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ゴールデンウィング

この世には才能というモノがある。

恋愛の才能・勉強の才能・運動の才能・戦闘の才能、

俺には何の才能もなかった。

そう俺には翼があっても飛べないのだから…。



森の中俺はひたすら逃げていた。

空からは木の実が降ってくる。

「逃げてるだけじゃ、勝てねーぞ。」

敵の声が上空から鳴り響く。

「戦って欲しいなら地上に降りて来いよ。」

とは言ったものの、このままじゃジリ貧だ。

意を決して拳を握りしめ横の大木に方向転換した。

「木登りは得意なんだよ。」

ここからならアイツにも当たるはず…。

木の上から木の実を投げてみるが遥上空の敵に届きさえしなかった。

決死の作戦があっさり破られ両手をあげた。

「俺の負けだ、降参する。」

その瞬間敵が上空から勢い良く突撃してきた。


意識が戻った時には空を見上げていた。

「ここはどこだ……。」

意識が朦朧とし、視界がぼやけながらも周りを見渡すと、そこは公園のベンチだった。

身体中のふしぶしが痛くてそれ以上のことを考えるのをやめた。




暖かい。

何か抱いているようだ。

目を開けるとそこには美少女がいた。

ちょうど美少女も目覚めたようで目があった。

「おはよう。」

「お、おはよう。」

挨拶を返してしまったじゃないか。

知らない人と話しちゃいけないんだぞ。

てゆーか待てよ、この状況周りから見れば俺はただの変態じゃないか。

無駄な考え事を色々していると美少女が突然訪ねてきた。

「君は空を飛べないの?」

答える暇もなく続けて言ってくる。

「昨日の戦闘見てたよ、君は降参したよね。それでもあの子は君を攻撃してきた。それが許せなくて君に付いて来ちゃった。」

そういえば、昨日そんなことがあったな。

待てよ、俺はあの後誰にここまで運んでもらったんだ?

美少女は俺の考え事を察知したのか言ってきた。

「僕がここまで君を運んできたんだよ。」

どう考えても美少女のこの体型で俺を運べるわけがない。

またもや察知したかのように言ってきた。

「僕は妖精だから何でもできるよ。あなたの傷を治すことも朝飯前さ。」

そういえば美少女に夢中で全然気づかなかったが、身体が全然痛くないな。

「お前本当に妖精なのか!?」

「さっき言ったじゃないか、僕は妖精だよ。

まぁ話がだいぶそれたね、君は空を飛べないの?」

少し考えて一言答えた。

「飛べない。」




昔俺は空を飛ぶ事が大好きだった。

誰よりも速く、誰よりも高く飛ぶことが出来たからだ。

だが事件が起きた。

友人たちといつものようにレースをすることになった。

その日は霧がかかっていて前方が見えにくかった。

それでもお構いなしに俺は猛スピードで飛んだ。

ゴール直前いきなり大木の陰から友人が飛び出してきて、それに気を取られて前方の木を避けきれなかった。

そのまま木に突撃してしまった俺は墜落していった。

意識が朦朧としているところに友人は降りてきて一言言ってきた。

「お前いつも一位だからって調子乗るなよ。」

俺はその言葉を聞いて絶望した。

俺には才能はあってはならないのだと。

「そんなことがあってから俺は空を飛べなくなった。別に友人のせいだとは思っていないが、それが原因で空を飛べなくなったのは確実だと思う。」

妖精は一瞬考えたかのような顔をして答えた。

「僕が君を飛べるようにしてあげるよ。」



それから空を飛ぶ修行が始まった。

自分には翼があると再確認する。

そして右、左と翼を動かすイメージをする。

「その調子だよ、少しずつだけど動き始めているよ。」

イメージを少しずつ強くしていく。

右左右左右左左右右右左。

翼が激しく動き始める。

すると、少し体が浮き始めた。

「やった、飛べ……。」

バタンっ!

