるといろいろ考えさせられる。


 どうだ明るくなったらうを思い出すな。歴史の教科書に載っていた百円札に火をつけて靴を探す成金のイラストだ。

 あれは成金を愚かな人物として風刺しているんだと思うが、今の俺達に比べればまだマトモに思えてしまうから怖い。

 

「あの、柿崎さんはお飲みにならないんですか?」


 両隣に座った軍服コスプレのコンパニオンさんが、他にすることもないようで俺にお酌をしようとしてくれる。なんとなくこの場で酔うのはマズイ気がして、丁重にお断りする。


 アリサ大佐をはじめ、運営側のスタッフは二十代の美女ばかりだからなあ。タケバヤシは大人の女性が苦手で、坊主は女嫌い、ぷるりんちゃんは女性となれば、俺の隣しか行き場がなくなるわけで大人気だ。


 リンリンに借りた昭和期の映画のキャバレーみたいだ。まあ、あんなのは退廃的な文化を演出するための、劇中のフィクションなんだと思っている。

 実際に美女に囲まれて座ってみると、これは想像してたほど嬉しいものでもないな。リンクスを操縦してる方が百倍楽しいぞ。


 最近はロシアトリオに加えて新入り二人が常駐してるから、美女まみれが日常化していることもあるだろうな。その前からアンドロイド達のせいで美形に慣れてしまっていたために、美女に耐性ができてあまりドキドキしなくなったというのもある。

 あーあ、俺はもう二度とときめきを感じることはできないのだろうか? 考えてみるとものすごく勿体ないことをしてるぞ。


 執拗に酒を勧められるが、頑なにウーロン茶で我慢する。なんか、こういうのは俺の飲み方ではない。

 

 いや、そもそも会議なんだから、議題を進めて欲しいんだけれど。酒なら後でとっておきを晩酌で楽しむから放っておいてくれ。

 今夜は爺さんが新じゃがで肉じゃがを作ってくれる予定なんだ。春の肉じゃがって言ってたくらいだし、多分タケノコやフキなんかも入ると思う。想像するだけで涎が出そうだ。ビールや芋焼酎なんかも当然合うだろうが、なんでも爺さんがとびっきりの相性のいい赤ワインを用意してくれるらしい。

 

 俺はワインの銘柄なんて知らんが、うわばみのリンリンが今夜は死んでも飲みに来るって言ってたからいい酒なのは間違いない。まあ、そういうわけだから、目先の誘惑には迷わないから。

 

 

「諸君らの勇敢な戦いによってストーリーイベントの緒戦を勝利で飾ることができた。だがトカゲ達の巣は周辺エリアにまだまだ数多く存在する。明日以降も引き続き掃討戦を継続してもらいたい」


 アリサ大佐はこれが会議だってことを忘れていなかったようだが、言っている内容がひどいな。明日からも虐殺を続けろってことじゃないか。どうにも胸糞が悪い、酒がまずくなるぜ。一滴も飲んでないけどな。


「あんな胸糞悪いことをまだ続けるのかよ」


 いかん、酒も飲んでいないのに、つい心の声をつぶやいてしまった。

 

 小声だから聞かれることもないと思ったんだが、間の悪いことに周囲が静まり返っているタイミングだった。会議室にいた全員に聞かれてしまったな、これは。

 

「何言ってんだお前は? 兵隊は黙って上の命令に従ってりゃいいんだよっ」


 すでに完全にできあがってしまっている坊主が食いついてくる。坊主にしちゃ正論だ。戦場で兵士が勝手な判断を始めたら勝てる戦も勝てなくなる。

 理想的な軍隊は、兵士は指揮官の命令を信じて戦い、指揮官は全ての責任を負う。問題は無責任な指揮官が多過ぎることらしいが、これは我が国だけじゃなく最近の世界的な風潮らしい。人類総無責任時代だ。


「……リアルの戦争ならそうすべきだろうが……せめてゲームの中でくらい正義の味方をやらせて欲しいもんだな」


「はあ? 逆だろ? ゲームだから何をやってもいいんだろうが。リアルで殺生している兵隊どもはすべからく八大地獄送りにすべきなのだ。外道は永遠に苦しむがいいわ」


 坊主とは思えん言葉だな。このクソ坊主とはとことん意見が合わない。というより他人の意見には全て反対するんじゃないかこいつは?

