表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺のロボ  作者: 温泉卵
68/113

風切るヒップ呻るパンツ


「水中翼船ねえ、見た感じは普通の船だよな」


 カジノ特区の北港埠頭、ここは関係者以外立ち入り禁止なので俺は入るのも初めてだ。


 ガリーナが退院してロシアの三人娘達が芦屋のハズレに店を出したらしく招待ハガキが来ていたみたいだが、なにかと時間がなくて行けないでいた。リンリンが一時間で行けるルートを見つけたと言うから案内を頼んだんだが、船を待つだけですでに三十分以上経ってしまっている。予定を大幅にオーバーする予感がしてきたが、ここまで来たら文字通り乗りかかった船だ。


 特区で働くスタッフの中には神戸方面からの通勤者も少なくない。そんな人達のために高速艇が神戸のポートアイランドとの間を往復しているわけだ。料理人の爺さんも家に帰る時は利用していると言っていた。

 以前は淀川の下を通って行く地下鉄もあったらしいが、なんかテロがあって水没したらしい。テロリストってのは本当に駄目だな。


 やっと来た船に乗り込む。ハッチには従業員以外立ち入り禁止といろんな国の言葉で書かれているが、リンリンは気にしていない。本当に乗ってもいいのか? 誰もチェックしていないし、セキュリティとかいろいろザルだよな。

 

 狭い船内には座席がびっしり並んでいてバスみたいだ。リンリンはさっさと窓際の席に陣取ってしまう、俺も窓際がよかったのに。一応彼女は俺のボディガードでついて来てくれているので、あまり離れて座るのもマズイだろうな。

 

 時間帯のせいか船内はガラガラだ。夜勤明けなんだろう、疲れた顔をした人達は席に座るなり居眠りを始める。お疲れ様です。

 

 乗り込んでくる乗客は女性比率が結構高い、中にはカジノのディーラーやバニーさんもいるかもしれない。厚化粧を落とすと皆普通の人だ。

 ただ、歩き方がなんか美人っぽい。背筋を伸ばしてカッコよく歩く癖がついているのかもしれない。

 

 どんぶらこと波に揺られながらのんびり埠頭を離れていく間はいかにもレトロな乗り物って感じだったが、海上を一旦走り出すとさすがは水中翼船だった。まったく揺れないのな。

 原理は知っている。水中翼で船底が水の上に浮かび上がるから、水の抵抗がなくなって早くて揺れないんだよ。でも水中翼自体の抵抗とかはどうなってるんだろうな? まあその辺も偉い人が考えて上手く作ってあるんだ。


 残念ながら船が水上に浮き上がっている様子は、船上の乗客には見えない。水中翼船だと知らないで乗ってる人もいるかもな。リンリンも含め俺以外の乗客は、浮上航行にまったく興味がなさそうだった。皆ずっと寝てるし。


 あっという間にポートアイランドに到着。関西地区は世紀末的に荒廃してるイメージがあったんだけれど、神戸は東京に負けないくらい洒落た町で治安も良さそうだ。

 荒れているのは大阪だけか?

 

 だが、リンリンが借りてきたレンタカーは軍用にも使われているごつい装甲がついた奴だった。

 

「燃費悪そうな車だな。電気か?」


「燃料電池だけど、燃料を入れちゃうと追加料金とられるみたい」


 大型のバッテリーパックも装備されているから、通常はわざわざ給油する必要はないんだろう。燃料電池は非常用というか、まあファッションみたいなものだ。軍用車両そのままの仕様で販売されるモデルは、アウトドア派に一定の人気があるんだよ。


 燃料電池用に、一応SGNの入ったジェリカンが積まれている。これもファッションなんだろうが、緊急時にはちゃんと使える筈だ。


 SGNは成分としてはほぼ灯油、要するにメタンガスから作った合成灯油だ。燃料電池の注意書きには他にもアルコールやガソリンなんかも使えると書いてある。カッコよく言えばマルチフューエル対応って奴だな。理論上はウォッカでも走るってことだな。


 車がアメリカ製なのとリンリンの運転が荒っぽいせいで随分ワイルドな乗り心地だ。信号で止まるたびにサスペンションが目いっぱい沈み込む、車重がある上にじゃじゃ馬だからひどいもんだ。ロデオマシーンでもここまでは揺れない。

 ドリンクホルダーのコーヒーなんて、最初の信号でほとんどこぼれてしまってるぞ。乾いたらべたべたになりそうだな。


「芦屋って昔から有名な高級住宅地だろ? なんでまたこんな戦車みたいな車を借りたんだ?」


 お前は一体どこの戦場に向かうつもりなんだよ?