「痛てて、後少しだったのに。」

悔しそうに言って見せると、

「調子に乗りすぎだよ。」

妖精に一刀両断された。

この修行を一週間続けても少しは浮くのだが変化はなかった。

「最終手段に出るしかないね。」

妖精の案は壮絶だった。

「嘘だろ?この崖から飛び降りろって?」

崖の下は何も見えないくらい高い崖だ。

「もうこれしか手段がないよ、男でしょ?覚悟を決めなよ。」

恐る恐る崖を見下ろすと、やはりしたが見えない。

意を決して俺は崖から飛び降りた。

「きゃーーーーーーーー。」

女っぽく悲鳴をあげる。

だめだ、怖い。

目を閉じて死ぬ覚悟を決めた。

そのとき妖精の声が聞こえた。

「君は飛べるよ、君は誰よりも飛ぶことが好きだったんでしょ?君は誰よりも速く、高く飛ぶことができるんだよ。死ぬ覚悟なんかするなよ。僕は君は飛べるって信じてる、誰よりも速く誰よりも高くね。」

俺はいったい何をしてきたんだ、死ぬ覚悟だって?そんなこと、

「してたまるかぁー!」

体が宙で静止する。

「飛んでる?飛んでるぞ!」

妖精は笑った。

今までで一番の笑顔で。

妖精は言った。

「あの子にリベンジだね。」




当日敵との再会。

場所は初戦と同じく森の中だ。

俺は挑発的に言う。

「目にもの見せてやるよ。 」

「お前飛べないのにどうやって俺に勝つんだよ。」

「どうだかなー。」

ピーッ!

試合開始の合図がなると同時に、

「バサッ!」

両者共に空中に飛んだ。

「お前飛べたのか。」

驚きを隠せないでいる。

「目にもの見せてやるって言ったろ?まぁここからだけどなっ!」


妖精との作戦会議。

「作戦はこうだよ。」

始まると同時に奇襲仕掛ける。

君が始まった瞬間空を飛ぶとあの子は驚くと思うんだよ。

驚いている間に木の実を投げると、あの子は咄嗟に腕で弾くと思うんだよ。

あの子は一瞬自分の腕で視界が奪われる、そこに全速力で突進するんだよ。


「木の実からだな。」

ポケットの中の木の実を掴み確認する。

「何っ!?」

意表を突かれ、木の実を腕で弾いた。

弾いた時にはもう遅い。

敵が気付いた時にはもうくの字になっていた。

「ぐはっ」

痛みを隠せないでいる。

奇襲成功このまま畳み掛ける。

右、左と拳を全力で振り、敵を地面に叩きつけた。

いける!手に汗を掻きながら確信する。

地面に降りて敵を見下す。

「もう終なのか?」

腹を抱えながらうずくまっていた敵がいきなりこちらを向いて砂を投げてきた。

いきなりのことで対応できなく、砂が目に入る。

「くそ、目がっ。」

目を掻きむしっている俺に容赦なく敵の拳が襲いかかる。

「オラオラ、もう終わりなのか?こんなもんで終わられちゃ困るんだけどなー。アッハハハハハ。」

高笑いが止まらない敵。

ボコボコにされ、頭が真っ白になる。

俺はここまでよくやったよ。

空も飛べなかったのに飛べるようになり、敵も後少しのところまで追い詰めた。

俺はこれでおしまいだ。

「死ぬ覚悟なんかするなよ。」

なんだ?

「君は勝てる、絶対に勝てるよ。」

そうだ、俺はこんなところで終わってたまるか。

俺は今までの努力のためにも、何より妖精のためにも勝たないといけないんだ。

目を見開き敵を見入る。

敵は少し驚いたが、すぐに言ってくる。

「そんなボロボロの状態で俺に勝てると思っているのか。」

無言で近づく。

一歩、一歩、少しずつ歩み寄る。

「ひっひー。」

悲鳴をあげながら飛んで逃げていく。

俺も全速力で追いかける。

血が目に入り目を拭っていると、敵が目の前から消えた。

「どこだ、どこにいる!」

全速力で相手を探していると、

木の陰から急に敵が飛び出してきた。

敵に気を取られ目の前の木をすっかり忘れていた。

「お前はこれでおしまいだ!」

俺は目を閉じて覚悟を決めた。

やられる覚悟ではない。

今度は木を避ける覚悟を。

目を開き体を捻らせて回転しながら木を避けた。

「うおーーー!」

避けた勢いのまま敵に向かって突進する。

「降参だ、やめてくれー。」

「喚くな、これで終わりだ!」

俺は敵の前で急停止した。

敵は白目を向いて気絶していた。



俺は試合後試合を見ていたであろう妖精を探したがどこにもいなかった。

観客に聞いてみると、妖精はある言葉を呟いていたらしい。

「君には才能があるよ。

決して諦めない最高の才能が。」

この言葉を聞いたとき俺は涙した。



完結




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