 

 口が達者で、相手を論破しないと気が済まないときている。いやはや、面倒な生臭坊主だな。不毛な議論がしたくてしたくてたまらない奴だから、うかつに受け答えすると泥沼確定だ。

 

 俺としては決めることだけ決めて、こんな会議はさっさと終わらせてしまいたいんだ。とにかく俺はゲームの中では好きなようにプレイさせてもらうからな。虐殺には手は貸さない、やりたきゃ自分達だけでやってろよ。


 協調性に欠けるとか、単なる個人のわがままだとか言われるなら、むしろ開き直ってしまおうか。どうせこいつらはなにかと理由をつけて足を引っ張りたいだけだからな。スタンドプレー上等! 俺はやりたいようにやるんだよ! 理由? わからない奴らに何を言ってもわかるまい。宗教上の理由ってことでいいか? いや、そういうのは坊主がハッスルしそうだ。

 

 そうだな、月がとっても青いから? 太陽が眩しいから? もうなんでもいいや。とにかくカッコいいことをガツンと一発ぶちかまそう。

 

「武士道大原則! 一つ、武士は弱いものいじめをしてはならぬ!」


 ヒトォツゥ、と天を指さしながら大見得を切ってみせる。こういうのは恥ずかしがっては負けだ。開き直って堂々としていれば、ノリと勢いでわりとなんとかなるもんだ。


「会津藩士かよ」


 ありゃ、元ネタを知ってたか。坊主はそういうの詳しそうだしな。まあそれならそれでむしろやりやすいか。

 

「忍者じゃなかったの? ああでも服部半蔵は武士だったし、忍者と武士は両立できるのか」


 アリサちゃんまで妙なボケをかましてくる。ニンジャマスターはリンリンが冗談で言ってただけなのに、いつの間にか噂が広がってしまっているな。

 

「そうそう。拙者武士なんで無抵抗な相手とは戦わないぞ……でござる」


 タケバヤシ達とは一緒にやらねえよ、理由は武士だから。以上! 文句あるか!! うちの家系は代々農家だけどな! 蔵には錆びてボロボロの野太刀とかも転がってるから、ご先祖様の中には野武士くらいはいたかもしれない。

 

 

「……別にいいと思うけどな。ボク達としても獲物を横取りされないならむしろ歓迎じゃないか?」


 タケバヤシの言葉に、鶴の一声じゃないが三人ともそれで納得してしまう。あれ? なんかこいつら聞き分けいいぞ。せっかく恥を忍んで見得まで切ったのに、肩透かしだよなあ。結局は金目当てなんだな。

 

 確かに金はなけりゃないで苦労するが、米も買えないとかそういうのは本当に侘しいものがあるが……使い切れない大金は正直持て余すけどな。そりゃあキャビアとかは美味いけれど、毎日食べたいとは思わないし、一生食えなくても俺は別に平気だぞ。

 

 俺だって別に無欲になったわけじゃない。通帳の数字が増えていくのを見ているだけで面白いしな。ゲームだとやりこむと所持金の上限に達してしまってやることがなくなるが、リアルだとカンストもない。

 

 金策プレイとして考えても、チマチマとリザードマンを殺すより、マテリアルを回収してる方がずっと稼げるんだけどな。今日の護衛任務だってアリサちゃんに頼まれたから商売抜きで引き受けたけれど、いつも通りにカニメカを狩ってた方がずっと儲かった筈だ。


 ああそうか、こいつらはマテリアル集めが下手くそだから、面白くなくてもリザードマンを狩るしかないのか。そう考えると少々不憫ではあるな。

 

「まあ、プレイスタイルはそれぞれあるということね。オホン……わかった、了承しよう。ザック大尉にはこれまで通りマテリアルの回収を任せたい。護衛任務に関しては必要に応じてその都度相談ということで、それでいいわね?」