「芦屋のハズレは芦屋じゃないからよ、ほら見て」


 うん、前方に塀があるな。大阪の壁ほど巨大じゃないが、万里の長城みたいなのが街を囲んでいる。どうやらアトラクション用の設備、というわけではなく怪しい連中の侵入を抑制するためのものらしい。


 セキュリティチェックを受けて壁を通り抜けると、そこには世紀末な光景が広がっていた。リンリンがハンドル横のボタンを押すと窓のシャッターがせり上がって来る。おいおい、戦闘態勢かよ?

 

「軍用の本物はそこに重機関銃をマウントできるんだけどねえ」


 そう言って俺の頭の上を指差す。助手席の天井のハッチはサンルーフなんて優雅なシロモノじゃない、もともと銃座として設計されているようだ。自慢じゃないがこういうのは結構詳しいぞ、樺太じゃいろんな軍用車両に乗せてもらったからな。

 

「台座のパーツをボルトで後ハメすればそのまま銃座に使えそうだぞ。こりゃあ米軍仕様の車載迫撃砲にも対応してるな」


 できる範囲で知ったかぶってみる。付け焼刃でも一応は普通の民間人より知識はある筈だ。


「この辺はそこまで荒んでないから、ガチ仕様は置いてなかったのよね。一応銃刀法ってのもあるから、迫撃砲なんて簡単には貸してくれないし」

 

 簡単じゃなきゃ借りられるんだろうか? 自分で言い出しといてなんだが、そもそも迫撃砲で何と戦うつもりだ。暴徒鎮圧用の催涙ガス弾とかもあるけれど……


 壁を抜けてからリンリンに殺気が漂い始めたな、赤信号でも停まらなくなった。手斧やら鉄パイプを持った浮浪者が物陰からギラギラした目でこっちを睨んでるんだから当然か、停車したら一斉に飛びかかってきて車ごとぶっ壊しそうだ。

 

「大阪の方で抗争に負けたロシアンマフィアよ、最近はどんどんこっちに流れて来てるわね」


「マフィアねえ、特区じゃ真面目にカジノの経営してるよな?」


「カジノ特区にいるのは一流の連中だけど、この辺の奴らは素人に毛が生えた程度の零細マフィアなの」


 やれやれ、裏社会にもやっぱり格差があるんだな。むしろカタギの仕事より厳しそうだ。


 カジノ利権にありつこうと二軍三軍の連中は血みどろの椅子取りゲームを日夜繰り広げているわけだ。さらにその下の連中がこんな所にまで流れて来て場外乱闘してるんだな。

 巻き込まれた大阪や芦屋の人達はいい迷惑だよ。


「それでここいらはロシア人が多いってことか」


 ガリーナが退院した後、三人娘はカタギになってロシア料理専門店を開くことにしたらしい。わざわざロシア人の多い地域に出店したってことは、きっとロシア人向けのメニューを出す店なんだろう。

 俺が知っているロシア料理なんてボルシチくらいのもんだが……本格的なロシア料理がどんなだかちょっと楽しみだ。やっぱりモスクワの味なんだろうか?

 

 届いたハガキには『ロシア風家庭料理 赤いくまさん』と可愛らしい文字が印刷されていた。ただ店のシンボルマークがよくない。いや、上手に描かれたイラストなんだが、タッチが妙にリアルなせいで血みどろの恐ろし気な熊に見えるんだよ。どう見てもブラッディベアーって感じだな、戦車の砲塔とかに描いたらカッコいいかもしれない。

 

 開店祝いにはネット通販で購入した南部鉄器のフライパンを持って来た。ロシア料理だってフライパンくらい使う筈だ。何枚あっても困る事はないだろう。

 時間があれば熊のシンボルマークをフライパンの底に刻印してもらったんだけどな。でも無銘のフライパンというのもカッコいいぞ、自分用にもう一枚買ってあるし。ホテルに無事戻ったら、夕食は一人でステーキを焼いて食うってのもいいな。


 走っている車もほとんどなくて、快適なドライブが楽しめると思っていたら、クラクションを鳴らしながらバイクの集団が追いかけて来た。


「チッ、面倒なのが来やがった」


 言葉とは裏腹にリンリンは随分楽しそうに見える。こりゃあ死人が出るかもな。


 やはり俺達の車が目当てだったみたいだな、あっという間に周囲を取り囲まれてしまう。なかなか見事な手際だよ、牛を襲う狼の群れって感じだな。

 トゲトゲのついた革ジャンを着ているライダーもいるが、残念ながら髪型がモヒカンじゃない。やはり悪党だって髪の毛は大事にしたいんだろう、最近生え際が気になってきた俺にはその気持ちよくわかるぞ。

 

 一台が車の前におどり出てブレーキランプをチカチカさせてくる。プレッシャーをかけて無理やり停車させようって魂胆だろうが……仕掛ける相手が悪すぎたな。

 リンリンはブレーキをかけるどころか当然のようにアクセルを踏みこむ。うん、この女の場合、何のためらいもなく行動するから怖いんだよ。オカマを掘られたバイクが軽くすっとんで行く、これが質量の差って奴だ。


 上手く転がっていったし多分死んじゃいないと思うが、後から聞こえた爆発音がちょっと気にはなる。襲撃された俺が悪党の心配するのもおかしな話だよ、自業自得だよ?