 アリサちゃんは最近は適当な演技が多い。役になりきれていないというか、地が出ちゃってるよ。ギャラリーが見てないとやる気も出ないか。

 その点、リンリンのなりきりプレイは徹底してるよな。やっぱ仕事より趣味でやってる方が熱が入るみたいだ。

 趣味を仕事にすると楽しんでばかりではいられなくなるからなあ。その点はプロゲーマーだって似たようなものだ。一日中ゲームばかりしていれば、プレイするのが時に苦痛にもなる。以前なら寝る時間を削ってでもゲーセンに通い詰めてたんだけれど。


「まあ、装備を手に入れたボク達にはもはや護衛なんて必要ありませんけどね。今日戦ってみて改めてわかりました。マテリアルを集めるために手加減しないでいいなら、やはりボクこそがトッププレイヤーなのだと」


 なんかこいつ、自信を取り戻したら口調が丁寧に戻ってないか? 本性を知った後だとアニメの悪役キャラのセリフみたいに聞こえる。

 

 強い武器を手に入れて調子に乗るのは結構だが、ガトIIを甘く見すぎじゃないのか? カニもクモ脚もこっちに合わせてどんどん強く進化しているんだぞ? リザードマンだって多分強化されるだろう。スキュータムIIIとかより強い新型機が登場するかもしれないし、生き延びたパイロットだって腕を磨いて立ち塞がるにちがいないんだ。

 

 俺が戦ったあのパイロット、素質だけならタケバヤシを超えてたからな。あいつのこれからの成長次第じゃ、スキュータムIIといえども相当の脅威になるぞ。全体的にパワー不足な感は否めないが、あれはそう悪い機体じゃない。そこそこバランスはいいし、兵器としての完成度は旧スキュータムより高いと思う。盾持ちだし、組織的に運用されると厄介だ。

 それに、敵に新型の高性能機が登場するのは、この手のゲームじゃお約束だしな。


 今回は完全に奇襲だったが、いつもそう上手くはいくまい。

 

 数を揃えて待ちかまえられたら、タケバヤシ達じゃ撃ち負けるだろう。俺だってやばい。


 普通のゲームならクリア不可能なミッションはないだろうけれど、ビリー氏は非常識だからなあ。プレイヤーを嵌める理不尽なデストラップが絶対ないとは言い切れない。いや、むしろ積極的に狙ってきそうな気がするな。そういうのちょっとワクワクもするけどな。


 

 グダグダのうちにただの寿司パーティーと化した会議は、タケバヤシ達が酔いつぶれてお開きとなった。夕飯の肉じゃがが楽しみだった俺は、最後までアルコールは飲まなかった。

 高級酒もどんどん持ち込まれてきたが、ただ高い酒を飲むだけというのでは芸がないしな。こんなことを考えるようになったのも料理人の爺さんの影響だ。考えてみれば俺の人生の師匠の一人だな。


 この歳になると世の中の醜い舞台裏の事情もそれなりにわかってくるから、尊敬できる人なんてなかなかいやしないが、ひたむきに何かを極めようとあがきつづける職人の生き様には、なんかシンパシーを感じるんだ。


 

 護衛なしで一人で自室に戻る。ビクビクしているとホテルの客が皆暗殺者に見えてくるが……大半は一般人じゃないんだろうな。カタギの人間の殺気じゃあない。

 センセイ曰く、達人ともなると殺気を自分でコントロールできるらしい。となると、本当に怖いのは殺気を放っていない人間ってことか? 結局は全ての人間に対して隙を作るなってことじゃないか。

 

 去年の今頃は、警戒心ゼロで街中を歩いていたのになあ。平和ボケしていたといえばそれまでだが、普通は命を狙われるなんてことはあまりないからな。

 普通に生きるのが一番か? そもそも俺は安定志向なのに、ただゲームをしていたら、いつの間にかリアルでも無茶苦茶冒険している気がする。まあ、あのまま働き続けていても過労死と常に隣り合わせだったから、どっちもどっちだな。

 

 命の危険を心配しないでいい日々のことは懐かしく思えるけれど、考えてみれば野生の生き物は一生油断できないんだから、今の状態が生物として自然なのかもしれない。

 はあ、野生動物も大変だなあ。家畜の生き方もそう馬鹿にしたもんじゃないよ。生きるのは難しいのさ。

 