 関わっちゃいけない相手だと瞬時に悟ったんだろう、バイクの群れはサッと離れていく。リンリンは残念そうだな、これじゃあどっちが悪人かわかったもんじゃない。

 

 その後は襲撃されることもなく、無事に『ロシア風家庭料理 赤いくまさん』に到着。距離的にはたいしたことなかったが、芦屋のハズレと称するには少々遠い場所だった。すでに出発して二時間以上経ってしまっているよな、何が『一時間で着くから』だよ。

 

 三人娘は知り合いから築五十年程の古い建物を安く売ってもらって料理店に改装したらしい。元々はいわゆるデザイナーズハウスって奴だったのだろう、三角定規を斜めに突き刺したような斬新なデザインだ。

 庭の木々は八割がた立ち枯れてしまっているし、壁に一杯スプレーで落書きされている。車を降りるとシンナーと硝煙の匂いがした。

 落書きはどうも最近のものみたいだな、料理店に改装してから悪戯されたんだろう。ちょっと嫌な予感がする。


 車から降りて店の様子を眺めていると、頭の隅がチリチリする。うーん、誰かに銃口を向けられてるような気分じゃないか。しかもこの殺気は知っている奴だ。


 危険を感じるレベルじゃないが……どうも向かいの廃ビルの窓から狙っているな、怪しいものは何も見えないがそれが怪しい……リンリンが手を振ると殺気は消えた。なんだ?

 

 しばらくすると大きなスコープのついたライフルを抱えて、廃ビルからマーシャが出て来た。ああ、三人娘の中で一番狙撃が上手いんだっけ? あれ? スナイパーはオリガの方だったかな? どっちでもいいが殺気をこめて客を狙ってるんじゃないよ。

 

「わざわざお店に来てくれたんですか? 前もって連絡してくださいよ」


 銃を持っているのをまったく気にもせず話しかけて来るマーシャ。気にする俺の方がおかしいのか? まあFPSゲームなんかじゃ普通に皆こんな感じだしな、慣れって奴だろうな。


「あ、予約が必要だった? ごめんごめん。遅くなったけど今日は開店のお祝いに来ただけだから、料理はまたいつかちゃんと予約して食べにくるよ」


 リボンをかけたフライパンの包みを振って見せる、鋳鉄製のわりには薄くて結構軽い。もちろんアルミのフライパンに比べるとずっと重いんだが、サイボーグである彼女達なら平気だろう。


「いえ、予約のいるような店じゃないんですけど。とにかく歓迎しますよ。入ってください、どうぞどうぞ」


 マーシャと話していると、今度は店のドアが開いてガリーナが飛び出して来る。

 

「柿崎さん!! ようこそ、あの、いらっしゃいませ!」


 店の制服なんだろうか、ロシアの民族衣装風のスカートを着ている。そういえばマーシャも地味だけどなんかそんな感じの服だな。揃いの制服ってわけじゃないのか、部署によってデザインが違うのかな?

 

「へえ、ロシアっぽいね」


「こんなのロシアと違う! あの、それっぽいコスプレ衣装を買っただけで、ロシアじゃないんです」


 ロシアじゃないらしい。最近はコスプレ用にいろいろ安く売られてるから、雰囲気作りのためにとりあえず着てるんだろう。よく見ると不織布でできた使い捨ての衣装みたいだしな。


 それにしても、一時は首だけになったガリーナが元気そうにしててよかった。生命の神秘って奴だな。 


 二人の美女に手を引かれて店に入る。四人テーブルが四つにカウンター席もある、二十人くらいは入れそうだな。窓ガラスが何枚か板張りになっているのはデザインだろうか? 襲撃された後の応急修理にも見えなくはない。


 客は一人もいない。まだ準備中だったか、それとも繁盛していないのか。

 カウンターの向こうではオリガが何やら調理中だ。

 

「あら、お久ぶりです柿崎さん。どうしましょう、今はボルシチくらいしかお出しできないんですけど」


 やっぱりロシア料理といえばボルシチなのか、名前だけは知っているが食べたことはない。とりあえずボルシチだな。

 

「開店当初は張り切って沢山品数を用意してたんですけどね。お昼時にはピロシキも揚げますけど」


「いや、営業時間前に押しかけた俺達が悪いんだから。あ、これ遅くなったけど開店祝いです」


「あの、そうじゃないんですよ。お店は朝から開けてるんですけど、お客さんが誰も来なくって」


 やっぱり閑古鳥が鳴いてたのか。うすうすそんな気もしていたが、悪い予感が当たってしまった。

 

「あたり前でしょ。こんな物騒な場所に店を出して誰が食べに来るのよ」


 容赦ないリンリン、それを言っちゃあ終わりじゃないか。でも確かに、食べ物屋は立地で決まるってのはよく聞く。


「確かに治安は良くないけど、その分安く借りられたのよ。この辺りはロシア難民も結構流れ込んで来てるから儲かると思ったんだけどねえ」


 意外なことに計画はほとんどマーシャが立てたらしい。オリガは料理担当で、ガリーナは……労働力? 三人組のリーダーはガリーナでも、普段は縁の下の力持ちポジションみたいだ。

 

「あんた達は馬鹿なの? 難民ってのは金がなくて困ってるのよ。それにロシア系難民だったらボルシチくらい自分達で料理するわよ」

 

「確かにその通りだったわ。気づいてたんならもっと早く教えてくれてもいいじゃない」


 なんというか、生活力のなさそうな三人組だよな。ジャングルの奥地に放り込んでも生き残りそうな逞しさがあるのに、普通に町中で一文無しになって行き倒れてそうではある。


「なんか変なのが来たわよ」


 マーシャが窓の外を見て警告する。本当に変な車が走って来る、なんというかいびつな乗用車だ。かろうじて動く廃車を適当なパーツで適当に修理しましたって感じだな。ドアがきちんと閉まっていないから、エアコンの効きは悪そうだ。

 ナンバープレートすらついていないのがいっそすがすがしいよ、車検なんてハナから気にしてないんだろう。

 

 駐車場はがら空きだというのに、わざわざ俺達のレンタカーの隣に停めやがった。

 

「あ、擦りやがった。あいつら殺していい?」

 

 リンリンが嬉しそうに言うので慌てて首を振る。修理費くらい俺が出すから安易に人殺しはしないでくれ。

 

 馬鹿でかい声でロシア語っぽい言葉をがなりたてながら、四人の男達がドカドカと店に入って来る。茶色い皮膚に平たい顔、背広を着て黙っていれば日本人で通用するかもしれない。

 今日本にいるロシア人の大半がウラジオストクから逃げて来た核戦争難民だ。極東方面にはマーシャみたいなモンゴロイド系のロシア人が多かったらしいんだよ。

 

 四人は鼻息も荒くテーブルにつくと、さっそく接客に向かったガリーナと揉め始める。

 

「料金の前払いを嫌がってるみたいね」


 リンリンはロシア語も話せるからすごいよな、英語もぺらぺらだし意外と頭がいい。

 

 最近は食い逃げも多いから前払いを求める店も珍しくなくなったが、それを嫌がる客なんて普通いないぞ。あいつら最初から金を払う気がないんじゃないか? 相手にしないで追い出せばいいのに、料理店ってのもいろんな苦労がありそうだよな。


 リーダーらしい男が懐からリボルバーを取り出して机の上にドンと置く、気の弱い店員ならこの程度でも怯えるんだろうな。おまけに両足を机の上に投げ出しやがった。舐められないために虚勢を張ってるんだろうが行儀が悪いなんてもんじゃないぞ。

 それでもガリーナは我慢している、客商売だから仕方がないのか。リンリンだったら相手が銃を見せた瞬間に躊躇なくハチの巣にするだろうに。


「お待たせしました。ロシアの田舎風ボルシチに、シェフの気まぐれピロシキです。熱いから気をつけてくださいね」


 ガリーナが四人組の客と揉めているのをよそに、マーシャが俺達のテーブルに食事を届けてくれる。湯気の立つ熱々の料理は寒い日だったら嬉しいんだろうな、今日は全然寒くないというか汗ばむくらいの陽気だが。


 ちょうど小腹もすいてきたところだしさっそく頂くとするか。

 

 ボルシチとやらは真っ赤なシチューっぽかった。赤いと言ってもトマトの赤じゃなくて、紫がかった不気味な色だ。いや待てよ、ハツカダイコンや紫蘇みたいに紫でも美味しい物はいろいろあるじゃないか。食わず嫌いは駄目だよな。


 食ってみると見た目とは違って普通に野菜の味がする。芋のような塊は少々水っぽい、煮込まれた大根かカブだろうか? 日本人向きとはちょっと言えないが、慣れれば特に問題なく食べられる範囲内だ。

 

 ピロシキの方はオーブンで焼いた肉まんって感じでそこそこ美味い。厨房からオリガがちらちら見ている、自分が作った料理を誰かに食べてもらうのは嬉しいもんだよな。


 料理人の爺さんのせいで、最近俺の舌が肥え過ぎてしまったというのもある。

 うん、オリガは素人としては十分料理上手なんじゃないか? 何十年も超一流店で働いてきたプロと比べてしまうのはさすがに可哀想だ。

 