「肉じゃがと言えばやっぱこってりだろ」


「あほたれ! これは新じゃがを楽しむための春スペシャルや!! 薄味やないと微妙なお味がわからんやろ」


 どうやら争いから逃れ得ぬのが人の宿命らしい。ここでもナンシーとセンセイを旗頭に、二派に分かれて激しい対立が発生していた。理由はバカバカしいけどな。

 

「いやあ、若い連中には濃い味付けがいいかと思ってな。二種類作ってみたらこうなった」


 爺さんが気を利かせて、二つの大鍋に普通の肉じゃがと春スペシャルを作り分けたらしい。どっちも美味いに決まってるじゃないか、別に争うことじゃない。

 

「あの、ボスはどっちがお好きですか?」


 ガリーナが心配そうに聞いてくる。どうでもいいが、このままボス呼びで定着するのか? 警備会社を設立したあたりからマーシャが言い始めたら、いつの間にか広がりつつある。マフィアの親分かガキ大将みたいであまり嬉しくない。

 せめて社長とか……やっぱりそれも嫌だなあ。

 

「まずは春スペシャルをもらおうか。その後で通常の肉じゃがでがっつり白ご飯かなあ」

 

 爺さんは我が意を得たりといった顔をする。どうやら正解だったみたいだな。俺はただ食欲の赴くままに言っただけだが、こういうのが無心の境地って奴かもしれない。

 結局センセイ達もそうすることにしたようで、争いをやめて席に着く。


 なんかセンセイはいつの間にか完全に居ついてしまったよなあ。ここにいれば食費から何から全部タダだしなあ。おまけにビリー氏関係から結構な報酬ももらってるみたいだし。

 武道の達人って、もっと生き方が不器用なイメージがあるんだけれど、ゴキブリ並みにしたたかな生きざまを見せてくれている。まあ、このオッサンからも学ぶものはそれなりに多くはあるな。主に反面教師的な意味で。

 

 メイド服のアンドロイド達が優雅に給仕してくれる。こうして食べると肉じゃがもまるでコース料理みたいだ。

 

 春スペシャルは予想通り、いや、予想以上に春の味がした。火が完全に通っていなくてほろ苦い何かも混じっているが、わざとだろうな。なんか癖になりそうな苦みだ。

 

 タケノコご飯も軽くよそって出してくれる。もっと欲しいと思わせるこの量が絶妙に考えられている。入っている具は昼に食ったおにぎりとだいたい同じだが、春スペシャルとの相性が絶妙だ。


 他に木の芽や山菜のてんぷらが小皿で出る。通は塩でいただくみたいだが、今日は天つゆな気分なんだ。山菜系は天ぷらにすれば大抵美味しいな。クセが強すぎて生食はとんでもないようなのも、ほどよくアクセント程度に抑えられて実にいい感じだ。リンリンの性格もてんぷらにできればいいのにな。


 あと、これが噂の冷やして飲む赤ワインか、俺は気に入りました。それほど有名な高級酒というわけでもないだろうに、この満足感はなんだろう。リンリンやナンシーも黙々と食って飲んでいる。センセイまで神妙な顔をして味わっている。

 

 その後、普通の肉じゃがが出てくると、各自が思い思いの酒を飲み始めた。リンリンが持ち込んだ芋焼酎がすごく合う。値段はそれ程でもないが、知る人ぞ知る酒でなかなか手に入らないんだそうだ。

 なんかセンセイと意気投合して、二人とも一升瓶をラッパ飲みし始めた。ダースで持ってきたのが、朝までには全部空になるんだろうな。


 普通の水でも一升瓶一本は到底飲みきれないのに、酒だと何故飲めるんだろうな? 人体の不思議だ。

 

 俺は白米があればそれだけで満足だけどな。普通の肉じゃがの方も、こんなに美味く作れるのは普通じゃないな。爺さんは普通の瓶ビールを美味そうに飲んでいる。普通のビールともよく合うよな。普通に超美味い。

 

 まあ、いろいろあるが、こういう美味い飯が食えるんなら金持ちも悪くはないよな。生きるということは食べるということだ。生命とは食欲だ。ビリー氏がどんなにすごい科学をふりまわそうが、人類は胃袋の下僕にすぎんのだよ。


 これからも爺さんの料理を食うためにも、明日からもマテリアル集めを頑張ることにしようか。

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