「あ、美味しいよこれ」


 精一杯カッコつけてイケメンなことを言ってみる。円滑な人間関係のためには社交辞令は必要なんだよ。


「オイシイヨコレ」


 俺が柄にもないことを頑張ってやっていると、男達の一人が俺達のテーブルに近づいて来て俺の口真似をしてゲラゲラ笑う。感じ悪いなあ、他の三人もニヤニヤしながらこっちを見ている。


 いい歳こいたオッサンが調子に乗ったガキみたいなことしてるんじゃないよ、さっさと料理を注文して食って帰れよ……と言ってやりたいところだがロシア語は喋れないしな。


 男は俺の皿に汚い指を突っ込んでペロッと舐める。おいおい何してくれてるんだよ!! こんなのもう食えないぞ。

 

「こんなのボルシチじゃないって文句言ってるわね」


「金を払って食ってから文句は言えよな」


 ロシアじゃこんなのが普通なんだろうか? でもここは日本だぞ? いや、事実上難民の人達に占領されてるようなもんだけど……国際法上は一応まだ日本だよな?

 調子に乗った男は今度は下品に笑いながらいきなりリンリンの尻を撫でる。馬鹿野郎! お前はもう死んだぞ?

 

「キャーッ!! 怖いようタクミクン」

 

 リンリンは震えながら俺に抱き着いて来る、俺はいきなりタクミ君にされてしまった。小芝居をするのはいいが、俺まで巻き込むのはやめて欲しい。アドリブなんてできないから。


 だいたいタクミ君ってどんなキャラだよ? とりあえずリンリンの恋人役をすればいいのか? 優柔不断な女たらしっぽい男ってことでいいかな?


「ちょっとやめてくださいよォ。彼女嫌がってるじゃないですかァ」


 自分で言ってイラッとするな、このキャラ作りは失敗だったかもしれない。まあいい、日本人らしくアルカイックスマイルを浮かべて成り行きを見守ってみる。


 男はテーブルのコップを掴むと、俺の頭から水を注いでゲラゲラ笑う。言葉はわからなくても、たぶん、フニャチン野郎とかそんなことを言われている気がするぞ。

 まあただの水だしな、ここはもう少し様子を見よう。


 俺が我慢をすればする程、リンリンが楽しく復讐できるって筋書きだ。彼我の戦闘力を考えれば単なる弱い者イジメではあるんだが、調子に乗った馬鹿の行動がそれに免罪符を与えてくれる。

 まあ、リンリンの場合そこまで考えてはいないだろう、単に天狗の鼻をへし折るのが面白いからやってるんだろうな。一つ間違えば自分も火傷しかねないのに悪趣味な火遊びをするもんだ。


 いつリンリンが仕掛けるのかそればっかり気になっていたら、意外にもガリーナが先にキレた。


 なんだかんだと文句をつけてまだ金を払っていなかった男達が左右からガリーナに抱き着こうとしたところ、次の瞬間には二人の男達が吹き飛んでいった。


 予兆があったから今の大技を見逃さずに済んだ。ガリーナは最初にまず軽く男達の顎を押したんだよ、あれで脳を揺らしたんじゃないかと思う。

 たいして力は入っていなかったが相手はそれで一瞬動けなくなった。脳震盪とまではいかなくとも、ちょっとくらっとしたんだろう。

 もちろんバランスを崩されたせいもあるだろうな、人間ってのは微妙に重心がズレるだけで無意識に調整しようとしてしまう。倒れないためには大事なことだが、戦闘中には思わぬ隙を産む。

 戦いの最中は無意識までコントロールした方がいいのか、それとも全て意識しないで立ち回れる境地に達するべきなのか。


 一瞬固まった男達はガリーナにとってはただのマトだ。すえもの斬りだ。

 だからといって大ぶりな上段回し蹴りをくり出したのは、いくらなんでも相手を舐め過ぎだとは思った。確かに威力はでかいし見た目も派手だが、隙だらけだ。


 ところが実際に男達の急所にヒットしたのは高速の膝蹴りだった。回し蹴りだなと思ったらいきなり急加速して膝蹴りが決まっていた。


 俺も一瞬えっと思ったし、やられた方は何がなんだかわからなかったに違いない。あいつら細マッチョだし、インパクトの瞬間を読まれれば筋肉の鎧でダメージを大幅に軽減されてしまう。逆に考えれば攻撃を予想外のタイミングにズラしてやれば効果は抜群ってわけだな。


 手品の種はわかる。回し蹴りに見せかけてこれでもかというくらい堂々と伸ばした足を、回転中に素早く折りたたむことでスピンを急加速させたんだな。

 スケートの高速スピンと同じ原理だろう。俺もリンクスで大剣を振り回しているから感覚的に理解できる。


 急回転の瞬間にふわりとガリーナのスカートが舞って、白い下着がチラッと見えた。見せ技としてもなかなかオイシイじゃないか。まあリンリンじゃあるまいし、今のパンチラはさすがに狙ったわけじゃないだろうけどな。


 今の技、リンクスの動きに取り入れられないものだろうか? 少なくとも姿勢制御のテクニックとしては有効だよな。明日からプレイ中にちょっと意識してみるか。


 ガリーナが仕掛けたのを見て、マーシャも素早くナイフを抜き、俺に水をかけた馬鹿男の首筋にピタリと当てる。驚いた男は腰を抜かして動けなくなった。ナイフの切っ先が少々当たったようで血が滴り落ちていく。彼女があともう少し刃先を滑らせれば頸動脈が切断されるんだろう。


 俺は詳しくは知らないんだが、頸動脈を切られると即死するんだろうか? そりゃあ動脈が切れたら間違いなく死ぬとは思うが、失血死するまでの間に数秒くらいは動けるんじゃないか? それだけあれば銃を抜いて発砲するくらいできると思うんだ。相手を瞬時に無力化しないと危険じゃないか?

 いやまあ、素人考えだけどな。普通はナイフを首筋に当てられたら逆らおうなんて思わないよなあ。


 手下どもが制圧されるのを見てリーダー的な男は慌ててテーブルの上のリボルバーに手を伸ばす。馬鹿だなあ、周囲が見えてないよなあ。

 グリップを握るのと同時に男の腕が銃ごと吹き飛ぶ。撃ったのはオリガだ。抜く手も見せない早撃ちだな、よくあれで当たるもんだ。

 トリガーを引いてから弾が飛び出すまでの間に銃口の向きを微調整した気がした。いや、最初から銃の反動でブレる分まで織り込み済みで撃ったのか? どっちにしろいい腕してるぜ。

 

 今の射撃、俺だったら避けられただろうか? 殺気を感じとっていれば狙われているのはわかるから、咄嗟に腕は引っ込めただろうな。


 どうも世の中には殺気が読めない人間がいるようだ。俺だってついこの間まではそんなものはフィクションだとばかり思っていたが、コツさえわかればむしろいちいち目で確認するよりよっぽど楽だ。


 オリガ一人だけが相手なら多分なんとか回避できると思うんだが、三人娘をまとめて相手するのは相当キツイよな。飛んでくる弾丸を全て先読みできたとしても、連射されれば生身の体じゃ躱しきれなくなるだろう。すぐに詰むな。

 リンクスくらいのレスポンスがあればなんとでもなるんだが、現実の世界じゃ生身の人間は銃にはかなわないよなあ。切り払いはやってみないとわからないが、一発くらいならなんとかなる気がする。

 

 とにもかくにも恐ろしいのは三人娘の連携か。


 連携か……うーむ、連携ねえ。タケバヤシ達みたいな烏合の衆よりはソロの方がましだが、信頼できる仲間がいればできることは山ほどありそうだよな。

 それにしてもおかしなのは最近のタケバヤシの態度だが、いや、今はそんなことを考えている場合じゃないし。


 とは言っても俺の出番は特にはないんだよな、リンリンすらお客さん状態で見ているだけだ。

 

 三人娘は男達の手足を手際よくビニールテープで拘束し、さらにその上から麻縄で縛り上げて瞬間接着剤を流し込んでいく。麻の繊維に染み込んだ接着剤が硬化すると、そう簡単に縄抜けできなくなるみたいだ。

 瞬間接着剤のこんな使い方は初めて見たよ。大量の接着剤からもうもうと白い煙が吹き上げる、体に悪そうな鼻をつく匂いだ。



「はい、あーんして」


 オリガがスプーンにすくったボルシチを、一人の男の口に近づけて行く。俺に水をぶっかけた野郎だ。

 後ろ手に縛られて椅子に座らされており、その体勢から必死でオリガのスプーンを避けようとしている。


「はいお口を開けて」


 男は顔をそむけ、涙目になって歯を食いしばる。全ては無駄な抵抗だ。ついにはスプーンを口に突っ込まれ、悲鳴をあげながら頭を振り回す。


 そりゃあ熱くて叫ぶよなあ。


 男が指を突っ込んでしまった俺の皿のボルシチを、オリガが手鍋に入れて七輪で温め直したのだ。七輪の中では赤熱したコークスが燃えている。コークスってのはまあ、調理用の石炭みたいなやつだな。詳しくは知らないが、製鉄所とかでも鉄を溶かしたりするのに使ってるんじゃないかな。

 当然鍋の中のボルシチはものすごく熱い、ぐらぐら煮立っている。


 平然とえぐいことをやってのけるオリガに、ガリーナも少々ひいている。おっとり系の美女だと思ってたら一番ヤバい奴だったとはな。

 マーシャは真剣な顔で見守っていて、リンリンは楽しそうだ。俺はどんな顔をしてるんだろうな?


 縛られた男達に至っては顔面蒼白だ。特にオリガに腕を吹き飛ばされたリーダーは、痙攣するみたいに全身でガクガク震えている。ブルってるなんてもんじゃない、人間って恐怖でこんなに震えるもんなんだな。


 オリガは次の獲物をリーダーに決めたようだ。重要な情報を知っていそうだからなのか、それともリアクションが期待できそうだからなのか、果たしてどっちだろうな?

 彼の吹き飛んだ腕は瞬間接着剤で止血されているが、プラモデルじゃないんだしあんまりといえばあんまりだ。


 オリガのやっていることは過剰防衛だけれど、多分罪に問われることはないんだろう。特区のエージェント達は、殺しのライセンス的なものを政府からもらっているみたいでわりとやりたい放題だし。

 カジノの利権を守るためなら超法規的な措置もやむなしってことらしい。俺の信じていた法の下の正義って一体なんだったんだろうな、最近ガラにもなくそんなことを考えてしまう。


 今回の一件はカジノとは関係ないようにも思えるが、ロシアンマフィアがらみというだけでなんとでも理由はつけられるからな。


「食べ物を粗末にしちゃいけないわよね。そうね、あなたにはこれを食べさせてあげる」


 オリガは優しく微笑みながらスプーンに燃えているコークスをすくいあげる。彼女がふうふう息を吹きかけるとより一層燃え上がる。一体何度あるのか知らないけれど、あれって鉄でも溶けるんじゃないか?


 熱気が顔に近づくのを感じた男は失禁し、悲鳴を上げ、立て板に水とロシア語でペラペラ喋り始める。

 懺悔じゃなさそうだし、何言ってるんだろうな?


 男の言葉を聞いたマーシャは外に飛び出し、連中のボロ車のトランクから銀色の消火器みたいなのを引っ張り出して来た。うーん、爆弾っぽい?


「クラスター用の子爆弾の一種ね、高性能焼夷弾よ。こいつら三人娘を店ごと焼き払う計画だったみたい」


 リンリンが小難しいことを言うが、俺だってクラスター爆弾なら知っている。ゲームに出て来るSマインみたいなもんだろ? 一発の親爆弾の中に小さい子爆弾が複数入っているんだ。つまり一度に広範囲を攻撃するための兵器だな。


 焼夷弾ってのはあれだよ、よく燃える奴だ。ナパーム弾とかそんな感じのだ。


 こいつらは命令されただけの下っ端で、店を燃やしてついでに三人娘も始末するつもりだったようだ。


 襲撃が俺達が来た時だったのはたまたまか? タイミングが良過ぎる気もするな。

 今までだって毎日のように暴力沙汰はあったみたいだが、爆弾まで出て来たのは初めてらしい。


「せっかくだしさ、この店ごとこいつら燃やしちゃわない? いろんなしがらみも全部まとめてリセットできるわよ」


 リンリンが悪い笑顔を浮かべて言う、それを聞いた悪党達は死にそうな顔をしている。こいつら絶対日本語わかってるよな。


「なんてこと言うのよ! せっかく手に入れた私達の夢のお城なのよ!!!」


 ガリーナも顔が引きつっている。リンリンの冗談は冗談じゃ済まないことも多いからなあ。


「いや、あんた達ってやっぱり客商売は向いてないわ。それよりダンナのところに永久就職しちゃいなよ。ねえダンナ、金ならいくらでもあるんでしょ」


 え? 俺に振ってくるか? そりゃあ金なら国家予算並みにもらえる筈だが、なんでリンリンがそのことを知っている? 案外ビリー氏っておしゃべりなのか?


「え、前は私達の手伝いはいらないって言ってたじゃない?」


 ガリーナがおずおずリンリンに尋ねる。そういえば昔そんな話もしてたよな、懐かしい。


「状況が変わったのよ、予算が青天井なら手下はある程度いた方が便利だしね。ねえダンナ、そこそこ腕利きである程度信用できる兵隊を三人まとめてヘッドハントできるチャンスよ、見逃す手はないんじゃないの?」


 リンリンが俺のことをダンナって呼ぶのは男達が聞き耳を立てているからだろう。こいつらにわざわざ名前を教えてやる必要はないからな。

 ってことは、この四人の男達を口封じする気はないってことか。少しほっとする。


「青天井の予算!」


 とマーシャ。雇用者側からするとあまり嬉しくない言葉ではある。


「永久就職……うふふ」

 

 とガリーナ。やっぱり終身雇用には憧れるよな。

 

「三人一緒にいられるのなら、それもいいわよねえ」

 

 とオリガ。雇うとしたら当然まとめてだな、彼女達の真価は三人揃ってこそだし。

 

 三人三様に嬉しそうじゃないか。


 そうだな、金持ちになったんだから俺も自前のボディガードは必要だろう。ナンシーの黒メガネ部隊にいつまでも頼っているわけにもいかない。

 そうそう、ボディガードを雇うノウハウについてはナンシーに教えてもらおう。こういった特殊な業種はネットで調べてもわからないことが多いしな。勤務時間とか各種手当とか、あと税金とかその辺がどうなってるのかも知りたい。

 

「これもなにかの縁だし、よければ三人まとめて面倒見るが」


 どうも三人娘は憧れていたカタギの暮らしが上手くいっておらず、俺からのヘッドハントは渡りに船だったようだ。給与なども確認せずに二つ返事で乗って来た。

 やっぱりこの三人、悪い奴に簡単に騙されそうだよな。戦闘力は高いのに残念な娘達だ。

 

 

 ホテルの俺の階にはまだまだ空き部屋が一杯あるので、三人娘には好きな部屋を使ってもらうことにした。なんか遠慮していたが、リンリンや爺さんだって物置代わりに何部屋も勝手に使ってるし、今更だ。

 ナンシーも特に何も言わないし、汚したりしなければ多分問題ないだろう。


 さて、まずは三人の歓迎も兼ねて夕食だな。今日は爺さんはいないけれど、お土産に買ってきた神戸牛を俺自ら焼こうか。今夜はステーキパーティだ。


 食事を楽しみながら、食堂の壁とプロジェクターを使ってちょっとした上映会をする。


 マーシャが『赤いくまさん』の周囲に馬鹿ほど設置していたカメラの記録映像だ。データはネット上に保存されているため、好きな時に確認できる。


 まずは俺達が立ち去った直後の映像。焼夷弾が爆発し、『ロシア風家庭料理 赤いくまさん』がみるみる炎に包まれていくシーン。カメラをいろいろ切り替えながら大迫力映像を堪能する。


「ああっ、お店が……」


 ガリーナはまだ未練があったようで、泣きそうになっている。他の二人は喜々として店の中に爆弾とかセットしてたんだけどな。

 

 さすがは軍用の焼夷弾だ。鉄筋コンクリートの建物が数分で跡形もなく焼け落ちてしまう。

 

 四人の男達もあの炎の中で消し炭になった……ことになっている。実は奴らの身柄はリンリンが特区のロシアンマフィアに引き渡したみたいだ。

 始末されるかどうかは五分五分ってとこらしい、組織間のメンツとかそういうのがいろいろあるんだろう。裏の世界はやっぱり怖い。

 

 火が消えた後の数時間を早送りすると、怪しげな集団が重機を持って登場だ。

 焼け跡をどんどん掘り起こしていくと、地下深くから金の延べ棒のようなものがザクザクと出て来る。


 この映像はライブモードみたいだな、つまり今も掘り出し中ってことか。

 

「私達がさんざん営業妨害されてた理由って、床下に金塊が埋まってたからだったの?」


 ガリーナは複雑な表情だ。金塊がなくてもあの店は遠からず潰れていたとは思うが、それは言っちゃダメだな。


「やっぱり半分くらい持ち出して来るべきだったんじゃないかしら?」


 マーシャはあれが欲しかったみたいだな。確かに見てるといかにもお宝だし、欲しくはなるよな。

 

「ウラジオの金塊なんてどうするつもりなの? あれってメッキされたただのタングステンよ」


 リンリンはたまたま別件であの金塊の情報を知っていたらしい。


 ウラジオの金塊というのはウラジオストクから持ち込まれたソビエト時代の負の遺産で、要するに見せ金用に用意されたニセ金塊だ。

 金と同じ比重のタングステン合金に金メッキしてあるので、非破壊検査ではなかなか金と区別ができないというなかなかの優れものらしい。

 あまりによくできていたため、今でも世界中の中央銀行の金庫に相当数が紛れ込んでいるんだそうだ。


 もちろん本物の金じゃないのでタングステンとしての価値しかないシロモノだが、マフィアなんかは欲しがるんだそうだ。もちろんただ飾って喜ぶだけじゃないだろう。


 マーシャにあの建物を安く売ったというロシア人が怪し過ぎる、三人娘を番犬替わりに利用するつもりだったのかもしれない。


 頑張って掘り出している連中がどこの組織だかは知らないが、ウラジオの金塊の情報はすでにリンリンがあちこちにばらまいているから、まあ、いろいろご愁傷さまだな。


「まあいいじゃない。あんた達三人とも跡形もなく焼けちゃったってことで、めでたくリセット完了だし。綺麗な戸籍を用意するから一週間ほど待ってちょうだい」


 三人娘は死にました、でも戸籍がないと不便なのででっちあげますってことらしい。

 裏社会の戸籍屋からではなく、日本政府のしかるべき機関から本物を手に入れるんだそうだ。リンリンって一体何者なんだろうな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